脳卒中
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21 巻, 2 号
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  • 頸部超音波検査による検討
    渡辺 正樹, 西村 麗, 新美 由紀
    1999 年 21 巻 2 号 p. 195-199
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2009/12/07
    ジャーナル フリー
    ラクナ梗塞200例に対してB-mode法頸動脈超音波検査を行いplaquescore(PS)を算出し,頸部大血管病変の合併頻度および臨床的意義を検討した.agematchさせた健常対照群のPSのMean+2SDより高値(PS≧7.4mm)のPSを有するプラク高度例はラクナ梗塞群のうち47例(23.5%)にみられた.ラクナ梗塞におけるプラク高度例の特徴として,1)その頻度は梗塞の部位別で差はなく,2)MRangiographyによる頭蓋内大血管狭窄を20例(42.6%)と高率に合併し,3)頭蓋内大血管狭窄を伴わないプラク高度例は頭蓋内大血管狭窄のみの例より高齢で,4)血清トロンビン-ATIII複合体,リボ蛋白(a)が頸部および頭蓋内に大血管病変のない例より高値であった.ラクナ梗塞での頸部の高度プラクは頭頸内大血管病変合併の可能性を示唆し,頭蓋内大血管病変より加齢の影響を受け易く,凝固系充進を伴うことが推定された.ラクナ梗塞における超音波検査は治療方針決定に有用と考えられた.
  • 橋本 洋一郎, 寺崎 修司, 池野 幸一, 粕谷 潤二, 内野 誠
    1999 年 21 巻 2 号 p. 200-204
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1995年4月から1997年3月まで入院した虚血性脳血管障害368例の中で発症後1週間以内に入院となった急性期脳梗塞281例を対象とし,退院時転帰と病診連携の現況について検討した.急性期脳梗塞の65%が紹介患者であった.在院日数は当院入院日より当院退院までとし,他科転科後の入院日数も含めた.脳梗塞全体の転帰は平均在院日数31日で歩行64%,杖歩行5%,車椅子17%,寝たきり10%,死亡4%であった.281例中106例(38%)が転院となり,163例(58%)が自宅へ退院となった.臨床病型別の転院数(率)と平均在院日数は,ラクナ梗塞で104例中22例(21%)と26日,アテローム血栓性脳梗塞で71例中30例(42%)と30日,心原性脳塞栓症で86例中48例(56%)と39日であった.61日以上の長期入院例は281例中23例(8%)で,うち14例が心原性脳塞栓症で,その主な理由は合併症であった.神経学的重症度の高い心原性脳塞栓症で長期入院例が多く,かつ転院率が高かった.
  • 丸山 路之, 丸山 照子, 柳本 昌子, 上嶋 権兵衛
    1999 年 21 巻 2 号 p. 205-212
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    中枢性benzodiazepine受容体(BZR)と特異的に結合するI-iomazenil(IMZ)を用いた脳SPECT早期像の臨床的意義を見いだす目的でIMZ早期分布特性を検討した.対象は大脳基底核陳旧性血管障害10例で大脳皮質と小脳半球のdiaschisis領域(D)と対側正常部(N)に設定した関心領域(ROI)内のRIカウントを平均した.N側をROIとするdynamic SPECTの比較でIMZとIMPの時間放射能曲線に解離が見られ,投与直後から早期分布動態の差異が示された.D側をROIとするIMZ-dynamic SPECTでN側との集積差が早期像撮像時間帯付近で最大になった.static SPECTの比較でD部のRI集積低下度はIMP,IMZ早期像,IMZ後期像の問で有意差(p<0.01)があり,IMPよりIMZ早期像の集積低下が少ない傾向(p=0.07)が見られた.以上の早期分布特性より血流像と同一視されがちなIMZ早期像の臨床的独自性が示され,血流低下,組織障害とBZR残存の関係がIMZ早期像の活用から明らかになる可能性が示唆された.
  • 柳澤 俊之, 杉原 浩, 鴨川 旭
    1999 年 21 巻 2 号 p. 213-218
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    アテローム血栓性脳梗塞(AI)群,ラクナ梗塞(LI)群,心原性脳塞栓症(CE)群の血中塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor; bFGF)抗原を急性期から慢性期にかけて測定し,その臨床的意義を検討した.第1病日,第7病日の血中bFGFは各群で健常群に比し高値で,AI群とLI群は第1病日から第7病日にかけて減少傾向,CE群は増加傾向を示した.慢性期血中bFGFは各群とも健常群に比し高値であった,急性期の血中bFGFの高値は梗塞巣からの逸脱を反映している可能性が考えられ,AI群とCE群について梗塞巣の大きさと第1および第7病日の血中bFGFの関係を検討したが相関は認めなかった.
    急性期の血中bFGFの増加は全身反応の結果を反映している可能性がある.
  • 昭和55年と平成4年の比較
    大間々 真一, 鈴木 倫保, 久保 直彦, 小川 彰, 樋口 紘
    1999 年 21 巻 2 号 p. 219-224
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    岩手県におけるくも膜下出血の発症状況について,昭和55年と平成4年の脳卒中登録の結果を比較検討し,発症率,発症状況,転帰を比較検討した.
    発症率:人口十万対発症率で比較すると,昭和55年は19.9人,平成4年は19.7人であった.年代別発症率では男性すべての年代で減少し,女性では80歳以上の高齢者を除き減少した.
    原因:くも膜下出血の原疾患のうち破裂脳動脈瘤の割合は,昭和55年が66.5%,平成4年が69.9%であった.原疾患が不明瞭なものを除外すると,両年とも95%以上であった.
    来院時意識:両年の来院時意識に有意差は認めなかった.高齢者の来院時意識は重症例が多い傾向にあった.
    転帰:致命率は昭和55年の29.5%,平成4年の41.5%と有意に増加した.年代別転帰では高齢者ほど致命率が高値であった.
  • 横田 千晶, 長谷川 泰弘, 峰松 一夫, 山口 武典
    1999 年 21 巻 2 号 p. 225-231
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    主幹脳動脈に有意狭窄性病変を有する症例の脳循環予備力障害の有無を,acetazolamide (ACZ)負荷SPECTにて判定し,脳循環予備力障害と大脳白質病変,無症候性脳梗塞病巣の発現・進行との関連を調ベた.脳虚血症状を呈した一側性病変例で,ACZ負荷SPECTとMRIを施行しえた90例(年齢64±8歳)を対象とした.その結果,脳循環予備力障害の有無とMRI上の白質病変の重症度および無症候性脳梗塞病巣の有無との間には,有意な関連はなかった.MRIを再検しえた非再発生存例37例(予備力障害あり群21例,なし群16例,平均追跡観察2.8年間)の分析より,脳循環予備力障害が白質病変の進行や無症候性脳梗塞病巣の発現を促進するという証拠は得られなかった.
  • 斉藤 元太, 横田 千晶, 峰松 一夫, 長束 一行, 山口 武典
    1999 年 21 巻 2 号 p. 232-236
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    心・大血管手術に伴う脳血管事故の予防を目的として,待機的心・大血管手術連続388例(男性276例,女性112例,平均63±11歳)に対して,術前に頸部血管エコー検査を施行した.対象を,冠動脈バイパス術群(CABG群:143例),大動脈及び末梢血管手術・弁置換術等の非冠動脈バイパス術群(非CABG群:245例)に分け,各群での内頸動脈高度狭窄性病変合併率,危険因子について比較検討した.CABG群では非CABG群に比して,男性が多く,喫煙歴,高血圧,糖尿病,高脂血症も高頻度であった(p<0.05).頸部血管エコー検査による内頸動脈高度狭窄性病変の陽性率は,CABG群で11.9%,非CABG群4.1%であり,CABG群で高率であった(p<<0.05).内頸動脈高度狭窄性病変と有意に関連する因子は,CABG群では糖尿病,動脈硬化性病変(閉塞性動脈硬化症または胸腹部大動脈瘤)の合併,非CABG群では脳卒中の既往であった.周術期の脳血管事故防止の観点から,こうした因子を有する例に対しては術前の頸部血管エコー検査が必要と思われる.
  • 全摘出した6例の経験から
    山口 由太郎, 小野 元, 酒井 晃治, 間 淑郎, 関野 宏明
    1999 年 21 巻 2 号 p. 237-244
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    脳幹海綿状血管腫の手術適応について検討した.症候性出血2回以上・第4脳室底に接しているか脳表面に接している・進行性神経脱落症状の3項目を手術適応とし,6例の海綿状血管腫を全摘出した.局在は症例P1~5は橋,症例M1は延髄錐体である.症状の推移を,発症時・術直前・術後1週間・1カ月・1年と観察した.橋海綿状血管腫では術前症状の程度は血管腫のサイズに比例し,術前症状が高度な例ほど症状の改善が不良であった.特に外転神経麻痺,次いで顔面神経麻痺・小脳失調の改善は不良で予後不良因子となっていた.2回以上の症候性出血では,血管腫の増大とともに術前症状が高度となり,術後結果は良好ではなかった.今後は1回の症候性出血でも第4脳室底に接しているか脳表面に接している例では機能的予後を考慮し,手術を行うべきと考えた.
  • 高山 秀一, 小林 正人, 管 貞郎, 定永 史子, 美原 盤
    1999 年 21 巻 2 号 p. 245-252
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    脳出血の拡散強調画像(DWI)所見の経時変化・特に急性期脳出血の診断におけるDWIの有用性を検討した.対象は急性期脳出血26例である.DWIは,1.5TIVIRIにてsingle shot EPIを用いて撮像,ADC (apparent dillusion coefficient)は画像(b=30, 1,100sec/mm2)より計算して求め,血腫と対側健側部位のADCの比を用いて検討した.出血巣は発症後6時間以内はDWIでhyperintensityで,その後hypointensityの部位が混在した.発症後8日から30日ではhyperintensityで,その後徐々にhypointensityへ変化した.ADC比は発症当日は0.70から1.31まで幅広く分布,その後徐々に低下,発症後4~5週間で最低(0.45から0.77)となり,以後は徐々に増加,発症後80日以降で1.0以上になった.脳出血発症後6時間以内のhyperintensityの像は脳虚血病変と鑑別ができず,確定診断を得るためにはX線CTが必要である.
  • 長根 百合子, 槍沢 公明, 吉村 正博, 東儀 英夫
    1999 年 21 巻 2 号 p. 253-259
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    線溶系機能が脳血管の部位により異なるか否かを知る目的で,剖検脳血管におけるtissue plasminogen activator (tPA)とplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)の分布を検討した.脳実質外動脈の正常部位ではtPAは外膜にのみ強く発現し,PAI-1は外膜>中膜>内膜の順に強く発現していた.内頸・外頸動脈分岐部ではtPAは正常部位では発現のない内膜に発現し,内頸・外頸動脈分岐部と線維性肥厚部ではPAI-1は正常部位に比し内膜と中膜で発現が亢進していた.脳実質内血管のうちmicrovasculature(径25μm以下)ではtPA, PAHともに白質において強く発現しており,皮質,被殻には発現していなかった.被殻,白質の穿通枝(径25~200μm)にはtPA,PAI-1はほとんど発現していなかった.白質microvasculatureにおけるtPA, PAI-1の発現亢進は,Binswanger型血管性痴呆や一部の白質小梗塞の成因に関連する所見であるかもしれない.
  • 満岡 恭子, 梶川 博, 山口 慎也, 原田 俊英, 中村 重信
    1999 年 21 巻 2 号 p. 260-264
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    精神分裂病の薬物治療中に左中大脳動脈血栓症を起こし,抗精神病薬の中断・再投与により悪性症候群を呈した症例を経験した.脳梗塞による全身状態悪化時にハロペリドールを再投与したことが契機となったと考えられた.被疑薬の中止,補液およびダントロレン,プロモクリプチンの投与により,症状は改善した.脳血管障害患者に抗精神病薬の投与を行う場合,悪性症候群の合併を念頭に置く必要がある.
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