アルガトロバン(A群)とプラセボ(P群)の二重盲検比較試験のデータを用い,脳血栓症急性期における従来の治療と,これにアルガトロバンによる抗トロンビン療法を加えた治療との間で費用―効果分析(CEA:Cost-effectiveness analysis)を行った.本分析に当っては入院期間を最長で90日と仮定し,入院日数の短縮をエフェクティブネスとして,直接費用のみの場合と直接費用に間接費用を加えた場合についてレトロスペクティブに検討した.
その結果,患者一人当たりの入院日数の短縮に伴う退院後の残日数(90日―入院日数:E)および総費用(直接費用:DC,直接費用+間接費用:DC+IC)の期待値は,A群が平均56.2日,DC103.5万円,DC+IC155.8万円,P群が平均35.9日,DC126.1万円,DC+IC174.0万円となり,A群はP群に比し平均20.3日間入院日数が短縮し,DC22.6万円,DC+ICで18.2万円の費用削減が期待できると推計された.
退院後の残日数当りの平均費用(C/E)は,DC,DC+ICいずれの場合もP群に比しA群で小さい.また,P群の治療にカルガトロバンを追加することによる効果の増大に対して,それに要する費用は減少する.すなわち△C/△Eはマイナスとなり,アルガトロバンを加えた治療がプラセボに比し費用効果的であると考えられる.アルガトロバンは臨床効果のみならず医療経済性評価においてもその有用性が検証された.
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