脳卒中
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16 巻, 1 号
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  • 小林 祥泰, 小出 博己, 山下 一也, 卜蔵 浩和, 山口 修平
    1994 年 16 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    脳ドックを受診した脳疾患の既往のない589名にアンケートによる予後調査を行い, 返事の得られた458名 (平均59歳) を対象に解析した.潜在性脳梗塞様病変の頻度は14.5%であった.脳卒中発症は脳ドックから2.5ケ月から3年の間に7例みられ, 内訳は脳梗塞6例, 外側型脳出血1例であった.脳卒中死亡例はみられなかった.潜在性脳梗塞様病変を有する65例からは6.2%, 病変なしの393例からは0.76%と潜在性脳病変を有する群で有意に高率であった.脳卒中の危険因子の比較では高血圧既往が前者で有意に高率であり, 脳卒中家族歴も6/7にみられた.受診時の脳血流も前者で低下傾向を認めた.MRI上の潜在性脳梗塞様病変を有する群はそれを有さない群に比して脳卒中のhigh risk groupであることが示唆された.
  • その責任病巣のMRIによる検討
    斉藤 斉, 丹羽 潔, 篠原 幸人
    1994 年 16 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    視床の脳血管障害によりpure sensory stroke (PSS) を呈した患者6例のMRI所見について検討した.対象はMRI上, 視床にのみ小梗塞が認められ, 臨床症候よりPSSと診断した脳梗塞患者6例 (男性5例, 女性1例).年齢は56歳から77歳.MRIは改善の認められた1例を除いて慢性期に施行したものを使用した.各患者のMRI施行時の感覚障害の分布は顔面を含む一側半身障害が3例, 顔面を含まない一側半身障害が2例および一側顔面と上肢の障害が1例であった.これら患者6例のMRI上の小梗塞部位について解剖学的水平横断面図を用いて, その位置を推定した.その結果, 後外側腹側 (VPL) 核に病巣を認めたものが2例, 後外側 (LP) 核が3例および視床枕とVPL核の両方が1例と考えられた.従来責任病巣と考えられていたVPL核とともに, LP核あるいは視床枕も視床性PSSの責任病巣となりうる可能性が考えられ, その発現機序について若干の考察を行った.
  • 入江 克実, 井林 雪郎, 藤井 健一郎, 佐渡島 省三, 藤島 正敏
    1994 年 16 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    多発梗塞性痴呆患者において, 脳の低灌流に伴う脳酸素摂取率の上昇 (misery perfusion) と, 髄液乳酸濃度の上昇で代表される嫌気性解糖との関連について検討した。
    対象は慢性期の多発梗塞性痴呆群 (multi-infarct dementia, MID群) 11例と年齢・性を一致させた穿通枝梗塞非痴呆群 (lacunar brain infarction, LBI群) 6例である.MID群はさらに長谷川式簡易知的機能診査スヶールで22点以上のmild MID群5例 (平均25.6点) と, 2L5点以下のsevere MID群6例 (平均12.3点) に分けて検討した.ポジトロンCTによる脳血流量 (CBF), 脳酸素摂取率 (OEF), 脳酸素消費量 (CMRO2) および髄液乳酸濃度を測定した.基底核断面の大脳半球平均CBFは, LBI群の28.4ml/100cc/minから, mild MID群24.2ml/100cc/min, severe MID群で22.9ml/100cc/minと痴呆の重症度とともに有意に低下 (p<0.05) し, 逆にOEFは0.388, 0.392, 0.433と上昇した.一方, 髄液乳酸濃度はmild MID群の1.54mmol/lに対し, severeMID群では1.82mmol/lと有意に増加していた (p<0.05).MID群では, 髄液乳酸濃度はCBFと負の相関を (p<0.01), OEFとは正の相関を示し (p<0.05), misery perfusionと嫌気性解糖との関連性が示された.
    髄液乳酸濃度が増加した多発梗塞性痴呆患者では, CBFの低下をOEFの上昇では十分に代償できていない状態と考えられた.
  • 72kd heat-shock protein 発現との関連性
    道下 久正, 松山 知弘, 杉田 實
    1994 年 16 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    脳虚血病態における神経細胞内活性酸素消去系の動態解明の目的で, 砂ネズミの一過性前脳虚血モデルを用い, 虚血負荷後の海馬copper-zinc superoxide dismutase (CuZnSOD) と72kd heat-shock protein (HSP72) の変動を比較検討した.虚血負荷としては遅発性神経細胞死を起こす5分間虚血負荷と非致死的であり虚血耐性を誘導する2分間虚血負荷を選定し, CuZnSODとHSP72の動態をin situ hybridization histochemistryと免疫組織化学を用い細胞レベルで検討した.CA1領域でのCuZnSODは, 5分虚血負荷後2日目までに一過性のmRNA発現の増強と蛋白染色性の低下を示した.一方HSP72も5分虚血負荷後はCuZnSODと同様にmRNAと蛋白の解離を認めた.2分虚血負荷後のCA1領域では, HSP72mRNA, 蛋白ともその出現を認めたが, 両者間には約1日のずれが観察された.しかし2分虚血ではCuZnSODのmRNA, 蛋白ともCA1領域では有意な変動を示さなかった.2分虚血の前負荷後5分虚血を施行した群ではCuZnSODとHSP72とも新たな5分虚血負荷前後での変動は少なく, 細胞の負荷応答としては非致死的負荷に対する反応と類似していた.以上より致死的負荷ではCuZnSODをはじめとする内在性活性酸素消去系はその活性が減弱し, 非致死的負荷後は保存されていることが示唆された.従って, CuZnSODは虚血負荷後細胞死に至らしめない程度の酸素ストレスに対してはその作用を示すことが示唆された.
  • 秋山 克徳, 篠原 幸人, 大須賀 等, 大須賀 幸子, 松本 雅彦
    1994 年 16 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    脳虚血に伴う神経細胞障害と脳局所乳酸acidosisの関係を知る目的で, 細胞外乳酸acidosis時における培養神経細胞の変化を検討した.Wistar rat胎児の大脳皮質細胞を単離し, 4日間培養した後, 乳酸を用いてpHを11段階に調整した培地に置換し, それぞれの培地で3, 6, 24, 72時間培養した.更にこれらの細胞の細胞内ミトコンドリア機能 (MTT assayにより検討), 蛋白量 (SRB assayにより検討), 培養神経細胞の形態などの時間的変化を各pHにおいて観察した.ミトコンドリア機能は, いずれの培養時間でもpH5.75以下で急速な低下を認めた.蛋白量はこの培養時間内では, いずれの群でも有意な変化は認めなかった.光学顕微鏡による細胞の形態学的変化の観察では, 低pH培地で培養したものは細胞体の腫脹傾向を認めた.これらの結果より, 細胞周囲の乳酸acidosisは細胞内ミトコンドリア機能の低下をきたし, 細胞障害を惹起する原因の一つになることが示唆された.
  • Sumatriptan静注法による検討
    浅野 賀雄, 島津 邦男, 金 浩澤, 古屋 大典, 濱口 勝彦
    1994 年 16 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    サル14頭を用い, 電磁流量計にて内頸, 椎骨, 外頸, 大腿動脈血流を血圧・脈拍・PeCO2とともに連続測定した.脳代謝は脳酸素消費量を, 脳血管反応性はAutoregulation Index (AI) とChemical Vasomotor Index (CVI) を指標とした.Sumatriptan 30,100,300μg/kg/3min静注前後で各血流と脳代謝を測定し, 次いで10μg/kg/min持続静注下に脳血管反応性を投与前と比較した。 (1) 血圧は100,300μg/kg/3minで有意に低下 (p<0.05) したが, 脈拍は有意な変化を示さなかった. (2) 内頸動脈血流は各用量で, 大腿動脈血流は100μg/kg/3minで一過性に有意な減少 (p<0.05) を示し, 椎骨および外頸動脈血流は変化を示さなかった. (3) 脳酸素消費量は有意な変化を認めなかった. (4) 内頸動脈系における血液注入負荷時のAIは投与後有意に低下 (p<0.05) し, 過換気負荷時のCVIは低下傾向を示した.以上より, sumatriptanは内頸動脈系に対して収縮性に作用し, 脳循環自動調節に良好な影響を及ぼすことが示唆された.
  • 栗山 長門, 杉本 英造, 高梨 芳彰, 中島 健二, 岸川 雄介
    1994 年 16 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    左脳梁膨大部の脳梗塞後に超皮質性感覚失語を来した症例を報告した.81歳の右利き男性.神経学的には右不全片麻痺, 同側の知覚低下, 右同名半盲を認め, 神経心理学的には語健忘, 保続, 錯語, 失読一失書, 失算, 構成失行, 観念失行をともなう超皮質性感覚失語を認めた.頭部CTでは左脳梁膨大部に梗塞を, 一方MRIでは同部と左橋部および両側放線冠にも小梗塞巣を認めた.SPECT, 1H-MRSなどの脳機能面像では形態学的に同定されたより, もっと広範に左大脳半球の機能低下が示された.脳血管造影では, 左内頸動脈の狭窄はあったが, 両側とも閉塞は認めなかった.以上より左大脳半球への慢性的な血流低下を基礎に, 左脳梁膨大部に梗塞を来したことが左大脳半球の機能障害および超皮質性感覚失語を発症させたものと推察された.神経高次機能障害を形態学的に説明出来ない例では, 機能画像を用いた評価が有用であると考える.
  • 福原 正代, 田川 皓一, 飯野 耕三
    1994 年 16 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    プロソディーの障害は失語症との関連で左半球損傷, 感情言語の障害との関連で右半球損傷として論じられている.右中大脳動脈領域の梗塞に伴うアプロソディアの症例を報告した.右利きの50歳の女性で, 左片麻痺で発症した.話し方に抑揚がなく, 中国人のようであると指摘された.自発話は流暢であるが, 抑揚に障害を認め, 助詞に省略が多い。語尾や文末に助詞「ね」が多用され, その音が上がる傾向にあった.自発的なプロソディーに障害はみるが, 言語やプロソディーの聴覚的理解は良好で, プロソディーを除くと復唱や呼称に問題はなかった.運動性アプロソディアと診断した.なお, 読字では文節の区切りは正常, 助詞の省略もなかった.書字は正常であった.画像診断により, 右中大脳動脈領域で穿通枝を含み前頭葉から頭頂葉, 側頭葉に及ぶ梗塞を認めた.本例の責任病巣は, Rossによる前方病変, すなわち左半球のBroca領域に相当する右半球領域と考えた.
  • 近藤 進, 田中 真, 妹尾 陽子, 平井 俊策
    1994 年 16 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    左下肢のmonoballismで発症し, その後左片麻痺の出現により不随意運動が一時的に消失した1例を報告した.症例は71歳の男性で突発した左下肢の不随意運動を主訴に来院.神経学的には左下肢のmonoballism以外に異常なく, これはsulpirideの投与により軽減した.経過中軽度の左片麻痺の出現によりmonoballismは一時的に消失したが, 麻痺の回復とともに左下肢の遠位部にchorea様の軽微な不随意運動が出現した.X線CTでは明らかな異常は見出せなかったが, MRIにて右視床下核と視床腹外側核に接した右内包後脚に限局性の低信号域を認め, 前者がmonoballismの, 後者が左片麻痺の責任病巣と考えられた。不随意運動の一時的消失は, 運動麻痺により隠された可能性の他に麻痺を起こした病巣がmonoballismの発症機構を遮断し, 抑制的に働いた可能性も考えられた.
  • 根来 清, 柿沼 進, 森松 光紀
    1994 年 16 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    糖尿病加療中の70歳男.1993年5月15日朝から嗜眠傾向が出現し, 口数が極端に減り応答が不明瞭となったため同年5月20日当科を受診した.一般理学所見, 末梢血・一般生化学・血糖・血中NH3に異常なかった.神経学的に, 新たな脳神経障害, 四肢運動感覚障害, 小脳症状はなかった.無気力様で発語が少なく無為, 注意力低下を認めた.場所・時間の失見当識, 健忘を認めたが, 失語・失行・失認はなかった.頭部MRIで左視床, 右内包前脚部の陳旧性梗塞に加えて新しく左内包膝部梗塞を認めた.嗜眠傾向は2週間で, 無為・注意力低下・健忘症は約1ヵ月でほぼ回復した。左内包膝部梗塞による急性一過性の嗜眠, 無為, 注意力低下, 健忘症と考えられた.
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