初老期・老年期うつ状態と潜在性脳梗塞 (以下SCI)の関係についての検討をMRIを用いて行った.うつ状態の診断はDSM-III-RのMajor Depressionの診断基準を用いた.卒中発作の既往, 局所神経症状を持つ患者は対象から除外した.初老期発症患者の約半数, 老年期発症患者の大多数はSCIを有し, 器質性のうつ状態だと思われた.SCIに伴ううつ状態は将来, 脳卒中発作を起こす危険が高いため, pre-stroke depressionと命名した.この, pre-stroke depressionの時期に抗血小板療法等の脳血管障害に対する治療を開始することは, 脳卒中の予防, 早期治療という意味で重要だと思われた.
1.初老期発症うつ状態患者の約半数, 老年期発症うつ状態患者の大多数は潜在性脳梗塞を有し, 器質性のうつ状態である可能性が示唆された.
2.初老期以降に初発したうつ状態は, 脳卒中の警告症状, 初発症状である可能性が高いため, その点を考慮に入れて, 治療, 精査を進めることが重要だと考えた.潜在性脳梗塞の存在は, 脳卒中発作の警告症状であり, うつ状態にあるものでは潜在性脳梗塞に伴うものが多く, この場合は脳卒中発作が起こる可能性が高いため, これをpre-stroke depressionと命名した.このpre-stroke depressionを呈した時期に, 抗血小板療法等の脳血管障害に対する治療を開始することは, 脳卒中の早期予防, 早期治療という点から考えると非常に重要だと考えた.
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