脳卒中
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3 巻, 4 号
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  • 総頚動脈, 患側内頚静脈, 健側内頚静脈における比較検討
    渋谷 耕司, 金沢 武道, 井沢 和弘, 小野寺 庚午, 目時 弘文
    1981 年 3 巻 4 号 p. 349-355
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳卒中慢性期における血清糖蛋白質分解酵素活性を肘静脈血, 総頚動脈血, 患側 (病巣側) 内頚静脈血, 健側内頚静脈血について測定し比較検討した.また, 非脳卒中についても同様に検討した, 測定した酵素はN-acetyl-β-D-glucosaminidase (以下NAGAと略す), β-D-galactosidase, α-D-mannosidaseの3種類である.
    1) 脳卒中慢性期の肘静脈血における酵素活性はNAGAのみが高値であった.
    2) 非脳卒中の総頚動脈血, 左右内頚静脈血の酵素活性は3種の何れの酵素においても3者間に差はみられなかった.
    3) 脳卒中慢性期における血清NAGA活性は総頚動脈に比して, 患側内頚静脈では差はなく, 健側内頚静脈で高値を示した.β-D-galactosidase活性ならびにα-D-mannosidase活性は総頚動脈血, 患側内頚静脈血, 健側内頚静脈血の3者間に差はなかった.
    以上の成績から, 脳卒中慢性期における肘静脈血のNAGA活性の高値の由来は, 脳の傷害病巣から直接遊出したものではなく, むしろ病巣の変化に対応する健側脳の2次的な反応と考えられる.
  • 鈴木 則宏, 天野 隆弘, 後藤 文男
    1981 年 3 巻 4 号 p. 356-362
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    視床病変と失語症の関連について内外の報告があるが, 病巣が視床に限局するものは極めて少ない.我々は左視床前半部に限局した脳出血を認め, 慢性期においても特異な失語症が持続する症例を経験した.症例は54歳男性, 右利き.ゴルフ中突然発症.意識清明.言語は自発言語に乏しく, 音量は小さく, 音読, 会話でも語句や文章を省略する傾向や加速傾向を認めた.復唱は正常であったが同様の省略傾向を認めた.言語理解は正常.書字言語も正常.神経学的には運動系・感覚系ともに異常なし.失語以外は大脳皮質症状なし.CTで左視床に限局する小出血を認めた.本症例でみられた失語症は文献的類似症例とともに分析すると, 既存の分類のいずれにも属さず, 本特徴を有する失語症を “thalamic aphasia” として取扱うことを提唱したい.
  • 片山 容一, 坪川 孝志, 宮崎 修平, 森安 信雄
    1981 年 3 巻 4 号 p. 363-369
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    高血圧性被殻出血36例において, 急性期のCT上の出血の広がりと慢性期 (6ヵ月) に記録したcontingent negative variation (CNV) の振幅低下との関係を検討した.その結果, 出血がpallidumを経て内包に進展して, anterior hypothalamusの外側に接しolfactory tubercleの上方でcorticobulbar tract, ansa lenticularis, inferior thalamic peduncle, anterior commissureを通るfiberなどが収斂する領域を損傷することにより, 著しいCNVの低下が生ずることを知った.また内包まで進展していない症例でも, 優位側では pallidum を含む出血に有意のCNVの低下を認めた.CNVはPhasic attention に関連を持つ機能を反映するとされているが, このような機能の障害はそれ自体が社会復帰の阻害因子となっており, さらに運動麻痺や失語症の機能訓練の効果にも間接的に影響を与えているものと考えられた.
  • 松崎 隆幸, 福岡 誠二, 和田 啓二, 武田 利兵衛, 末松 克美
    1981 年 3 巻 4 号 p. 370-377
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    Incidental aneurysmのembolic source (symptomatic aneurysm)としての臨床的意義をあきらかにする目的で, 14例の虚血性血管障害で発見された未破裂脳動脈瘤について検討した.
    これらの臨床症状, strokeのタイプ, CT, 所見脳血管撮影所見 (頭蓋内動脈硬化度, 動脈瘤部位, 形状, 頭蓋外頚動脈閉塞性病変), 血液生化学的所見などから, 両者の因果関係を検討した.
    その結果, completed stroke例では, 動脈瘤が虚血原因とするには, 動脈硬化などの他病変を合併している場合が多く証明困難であった.それに対して, 56歳男性, 頻回のTIA (1側麻痺, 言語障害) 例については, 左中大脳動脈瘤クリッピング後1年を経過しても, 完全にTIAは消失した.これらの事実から, TIAの稀なる原因として未破裂脳動脈瘤があることを強調しクリッピングによる動脈瘤処置の重要性を述べた.
  • 西出 正人, 入野 忠芳, 門田 永治, 中 真砂士, 辻 和夫
    1981 年 3 巻 4 号 p. 378-386
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳塞栓のembolic sourceとなるべき心病変を, 過去2年半の間, two-dimensional echocardiographyを用いて検索してきた.その間対象となった虚血性脳血管障害188例 (completed stroke167例, TIA21例) において, リウマチ性弁膜症33例 (17.6%), 僧帽弁逸脱症4例 (2.1%), 僧帽弁輪石灰化症8例 (4.3%), 肥大型心筋症14例 (7.4%), うっ血型心筋症3例 (1.6%), その他17例 (9.6%) が診断された.このうち肥大型心筋症が14例あり, 男性7例, 女性7例, 年齢は53~81歳 (平均69.6歳) であり, うち11例が65歳以上の高齢者であった.ECG上, 7例に心房細動を, 1例に心室性期外収縮を認めた.CT, 脳血管写所見は内頚動脈閉塞症から, 閉塞血管をみいだせないものまでさまざまであった.肥大型心筋症の頻度が7.4%とコントロール群 (非脳卒中患者群) より有意に高く, 高齢者脳塞栓のembolic sourceとして新たに注目されるべき心疾患であると思われる.
  • 山之内 博, 東儀 英夫, 名倉 博史, 深沢 俊男, 松田 保
    1981 年 3 巻 4 号 p. 387-394
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    完成型脳梗塞, RIND, TIAを含む虚血性脳疾患を対象に抗凝固療法とアスピリン治療を行ない, 両者の治療効果と合併症を比較した.9例の心房細動を含む16例には抗凝固療法を行ない, 平均23.8ヵ月間観察し, 52例にはアスピリンを投与し, 平均14.2ヵ月間観察した.
    結果 : 1) ワーファリン治療群では完成型脳梗塞3例 (年間発症率9.5%), TIA1例認められた.アスピリン治療群では完成型脳梗塞3例 (同, 4.9%), RIND型4例 (同, 6.5%), TIA2例認められた.完成型脳梗塞の発症はアスピリン治療群でやや少ない傾向がみられたが, 脳虚血発作全体の発症率は両治療群間に有意の差はみられなかった.2) 治療期間中の合併症としては, ワーファリン治療群では性器出血1例, アスピリン治療群では脳出血3例, 消化管出血4例の計7例みられた.アスピリン治療における消化管出血には注意する必要がある.
  • 山之内 博, 東儀 英夫, 名倉 博史, 望月 広, 松田 保
    1981 年 3 巻 4 号 p. 395-402
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    TIA, RINDの可逆型発作を含む119例の非塞栓性脳梗塞例 (平均年齢70.8歳) を対象に, 可逆型発作と完成型脳梗塞の関係, 脳血管撮影所見に基づく動脈硬化病変との関連, 可逆型発作例の凝血学的特徴の有無について検討し, 以下の結果を得た.
    1) 完成型脳梗塞103例中, TIAの先行は14例 (13.6%) に, RINDの先行は7例 (6.8%) に認められた.可逆型発作を有する例の80%は内頚動脈系の症状を呈した.2)TIA, RINDの有無と内頚動脈分岐部における狭窄度, 潰瘍形成の有無との間に有意の関係はみられなかった.可逆型発作例, 完成型脳梗塞例, いずれも頚部の内頚動脈の動脈硬化が軽い例が多かった.3) 完成型脳梗塞例の血液ヘマトクリット値は健常老年者に比し, 有意の高値であった.可逆型発作群, 完成型脳梗塞群, いずれもantithrombin III値は, 健常老年者に比し有意に低値であった.
  • 西野 克寛, 古和田 正悦, 今野 拓夫, 坂本 哲也
    1981 年 3 巻 4 号 p. 403-408
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    神経原性肺水腫の予後は一般に不良であり, 現在まで報告されている救命例は12例にすぎない.それらの多くは一側性か, 両側性でも比較的限局した肺水腫の症例で, 両側性に肺野全体に及ぶ高度の肺水腫の救命例は極めて少数である.
    症例は56歳の男性で右内頚-後交通動脈分岐部動脈瘤の破裂直後に, 両側全肺野に及ぶ高度の肺水腫を併発した.間歇的陽圧呼吸, ジギタリスと利尿剤の投与, 持続脳室ドレナージにより, 72時間後に軽快した.
    文献上同様な重症神経原性肺水腫の救命例は2例報告されており, いずれも院内にて発症し, 早期に肺水腫と診断され, 迅速に適切な治療が行われ救命されている.
  • 棚橋 紀夫
    1981 年 3 巻 4 号 p. 409-416
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    ネコ脳皮質組織における虚血後 (中大脳動脈閉塞) の反応性充血について, 虚血時間と出現する反応性充血の関係を脳血液容積の変化を直接測定できる光電法を用いて定量的に検討した.1分未満の虚血では, 再開通後の反応性充血は出現しなかった.1分以上の虚血より, 再開通後の反応性充血がみられるようになり, 虚血時間の延長につれて再開通後の反応性充血が著明となり, 持続時間も延長した.反応性充血が出現するまでには虚血1分間という時間が必要であり, その出現機序に代謝性因子と自動調節能の障害の両者の関与が示唆された.
  • 立花 久大, 石川 良樹, 後藤 文男
    1981 年 3 巻 4 号 p. 417-426
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    脳循環autoregulationを推定し得る網膜血管反応性の立場より, 脳血管障害患者のautoregulation障害に関与する因子につき検討した。天幕上脳梗塞 (CVD) 23例と正常対照群20例につき, 眼底カメラを用い潅流圧変動に対する網膜血管の反応性を検討した.潅流圧変動は横臥位より立位への体位変換により行なった。結果 : CVDの網膜血管反応性は対照群に比し有意に低下し, 発作からの期間とは正の相関, 起立時の血圧下降とは負の相関を示した.病巣の大きさよりも部位 (皮質病変より皮質下病変で反応性低下大) との相関を示す傾向がみられた.年齢, 発作回数, 高血圧症の有無, 糖代謝異常, ヘマトクリット値, 血沈値, 総コレステロール値, 眼底所見等とは明らかな相関関係を認めなかった。以上, 網膜血管反応性からみたCVDのautoregulation障害度と最も密接な関係を示したのは, 発作後の日数と起立性血圧下降の程度である.
  • 衣川 秀一, 澤田 徹
    1981 年 3 巻 4 号 p. 427-433
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳卒中患者48例を対象にthermisterまたはimpedance pneumographを用い呼吸パターンを記録し, 主として病巣部位と異常呼吸との関係を検討した.病変が天幕上に限局している場合は, 周期性呼吸 (Cheyne-Stokes呼吸を含む) のみが出現し, 特に両側性障害では約80%と高頻度にみられた.中脳障害では周期性呼吸に加え, 過呼吸が高頻度 (70%) に出現した.橋障害では周期性呼吸, 過呼吸に加えcluster呼吸もみられた.失調性呼吸は全例延髄障害による死亡直前に認められた.脳底動脈閉塞により, 主病変が両側橋底部にあった広範脳幹梗塞5例中4例にsigh & rest (正常呼吸中に1回の大きな吸気とそれに続く10数秒間の無呼吸がおこるのを1周期とする) が出現した.大脳障害時に出現する周期性呼吸は長周期 (60秒~120秒, 平均62秒) で死亡率は25%であるのに比し, 脳幹障害時のそれは短周期 (20秒~50秒, 平均27秒) で, 致命率は100%であった.
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