脳卒中
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26 巻, 2 号
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  • 脳卒中急性期患者データベースによる前向き検討
    小林 祥泰, 寺崎 修司, 橋本 洋一郎, 井上 勲, 中川原 譲二, 山田 猛, 鈴木 明文, 山崎 正博, 山本 康正, 永山 正雄, ...
    2004 年 26 巻 2 号 p. 323-330
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    目的:超急性期入院虚血性脳血管障害の通常治療による3カ月目の転帰を検討する.
    方法:発症3時間以内に入院し,通常治療を受けた入院時NIH Stroke scale 5~30の虚血性脳血管障害患者で,脳卒中データベースに登録され,発症後3カ月予後を前向きに追跡調査し得た312例(平均73.5歳)を対象とした.機能予後はmodified Rankin scale(mRS)で評価した.
    結果:全体では3カ月後mRS0~1群が21%,2~3群が24%,4~5群が44%,死亡が11%であった.重症度別では入院時NIHSSが5~9では3カ月後のmRS0~1が40%,10~14では13.6%,15~20では3.3%,21以上では3.6%とNIHSS15以上では極めて予後不良であった.
    結論:中等症虚血性脳血管障害患者では超急性期に入院しても,通常治療のみでは社会復帰レベルまで回復する頻度は比較的低いことが示された.
  • 峰松 一夫, 矢坂 正弘, 米原 敏郎, 西野 晶子, 鈴木 明文, 岡田 久, 鴨打 正浩
    2004 年 26 巻 2 号 p. 331-339
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    【目的】若年者脳血管障害の頻度や臨床的特徴を明らかにする.
    【方法】統一形式の調査票を用い,1998年と1999年の2年間に入院した発症7日以内の51歳以上の脳卒中症例の概略と,1995年から1999年までに入院した発症1カ月以内の50歳未満の脳卒中症例の詳細を全国18施設で後ろ向きに調査した.
    【結果】合計7,245症例のデータが集積された.発症1週間以内入院の全脳卒中に占める若年者脳卒中の割合(調査期間補正後)は,50歳以下で8.9%,45歳以下で4.2%,40歳以下で2.2%であった.背景因子を51歳以上(非若年群)と50歳以下(若年群)で比較すると,高血圧(62.7%vs.48.5%),糖尿病(21.7%vs.13.6%),高コレステロール血症(16.5%vs.13.1%)及び非弁膜性心房細動の占める割合(21.2%vs.4.7%)は非若年群の方が高く(各p<0.01),男性(58.9%vs.62.8%),喫煙者(19.3%vs.27.3%)と卵円孔開存例(0.7vs.1.2%)は若年群で多かった(各々p<0.01,p<0.01,p=0.08).TIAの頻度に差は無かったが,脳梗塞(62.6%vs.36.7%)は非若年群で,脳出血(20.8%vs.32.1%)とくも膜下出血(7.3%vs.26.1%)は若年群で高かった(各p<0.01).若年群の原因疾患として動脈解離,Willis動脈輪閉塞症,脳動静脈奇形,抗リン脂質抗体症候群などが目立ったが,凝固系の検査や塞栓源の検索は必ずしも十分ではなかった.外科的治療は37.5%で,退院時の抗血栓療法は31.9%で施行された.退院時転帰は26.0%で要介助,死亡率は8.8%であった.
    【結論】全脳卒中に占める若年者脳卒中の割合は低く,その背景因子は非若年者のそれと大きく異なる.若年者脳卒中への対策の確立のためには,全国規模のデータバンクを構築し,適切な診断方法や治療方法を明らかにする必要がある.
  • case control studyおよび多変量解析
    汐月 博之, 大櫛 陽一, 小林 祥泰
    2004 年 26 巻 2 号 p. 340-348
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    Japanese Standard Stroke Registry Study (JSSRS)の脳卒中急性期患者データベースを用いて,超急性期脳梗塞における血栓溶解療法のretrospectiveな評価を試みた.登録された脳梗塞6,090例のうち,発症3時間以内に入院し,かつ入院時NIH Stroke Scale (NIHSS)が6~29であった467例(平均74歳)を今回の解析対象とした.このうち経静脈的または経動脈的血栓溶解療法施行例は88例であった.性,年齢,入院時重症度でマッチングした対照群とのCase control studyと多重ロジスティック回帰分析により血栓溶解療法のmodified Rankin scale(mRS)でみた退院時機能予後および痴呆の有無に対する効果を検討した.また,血栓溶解療法実施群において,発症来院時間3時間以内(86例:平均69.6歳)と3時間超(28例:平均66.8歳)の2群で多重ロジスティック回帰分析により同様の検討を行った.その結果,血栓溶解療法施行群で退院時の機能予後不良(mRS2~6)の頻度が有意に低く(OR0.554,95%CI0.314~0.976)また痴呆の頻度も有意に低かった(OR0.369,95%CI0.169~0.864).Case control studyでは痴呆の有無のみ有意差を認めた.血栓溶解療法施行群における発症―来院時間3時間以内群では3時間超群に比し,退院時機能予後(mRS0~1)が有意に良好であった(OR2.790,95%CI:1.064~7.316).今回の解析により,retrospectiveではあるが,我が国においても発症3時間以内の血栓溶解療法が脳梗塞に対し有用である可能性が示唆された.
  • 星野 晴彦, 高木 誠, 溝井 令一, 足立 智英, 村井 麻衣子
    2004 年 26 巻 2 号 p. 349-356
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    TIAを含めた虚血性脳血管障害で入院後,発症30日以降経過観察された296例(平均観察期間780.8日)の脳血管障害再発は48例(脳梗塞42例,脳出血6例)であった.累積再発率は1年8.5%,2年14.1%,3年20.0%,4年26.1%であった.臨床病型別では再発率に差は認めなかった.高血圧,脳血管障害の既往,経過観察中拡張期血圧が75mmHg以下あるいは86mmHg以上,抗血小板薬非内服,抗凝固薬内服,HbAlc6.2%以上で再発が多かった.再発臨床病型は入院時と同じ臨床病型が多かった.脳出血で再発した6例中6例全例で高血圧があり,5例では入院時臨床病型がラクナ梗塞,2例で脳出血の既往,5例で抗血栓薬内服が認められた.
  • 高橋 若生, 大貫 知英, 井出 満, 高木 繁治, 篠原 幸人
    2004 年 26 巻 2 号 p. 357-363
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    いわゆる健常者における脳内微小出血(microbleeds, MBs)の臨床的特徴を明らかにする目的で,脳血管障害の既往のない脳ドック受診者3,296例(平均55±11歳)を対象として,gradient-echo T2強調画像上のMBsと脳血管障害の危険因子,頭部MRIおよびMRAの所見との関係についての検討を行った.
    その結果,MBsは対象の2.2%に平均2±2個認められた.MBs[+]群は[-]群に比し,平均年齢(P<0.001),収縮期血圧(P<0.001)および拡張期血圧(P<0.005)の平均が有意に高く,特に基底核ないし視床にMBsを有する群では,無症候性脳梗塞,大脳白質病変の合併が高頻度であった.
    脳血管障害の既往のない例においても,基底核および視床にMBsが認められた場合は,高血圧を含むリスクファクターの治療を十分に行うべきであろう.
  • 山田 浩史, 平山 俊和, 杉原 浩史, 矢崎 直子, 高橋 洋一, 豊島 裕子
    2004 年 26 巻 2 号 p. 364-370
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    【目的】従来血小板凝集は定量的な測定が困難であったため,脳梗塞急性期での詳細な検討はされていなかった.今回散乱光粒子測定装置を用いて脳梗塞急性期各病型における血小板凝集を定量的,経時的に測定した.【対象・方法】対象は脳梗塞急性期患者98例,内訳はアテローム血栓性脳梗塞(ATI)45例,ラクナ梗塞(LI)21例,心原性脳塞栓症(CE)32例であった.脳梗塞の発症日,発症後3,7,14,28日に血小板自然凝集(SPA)を測定した.【結果】脂質・糖代謝,拡張期血圧は脳梗塞後のSPAと関連があり,経過中のSPA最大値はATI群,CE群がLI群に比べ有意に高値を示した.経時的にはATI群,LI群で有意な変化がみられなかったが,CE群は発症後3日のSPAと比べ,14日で有意に低下した.【結論】脳梗塞急性期各病型によってSPAの発現に特徴がみられ,SPAは血小板活性化の指標として有用と考えられた.
  • 折田 悟, 寺崎 修司, 島村 宗尚, 橋本 洋一郎, 内野 誠
    2004 年 26 巻 2 号 p. 371-375
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    49歳の女性が胸髄レベル(Th5)の帯状疱疹罹患1週間後,脳幹梗塞を発症した.近医でアシクロビルにて治療されたが頭痛や吐き気なども出現し増悪した.帯状疱疹発症7日後,症状はさらに増悪し左顔面の感覚低下,Horner徴候,対側の頸部以下の温痛覚低下を呈し,延髄外側症候群に進展した.脳血管造影,頭部MRIなどから本症例は帯状疱疹後の脳幹梗塞と判断した.一般的には帯状疱疹後の脳梗塞は頸動脈系に多く椎骨脳底動脈系には少ないとされている.本症例は帯状疱疹の部位と脳梗塞の部位が,離れている珍しい1例であった.
  • 沼上 佳寛, 西野 晶子, 西村 真実, 廣瀬 奈々子, 上之原 広司, 桜井 芳明
    2004 年 26 巻 2 号 p. 376-381
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    糖尿病を基礎疾患とし,急性の不随意運動を来たし,画像上,大脳基底核に特徴的病変を持つ疾患群が報告され,糖尿病性舞踏病と呼ばれている.今回我々は,コントロール不良な糖尿病症例で急性の片麻痺をきたし,上述の特徴的画像所見と同様な所見を認めた症例を経験した.症例は75才女性.発症時のCTでは右線条体に淡い高吸収域を認め発症19日目のCTではこの高吸収域が変化を残さず消失し,片麻痺も消失した.またMRIでは発症翌日よりT1強調画像で高信号,T2強調画像で低信号を示し通常の高血圧性脳出血とは明らかに異なった特徴を示した.これらの画像所見は糖尿病性舞踏病のそれと一致しており,本症例もその発症に糖尿病が関係するものと思われた.
  • 臨床報告と文献的考察
    田中 優司, 河口 順二, 林 秀樹, 植松 孝広, 山田 潤, 岩間 亨, 齊尾 征直, 森脇 久隆
    2004 年 26 巻 2 号 p. 382-386
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は41歳男性.6年前よりC型肝硬変,1年前から多発性肝細胞癌にて通院中.今回,発熱,全身倦怠感をきたし入院した.入院4日目に意識レベルが低下し,頭部CTにて左急性硬膜下血腫を認めた.緊急穿頭血腫除去術を施行したが,術後3日目(入院7日目)に硬膜下血腫が再発した.開頭術を施行し,左側頭部硬膜に腫瘍を認め切除した.病理組織診断は肝細胞癌であり,術後,意識レベルは回復した.その後,肝不全,腎不全をきたし,入院31日目に死亡した.剖検を施行し,肝細胞癌の頭頂部硬膜,骨髄,肝門部および肺門リンパ節への転移,肝硬変を認めた.以上より,肝癌硬膜転移による急性硬膜下血腫と診断した.担癌患者が硬膜下血腫をきたした場合,稀ではあるが,硬膜転移による可能性も考慮する必要があると考えた.
  • 端 和夫, 山口 武典, 斎藤 勇, 福内 靖男, 篠原 幸人, 桐野 高明
    2004 年 26 巻 2 号 p. 387-396
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    全国80医育機関に対して脳卒中の卒前教育に関するアンケート調査を行い,70大学から回答をえた.脳血管障害の講義時間の平均は約10時間で,脳神経外科がその約60%の時間を担当していた.大学病院で脳卒中急性期の実習がすべての学生で可能な施設は45%と半数以下であった.大学病院以外での脳卒中急性期患者の臨床実習を実施している施設は25%であった.各大学よりの意見を参照した結果,以下の具体的取組みが早急に必要と考えられた.
    1.脳卒中の講義,実習時間を増やす.
    2.関係各科で脳卒中教育に関して連携し,脳卒中学として体系化された教育を行う.
    3.すべての学生に脳卒中急性期症例の実習を行う.(大学病院のSCU,あるいは関連病院での実習を実施する.)
    4.脳卒中医療に使命感を持つ医師を育てる.
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