脳卒中
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19 巻, 4 号
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  • 松田 昌之, 李 英彦, 大橋 経昭, 半田 譲二
    1997 年 19 巻 4 号 p. 257-263
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/01/25
    ジャーナル フリー
    破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血 (SAH) の発症は冬 (12月~2月) に多く, 秋 (9月~11月) に少なかった.1日のうちでは午前6時~9時および午後6時~9時に有意に高い二峰性を示した.発症時の身体活動・行動では談笑中・テレビ観賞中・自宅でくつろいでいる時など身体活動が特に活発とは思われない時の発症数が最も多いが, 費やす時間を考慮すると排便・排尿に関連しての発症率が最も高くなり, その他食事・飲酒, 入浴, 起床時・洗面・着替えなど日常生活動作に伴った発症率が高かった.勤務中, 家事仕事中の発症数も多かったが, 両者を仕事として合わせても従事時間を考慮すると仕事中の発症率は高くはなく, 仕事や労働によってSAHが生じやすいという医学的根拠は認められなかった.また, 既往症または入院時合併症として高血圧の合併率が最も高く, 特に若年群では対照群より高く, 脳動脈瘤破裂の危険因子である可能性が高いことが示唆された.
  • 和田 太郎, 近藤 威, 玉木 紀彦
    1997 年 19 巻 4 号 p. 264-270
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    生後7日の新生ラット低酸素負荷虚血モデルを用いた.前処置として24時間前に41℃の高温処置を加えた群, 低酸素3時間を加えた群を作成した.虚血のできた個体数は対照群, 高体温群, 低酸素群で各々19/23匹, 4/21匹, 0/8匹であり, 高体温群, 低酸素群は対照群と比べ有意に虚血障害が減少した.海馬スライスにおける非損傷面積は49.3±5.5%, 高体温群では92.5±3.8%, 低酸素群では100±0%と有意差を認めた.低酸素前処置により脳虚血耐性が獲得されたのみならず, 異なるストレスである高体温前処置でも虚血耐性が獲得された (交差耐性).
  • 福井 俊哉, 杉田 幸二郎, 長谷川 幸祐, 市川 博雄, 河村 満
    1997 年 19 巻 4 号 p. 271-279
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    びまん性大脳白質病変による知的障害について明らかにすることを目的とした.白質病変を有する痴呆7例と非痴呆8例, 同年齢の無症侯性脳梗塞群25例を対象として, (1) 非痴呆群と無症候性脳梗塞群の知的機能, (2) 非痴呆群の知的機能と頭部MRI高信号病変, 脳梁の厚さ, 脳室拡大, 教育年数との関係, (3) 痴呆群と非痴呆群の画像所見の特徴を検討した.結果 : (1) 非痴呆群では無症候性脳梗塞群よりもウイスコンシンカード分類テストの保続性誤答率が有意に高く, (2) 非痴呆群の知的機能には前頭葉白質病変, 視床/内包後脚病変, 脳梁の厚さ, 教育年数が関与し, (3) 痴呆群では非痴呆群に比べて左視床/内包後脚の病変の割合が有意に高率であり, これは唯一の痴呆予測因子であった.以上より, 非痴呆群の知的機能の特徴は前頭葉機能低下であり, 前頭葉白質病変, 脳梁萎縮, 教育年数などが関与し, さらに, 左視床病変の割合が増加すると痴呆が発症する可能性が示唆された.
  • 橋本 洋一郎, 木村 和美, 寺崎 修司, 米原 敏郎, 内野 誠
    1997 年 19 巻 4 号 p. 280-286
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    心原性脳塞栓症と塞栓源不明の脳塞栓症に対してValsalva負荷コントラスト経食道心エコーを行い卵円孔開存の有無について検討した.心原性脳塞栓症では33例中4例 (12%) に卵円孔開存が認められた.一方塞栓源不明の脳塞栓症では9例中6例 (67%) に卵円孔開存を認めた.塞栓源不明の脳塞栓症では卵円孔開存の頻度が高く, 卵円孔開存の症例は奇異性脳塞栓症と考えられた.卵円孔開存による奇異性脳塞栓症の症例は年齢は33歳から70歳で, 若年者のみでなく高齢者にも認められた.原因不明の脳梗塞 (cryptogenic stroke), 特に塞栓源不明の脳塞栓症では年齢にかかわらずコントラスト経食道心エコーによる卵円孔開存の検索が必要である.
  • 宇野 昌明, 新野 清人, 永廣 信治, 上田 伸, 西谷 和敏
    1997 年 19 巻 4 号 p. 287-293
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    当科で施行した287頸動脈内膜剥離術 (以下CEA) のうち無症候性頸動脈狭窄症 (以下As-CS) に対して施行した90症例, 96CEA (全体の33.4%) について検討した.この症例をA群 (n=17) : 反対側の症候性病変に対するCEA後As-CSに対してCEAを施行した群, B群 (n=6, 12CEA) : 両側のAs-CSに対して両側のCEAを施行した群, C群 (n=67) : 片側のAs-CSに対してCEAを施行した群に分類し検討した.CEA手術に際して冠動脈撮影を39例で施行しGensini's score (GS) で評価した.全体のmortality and morbidityは3.1%であり, 3群別でのmortality and morbidityはA群5.9%, B群8.3%, C群1.5%であった.冠動脈撮影でGSが6点以上あった症例が21例 (53.8%) 認められ, CEA前後で10例が冠動脈血行再建術を受けた.退院時の転帰は全体ではgoodが82例 (91.1%) であった.長期追跡し得た80例 (平均68.2ヵ月) のfollow-up期間中15例の死亡があり, その原因は心血管障害が6例と最も多かった.As-CSに対するCEAの手術成績は全体的には良好な結果であったが, 両側施行例は注意が必要であった.As-CSの症例でも冠動脈病変が潜在的に合併しており, 術前の精査加療が重要と思われた.
  • 伊藤 秀樹, 山谷 和正, 高羽 通康, 上山 浩永
    1997 年 19 巻 4 号 p. 294-300
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    内頸動脈系の急性期進行性脳梗塞例の臨床上の特色について検討した.対象は発症後6時間以内に入院し, オザグレルナトリウム投与を施行した内頸動脈系梗塞例300例である.結果 : (1) 進行例は穿通枝型では221例中9例 (4.1%), 皮質枝型では56例中9例 (14.8%), 全MCA型では23例中11例 (47.8%), 計29例 (9.7%) みられ, 全MCA型, 皮質枝型に多い. (2) 進行は発症後5日以内に全例確認できた.進行の持続期間は最長7日である. (3) 進行例は運動障害に半側無視を伴う97例においてのみ29.9%にみられた. (4) 進行の有無と心電図上の異常およびAfの有無との間に有意の関係はみられなかった. (6) 出血性梗塞は14例 (4.6%) でみられたが入院後1週間以内の症状進行に関与していなかった. (2) 進行例で退院時の上肢StageがIII~Iに留まった例は非進行例の38例 (14.0%) に比し23例 (79.3%) で, 明らかに多い (p<0.001).結論 : 入院時に運動障害と半側無視の有無を確認することが最も重要である.
  • 縦断的検討
    高橋 弘明, 紺野 衆, 渡辺 活見, 小泉 大造, 東儀 英夫
    1997 年 19 巻 4 号 p. 301-307
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    総頸動脈血流量, 血流速度, 平均血管径, 血管拍動幅の4年間の経年変化を縦断的に検討した.対象は検診受診者のうち, 薬剤内服歴がなく, 脳卒中の既往および危険因子を有しない例で, 1991年と1995年の両年に観察しえた37例である.測定は, 超音波ドプラ法とパルスエコートラッキング法を併用した脳血管特性測定装置 (QFM-2000XA) を用いて行った.総頸動脈血流量に有意の変化はなかったが, 血流速度 (cm/sec) は21.6±3.4から19.8±3.4と有意に減少し (p<0.05), 血管径 (mm) は7.4±0.6から7.7±0.7と有意に増加 (p<0.05), 血管拍動幅 (%) は4.7±1.2から3.9±1.1と有意に減少した (p<0.0005).この結果は, 危険因子のない健常者においても, 4年内に総頸動脈血管特性が変化することを示している.
  • 篠原 幸人, 折笠 秀樹
    1997 年 19 巻 4 号 p. 308-317
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    現在我が国で市販中または発売承認のため臨床評価が十分になされ且つ, 偽薬 (プラシーボ) を対照としランダム割付けが行われた脳循環代謝改善薬に関する14論文から, それらの有効性をメタアナリシスを用いて検討した.自覚症状, 精神症候, および全般改善度を中等度以上の改善をもって有効とした場合, 全般改善度で見ると実薬は偽薬に比し1.59倍 (p<0.0001) 優れていた.一方, 自覚症状に関しては, 実薬は偽薬に比し1.77倍 (p<0.0001), 精神症候で1.85倍 (p<0.0001) 優れているという結果が得られたが, 神経症候とADLに対する有効性は相対的に低かった.この傾向は, 特に脳梗塞例で著しく, 逆に脳出血例では有意な効果は認められなかった.なお, 偽薬群1,918例での全般改善度の中等度以上の改善率は18.1%であった.
  • 大谷 良, 西 正吾, 鈴木 進, 野村 素弘, 橋本 信夫
    1997 年 19 巻 4 号 p. 318-322
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    椎骨・脳底動脈系の切迫卒中に対し血管内手術が著効した1例を, 文献的考察を加え報告した.症例は61歳, 男性で構音障害, 下肢の脱力で発症した.来院時, 意識障害, 四肢麻痺を認めた.脳血管写で左椎骨動脈V4部での閉塞, 右椎骨動脈でのPICA endの所見を認め, 選択的血栓溶解療法 (PTR) を施行した.発症7時間後に左椎骨動脈・脳底動脈双方に糸状開通を認めた.残存する狭窄部に対しバルーンを用いて血管形成術 (PTA) を行ない, 発症7.5時間後に病変部の十分な拡張を得た.頭蓋内, 特に脳底動脈のPTAには, 穿通枝梗塞の危険性があるが, 本例のように進行性の急性脳卒中に対しては, 保存的治療や外科手術では得られない効果をPTR, PTAで得ることができ, 症例を慎重に選んだ場合, 有効な治療法と考えられた.
  • 稲福 徹也, 高木 誠, 星野 晴彦, 瀬川 浩, 杉下 守弘
    1997 年 19 巻 4 号 p. 323-329
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2009/09/16
    ジャーナル フリー
    比較的稀である外側膝状体梗塞の1例を報告した.症例は77歳男性, 高血圧, 糖尿病あり, 右視野が見えないと訴え来院.MRIで左外側膝状体 (LGB) に限局したラクナ梗塞と診断した.視野は黄斑回避なく, 非合同性の右下楔型部分盲であった.従来LGB梗塞は閉塞血管により水平線に沿って扇状に欠損あるいは残存する合同性の部分盲を呈するとされるが, 本症例の視野はそれらとは異なっていた.その理由としてLGB表面上における前脈絡叢動脈と外側後脈絡叢動脈の間の血管吻合の個体差や, そこからLGB内へ分岐する穿通動脈間の個体差が大きいためと考えられた.
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