脳卒中
Online ISSN : 1883-1923
Print ISSN : 0912-0726
ISSN-L : 0912-0726
16 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 頭部CT所見の検討
    川畑 信也
    1994 年 16 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者に発症した脳出血17例19部位の頭部CT所見を検討した.その特徴として, (1) 大血腫を形成することが多い.症例によっては一側半球の大半を占めることがある, (2) 急性期に血腫が示すX線吸収値は高血圧性脳出血に比し低値を示すことが多い, (3) 血腫の内部が均一の高吸収域を示すことは少なく, 斑状やまだら状, 棍棒状といった不規則で濃淡の目立つ形態を示す, 複数の血腫が融合したかの様にみえることもある, (4) 血腫の辺縁も不整を示す場合が多く, 急性期にすでに脳実質との境界が不鮮明となる場合がある.これらの特徴は, 慢性的な貧血による低血色素濃度を反映した血腫X線吸収値の低下, 発症時に経口投与されていた抗凝固薬や抗血小板薬と透析回路内に使用されていたヘパリンの作用によって止血機転が十分働かず, 血腫が脳実質内をあらゆる方向に緩徐に浸潤・増大した結果を反映したものと考えられる。
  • 門田 紘輝, 新納 正毅, 川西 昭人, 朝倉 哲彦
    1994 年 16 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    虚血脳モデルラットにおいて皮質梗塞巣の再現性を妨げている因子の一つに側副血行路の存在が挙げられる.私共は手術用顕微鏡下にラットの中大脳動脈走行を観察し, 得られた結果から再現性の高い梗塞モデル作成法について検討した.100匹のS-Dラットの中大脳動脈について, 起始部から前頭枝と頭頂枝に分岐する迄の走行について観察した.その結果, 中大脳動脈のearly bifurcation 8例, fenestration 4例, 前頭枝の分岐の見られないもの1例の計13例に走行のvariationが見られた.また, 中大脳動脈前頭枝を介する前大脳動脈からの側副血行が梗塞巣の再現性に大きな影響を与えることを考慮し, 起始部から前頭枝分岐部に至るまでを焼灼閉塞せしめた35例においては, TTC染色で梗塞巣を評価した結果, 33例94%において高度の皮質梗塞巣が得られた.皮質梗塞の高い再現性を得るには, 中大脳動脈近位部から前頭枝分岐直後までの閉塞が必要である.
  • 吉永 真也, 田中 彰, 木村 雅人, 朝長 正道
    1994 年 16 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    閉塞性脳血管障害症例について, 安静時及びAcetazolamide負荷後の脳血流量と脳血管造影における脳主幹動脈閉塞ないし高度狭窄との関係をretrospectiveに検討し, 脳血管造影の適応について脳循環動態の面から検討した.対象はminor stroke, RIND, TIAにて発症した慢性期閉塞性脳血管障害患者20例で, 脳主幹動脈閉塞群13例と非閉塞群7例に分けXe-CTscanを利用し, 脳血流量を測定した.負荷後の脳血流量の増加は非閉塞群の半球で37.7±11.2%, 中大脳動脈領域で34.0±23.1%で両者とも統計学的に有意であった.一方閉塞群では, 患側半球で16.0±18.8%, 健側半球で23.8±13.5%, 中大脳動脈領域の患側で10.0±21.7%, 健側でも, 18.6±10.9%にとどまった.特に患側中大脳動脈領域では30%以上は1例であった.以上よりAcetazolamide負荷による中大脳動脈領域の脳血流量の増加率が30%以下の症例は, 主幹動脈閉塞が疑われ脳血管造影を行うべきである.
  • 南里 和紀, 滝沢 俊也, 藤田 仁, 小川 さおり, 篠原 幸人
    1994 年 16 巻 2 号 p. 102-108
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    脳虚血時に増加する線条体のグルタミン酸放出に及ぼすnitric oxide (NO) 合成酵素阻害薬の作用について検討した.Wistar ratの両側線条体にmicrodialysis probeを挿入し, 一側の線条体にはNO合成酵素阻害薬であるN-ω-nitro-L-arginine100μMを局所灌流投与し, 対側には対照のためにリンゲル液のみを灌流した.このratに14分間の一過性前脳虚血を負荷し, グルタミン酸放出量の左右差を比較した.NO合成酵素阻害薬投与側の細胞外グルタミン酸濃度は対照側に比し, 虚血時35.6%, 再灌流時59.0%の有意な高値を示した.更に, このNO合成酵素阻害薬によるグルタミン酸濃度の高値は, L-arginine500μMを同時に局所灌流投与することにより完全に抑制された.以上より, 脳局所でのNOは虚血時および再灌流時のグルタミン酸過剰放出を抑制し, グルタミン酸放出量の調節の観点からは虚血神経細胞に対して保護的に働く可能性が示唆された.
  • 脳血管造影検査と冠動脈造影検査を施行した17症例の検討
    上原 敏志, 田淵 正康, 林 孝俊, 銕 寛之
    1994 年 16 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    脳動脈と冠動脈における動脈硬化性病変の関連性を知るために, 当センターで脳血管造影検査と冠動脈造影検査の両方を施行した17症例についてretrospective studyを行った.
    以下の結果が得られた. (1) 全例が男性だった. (2) 危険因子として喫煙, 高脂血症および高血圧が高率に認められた. (3) 14例では冠動脈疾患が先行していた. (4) 頭蓋外脳動脈 (頸部内頸動脈および椎骨動脈) の狭窄度と冠動脈狭窄度との問に相関がみられた (Spearman rank correlation;p<0.05). (5) 一方, 頭蓋内脳動脈 (頭蓋内内頸動脈, 中大脳動脈M1部, 後大脳動脈, 脳底動脈) の狭窄度と冠動脈狭窄度との間に相関はみられなかった.
    この結果から頭蓋外脳動脈の動脈硬化のメカニズムは冠動脈硬化のそれと関連性が高く, 性別・喫煙・脂質代謝・血圧などの因子が関与している可能性が示唆された.
  • 新畑 豊, 渡辺 正樹, 茂木 禧昌, 古瀬 和寛, 高橋 昭
    1994 年 16 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    多発脳梗塞患者69名のうち, 臨床的に活動過剰型せん妄を呈する32名 (D群) とせん妄のない対照群37名 (C群) の1.5T頭部MR画像について, 橋, 視床, 大脳基底核, 放線冠の梗塞像, 脳室周囲高信号域 (PVH), 脳室拡大度を比較し, その特徴を検討した.その結果, 基底核, 放線冠の梗塞数には両群に差はみられないが, D群は視床に梗塞が広く分布し, 脳室周囲高信号域 (PVH) が広範であり, 側脳室前角部, 第3脳室拡大が高度である事が特徴といえた.多発脳梗塞患者の頭部MRI読影にあたり, 高度のPVH, および視床梗塞がみられる場合, せん妄発現の可能性が示唆されるものと考えられた.
  • 福本 義弘, 大星 博明, 井林 雪郎, 入江 克実, 藤島 正敏
    1994 年 16 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    プラスミノーゲン異常症を合併し, 特発性頭蓋内内頸動脈解離により脳梗塞を呈した1例を経験した.症例は41歳女性, 右上肢麻痺および左眼の視野狭窄で発症し, 左中大脳動脈領域の脳梗塞と左網膜動脈分枝閉塞を認めた.脳血管造影で左内頸動脈cavernous portionにstring signを認め, 頭蓋内内頸動脈解離と診断した.抗凝固療法により第17病日には一旦再開通を認めたが, 第27病日に再閉塞をきたし, MRIでpetrosal-cavernous portionに2種類の内腔を描出した.10カ月後に脳梗塞を再発したため, 外科的バイパス手術の適応を検討する目的でポジトロンCTを施行したが, 脳血流・代謝ともに低下するmatched hypoperfusionの所見であった.左側頭動脈前額枝の生検では, 基底膜の多層化, 内膜の肥厚, 無構造物の沈着, コラーゲンの減少など全身性の血管病変を示唆する所見が認められ, 外科的治療は見送った.また, 家族性プラスミノーゲン異常症が判明し, 動脈解離後の血栓形成助長に関与した可能性が考えられた.
  • 高松 和弘, 大田 泰正, 佐藤 昇樹, 佐能 昭, 村上 裕二
    1994 年 16 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    我々は2回の反復する皮質下出血を認め, 抗カルジオリピン抗体陽性の男性例を経験した.本例は抗カルジオリピンIgG抗体が反復検査で陽性であったが動静脈血栓症, 血小板減少症といった臨床症状や全身性エリテマトーデス (SLE)などの基礎疾患は認められなかった.本例の反復性皮質下出血の原因を検索したが高血圧, 動脈瘤, 動静脈奇形, 出血性素因, 原発性ないし転移性腫瘍, 静脈血栓症, cyatatin Cの沈着を伴うcerebr alamyloid angioathy等の従来指摘されているものは否定的であった.抗カルジオリピン抗体陽性例では動静脈血栓症, 習慣性流産および血小板減少症を高率に認めるが出血症状を認めることは稀とされているが本例の反復性皮質下出血の原因として抗カルジオリピン抗体が関与している可能性を指摘した.
  • 山川 弘保, 郭 泰彦, 安藤 隆, 坂井 昇, 山田 弘
    1994 年 16 巻 2 号 p. 137-145
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    両側視床内側部梗塞の3例を経験し, このうち2例は中脳梗塞を合併していた.全例で発症直後から著明な意識レベルの低下を呈したが, 数日の経過で回復した.その後嗜眠傾向, 活動性の低下, recent memory disturbanceが残存し, 中脳梗塞を合併した症例では両眼の上下転もしくは上転障害を認めた.3症例における梗塞発症の原因として, 頸部の回転に伴う環椎近傍での椎骨動脈の閉塞, 脳底動脈のdissectionによる塞栓形成, 糖尿病に起因する穿通枝の血栓性閉塞が推察された.両側視床内側部梗塞の場合, 比較的生命予後は良いものの精神障害が持続するため日常生活での制限が多い.視床内側部の血管支配と臨床的特徴について文献的考察を加え報告した.
  • 渡邉 保裕, 礒江 健二, 田中 弘道, 斉藤 潤, 深田 倍行
    1994 年 16 巻 2 号 p. 146-150
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    片側性の運動失調と同側の感覚障害を呈した橋梗塞の1症例を報告した.MRIにて症状出現側と反対側の橋上部, 底部と被蓋の境界内側に小梗塞が認められた.責任血管は, 橋傍正中枝と考えられた.対側の運動失調は主に交叉前の橋核小脳線維さらには橋被蓋網様核の障害によると考えられた.感覚障害は内側毛帯および腹側三叉神経視床路の障害によるものと推察した.
  • 丹羽 潔, 北川 泰久, 篠原 伸顕, 吉利 味江子, 篠原 幸人
    1994 年 16 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    抗リン脂質抗体と脳血栓症の関係はよく知られているが, 脳出血との関係は十分知られていない.本稿は脳梗塞発症後に脳出血を併発した抗リン脂質抗体陽性SLEの2例の報告である.症例1は42歳・男性でSLE発症3年後に脳梗塞発作を, その1カ月後には視床出血を発症した.症例2は37歳・女性でSLE発症5年および8年後に2回の脳梗塞発作を, 9年後には視床出血を発症し脳室内穿破を併い死亡した.何れもループス腎炎に伴うと思われる難治性高血圧を認めたが, 症例2では病理学的に脳内の細動脈の肥厚を認めるのみでangionecrosis, angitisなどを示唆する所見は認めなかった.本症でも脳出血を併発することがあるが, その成因は必ずしも通常の高血圧性脳出血と同一ではない可能性を強調した.
feedback
Top