本邦における急性期脳卒中医療の現状は明かではない.今回,急性期脳卒中患者の受診動向を把握するために,国立循環器病センター急性期(発症7日以内)入院連続518例での後向き調査と,一次診療の実態を調べるための大阪府北部地区の無床診療所(開業医)585施設に対する郵送アンケート調査を行った.前者の調査では,発症から来院までの時間に関係する要因を検討した.3時間以内受診は97人(19%),3~6時間は68人(13%),6時間以降は345人(67%)であった.3時間以内に来院しないことに関係する独立因子は,他の医療機関を経由すること(p<0.0001,odds ratio=6.42),非活動時の発症(p=0.0001,odds ratio=4.46),高度麻痺がないこと(p=0.005,odds ratio=3.02),救急車で来院しないこと(p=0.013,odds ratio=2.42)であった.一次診療の実態調査では,一過性脳虚血発作の約15%が専門病院へ紹介されず,神経症候の軽い患者の約24%はその日のうちに専門病院へ紹介されていなかった.また,56%の施設において急性期脳卒中患者の転送先を捜すのに苦慮していた.脳血管障害患者のより有効な急性期治療を実現させるためには,脳卒中の症候や発症時の対応についての医療スタッフおよび社会一般への教育,救急医療としての脳卒中院内診療体制作り,脳卒中救急医療ネットワーク作りが急務であると考えられた.
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