平成10年度から3年間にわたって行われた「脳梗塞急性期医療の実態に関する研究」データより発症3時間以内に来院した脳梗塞4,109例を対象とし,入院時神経症候重症度(NIH Stroke Scale[NIHSS]スコア)と退院時転帰(modified Rankin Scale[mRS]スコア)の関連について解析した.退院時転帰良好(mRS 0~1),不良(mRS 4~5),死亡の比率は,入院時NIHSSスコア0~4では,それぞれ75.2%,5.1%,1.0%,5~9では41.0%,22.7%,2,4%,10~14では19.6%,46.0%,8.3%,15~20では8.3%,58.7%,18.4%,21以上では4.2%,50.8%,39.6%であった.入院時NIHSSスコアが低値であるほど転帰良好の比率が高く,高値であるほど転帰不良と死亡の比率が高かった.病型間での検討では,NIHSSスコア0~4ではラクナ梗塞,5~9では心原性脳塞栓症の転帰良好が有意に高率であった.NIHSSスコア15~20および21以上で,心原性脳塞栓症の死亡率が有意に高かった.年齢層別の検討では,アテローム血栓性脳梗塞0~4を除くNIHSSスコア0~4と5~9の全て病型において,64歳以下の転帰良好の比率が,65~74歳および75歳以上のそれより有意に高かった.以上より,入院時NIHSSスコアと退院時転帰には強い関連がみられ,入院時NIHSSスコアより退院時転帰がかなり正確に予測可能である.また,転帰には,病型および年齢も影響する.
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