脳卒中
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15 巻, 5 号
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  • -生存率, 脳浮腫および脳代謝-
    柏木 史彦, 五十嵐 博中, 片山 泰朗, 赫 彰郎
    1993 年 15 巻 5 号 p. 333-339
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    新しいdihydropyridine系のカルシウム拮抗薬であるSM-6586 (SM) を高血圧自然発症ラット (SHR) を使用した両側総頸動脈結紮 (BLCL) による脳虚血モデルに投与し, 生存率, 脳浮腫および脳代謝諸量について検討した.さらに, 中大脳動脈 (MCA) 閉塞による局所脳虚血モデルにて脳含水量およびMRIを使用してT1緩和時間を測定した.BLCL後の生存率の検討では, SMの30μg/kg投与群では対照群に比べて高い生存率を示し, 脳含水量では30μg/kg投与群で対照群に比べて有意に低値を示した.脳代謝諸量の検討ではSM投与群はATPの減少に対して改善効果をみなかったがlactateおよびL/P比の改善に効果を認めた.MCA閉塞モデルでの検討ではSM投与群にて脳含水量の低下およびT1緩和時間の短縮が認められた.SMはSHRの脳虚血後の生存率を改善し, 虚血後の脳浮腫および脳代謝障害を軽減することが示唆された.
  • 島田 恵, 小松本 悟, 奈良 昌治, 後藤 文男
    1993 年 15 巻 5 号 p. 340-345
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    出血性脳血管障害によって引き起こされる脳浮腫に関連して血漿ANP動態を検討した.脳出血14例を対象とし, 脳浮腫群 (N=7) と非脳浮腫群 (N=7) の2群で検討した.脳浮腫群の血漿ANP値は, 第1病日に123.8±28.4pg/mlと高値を示し, 以後漸減, 111.4±23.0 (第3病日), 101±21.6 (第5病日), 106.3±25.7 (第7病日) を示した.更に第14病日には77.2±17.6pg/mlへと有意に低下した (第1, 3, 5病日に比較しp<0.05).一方, 非脳浮腫群では全経過を通じて血漿ANP値は有意な変動を示さなかった.以上の結果より, 出血性脳血管障害の急性期に脳浮腫により頭蓋内圧亢進を来たした場合, ANPの分泌が促進されると考えられ, ANPが頭蓋内圧の変化に対して何らかの重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
  • とくに放射線学的所見との関連について
    渡辺 正樹, 氏平 伸子, 橋詰 良夫, 吉田 洋二
    1993 年 15 巻 5 号 p. 346-352
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    正常対照群 (C群) 58例, 高血圧群 (HT群) 43例, およびBinswanger型脳血管性痴呆群 (VD群) 17例の合計118剖検例の大脳白質細動脈外膜肥厚度 (AP) を検討し, 中大脳動脈狭窄度 (AS) と比較した.C群においてAPは加齢とともに増加したが, 特に80歳以降で著明であった.それに比してASの増加は80歳以降ゆるやかになった.VD群のASはHT群と同程度であったが, APは有意にHT群より増加していた.45例で施行された生前CTにおけるleukoaraiosis (LA) の程度とASは相関しなかったが, APとは有意な正相関が認められた.以上より大脳白質細動脈外膜肥厚はBinswanger型脳血管性痴呆の発症やLAの進行に大きな役割を果たしており, 大脳白質の虚血性変化と強い関連があると考えられた.
  • 血圧24時間測定よりみたleukoaraiosisとラクナ梗塞の比較
    山本 康正, 秋口 一郎, 大岩 海陽, 里井 斉, 木村 淳
    1993 年 15 巻 5 号 p. 353-359
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    leukoaraiosisと基底核錐域にラクナ梗塞を有する症例について, その髄質動脈領域病変と大脳基底核穿通枝領域病変の程度と血圧日内変動異常との関係を解析した.MRIによりleukoaraiosis, 基底核領域のラクナ梗塞あるいは両者が認められた83例について, 血圧24時間測定を30分間隔に行い, 24時間血圧平均値および短期変動性について検討した.個々の例でleukoaraiosisと基底核ラクナ梗塞の程度を0~3の4段階に分類すると, leukoaraiosisの程度は年齢および痴呆の程度に相関した.24時間血圧平均値は, leukoaraiosisではその程度と相関し上昇したが, ラクナ梗塞では最も程度の強い群でむしろ低下する傾向があった.leukoaraiosisでは短期変動性はその程度に応じて上昇したが, ラクナ梗塞では, 短期変動性との関連はみられなかった.leukoaraiosisの発症・進展には, 加齢, 高血圧, 短期間内の不規則な血圧変動が関与しその進展とともに痴呆の重症度が進行することが推察された.
  • 高橋 務, 津田 能康, 泉 佳成, 大川 元臣, 松尾 裕英
    1993 年 15 巻 5 号 p. 360-369
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    無症候性脳梗塞例 (n=46) での血液レオロジー因子の変化と加齢, 脳萎縮との相関を検討した.血液粘度, 血漿フィブリノゲン (Fg) 濃度は無症候性脳梗塞例 (n=36) では慢性期脳血栓症例 (n=25) より低値 (p<0.05) を示し, 無症候性脳梗塞例の中でもwhite matter lesions (WML) やperiventricular hyperintensity (PVH) の病変がより進行した例はそうでない例に比しFgの高値 (305対252,311対265;mg/dl, p<0.01とp<0.05) を示した.無症候性脳梗塞病変と加齢, 脳萎縮に関しては, WML数は加齢, 脳萎縮程度, PVH gradeと正相関 (各々p<0.01~0.05) し, PVH gradeは症候性穿通枝脳血栓症例 (n=16) での無症候性病変を合わせて検討すると加齢, 脳萎縮程度, WML数と正相関 (p<0.01~0.05) した.以上, 無症候性脳梗塞病変進展に対する血漿フィブリノゲンの関与と無症候性脳梗塞病変の進展が加齢, 脳萎縮の進行により強く影響を受けるものであることが示唆された.
  • MRIによる検討
    福山 秀直, 生天目 英比古, 中村 和雄, 木村 淳
    1993 年 15 巻 5 号 p. 370-373
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    われわれは, MRIを用いて脳血栓症急性期の治療にオザグレルナトリウムを用いた場合と用いなかった場合で, 出血性梗塞の頻度に違いがあるか否かを検討した。T1強調画像での高信号域とT2強調画像での低信号城の出現頻度は治療の有無にかかわらず変化がなかった。したがって, 急性期脳血栓症におけるオザグレルナトリウム療法は出血性梗塞の頻度を増加させる可能性は少ない.
  • 保存的治療の限界と減圧術の適応について
    木村 知一郎, 上田 孝, 脇坂 信一郎
    1993 年 15 巻 5 号 p. 374-379
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    最近, 我々は3例の小脳梗塞を経験し, 減圧術により良好な結果を得た.症例1と3は59歳と79歳の男性で, ともに発症後5日目にJCS3桁まで意識レベルが低下し, 脳ヘルニアが進行しつつあったが, 側脳室ドレナージにより救命できた.症例2は61歳男性で, 神経学的症状の進行やCTスキャンでの増悪所見を認め, 拡大後頭下開頭による減圧術を行い, 短期間で独歩退院した.小脳梗塞は, 初期に典型的な巣症状や重篤さを欠くことが多く, 確定診断が得にくいが, 適切な脳外科的治療により, 生命予後のみならず機能予後をも改善しうるので, 意識レベルをはじめとする神経学的所見やCTスキャン等の画像の変化を注意深く観察することが必要である.
    最近, 我々は3例の小脳梗塞を経験し, 外科的治療を行ったので報告した.3例とも初期には典型的な巣症状や重篤さを欠いたが, 次第に神経学的症状とCT所見が増悪したため, 2例に側室ドレナージを, 1例に開頭による減圧術を行い, いずれも軽快せしめた.
  • 北川 美恵, 杉原 浩, 米山 公啓, 清水 亨, 加藤 功
    1993 年 15 巻 5 号 p. 380-385
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 男性.冠動脈造影施行中に脳梗塞を発症.神経学的に顔面を含む右片麻痺があり, 正面視にて右眼の外転位, 上方注視に比べ下方注視に強い障害, また下方注視しようとする際に陥没眼振を認めた.しかし人形の目現象は正常であった.両側冷水同時注入のカロリックテストは仰臥位で上向きの眼振が解発されたが腹臥位では振子様眼振を認めた.ベル現象は正常であった.頭部MRI上, 両側のrostral interstitial nucleus of MLF (riMLF) を含む中脳傍正中部に梗塞巣を認めた.垂直性眼球運動障害の責任病巣は両側のriMLFが考えられ, 上方注視より下方注視の障害が強かったことより, riMLFの背外側に比べ尾内側の障害が強いことが推測された.脳梗塞による垂直性眼球運動障害の神経耳科学的検査を検討した報告は少なく貴重な症例と考え報告した.
  • 発症機序に関する考察
    鶴屋 和彦, 大星 博明, 井林 雪郎, 佐渡島 省三, 藤島 正敏
    1993 年 15 巻 5 号 p. 386-391
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    症例は56歳, 男性.突然の左手指, 両側口周囲のしびれ感を主訴として入院.10年前にも両側口周囲に同様のしびれ感が出現している.頭部CTおよびMRIで右橋被蓋部に微小な出血巣を認め, 同病変による手掌・両側口症候群と診断した.本症候群の発症機序として, 患側の内側毛帯と三叉神経毛帯腹側路に加えて, 同側の三叉神経主知覚核から対側の三叉神経毛帯腹側路に入る線維が障害されて, 両側口周囲に感覚異常をきたすと考えた.また, 同部の左腹側に陳旧性小出血の所見が認められ, 10年前の発作の責任病巣と思われた.
  • 星野 晴彦, 山形 真吾, 稲福 徹也, 高木 誠, 高木 康行
    1993 年 15 巻 5 号 p. 392-398
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    右内頸動脈起始部高度狭窄による脳梗塞を呈した46歳男性を報告した.合併症として高血圧と糖尿病があり, 左不全麻痺にて発症, 入院となった.CTから右中大脳動脈と後大脳動脈の境界領域の脳梗塞であり, 内頸動脈起始部高度狭窄による血流不全と診断した.第3病日に神経症状の急激な増悪があり, 左完全麻痺となった.第4病日のCTで, 新たに尾状核頭部・被殼全域と放線冠のstriatocapsular infarctionが診断された.第7病日の血管撮影にて中大脳動脈trifurcation部の閉塞が描出され, さらに約1ヵ月後の血管撮影で中大脳動脈閉塞の再開通が確認された.以上より, 第3病日の再発作の病態は, 内頸動脈起始部の高度狭窄からのartery to artery embolismと診断した.約3ヵ月後に, 内頸動脈内膜摘除術が施行された.本症例は, 内頸動脈起始部高度狭窄における脳梗塞発症の成因としてartery to artery embolismの重要性を示唆するとともに, 内膜摘除術の適応を考える上で貴重な症例と考えられた.
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