脳卒中
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21 巻, 3 号
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  • 吉川 卓也, 半田 伸夫, 岡崎 裕, 小村 江美, 杉谷 義憲
    1999 年 21 巻 3 号 p. 283-290
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    右大脳半球に障害を確認された69例の慢性期脳血管障害患者を対象として,99mTc-ethyl CySteinate dimer (99mTC-ECD)を用い,Patlak plot法により平均脳血流量を求め,SPECT像に関心領域を設定して局所脳血流量(rCBF)測定を行った.そして(1)rCBFと左半側空間無視(USN),(2)%Reduction(%Re)とUSN,(3)rCBFと%Reの関連性などについて対比検討し,症状出現を本法の脳血流値より予測することが可能かどうかを検討した,USNの有無はSPECTと同時期に検査した直線の2等分,star cancellation testにより判断した.USN陽性群はUSN陰性群に比し有意に,頭頂葉のrCBFは低下,%Reは増加していた.
    rCBF=21.6(ml/100ml/min),%Re=31.2(%)で区分するとUSN陽性群とUSN陰性群とがよく分離された、一般臨床上汎用可能なTc製剤を用いたPatlak plot法により,神経徴候の一つであるUSNを右大脳半球(頭頂葉,基底核)で血流低下をとらえることができ,脳血管障害での皮質症状発現の脳血流量をSPECTで定量的に類推することが可能であることが示唆された.今後は関心領域の設定法や,時期におけるUSNの改善の程度などについて検討を重ねていく必要があると思われた.
  • 福田 倫也, 神田 直, 飯塚 高浩, 坂井 文彦
    1999 年 21 巻 3 号 p. 291-296
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    脳血管障害発症の週間及び季節変動について病型別に検討することは,その発症機序を解明する上からも意義があると考える.対象は最近5年間に入院した脳卒中連続749例であり,病型別内訳は脳出血291例,脳梗塞503例(アテローム血栓性196例,ラクナ158例,心原性脳塞栓149例)である.週間変動の検討では,アテローム血栓性梗塞は金曜日に多く,土曜日から日曜日に少なかった(p<0.02)が,この変化は65歳未満で明らかであった.さらにアテローム血栓性梗塞は,65歳未満の男性の検討で,金曜日に多い傾向にあった(p<0.1).他の病型では発症曜日に有意差は認められなかった.季節変動の検討では,脳出血の発症は冬に多かった(p<0.05).年齢階級別に分けてみると,65歳以上ではラクナ,65歳未満では脳出血で発症の季節変動がある傾向がみられた(それぞれp<0.1).脳卒中の発症を週間及び月単位でみると,病型により発症の分布に相違があり,生活環境,週単位の生活変化,気候の変化も危険因子として発症の誘因となりうる可能性が考えられた.
  • 羽生 春夫, 浅野 哲一, 櫻井 博文, 岩本 俊彦, 高崎 優
    1999 年 21 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    Magnetization transfer(MT)法を用いてBinswanger病(BD)における脳梁の形態的特徴を明らかにし,大脳白質病変や知的機能障害との関連を検討した.BD群16例と健常老年者(C群)18例の脳梁面積を計測し,MTR{%,(Moff-Mon)×100/Moff;Moff,MonはMTパルス負荷前後の画像}を求め組織障害の程度の指標とした.BD群の脳梁面積は前部と後部で有意に小さく,特に前部はC群の約70%まで減少していた.MTRは前部,後部に加えて萎縮のみられない中部でも有意に低下し,髄鞘や軸索の変性,崩壊を含む組織学的変化が広範囲に生じていると考えられた.脳梁面積は近接する大脳白質病変(PVH)のMTRと有意に相関し,PVH病変による二次的な軸索変性が脳梁の萎縮へ発展すると考えられた.また脳梁前部の面積やMTRと改訂長谷川式スコアとの問には有意な相関がみられ,前頭葉白質病変と関連した脳梁前部の組織傷害が知的機能障害の発現に関連していることが示唆された.
  • 福田 忠治, 丸山 敏文, 竹田 広毅, 鬼塚 俊朗, 中西 尚史
    1999 年 21 巻 3 号 p. 303-313
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    [目的・対象・方法]内頸動脈系の慢性期の虚血性脳血管障害47例にxanthine誘導体であるpropentofylline及びpentoxifyllineを投与し,投与前後のWAISによる高次脳機能と脳血流量(CBF),血液量(以下CBV),平均通過時間(以下MTT)の定量的評価を行ない有効性の検討を行なった.[結果]投薬前のCBFは正常より低く,CBVは正常範囲であった.投薬後CBFは局所的に増大したが平均値は有意な増加は見られなかった.CBVは有意な増大を示し,pentoxifyllineの併用で更に顕著な増大を示した.MTTも有意な増大を示した.WAIS IQは投薬後改善したが全体では有意な差はなかった.脳梗塞発症から投薬までの期間が短い群では改善傾向が見られた.又投与前のTIQが100点から110点迄の群では有意な改善が得られた.[考察・結論]xanthine誘導体の薬理作用が血管拡張として捉えられたものと思われた.CBVの増大によりMTTは延長し,結果的に脳酸素摂取率が上昇,脳酸素代謝率を正常化すると思われた.
    Since vascular dementia is preventable and treatable to a certain degree, a safe therapy that effectively improves the cerebral circulation and metabolism at the chronic phase of cerebrovascular diseases is nceded. We administered two xanthine derivatives, 1-(5'-oxobexyl)-3-methyl-7-propyl-xanthine (propentofylline) and 3, 7-dimethyl-l-(5-oxohexyl) -xanthine(pentoxifylline), to 47 patients aged less than 80 years, who were in the chronic phase of ischemic diseases of the internal carotid artery territory. The propentofylline was ad-ministered alone (22 cases) or in combination with pentoxifylline (25 cases). The therapeutic effects were ovaluated by assessing. The pre-and post-treatment high level cerebral functions using WAIS, and quantitatively measuring the cerebral blood flow (CBF), cerebral blood volume (CBV) and mean transit time (MTT) employing single photon computed tomography. Before treatment, the mean CBF was lower than normal at 41.4 (ml/100 g/min) and the CBV was within the normal range at 4.45 (ml /100 g). After treatment, the mean CBF increased but with no significant change. The mean CBV increased significantly after treatment, and it was enhanced in hemispheres with infarct lesions and following combined treatment with pentoxifylline. The MTT was also increased significantly after treatment. The WAIS IQ scores appeared to improve after treat-ment, but with out significant differences. The improvement tended to be greater when the interval from the onset of disease to treatment was short. The group of patients with pretreatment TIQ volues of 100 to 110 showed a significant improvement of their TIQ following pentoxifylline administration. The pharmacological effect of the xanthine derivatives was adjudged as vasodilation. Such vasodilation and a prolonged MTT may consequently increase the cerebral oxygen uptake and normalize the ccrebral metabolic rate of oxygen, resulting in an improvement of intellectual functions.
  • 中里 良彦, 田村 直俊, 武井 和夫, 高野 千秋, 島津 邦男
    1999 年 21 巻 3 号 p. 314-317
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    脳幹部梗塞53例における頭痛の内容を,橋梗塞と延髄梗塞に分けて比較検討した,脳梗塞発症時に頭痛を伴った症例は,橋梗塞では28例中5例(18%),延髄梗塞では25例中12例(48%)と,延髄梗塞において有意に高頻度であった(p<0.05).頭痛の部位は,橋梗塞では両側後頭部,延髄梗塞では病巣側前頭部および後頭部に高頻度であった.橋梗塞では軽度の鈍痛が多く,延髄梗塞では中等度~高度で拍動性の痛みが多かった.また,延髄梗塞の33%で脳梗塞発症前に頭痛が出現した.橋梗塞と延髄梗塞は頭痛の頻度,内容が異なり,延髄梗塞では頭痛の機序として椎骨動脈解離による頻度が高いものと考えた.
  • 緒方 利安, 岡田 靖, 尾前 豪, 竹下 盛重, 藤島 正敏
    1999 年 21 巻 3 号 p. 318-322
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    尿失禁根治術後に発症した奇異性脳塞栓症の1剖検例(50歳,女性)を経験した.下肢静脈瘤の既往あり,尿失禁根治のための膀胱手術後20時間の安静解除後に意識障害,呼吸困難およびほぼ同時期より左片麻痺を来した.入院時両側橈骨動脈の拍動は微弱で,頸部血管エコー検査で右総頸動脈に遊離した血栓エコーを認めた.また肺血流シンチにて両肺野末梢部に多発性の血流欠損像を認めるも,経胸壁心エコー検査では右房負荷の所見は見られなかった.両側中大脳動脈領域に広範な脳梗塞を認め,脳ヘルニアにて第7病日に死亡した.剖検では径7mmの卵円孔開存と下大静脈および右総頸~内頸動脈に紐状血栓を確認した.他に塞栓源がないことから奇異性脳塞栓症と診断した.本症例は急性期の臨床症候,頸部血管エコー及び肺血流シンチにて発症早期より多発性奇異性脳塞栓症を疑い,さらに剖検において病態を確認し得た貴重な症例であり,報告した.
  • 樫村 博史, 菅原 幸行, 朴 永俊, 関 博文
    1999 年 21 巻 3 号 p. 323-328
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    今回,我々の施設において脳血管撮影で狭窄,閉塞,再開通と経時的に変化した内頸動脈解離を経験し得たので報告する.
    56歳男性.右片麻痺,失語のTIAにて入院した.翌日の左脳血管撮影で頸部内頸動脈に壁の不整を認めた.1週間後の脳血管撮影では,左頸部内頸動脈で閉塞していた.右脳血管撮影では,前交通動脈を介する側副血行路がありSPECTで左右差が認められなかった為,保存的治療とした.1年半後のMRAで左内頸動脈の描出があり,左脳血管撮影を施行したところ初回の脳血管撮影で壁不整のみられた頸部内頸動脈は著明な蛇行を認めるだけで完全に再開通していた.
    内頸動脈解離例の中には,一旦閉塞しても再開通している症例もあるため経時的観察が必要と思われた.
  • 木村 知一郎, 古谷 保
    1999 年 21 巻 3 号 p. 329-334
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    末梢性後下小脳動脈瘤の1例を経験した.症例は79歳女性.突然の強い頭痛と嘔気で発症し,来院した.CTスキャンにて第4脳室内の血腫と軽度のクモ膜下出血が認められた.右椎骨動脈撮影では,同血管は後下小脳動脈として終末化し,嚢状の動脈瘤が認められた.
    手術所見として動脈瘤はlateral medullary segmentからposterior medullary segmentへうつるコーナーの部分に存在し,周囲に血管の分岐は認められなかった.
    末梢性後下小脳動脈瘤の報告はすでに200例を越えるが,このような形態を呈する症例の報告はいまだ少ない.
    すなわち,1;コーナーとはいえ血管非分岐部に発生したこと.2;椎骨動脈が後下小脳動脈として終末化するタイプの奇形性異常の部分に発生したこと.3;多発脳動脈瘤であったこと.などの臨床的特徴があり,血行動態的要因に加え,先天性要因の関与も疑われた.
    自験例を報告するとともに過去の報告例を検討した.
  • 福田 和浩, 福本 吉人, 木村 文治, 奥村 嘉也, 下村 隆英
    1999 年 21 巻 3 号 p. 335-340
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    高血圧性脳内出血の好発部位である被殻・視床・小脳の3カ所にほぼ同時に脳内出血を認めた1例を報告する.症例は10年来の高血圧の既往歴をもつ80歳の男性.1998年3月に突然の嘔吐・意識障害にて当院救急外来に搬送された.来院時の意識レベルはJapan Coma Scale (JCS)II-30,血圧は300以上/150mmHgで左片麻痺・左錐体路徴候を認めた.発症約1時間後の頭部CTで右被殻・右視床・右小脳に出血を認めた.その後意識レベルはJCSIII-100まで低下して全面介助の状態となった.テント上下にわたる同時多発性脳内出血は稀であるが3カ所同時の出血例は報告されていない.本症例の病態について当院における脳内出血の部位別頻度・年齢分布などを呈示し,既報告例21例をくわえて年齢・出血部位・予後・治療につき検討し考察を加えて報告した.本症例では高血圧以外の危険因子として加齢・低コレステロール血症が考えられた.
  • 佐々木 伸浩, 荒川 修治, 長尾 哲彦, 井林 雪郎, 藤島 正敏
    1999 年 21 巻 3 号 p. 341-346
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬投与による脳循環自動調節能下限域の低下が,症状の緩解に有効であった起立性低血圧症の1例を報告した.
    症例は78歳,男性.12年前から高血圧症,10年前と8年前に脳梗塞(いずれもラクナ梗塞)の既往がある.8年前から立ちくらみが生じ,徐々に増悪したため入院した.血圧は臥位180/92mmHg,立位102/66mmHgで高度の起立性低血圧があり,検査の結果,AAアミロイドーシスが自律神経障害の原因と考えられた.Tilting tableを段階的に挙上させることで血圧を徐々に下降させ,連続的に経頭蓋超音波ドプラ(TCD)法により右中大脳動脈水平部の血流速度を測定し,脳循環自動調節能下限域を決定した.当初,下限域は平均血圧で95mmHgと高値を示したが,エナラプリル0.625mgの連日投与により80mmHgに低下した.一方,弾性ストッキングの併用により,立位での平均血圧は78mmHgから83mmHgへ上昇した.治療により,脳循環自動調節能下限域が立位での平均血圧を上回るようになり,症状も改善した.ACE阻害薬は高血圧を伴う起立性低血圧症の治療に有効である可能性が示唆された.
  • 粕谷 潤二, 橋本 洋一郎, 寺崎 修司, 池野 幸一, 内野 誠
    1999 年 21 巻 3 号 p. 347-351
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は69歳右利き男性で,感覚性失語を呈し,第1病日の脳血管造影で左中大脳動脈水平部閉塞が認められた.アテローム血栓性脳梗塞と診断し,アルガトロバンを開始した.第2病日から運動性失語へと変化し,顔面を含む右片麻痺が顕著となった、第8病日のMR angiographyで左中大脳動脈の末梢に血流が認められたことから,第21病日に再度脳血管造影を行ったところ,左中大脳動脈水平部の約90%狭窄と再開通を認め,皮質梗塞は溶解した血栓により生じた動脈原性塞栓症と考えられた.アテローム血栓性脳梗塞の中には本例のように抗血栓療法により閉塞血管が再開通し,塞栓症を生じる例が存在するものと考えられた.
  • 後藤 文男
    1999 年 21 巻 3 号 p. 352
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 1999 年 21 巻 3 号 p. 353-356
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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