脳卒中
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17 巻, 2 号
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  • 八尾 博史, 井林 雪郎, 福田 賢治, 村井 宏一郎, 藤島 正敏
    1995 年 17 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/01/25
    ジャーナル フリー
    頭痛, めまいを主訴として受診した40歳以上の外来患者連続例を対象として, 無症候性脳血管障害の頻度や特徴を検討した.70例 (男27例, 女43例, 平均年齢67歳) 中62例にCTを行い, 19例に脳梗塞と考えられる病変を認めた.6例には脳血管障害の既往があったので, 無症候性病変の頻度は21% (13/62) であった.回転性のめまい2例とうつ状態に起因する頭痛1例にビンスワンガー型脳血管性痴呆を認めた.CT上病変を有する群 (無症候群と脳血管障害既往群) には高血圧の頻度が高く (それぞれ77%と67%, 無病変群では37%), 無症候性病変を有する群 (平均年齢76歳) はCT上病変のない群 (平均年齢66歳) に比し有意に年齢が高かった.頭痛, めまい症例においても, 無症候性病変の成立に高血圧や加齢の関与が重要であることが示唆された.
  • 郡上地区でのprospective studyによる外科療法適応例発見の試み
    山川 弘保, 鷲見 靖彦, 郭 泰彦, 坂井 昇, 山田 弘
    1995 年 17 巻 2 号 p. 109-115
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    岐阜県郡上地区の住民約2万人を母集団として, 頸動脈系の虚血性脳血管障害により入院した33例中29例で頸部頸動脈分岐部における閉塞性病変の有無をhelical CT angiographyにより検索した.患者の平均年齢は71.8歳で, 臨床型はTIA11例, RIND3例, stroke19例であった.症状は運動障害30例, 構語障害8例, 失語症4例で, RINDとstrokeの症例中6例は既往歴にTIAを有していた.背景因子としては高血圧13例, 糖尿病6例, 心疾患17例, 高コレステロール血症4例があり1例で頸部のbruitを聴取した.helicalCTは短時間で簡便に施行でき病変部の描出も良好で, これにより50%以上の狭窄を有すると判定された症例はTIAとstrokeのそれぞれ3例 (6例/60歳以上人口6,589人/1年) で, 脳血管撮影所見とほぼ一致した.最終的にTIAの3例中2例 (2人/2万人/1年) が血栓内膜剥離術の適応となった.
  • 発症機序との関係において
    塩川 宰, 石束 隆男
    1995 年 17 巻 2 号 p. 116-123
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    テント上病変で説明可能で脳血管写をうけたTIA38例を, 古典的ラクナ症候群を呈する穿通枝系TIA (穿通群) と皮質症状 (単麻痺や失語等) を呈する皮質枝系TIA (皮質群) に分け, 血管病変との対比により発症機序を考察した.血管写では症状に対応する脳主幹動脈の閉塞や径50%以上の狭窄等を異常とした.皮質群12例 (32%) に対し, 穿通群は21例 (55%) と過半数を占めた.残る5例 (13%) はいずれの群にも分類困難であった.皮質群に比し穿通群では高血圧合併が多かった.血管写は穿通群の62%, 皮質群では心源性塞栓症 (CE4例) の全例が正常であるが, CE以外の皮質群の87%は異常であった.主な機序は穿通群では穿通枝のin-situ病変が, 皮質群では微小塞栓やCE, 脳血流不全が推定された。本邦例では穿通枝病変を機序とする例が多いこと, またテント上病変によるTIAを穿通枝系と皮質枝系に分類する方法は, 血管病変や機序を推定する上で有用であることが示唆された.
  • 高松 和弘, 大田 泰正, 佐藤 昇樹, 佐能 昭, 村上 裕二
    1995 年 17 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    MRIで病巣が確認された延髄外側梗塞38例 (男31例, 女7例), 年齢30~80歳 (平均58.4歳) の予後を検討した.死亡例は第29病日・MRSA肺炎, 22カ月後・胃癌, 58カ月後・乳癌再発の計3例 (8%) であった.合併症は誤嚥性肺炎4例, 消化管出血1例, 心筋梗塞4例, 閉塞性動脈硬化症 (ASO) 1例, 虚血性大腸炎1例であった.脳梗塞の再発は4例 (テント上梗塞;2例, テント下梗塞;2例) であった.嚥下障害や歩行障害は全例一過性で, 機能予後は良好であった.予後不良因子は急性期では嚥下障害に伴う合併症, 慢性期では悪性腫瘍や虚血性心疾患が示唆された.
  • 小原 克之, 小張 昌宏, 野川 茂, 渡辺 茂, 福内 靖男
    1995 年 17 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    断しいβ遮断薬カルテオロールの脳血流に及ぼす影響を亜急性期脳血管障害患者で検討した.高血圧を伴う意識障害のない亜急性期脳血管障害患者10名 (脳梗塞7, 脳出血3;平均58.2歳) を対象とし, XenonCT法で安静時およびカルテオロール10mg内服30分後の脳血流を測定した.血中でカルテオロールの吸収が確認された9例で以下の検討を行った.平均動脈血圧は, 126.1±8.1から, 120.4±8.5mmHgへと有意に低下した (p<0.05).投与前の平均脳血流量は37.8±4.3ml/100g/minで, 投与後は40.2±3.2m//100g/minであった.脳血流増加量は投与前の平均動脈血圧と有意な正の相関を示した (p<0.05).カルテオロールは投与前の血圧がある程度高ければ, 亜急性期の意識障害のない脳血管障害患者の脳血流を低下させない降圧薬である可能性が示唆された.
  • マイクロフルオロメトリーによる検討
    柳瀬 尚人, 三谷 章, 片岡 喜由
    1995 年 17 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/01/25
    ジャーナル フリー
    スナネズミ海馬スライスを用いたマイクロフルオロメトリー法により, 海馬CA1領域のin vitro虚血誘発性細胞内Ca2+濃度 ([Ca2+] i) 上昇に対するイブジラスト (3-isobutyryl-2-isopropylpyrazolo [1, 5-a] pyridine) の効果について検討した.Ca2+蛍光指示薬rhod-2で染色したスライスに低酸素・無グルコース条件 (in vitro虚血) を負荷すると, 虚血に対して脆弱性の高いCA1領域に大規模な [Ca2+] i上昇が観察されたが, 灌流液に43μMイブジラストを添加すると, この [Ca2+] i上昇の程度は有意に減少した.さらに, 低Ca2+灌流液でのin vitro虚血負荷やグルタミン酸受容体サブタイプのアゴニスト, 高濃度KCl刺激によるCA1領域の [Ca2+] i上昇に対してもイブジラストの抑制効果が観察された.以上の結果より, イブジラストはin vitro虚血誘発性 [Ca2+] i上昇に対し非特異的な抑制作用を示し, 中枢神経系の虚血障害を改善する可能性が示唆された.
  • 羽生 春夫, 中野 正剛, 阿部 晋衛, 岩本 俊彦, 高崎 優
    1995 年 17 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    虚血性脳血管障害を有し, 画像的に大脳深部白質の広範なleukoaraiosisを認めたBinswanger型脳梗塞32例 (平均年齢79.8歳) を対象に, 痴呆の発現に関与する要因について臨床放射線学的に検討した.痴呆群 (21例) では非痴呆群 (11例) に比較し, 錐体外路障害がやや多くみられ, 独歩不能例が有意に多かった.MRI上深部白質, 梗塞病変の程度に相違を認めなかったが, 深部白質を中心とした脳実質と側頭葉内側領域の萎縮が痴呆群で明らかであった.特に, 側頭葉内側部の萎縮は痴呆軽度例ですでに認められ, さらに全般的な脳萎縮が加わると痴呆症状も高度になっていくと考えられた.Binswanger型脳梗塞における痴呆の発現や進展には, ADLの低下や皮質下性大脳機能障害で示される身体的要因とともに局所的な脳萎縮の相違が密接に関与していることが示唆された.
  • 発症3年2カ月後の福岡県における調査
    佐渡島 省三, 杉森 宏, 入江 克美, 藤島 正敏
    1995 年 17 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    1989年1月より1990年12月の間に, 福岡県内の5地域, 6病院を退院した脳卒中患者1,472名のうち脳梗塞145例, 脳出血56例, くも膜下出壷5例, 計206例 (14.0%) の脳卒中患者について, 家庭訪問も含めて発作後3年2カ月の運動機能, 会話能力, 社会復帰の状況を調査し, 入院時および平均4.5カ月後の退院時のそれらと比較した.Rankin disability scaleでは入院時平均3.2から退院時2.2と有意に低下したが, その後明らかな改善は見られなかった.同様にBarthel indexでも入院時34.2から退院時22.7に軽度したものの, 調査時の点数は23.0と不変であった.高度の会話能力の障害例は調査した174例では発症時の30例, 17.2%から16例, 9.2%となったが, 脳塞栓症では35例中9例, 25.7%が意思の疎通は不可能と思われた.Zungの指標による検討では, 48.7%が “うつ” と判定されたが, 男女差や年齢間の違いは見られなかった.発症前と同じレベルへの社会復帰は36.9%に見られたが, 52.9%は不十分な状態のままであり20.4%は寝たきりなどの行動範囲が極めて制限されていた.脳卒中の軽症化が指摘されているが, 社会的機能の十分な回復には, 医療の面だけでなく社会福祉の点からも大きな努力が必要であることを指摘したい.
  • 脳動脈瘤の発生原因について
    若本 寛起, 河瀬 斌, 島本 佳憲, 戸谷 重雄
    1995 年 17 巻 2 号 p. 160-167
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    今までにもAVMに合併した脳動脈瘤の報告は多くあるが, その発生機序については全症例を一括して検討しているものが多かった.今回脳動脈瘤を合併したAVM患者23例を両者の血行力学的な位置関係から3グループに分けて, 各グループごとにその特徴を検討した結果, 若干の新しい知見が得られたので報告する.1) AVMのfeeder上に脳動脈瘤を合併している症例は高齢者が多く, 脳動脈瘤の発生に脳動脈硬化の関与が疑われた.AVMのサイズは一般のAVMに比べて特に大きいという事はなく, 他の症例よりも脳動脈瘤の破裂にて発症する危険性が高い.2) AVMに同側の内頸動脈瘤を合併している症例では, AVMがやや大型であることが多いが, 出血にて発症する事は少ない.3) AVMと血行力学的に無関係な部位に脳動脈瘤を合併している症例は, 動脈瘤の出血で発症する事は少なく, 多くが脳内出血で発症する.
  • 伊藤 泰広, 丹羽 央佳, 伊藤 信二, 廣瀬 善清, 柳 務
    1995 年 17 巻 2 号 p. 168-174
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    失語, 右片麻痺を呈し, 脳血管造影で左中大脳動脈の起始部でのアテローム血栓性脳梗塞と診断された69歳の男性に対し, 新しく共同開発したカテーテルにより上腕動脈から, 超選択的カテーテル挿入による血栓溶解療法を行った.ウロキナーゼ48万単位により再開通が認められ, 神経徴候は著明に改善した。経上腕動脈アプローチでも, マイクロカテーテルによる頭蓋内血管の超選択的血栓溶解療法は十分に可能であることが示唆された.
  • 田中 弘道, 斎藤 潤, 鍵本 比呂志, 下田 学, 小笠原 聡子
    1995 年 17 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    片麻痺から四肢麻痺に移行し, MRIにて病巣を確認した両側延髄内側梗塞を報告した.高血圧の既往のある54歳の女性が進行性左片麻痺のため入院した.初診時には左pure motor hemiplegia sparing the faceを呈した.血圧の上昇を是正した後, 右片麻痺が加わり, pure motor quadriplegiaとなった.顔面麻痺, 舌麻痺, 他覚的感覚障害を認めなかった.MRIで延髄上端の両側傍正中部腹側に限局した小梗塞を認めた.血管撮影では椎骨脳底動脈に異常を認めなかった.本例は梗塞巣が延髄の錐体にほぼ限局していたため, 内側毛帯, 舌下神経の障害が軽微であったと考えた.両側の梗塞を生じた原因の一つとして, 降圧により対側の側副血行の破綻を来たしたことが推定された.
  • 症状悪化の原因についての考察
    岩崎 孝一, 小川 裕行, 田代 弦, 近藤 明恵
    1995 年 17 巻 2 号 p. 181-187
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    治療が極めて困難であった未破裂巨大椎骨脳底動脈瘤の2症例を報告した.症例は左椎骨動脈の血栓化嚢状動脈瘤と右椎骨動脈から脳底動脈全長に及ぶ紡錘状動脈瘤で, この2症例はいずれも著明な脳幹部圧迫を示していた.それぞれ聴性脳幹反応等のモニター下に, 前者には直達術による動脈瘤trapping, 後者には血管内手術による親動脈のproximal balloon occlusionを行ったが, いずれも術後脳幹部障害が進行した.病理解剖にて両症例とも動脈瘤による脳幹部の強い圧迫変形, 顕微鏡学的には同部の圧迫あるいは虚血による壊死像をみとめた.これらの症例に対する手術の目的は, 動脈瘤の破裂予防と脳幹圧迫の軽減であったが, (1) 動脈閉塞による主幹動脈あるいは穿通枝領域の血流障害 (hemodynamic ischemia), (2) 動脈閉塞末梢部での血栓形成あるいはそこからの塞栓 (thromboembolic ischemia), (3) 親動脈閉塞後の動脈瘤増大の持続 (progressive aneurysmal enlargement), (4) 手術による機械的な脳幹部障害 (surgical trauma) 等が原因となり症状悪化を来した可能性があると考えられた.
  • 足立 智英, 小林 祥泰, 山口 修平, 白石 洋子
    1995 年 17 巻 2 号 p. 188-191
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    記憶障害で発症し経過中に多幸的言動が見られた右尾状核頭部出血の一例を経験した.症例は54歳男性, 記憶障害を主訴として来院した.神経学的には著明な短期記憶の障害, 失見当識を認める以外は明らかな所見はなかった.頭部CTで右尾状核頭部出搬を認めた.入院中に多幸的な言動も見られ, 記憶障害の軽快と共にこれらの症状も軽快した.123I-SPECTで右側頭葉内側に集積の低下が見られ, 記憶障害, 多幸的言動の出現に尾状核頭部自体の障害, 尾状核と側頭葉の問のdiaschisis様の機序の関与が考えられた.
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