脳卒中
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30 巻, 3 号
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総説
原著
  • 細谷 和生, 徳力 康彦, 中村 威彦, 織田 雅, 高野 誠一郎
    2008 年 30 巻 3 号 p. 458-461
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    急性期脳梗塞に対してのdirect PTAとrtPA静注療法との血行再建成績を比較する.対象は2005年10月以前に行われたdirect PTA 25例と2005年10月から2007年3月までに治療されたtPA静注療法25例.direct PTAは急性脳動脈主幹部閉塞でMR-DWIの信号変化が灌流領域の1/3以下のみを適応とし,バルーンで機械的血栓破壊した後にウロキナーゼ注入を行った.direct PTA群では再開通率は88%.mRSが2以下の予後良好例は52%,出血性合併症が16%であった.一方,rtPA静注療法群のmRSが2以下は56%,出血性合併症が12%でほぼ同等であった.direct PTAは再開通率も高く血行再建に優れているが,転帰,合併症率ではrtPA静注と変わらない結果であった.これは急性期脳主幹動脈閉塞症において再開通率より再開通までの時間がより重要な予後決定因子となること示唆したものである.
  • 梅村 敏隆, 松井 克至, 新美 芳樹, 梅村 敬治郎, 寺尾 心一, 平山 幹生
    2008 年 30 巻 3 号 p. 462-470
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    背景と目的:Branch Atheromatous Disease(BAD)は進行しやすく,予後も悪いことが多いが,関連する因子は詳細に検討されていない.そこでBADの進行と予後に関連する因子を明らかにするため,テント上(s-BAD)とテント下(i-BAD)に分類して比較検討した.
    対象と方法:発症48時間以内に頭部MRI拡散強調画像を施行しBADと考えられた110例(s-BAD 74例,i-BAD 36例)で,入院後48時間以内にNIHSSが2点以上悪化を進行例,退院時modified Rankin Scale(mRS)>2を予後不良例とした.
    結果:進行例はs-BAD 17例(23.0%),i-BAD 15例(41.7%)で予後不良例はs-BAD 32例(43.2%),i-BAD 13例(36.1%)であった.多変量解析で進行と有意に関連した因子はs-BADでは年齢(OR 1.09,95%CI 1.00∼1.18,p<0.05),i-BADでは糖尿病(OR 7.34,95%CI 1.08∼49.57,p<0.05)であった.予後不良の有意な関連因子はs-BADでは年齢(OR 1.11,95%CI 1.01∼1.22,p<0.05),入院時NIHSS(OR 2.01,95%CI 1.22∼3.29,p<0.01),i-BADでは年齢(OR 1.15,95%CI 1.02∼1.30,p<0.05)であった.
    結論:BADの進行と予後に関連する因子はテント上下で差異を認め,血管系により病態が異なる可能性もあり,今後さらなる検討が必要である.
  • 佐藤 裕之, 小泉 孝幸
    2008 年 30 巻 3 号 p. 471-477
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    クリッピング術を第一選択としている当院で治療を行った80歳以上の超高齢者破裂脳動脈瘤について検討を行った.対象は2002年1月から2007年4月まで当院でくも膜下出血と診断した患者は144例であり,80歳以上の超高齢者は16例11.1%であった.80歳から87歳で,男性3例,女性13例であった.治療方針は原則的にHunt and Kosnik grade IV以下であれば急性期クリッピング術を第一選択とし積極的治療を行った.入院時gradeは,grade I:1例,grade II:1例,grade III:5例,grade IV:3例,grade V:6例で重症例が多く,9例に急性期クリッピング術を施した.転帰はmodified Rankin Scale(mRS)0∼2:3例,mRS 3∼4:1例,mRS 5∼6:12例でgrade Vは全例発症早期に死亡した.転帰不良の主要因では3例(18.8%)が肺炎を含む全身合併症であり,80歳未満と比較して80歳以上では有意に転帰に及ぼす影響が大きかった.入院時の重症度によっては急性期クリッピング術及びその後全身性合併症の予防を考慮した管理を行うことで良好な転帰が得られる症例も認められた.
  • 渡邉 善一郎, 前野 和重, 渡邉 貞義, 田村 晋也, 伊崎 堅志, 菊池 泰裕, 後藤 博美, 小泉 仁一, 渡邉 一夫
    2008 年 30 巻 3 号 p. 478-483
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    (目的)急性期破裂脳動脈瘤手術において脳虚血は,頻度の高い合併症であるが,今回周術期の脳塞栓の発生頻度を明らかにし,検討を加えたので報告する.
    (対象,方法)2004年から2006年まで当院で,開頭クリッピング術を行った急性期破裂脳動脈瘤の患者のうち,術前と術後5日以内にMRIを施行した131例を対象とした.術後拡散強調画像(DWI)で新たに脳塞栓症と診断された症例を抽出し検討を加えた.
    (結果)131例中11例(8.4%)に新たな脳塞栓症が出現した.うち8例では,手術側にのみ梗塞巣が出現していた.4例では一時血行遮断をした血管領域の塞栓が認められた.症状を呈したのは,両側性多発性の梗塞を来たした1例のみであった.
    (結論)急性期破裂脳動脈瘤周術期の脳塞栓の発生には,手術操作が原因である可能性が高いが,手術と直接関係のない部位の脳塞栓も認められており,今後更に注意し検討を要する合併症である.
  • 佐古 和廣, 白井 和歌子, 徳光 直樹, 相沢 希
    2008 年 30 巻 3 号 p. 484-489
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    脳卒中の実態調査を行い,脳出血の発症率,危険因子の有病率等を検討した.対象は02年7月より06年6月までに道北脳卒中共同研究に登録された脳卒中患者1,046名中の脳出血患者271名.結果は,平均年齢は70.3±11.7歳,男女比は154/117,入院時平均NIHSSは11.8±8.1,3カ月死亡率は19.2%,3カ月の自立率(mRS:≤2)は32.5%であった.高血圧の既往は72.3%で,未治療が13.7%であった.MRI(T2*)で67.5%に出血部以外に微小出血を認めた.47例(17%)では抗血小板薬を服用しており,死亡率では,服用群,非服用群で有意差を認めなかったが,3カ月の自立率では,服用群19.1%に対し非服用群37.3%と,服用群が有意に転帰不良であった.北海道北部では脳出血が未だ高い比率を示し,高血圧のコントロール不良と未治療が30%を占めていることより,住民への啓蒙に加え医師への厳格な血圧管理の重要性の喚起も必要と考えられた.
症例報告
  • 岩田 智則, 森 貴久, 田尻 宏之
    2008 年 30 巻 3 号 p. 490-495
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    83歳の男性が軽度の意識障害と右片麻痺を突然発症し搬入された.来院時に症状は軽減していたが,脳血管造影上,大きな壁在血栓が付着する右内頸動脈起始部高度狭窄が診断された.早い時期に頸動脈閉塞や動脈原性塞栓症を起こす可能性が高かったため,予防目的で脳梗塞急性期(第3病日)に緊急頸動脈血行再建術を施行した.病変の近位側である右総頸動脈を遮断し,病変を拡張後に末梢側にフィルター型の塞栓保護カテーテルを挿入する技術を用い,ステントを留置して右内頸動脈狭窄を拡張するとともに血栓を回収することに成功した.症状が進行することなく良好な臨床転帰を得ることができた.
  • 岡本 洋子, 松本 理器, 高橋 良輔, 冨本 秀和
    2008 年 30 巻 3 号 p. 496-499
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    40歳,右利き女性.右側後大動脈領域の脳梗塞を発症し,脳梁体部から膨大部右側にも病変を認めた.左同名半盲に加え,「左手が自分の手のような感じがしない」という訴えがあった.左手の観念運動失行や拮抗失行はなかった.他人の手徴候(alien hand sign)については定義の変遷があり,表現が混乱しているが,Brionによる本来の定義では「脳梁損傷患者が視覚外で左手を右手でつかんだときに感覚障害がないのに自分の手と認知できないこと」1)である.本例はこのBrionの定義する他人の手徴候にあてはまると思われ,脳梁離断による症状の可能性が示唆された.
  • 七田 崇, 緒方 利安, 矢坂 正弘, 卯田 健, 井上 亨, 井林 雪郎, 飯田 三雄, 岡田 靖
    2008 年 30 巻 3 号 p. 500-504
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    83歳男性.舌の扁平上皮癌に対し8年前に放射線療法を受けた既往あり.左上下肢の脱力を主訴に来院し,頭部MRIで右大脳半球に分水嶺梗塞を認めた.頸部血管超音波検査では左内頸動脈は起始部でほぼ閉塞するも,右内頸動脈には可視範囲に狭窄病変を認めなかった.しかし,経口腔頸部血管超音波検査(TOCU)では通常の動脈硬化性病変好発部よりも高位において右内頸動脈の高度狭窄が指摘された.入院後も神経症状が増悪,右内頸動脈系に新規の梗塞巣が出現したため,右内頸動脈高度狭窄病変を塞栓源とするアテローム血栓性脳梗塞と診断した.当症例には頸部血管病変の動脈硬化の危険因子がなく,高位狭窄病変を有することから,過去の舌癌に対して施行された放射線照射が原因と考えられた.放射線療法に伴う高位頸部血管病変の評価にTOCUが有用と考えられる.
  • 木内 智也, 鈴江 淳彦, 宇野 昌明, 永廣 信治
    2008 年 30 巻 3 号 p. 505-510
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    もやもや病の中で片側もやもや病(疑診例)は異なる病態として区別され,家族内発生の報告はほとんどない.我々は疑診例の母親を有する両側もやもや病(確診例)姉妹の家系を経験した.母親は31歳時に脳室内出血にて発症した右側の疑診例である.左内頸動脈終末部に狭窄は認められず16年間経過後進行は認められていない.19歳の長女と12歳の次女は,両側の内頸動脈終末部に狭窄を認め,確診例と診断された.姉妹共にそれぞれ両側の直接または,間接吻合術を施行した.今回我々の経験した家系は疑診例と確診例の病態を考察する上で,示唆に富む症例であると考えられたので報告する.
  • 柳原 千枝, 高橋 竜一, 和田 裕子, 西村 洋
    2008 年 30 巻 3 号 p. 511-515
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    先天性プラスミノーゲン異常症は持続的な線溶活性の低下を特徴とする病態であり,本邦で比較的頻度が高く時に血栓症を合併することが知られているが,脳血管障害の報告は少ない.我々は脳梗塞で発症したプラスミノーゲン異常症の親子例を経験した.症例1は49歳男性.右同名性半盲で発症,頭部MRI拡散強調画像で左後頭葉内側と側頭葉底面に高信号域が出現しMRAでは左後大脳動脈の狭窄を認めた.プラスミノーゲン活性61%(71∼130%)と低下,経食道心エコー(TEE)では卵円孔開存を認めた.症例2は症例1の長男.発症時期は不明だが視野障害が以前からあり頭部MRIで左後頭葉内側の陳旧性梗塞を認めた.プラスミノーゲン活性57%と低下しておりTEEで卵円孔開存の所見を認めた.いずれの症例も他のリスクがなくプラスミノーゲン活性異常と卵円孔開存による奇異性塞栓が脳梗塞の成因と考えられた.
  • 宇佐美 清英, 徳元 一樹, 猪野 正志, 小澤 恭子, 木村 透, 中村 重信
    2008 年 30 巻 3 号 p. 516-520
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の男性.頸部回旋後に後頸部痛,右上下肢の麻痺,しびれ感,顔面の感覚鈍麻,喋りづらさがあり,当初,原因として椎骨動脈解離による脳梗塞が強く疑われた.しかし,発症14時間後の頭部MRIで責任病巣を認めず,「顔面の感覚鈍麻」と「喋りづらさ」を神経脱落徴候ではないと判断し,頸髄レベルの病変を疑い,頸部MRIで頸髄硬膜外血腫と診断した.顔面感覚鈍麻の訴えは変動し信頼性に乏しく,喋りづらさは口腔内乾燥によるものであった.脳卒中の疑われる患者が頭痛・頸部痛を訴える場合,稀だが治療が全く異なる頸髄・頸胸髄硬膜外血腫の可能性も念頭におきつつ,正確な神経学的部位診断・鑑別を心がけるべきである.
  • 堀口 健太郎, 小林 英一, 三枝 敬史, 小沢 義典, 佐伯 直勝
    2008 年 30 巻 3 号 p. 521-525
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    末梢性後下小脳動脈瘤(distal PICA aneurysm)は比較的稀な動脈瘤である.今回われわれはdistal PICA aneurysmの中でもクモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage;SAH)で発症した二重起始後下小脳動脈吻合部動脈瘤(Aneurysm on double origin of the PICA;double PICA aneurysm)に対して血管内治療を施行した1例を経験した.
    症例は44歳男性で糖尿病教育入院中にSAHを認め,当科緊急転科となった.CTではfisher group3のSAH及び第四脳室内にも血腫を認めた.右椎骨動脈撮影にて頭蓋外椎骨動脈より分枝するPICA(extracranial lower branch)と頭蓋内椎骨動脈より分枝するPICA(upper branch)の合流部に動脈瘤を認めた他,右椎骨動脈自体も高度に狭窄,蛇行していた.左椎骨動脈は鎖骨下動脈起始部より閉塞していた.急性期治療を避け,脳血管攣縮期を乗り切り,治療する方針としコイル塞栓術を施行した.術後,動脈瘤陰影は消失し,PICA遠位部も良好に描出されていた.
    二重起始後下小脳動脈吻合部動脈瘤(Aneurysm on double origin of the PICA;double PICA aneurysm)に対して,文献的考察を加えて報告する.
第32回日本脳卒中学会講演<シンポジウムIV>
  • 高木 康志
    2008 年 30 巻 3 号 p. 526-530
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    脳梗塞に対する細胞移植のソースとしては,さまざまな細胞が試みられている,我々はそのなかでも神経細胞を移植のソースとして考え,実験に用いてきた.神経細胞の特徴としては増殖しないということが挙げられ,また脳梗塞においては梗塞巣に存在するさまざまなタイプの神経細胞が失われるという特徴がある.これらの問題をクリアするために,我々は神経幹細胞を移植のソースとして用いてきた.神経幹細胞は増殖能を持つとともに,さまざまなタイプの神経細胞に誘導することが出来る.そして,神経幹細胞を誘導するソースとして胚性幹細胞と骨髄間質細胞を用いている.我々の現在のデータおよび今後の問題点について述べる.
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