脳卒中
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12 巻, 3 号
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  • 森 盛, 佐渡島 省三, 大星 博明, 楠田 憲治, 藤島 正敏
    1990 年 12 巻 3 号 p. 199-206
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    高血圧自然発症ラットの両側総頚動脈結紮 (BCL) モデルを用い, 局所脳血流量および脳組織代謝に及ぼすCa拮抗薬, NC-1100の影響を検討した.NC-1100 0.2および1.0mg/kg静注により, 安静時平均動脈血圧はそれぞれ28, 45%一過性に低下したが, 大脳皮質血流量は25, 22%, 小脳皮質血流量は13, 18%それぞれ増加した.脳虚血時には大脳および小脳皮質血流量はともに有意に減少し, かつNC-1100群と生食投与群との間に差違は認められなかった.BCL1時間後のテント上脳組織の乳酸値は, NC-1100 0.2, 1.0mg/kg投与でそれぞれ23.5±2.2, 22.8±2.3mmol/kgと増加したが, 生食群の26.6±1.7mmol/kgよりもその増加はやや抑えられる傾向にあった.一方ATP値はNC-1100投与群では各々0.80±0.19, 0.97±0.24mmol/kgへと減少したが, 生食群の0.61±0.04mmol/kgよりは高く保たれた.以上より本剤は虚血時の脳代謝を保護する作用をもち, 急性期脳梗塞の治療薬としての有用性が示唆された.
  • 松田 昌之, 中澤 拓也, 斎藤 晃, 中洲 敏, 半田 譲二
    1990 年 12 巻 3 号 p. 207-213
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血 (SAH) 患者で社会復帰を果したoutcome良好であった症例のうち, 発症後2回以上133Xe吸入法による脳血流量 (CBF) 測定ができた50例において, CBFの経時的変化を検討した.術前grade良好例ではSAH発症後第1週よりCBFは有意に低下し, 第3~4週で回復した.一方, gradeの悪い例ではCBF低下は著明で長く持続し, 第4週でも有意に低下したままであった.症候性脳血管攣縮を伴った例ではCBF低下はより著明で長く続いた.さらに高齢者ほどSAHの影響は強く, CBF低下は著明で持続も長かった.50歳以上では3ヵ月ないし1年後のfollow-upにおいてもCBFの有意の増加はみられず, 有意に低下したままであった.高齢者では経過が良好であっても全身循環・脳循環に留意することが若年者以上に重要である.
  • 星野 晴彦
    1990 年 12 巻 3 号 p. 214-221
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    Duplex超音波検査を施行した症例のうち, 血管撮影で椎骨脳底動脈狭窄・閉塞部位の診断できた102例 (正常対照43例を含む) において両検査の結果を比較検討した.椎骨動脈起始部閉塞では全例で収縮期・拡張期ともに血流波形が得られなかった.椎骨動脈逆流は全例で診断可能であった.後下小脳動脈 (PICA) 分岐前閉塞・脳底動脈閉塞では全例が拡張期に血流波形の得られない遠位閉塞パターンを示し, PICA分岐後閉塞では10例中3例で遠位閉塞パターンを, 7例で正常と同じ波形を示した.狭窄例では正常と鑑別困難であった.以上, 遠位閉塞パターンが片側で認められればPICA分岐付近の椎骨動脈閉塞, 両側で認められれば脳底動脈閉塞と診断することが可能であり, 椎骨動脈起始部閉塞・椎骨動脈逆流は確実に診断可能であった.Duplex超音波検査は椎骨脳底動脈閉塞において, 臨床的には無侵襲なscreening検査として極めて有用であると考えられる.
  • 菊地 顕次, 古和田 正悦, 小鹿山 博之, 笹沼 仁一, 渡辺 一夫
    1990 年 12 巻 3 号 p. 222-230
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    デジタル医用画像データベース (EFPACS-500) の導入にあたり, 脳血管連続撮影の最適画像処理の一環として, 必要な情報を持つ異なる2つの画像を選択し, CRT上に一方の画像をポジに, 他方をネガとして両者を合成するソフトウェアを作成したので, その方法と中大脳動脈閉塞例における応用について報告した.中大脳動脈閉塞例における側副血行路形成の基本的動態がひとつの画像に集約して評価でき有用であった.
  • 小田嶋 奈津, 松永 高志, 古川 哲雄, 塚越 廣
    1990 年 12 巻 3 号 p. 231-236
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    発病1年7ヵ月後に一側上肢の粗大振戦様の激しい不随意運動の出現を認めた橋出血の1例について報告した.この不随意運動は運動時と姿勢時に認められ, 表面筋電図では上腕二頭筋と上腕三頭筋で2~3Hzの高振幅, 相反性の律動的群化放電を認め, 同時に躯幹筋や胸鎖乳突筋にも小さな群化放電を認めた.本例の不随意運動は活動時振戦に属するが, 運動時, 姿勢時とも振幅が極めて粗大で, あまりにも激しい動きであった.MRIでは一側橋被蓋部のみに病巣が確認され, 不随意運動の責任病巣を考える上で興味ある症例と考えた.
  • 特に急性期の血圧管理について
    佐々木 達也, 藤田 隆史, 児玉 南海雄, 西坂 利行, 山口 克彦
    1990 年 12 巻 3 号 p. 237-241
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    破裂脳動脈瘤急性期における再破裂は予後不良となる大きな因子である.過去5年間に経験した破裂脳動脈瘤452例中, 来院後再破裂を来たした24例 (5.3%) を対象として, 特に再破裂直前の収縮期血圧に注目し, 3日以内の急性期症例と4日以降の慢性期症例に分けて検討した.急性期の再破裂症例は12例で, そのうち10例で降圧が不充分と思われた.収縮期血圧100mmHg未満での再破裂は認められなかった.また, 80~100mmHg程度の降圧により症状の悪化した症例も認められなかった.4日以降の症例では脳血管蛮縮の時期と重なっていることもあり, 充分な降圧は行えなかった.根治手術を施行し得たのは9例で, 手術可能なまでに状態の改善しなかった15例は全例死亡した.
    破裂脳動脈瘤急性期では限界はあると思われるが, 早期からの徹底的な血圧コントロールが必要であると思われた.
  • 二瓶 忠精
    1990 年 12 巻 3 号 p. 242-250
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    脳血栓46例, 脳出血33例および非脳卒中16例を対象にして, 脳卒中慢性期患者の脳血流量に及ぼす寒冷刺激の影響について検討した.局所脳血流量 (rCBF) は, 133Xe-内頚動脈内注入法により測定した.1) いずれの群においても, 寒冷昇圧試験 (CPT) により収縮期および拡張期血圧は上昇し, 脈拍数は増加した.2) 脳血栓ならびに脳出血ともに, 平均局所脳血流量 (m-rCBF) が30ml/100g/min未満の群では, CPTによりm-rCBFは増加し, autoregulation indexは脳血栓群で, 他の群に比して大であった.3) m-rCBFが40ml/100g/min以上の脳出血群では, m-rCBFはCPTにより減少したが, 脳血栓群では有意の変化はみられなかった.
    以上より, 脳血流量の少ない脳卒中患者では, 脳血流量は寒冷刺激により増加しやすく, とくに脳血栓患者ではautoregulationに支障を来していると考えられた.
  • 濱野 利明, 高塚 勝哉, 西村 洋, 吉川 信嘉, 小松 隆
    1990 年 12 巻 3 号 p. 251-259
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    特発性頚部内頚動脈解離にて脳虚血症状を呈した2症例を経験した.症例1は48歳男性の脳梗塞例で左頚部痛, 左眼視力障害, 左不全型Horner症候群, 右片麻痺, 失語を呈した.症例2は54歳男性で右片麻痺, 失語等の一過性脳虚血発作を繰り返した.2例とも脳血管撮影上string signや解離性動脈瘤を認め, 内科的治療にて良好な回復が得られた.本疾患の治療に際してはまずヘパリンによる抗凝固療法を試みるべきで, 治療にもかかわらず一過性脳虚血発作を繰り返したり神経症状の悪化を見ない限り外科的治療の適応にはならないと考えられる.また症例1では対側の内頚動脈瘤を伴っており本疾患の病因を考える上で貴重な症例と言える.
  • 山本 康正, 中野 智, 中村 重信, 松浦 俊子, 亀山 正邦
    1990 年 12 巻 3 号 p. 260-264
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    血清中G4型アセチルコリン・エステレース (AChE) 活性を, 脳血管障害および痴呆疾患について測定した.皮質枝梗塞急性期19例, 穿通枝梗塞急性期5例, 皮質枝梗塞慢性期28例, 穿通枝梗塞慢性期24例について検討したが, いずれも健常対照群に比して高値を示した.また脳出血発症7日以内の20例では脳梗塞群と比較して低値であった.多発梗塞性疾呆で高値を示し, アルツハイマー型痴呆で低値を示した.脳梗塞12症例で, 発症より経日的に血清G4型AChE活性の変化をみたが, 一定の傾向を示さなかった.また, 脳梗塞における血圧とAChE活性の間に相関はみられなかった.多発梗塞性痴呆について, 年齢と血清AChE活性の間にはr=0.47で, 有意の相関がみられた.初老期発症アルツハイマー病では高齢発症アルツハイマー型痴呆より低値であった.年齢を考慮すれば, 血清AChE活性は血管性痴呆とアルツハイマー型痴呆の鑑別の補助手段となると考えられる.
  • 脳機能賦活刺激による検討
    吉井 文均, Ranjan Duara
    1990 年 12 巻 3 号 p. 265-270
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    安静時と脳機能賦活時の脳グルコース代謝率 (CMRglc) をPETで測定し, 大脳各部位と小脳でみられた代謝量の変動から, 一側大脳半球と反対側小脳半球の機能的関連を検討した.対象は23例のvolunteerで, 平均年齢は61±10歳.脳賦活刺激にはverbal memory task (3~5文からなる短文を誦読させ, その直後にその文章を可能な限り復唱させる) を用いた.安静時に比べ, 脳賦活時のCMRglcは平均で18.3%増加した.左premotor, orbitofrontal, motorの各部位では, 対応する右側の同部位より有意に高い増加率を示したが, 小脳半球では右側の増加率が有意に高かった.CMRglc増加率の [Left-Right] 値を用いて大脳各部位と小脳半球との相関を検討した結果, motor, premotor, prefrontal, sensoryの順に高い相関を認めた.以上より, 一側大脳半球のmotor regionの代謝量が, 反対側小脳半球の代謝量と最も強い関連をもつことが示唆された.
  • 福井 啓二, 古田 茂, 榊 三郎, 中村 貢, 貞本 和彦
    1990 年 12 巻 3 号 p. 271-278
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    1978年1月より1989年4月までに経験した, くも膜下出血に合併しない42例, 49個の未破裂脳動脈瘤 (Acom;8個, MCA;16個, IC;16個, ACA;5個, VA-BA;4個) に外科的治療を行なった.この内の大半の症例は脳血管CT・MR angiography等の低侵襲な検査法で発見した.これらの治療成績と, 未破裂瘤の部位, 大きさ, 発見の動機などとの関連性につき検討した.その結果1例 (2%) にmortalityが, 2例 (5%) にmorbidityがみられた.部位別にみると内頚動脈瘤に1例のmortalityが, 内頚動脈瘤及び中大脳動脈瘤に各々1例のmorbidityがみられた.大きさでは10mm未満の未破裂瘤にmortality, morbidityはなかった.脳血管CT・MR angiographyなどで発見された症例は, 大きな動脈瘤が多く, 2例 (7%) のmorbidityが認められた.これらの手術成績は, 未破裂脳動脈瘤のnatural historyに明かに勝り, 症例を慎重に検討し, 未破裂瘤に対しては積極的に手術適応を考えるべきであると思われる.
  • 今泉 昌利, 芦田 敬一, 井坂 吉成, 中山 博文, 松下 幸司
    1990 年 12 巻 3 号 p. 279-287
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    脳血管撮影により内頚動脈, 中大脳動脈の一箇所のみに狭窄あるいは閉塞を有する虚血性脳血管障害患者20例の総頚動脈血, 内頚静脈血における血小板形態を電子顕微鏡にて観察し, 次の結果を得た.
    1) 虚血性脳血管障害における血小板形態の主なる変化は偽足形成pseudopod formationと血小板細胞表面の摺曲surface foldsであった.
    2) 偽足形成や細胞表面の褶曲は血管狭窄の程度が強度になればなるほど増大し, 逆に閉塞症例では減少していることを確認した.
    3) 偽足形成血小板や細胞表面の褶曲を有する血小板では正常血小板に比較し, 濃染顆粒の減少が観察された.
    以上の結果より虚血性脳血管障害における血小板偽足形成や細胞表面の褶曲の発現機序は血管狭窄に起因する血液乱流が大きな要因であると推測された.一方, これら活性化を受けた血小板における濃染顆粒の減少はすでに一部放出反応を起していることを形態的に示唆する所見である.
  • 山下 一也, 小林 祥泰, 岡田 和悟, 小出 博己, 恒松 徳五郎
    1990 年 12 巻 3 号 p. 288-292
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    明らかな痴呆のない慢性期脳梗塞患者24名 (平均年齢65.0歳, 男性21名, 女性3名) の事象関連電位P300潜時と脳血流 (rCBF) との関連について, 53名の正常対照群 (平均年齢64.1歳, 男性24名, 女性29名) と比較検討した.P300潜時は, Fz, Cz, Pzを電極とし, oddball課題により低頻度刺激を40回加算し, 潜時を求めた.rCBFは133Xe吸入法により測定した.P300潜時は, 患者群と正常対照群の間に有意差は見られなかったが, rCBFは, 患者群では, 正常対照群に比し, 有意に低値 (p<0.05) であった.P300潜時は, 患者群, 正常対照群ともに, 年齢と有意の正相関を示した.患者群では, P300潜時とrCBFには, 有意な相関 (p<0.001) を認めたが, 正常対照群では相関を認めなかった。脳梗塞患者においては, 認知機能障害と脳血流低下とは関連があることが示唆された.
  • 自験13例の分析と文献例の検討
    門田 紘輝, 朝倉 哲彦, 中村 克己, 笠毛 静也, 平原 一穂
    1990 年 12 巻 3 号 p. 293-300
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳血管撮影法の普及により胎生期遺残血管の報告は稀ならずみられる.しかしながら本邦におけるまとまった症例の報告は少ない.私共は内頚動脈と脳底動脈との間の遺残血管 (persistent carotid-basilar anastomosis) 13例を経験した.そこで, これら13例の臨床像について検討するとともに文献的検討を加えた.
    症例内訳はprimitive trigeminal artery (PTA) 9例, primitive hypoglossal artery (PHA) 4例であり, いずれもincidentalに発見されたものであるが, 原疾患は脳動脈瘤7例9個, 頭蓋内腫瘍3例, 脳梗塞3例 (内1例は動脈瘤も併存), クモ膜嚢胞1例であった.13例中, 原疾患に対して9例手術を施行したが, 1例は術後テント上下に多発性脳出血を来たした.本例を中心に遺残血管を有する例の術中, 術後管理の留意点についても述べた.
    内頚動脈・脳底動脈間の胎生期血管遺残であるPTA9例, PHA4例の自験13例の臨床的特徴を分析するとともに文献的考察を加えて報告した.
    本血管は併走する脳神経障害並びに高率に動脈瘤と併存することなどで臨床的に意義があるが, その他に内頚動脈から後頭蓋窩潅流血管が分岐しているために頚部内頚動脈の狭窄あるいは閉塞時にテント上下の重篤な症状を呈することがあるので留意しなくてはならない.
  • 上田 幹也, 佐藤 宏之, 井上 慶俊, 大川原 修二, 武田 聡
    1990 年 12 巻 3 号 p. 301-306
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    症例は51歳男性.既往歴として中学生の頃より全身の皮下腫瘤・皮膚色素沈着に気がついていた.くも膜下出血で発症し, 脳血管撮影では右前大脳動脈末梢部・左頭蓋外椎骨動脈 (V3 segment) に嚢状動脈瘤を認め, くも膜下出血の原因として右前大脳動脈末梢部動脈瘤破裂と診断し根治術を施行した.同時に試験切除した皮下腫瘤は病理組織学的にはneurofibromaで, 浅側頭動脈には内膜・外膜の繊維性肥厚, 内弾性板の断裂を認めた.neurofibromatosisに脳動脈瘤を合併した13例の臨床的特徴・病因について考察した.
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