脳卒中
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18 巻, 4 号
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  • 実験的研究の検証
    宮澤 隆仁
    1996 年 18 巻 4 号 p. 263-273
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    頭蓋内出血, 不整脈などを誘発するprofound hypothermiaに代わり, 脳温を30から35℃に維持するmild hypotherrnia (以下, MH) が, 全脳虚血モデル, 外傷モデルに対して効果的であることが1980年代に実証された.1990年代に入ると, 主にラット局所性脳虚血モデルに対するMHの脳保護作用を検証した研究論文19篇を渉猟しえた.一過性中大脳動脈閉塞11群では全著者がその有効性を確認し, 永久的中大脳動脈閉塞11群中8群で有効, 3群で無効であった.虚血中あるいは虚血後1時間以内にMHを開始すれば梗塞巣は縮小することが明らかとなったが, 虚血後数カ月してからの慢性期にも遅発性神経細胞死を防止するか否かは明らかではない。ヒト局所性脳虚塩症例へのMHの臨床応用にあたっては, MHの持続時間, 復温の方法, 凝固機能障害への対処法など未解決の問題点がある.また, 多岐にわたるMHの脳保護作用のメカニズム解明にも新たなアプローチが必要である.
  • 川畑 信也, 田中 友二
    1996 年 18 巻 4 号 p. 274-281
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    健常者と無症候性ならびに症候性脳梗塞 (ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞) における血清脂質異常について検討を行った。 (1) 症候性脳梗塞2群では, 健常者や無症候性脳梗塞と比べて血清HDL-コレステロール (HDLC) 値が有意に低く, 低HDLC血症の占める割合が高い. (2) 4群間で総コレステロール, 中性脂肪, LDLコレステロールの平均値に違いはみられない. (3) 脳ドック受診者に比べて症候性脳梗塞2群では, 低HDL-C血症を含む複数の危険因子を有する頻度が高い. (4) 健常者と無症候性脳梗塞間では各血清脂質の平均値ならびに異常値の分布に違いはみられない.無症候性脳梗塞の血清脂質は健常者と類似した動態を示している.一方, 症候性脳梗塞2群では, 健常者や無症候性脳梗塞と比べて血清HDLC値が低く, 低HDLC血症の占める割合が高いことから無症候性脳梗塞とその病態が異なると考えられる.
  • 田中 裕, 原 斉, 山口 武典
    1996 年 18 巻 4 号 p. 282-287
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    慢性期脳血管障害者400例を対象に, 脳血管性痴呆の危険因子を抽出する目的でretrospectiveな検討を加えた.知的機能評価は, cross cultural cognitive examinationを用いて診断した.知的機能低下群112例 (D群;69歳±9), 非低下群288例 (ND群;63±10歳) で, 両群間の背景因子に有意差が見られた項目は, 年齢 (D群>ND群), 教育歴 (D群<ND群), CT上の病巣の大きさ・病変数・萎縮度 (D群>ND群) であった.血圧管理状態には有意差はなかった.CT所見に関するパラメーターを除く他の要因で, 多重ロジスティック回帰分析を行なうと, 加齢, 低教育歴, 拡張期血圧高値, 総コレステロール低値が知的機能低下と関係があった.
  • 臨床症状, CT所見と転帰について
    村田 芳夫, 梶川 博, 山村 邦夫, 山口 慎也, 中村 重信
    1996 年 18 巻 4 号 p. 288-293
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/01/25
    ジャーナル フリー
    1981年1月から1994年12月末までの14年間に当該施設で入院加療を行った原発性 (高血圧性) 橋出血74例を対象とした.原発性脳出血全体に対する橋出血の比率は5.2%で, 年齢は31歳~94歳 (平均年齢60.3歳), 性別は男56例, 女18例 (男女比3.1 : 1.0) であった.血腫の局在や進展は全例CTにより判定し, ほぼ橋内にあるものを橋内限局型, 橋から中脳あるいは基底核に及んでいるものを橋外進展型に分類した.転帰 (発症約6カ月後のADL) は, 1群 (完全社会復帰もしくは軽快退院), 2群 (要部分介助), 3群 (要全面介助), 4群 (寝たきりあるいは植物症状態) に分類し, 死亡群は5群 (早期死亡) と6群 (合併症死亡) に分類した.1群16例, 2群10例, 3群11例, 4群2例, 5群30例, 6群5例であった.多変量分散分析の結果, これらの転帰は呼吸異常, 過度の高熱, 瞳孔所見, 血腫の脳室穿破と有意に相関した.
  • 術前および術後の脳血流動態
    吉田 憲司, 中村 三郎
    1996 年 18 巻 4 号 p. 294-301
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2010/01/25
    ジャーナル フリー
    高血圧性皮質下脳出血の14症例を対象として, 脳血流の変化を術前後および慢性期に測定し, 転帰や血腫量との関連を検討した.全14症例は, 発症4日以内に血腫除去が施行された.術前の脳血流量は, 血腫および非血腫側ともに血腫量の増大に対して負の相関を認めて, 減少していた.一方, acetazolamide負荷後の脳血流の増加率は, 血腫量との相関を認めなかった.術後および慢性期では, 脳血流は血腫および非血腫側ともに血腫量および転帰に拘わらず増加を認めた.以上, 脳血流の面から, 高血圧性皮質下脳出血の治療を検討した.
  • 延原 幸嗣, 西丸 雄也
    1996 年 18 巻 4 号 p. 302-309
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    1983年1月より89年4月まで撮影した頭部CTで中枢神経系大病変を有しない連続3,006例中, ラクナを認め, 少なくとも3カ月以上生存した279例を対象とし, CT撮影時に脳梗塞の既往あるいは症候の無いものを無症候群, 有るものを脳梗塞群と分類, その予後を比較検討した.解析対象は267例 (追跡率95.7%) であり, 無症候群143例, 脳梗塞群124例で各々の追跡期間は53.3±31.3カ月と61.2±29.5カ月であった.追跡中の脳血管障害の発症は無症候群で脳梗塞9例, 脳出血2例の計11例 (年間発症率1.73%) であり脳梗塞群で脳梗塞10例, 脳出血6例の計16例 (年間発症率2.53%) と無症候群は脳梗塞群より脳血管障害の発症は少ない傾向があった.さらに無症候群のうち, 高血圧などの一般的な血管性危険因子を持たない群 (40例) では脳血管障害の発症はなく, 危険因子を有する群 (80例) では10例 (年間発症率2.78%) と脳梗塞群とほぼ同等の発症を認めた.また死亡例は両群間で脳, 心血管死も含めその死因に差はなかった.
  • 脳血栓症急性期における検討
    小松本 悟, 奈良 昌治
    1996 年 18 巻 4 号 p. 310-317
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    本研究では選択的抗トロンビン作用を有するargatrobanのendothelin-1 (ET-1), thrombomodulin (TM) 動態のみならず凝固線溶系への影響について検討した.Argatroban投与群を9例, コントロール群の7例を対象とした.Argatrobanは第1, 第2病日には60mg/日を投与し, 第3より第7病日までは10mg/日を投与した.Argatroban投与群における血漿ET-1値は, 発症直後4.5±1.7pg/mlを示し, 第1病日には2.9±1.4pg/mlに減少し, コントロール群の第1病日の値と比較して, 有意に低かった (p<0.05).Argatroban投与前後において血中TMは有意な変動を認めなかった.Argatroban投与前後の血中TMは, age-match controlの血中TM値の13.9±2.3U/mlに比較して有意に高値を示した (p<0.05).Argatroban投与群のD-dimerの上昇は, コントロール群に比較し, その上昇の程度が低い傾向を示した.トロンビンの選択的阻害剤であるargatroban投与により, 血漿ET-1動態, TM動態, 血液凝血系への影響が本研究により明らかとなった.
  • 小松本 悟, 横山 浩之, 北村 和雄, 潮田 隆一, 江藤 胤尚
    1996 年 18 巻 4 号 p. 318-325
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    ヒト褐色細胞腫の組織より発見された強力な降圧活性作用を有する生理活性ペプチドであるadrenomedullin (AM) の脳血管障害患者における血中レベルについて検討した.脳梗塞群急性期のAM濃度は, 脳出血群に比し, 有意に高値であった.意識障害の高い群は, 意識障害の低い群に比し, AM濃度は有意に高値を示した.また脳梗塞群および脳出血群ともに, 急性期から亜急性期にかけて血漿AM濃度は上昇し, 慢性期に入ると漸減する傾向を示した.脳血管障害における血漿AM濃度の上昇は, AMの降圧活性作用を介して, 脳血管障害の病態生理に密接に関与している可能性が示唆された.
  • 小島 章弘, 山田 智之, 湯浅 浩之, 打田 昌夫
    1996 年 18 巻 4 号 p. 326-331
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    両側前大脳動脈領域に限局性梗塞を発症した両側内頸動脈閉塞の1例を報告した.症例は71歳, 男性, 意識障害, 四肢麻痺で発症し入院.入院時, 意識障害, 四肢麻痺, 両側錐体路症状を認め, CTにて両側前大脳動脈領域に梗塞巣を確認した.脳血管造影所見では両側内頸動脈の閉塞と側副血行の発達を認め, 梗塞巣への血行は主として左外頸動脈の分枝を介し左眼動脈からの逆行性ものであった.本例は内頸動脈閉塞部付近よりのartery to artery embolismが左前大脳動脈起始部を閉塞したことにより発症したことが考えられたが, 血行が脆弱であったことより血行力学性の機序により梗塞が発症したことも否定できず, 今後両内頸動脈閉塞症例において血行動態, 血液レオロジー, 血行力学的に検討を必要とする貴重な1例と考える.
  • 中村 雄作, 松井 隆明, 西本 和弘, 八木 祐吏, 高橋 光雄
    1996 年 18 巻 4 号 p. 332-337
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    Isolated angiopathy of the central nervous system (IACNS) と考えられた24歳男性例を報告した.頭痛を伴う左上下肢の不全麻痺で発症し再発を繰り返した.脳MRI上右尾状核, 被殻などを中心に多発性梗塞が認められた.脳梗塞の原因としては凝固能異常, 抗リン脂質抗体症候群, 全身性エリテマトーデスやSjögren症候群などの膠原病, MELAS等は否定され, 脳血管撮影で右脳梁辺縁動脈の途絶, 脳梁周囲動脈の壁不整, 右角回動脈の閉塞など多発性限局性狭窄などが認められ, IACNSと診断した.高単位のステロイド療法を施行したが, 症状増悪し完全麻痺となった.脳MRIでは右前大脳動脈, 中大脳動脈領域全体に梗塞巣が拡大し, 脳血管撮影では右前大脳動脈と右中大脳動脈の閉塞が認められた.IACNSでは大血管閉塞は一般的に少なく, 本例のごとく大血管領域の梗塞に進展した症例は稀である.
  • 猪原 匡史, 田中 晴夫, 西村 洋
    1996 年 18 巻 4 号 p. 338-342
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    通常のリスクファクターを伴わず, 虚血性脳血管障害で発症した先天性proteinC (PC) 欠乏症2例を, 文献的考察を加え報告した.症例はRIND (reversible ischemic neurologicdeficits) で発症した34歳男性とラクナ梗塞を呈した62歳女性.凝固検査 (lupus anticoagulant, antithrombin III, protein C, protein S) を施行し, ともにPC抗原, 活性値が低値を示し, 家族の検索より, 先天性PC欠乏症と診断した.2例ともヘパリンの持続点滴下にワーファリンを漸増し, トロンボテスト20%でヘパリンのみ中止, 脳血管障害の再発なく経過している.主要なリスクファクターのない脳血管障害については, 症例2のように比較的高齢であっても, 再発の予防のために, 内因性凝固因子の検索を行う必要があると考えられる.また症例1のようにTIAやRINDといった時期にPC欠乏症を見出せば, 以後の脳梗塞の発症を予防できる可能性がある.
  • 鈴木 重明, 一條 真琴, 藤井 博史, 入交 昭一郎
    1996 年 18 巻 4 号 p. 343-347
    発行日: 1996/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    脂肪塞栓による脳梗塞にproton MR spectroscopy (H-1MRS) を経時的に測定した1例を報告した.患者は32歳男性で大腿骨骨折の受傷6時間後に感覚失語を呈した.心原性塞栓, 血液疾患, 血管炎, 血管奇形は否定され臨床的に脂肪塞栓が原因と診断した.梗塞巣を関心領域としてH-1MRSを第4, 第30病日に施行した.神経所見の改善, SPECT所見から脂肪滴の再開通が推測できたが, H-1MRSにおいてN-acetyl aspartate (NAA) ピークの低下を認めた.NAAは神経細胞にのみ存在するアミノ酸であり, NAAピークの低下は神経細胞の消失を示唆する。この結果は虚血による回復不可能な神経細胞の障害を示唆するものである。脂肪塞栓における神経細胞の障害の指標としてH-1MRSが有用であると考えられた.
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