心・大血管手術に伴う脳血管事故の予防を目的として,待機的心・大血管手術連続388例(男性276例,女性112例,平均63±11歳)に対して,術前に頸部血管エコー検査を施行した.対象を,冠動脈バイパス術群(CABG群:143例),大動脈及び末梢血管手術・弁置換術等の非冠動脈バイパス術群(非CABG群:245例)に分け,各群での内頸動脈高度狭窄性病変合併率,危険因子について比較検討した.CABG群では非CABG群に比して,男性が多く,喫煙歴,高血圧,糖尿病,高脂血症も高頻度であった(p<0.05).頸部血管エコー検査による内頸動脈高度狭窄性病変の陽性率は,CABG群で11.9%,非CABG群4.1%であり,CABG群で高率であった(p<<0.05).内頸動脈高度狭窄性病変と有意に関連する因子は,CABG群では糖尿病,動脈硬化性病変(閉塞性動脈硬化症または胸腹部大動脈瘤)の合併,非CABG群では脳卒中の既往であった.周術期の脳血管事故防止の観点から,こうした因子を有する例に対しては術前の頸部血管エコー検査が必要と思われる.
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