脳卒中
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31 巻, 5 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
原著
  • 宇野 昌明, 永廣 信治, 三宅 秩代, 佐藤 雅美, 丸傳 信江
    2009 年 31 巻 5 号 p. 291-297
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    非心原性脳梗塞症例に対して,チクロピジンからクロピドグレルに切り替えた47例に対して,安全性,発作予防効果,血小板凝集能の変化につき検討した.クロピドグレル切り替え後1例で軽度の肝機能障害,3例で皮疹が出現したが何れも軽症であった.1例で不安定狭心症が出現したが残りの46例では脳梗塞の再発および心血管イベントの出現はなかった.血小板凝集能を35例で切り替え前後に測定したところ,ADP凝集grading curveのgradeが変化しなかった症例は17例(48.6%),切り替え前より凝集能がより抑制された症例が9例(25.7%),凝集能が亢進した症例が9例(25.7%)見られた.しかしこのうちの7例はgrade −1あるいは0に復した症例で,2例のみがgradeが+1以上になった.以上よりチクロピジンからクロピドグレルへの切り替え症例では安全性,血小板凝集能を含む効果の面でも良好な結果を得た.
  • 高嶋 修太郎, 豊田 茂郎, 田中 耕太郎, 遠藤 俊郎, 桑山 直也, 佐々木 尚, 冨子 達史, 久保 雅寛, 木谷 隆一, 原田 淳, ...
    2009 年 31 巻 5 号 p. 298-306
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    【目的】脳卒中治療ガイドライン2004の発表前後で急性期脳梗塞診療の変化を検証する.【方法】2003年と2006年の各々2月1日~7月31日の6カ月間に富山県内の主要9病院へ入院した急性期脳梗塞患者を調査解析した.【結果】症例数は2003年293例/2006年237例.臨床病型は,ラクナ梗塞;39%/37%,アテローム血栓性脳梗塞;28%/30%,心原性脳塞栓症;21%/22%.心原性脳塞栓症では3時間以内の来院は34% から57% へ有意に増加した.しかし,2006年では発症3時間以内に来院した74例(31%)のうちrt-PA静注による血栓溶解療法は5例(2.1%)のみに施行された.治療開始前の病巣確認は43% から52% へ有意に増加し,MRI拡散強調画像の施行は54% から92% へ有意に増加した.【結論】ガイドライン発表後,臨床病型を考慮して治療が行われる傾向にあった.しかし,血栓溶解療法の実施率は未だ低かった.
症例報告
  • 松本 伸治, 柴田 裕次, 中島 誠爾, 鈴木 壽彦, 頃末 和良
    2009 年 31 巻 5 号 p. 307-310
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    44歳,女性.突然の頭痛,その後短時間の意識消失のため救急搬送された.頭部CT検査にて右シルビウス裂にくも膜下出血を認め,脳血管撮影検査では右内頚動脈の後交通動脈と前脈絡叢動脈の間に窓形成を認め,その外側部に2個の動脈瘤様膨隆を認めたため,開頭によるクリッピング術を施行した.術後特に合併症なく,約1カ月後に左側内頚動脈の未破裂動脈瘤に対してもクリッピング術を施行しその後退院した.頭蓋内内頚動脈に窓形成を認める症例はまれであり,これに動脈瘤を合併した症例は極めてまれである.窓形成部では血管壁が菲薄化し,これに伴い動脈瘤が形成される可能性があるためその処置においては注意が必要と思われる.
  • 石田 藤麿, 三浦 洋一, 霜坂 辰一, 亀井 裕介, 梅田 靖之, 藤本 昌志
    2009 年 31 巻 5 号 p. 311-316
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    頚部頚動脈狭窄症の外科的血行再建の適応を判断する際,狭窄率の判定は重要である.これまで報告されている無作為比較試験は2D digital subtraction angiography(DSA)にて狭窄率を測定しているため,現在もなお頚部頚動脈狭窄症においてはconventional DSAがgold standardである.今回conventional DSAを施行したが,狭窄率が的確に評価できなかった2症例において内膜剥離術を行い,摘出したプラークの病理所見と術前の3D rotational angiography(3D-RA)を比較検討した.3D-RAは,空間分解能が高い,撮影後に無制限の方向から観察できるという利点を有しており,頚部頚動脈狭窄症においてより正確な狭窄率の判定が可能になる症例がある.
  • 中嶋 匡, 西村 裕之, 浮田 透, 辻 雅夫, 三宅 裕治, 大村 武久, 立花 久大
    2009 年 31 巻 5 号 p. 317-321
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    症例は66歳女性.他院にて経動脈的冠動脈形成術が施行され,特変なく終了したが術後1時間から右眼瞼下垂,めまいが出現したため当院を紹介され入院した.入院時意識清明,脳神経系では右眼瞼下垂を認めたが瞳孔に左右差はなかった.眼球運動は,両眼とも水平方向と上転は保たれていたが,下転障害と輻輳障害を認めた.深部反射・運動系・感覚系に異常はなかった.協調運動では,右上肢で指鼻指試験が拙劣で,両膝踵試験は軽度拙劣であった.入院時の頭部MRI水平断上では明らかな異常を認めなかったが,脳幹梗塞を疑い抗血小板・脳保護療法を行った.第2病日に頭部MRIを冠状断にて再検査したところ,左中脳水道腹側に小梗塞を認め,中脳梗塞と診断した.片側性障害でも両側性下方注視障害を呈する可能性があり,眼球運動に関する病態を理解するうえで貴重な症例と考えられた.
  • 鹿児島 海衛, 今井 英明, 菅原 健一, 石内 勝吾, 中里 洋一, 好本 裕平
    2009 年 31 巻 5 号 p. 322-327
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    脳腫瘍との鑑別が困難であった脳アミロイドアンギオパチーの1例を報告する.64歳,男性.主訴は一過性の視野障害.初診時,神経学的異常所見は認めなかった.頭部単純CTで左頭頂葉から後頭葉にかけて低吸収域を認め,MRIでは同部位にT1強調画像で低信号域,T2強調画像,FLAIR画像で高信号域を認め,ガドリニウムによる造影効果は見られなかった.左後頭葉の病変は,18F alpha-methyl tyrosine-positron emission tomography(FMT-PET)にて集積を認めた.確定診断を得るため,開頭生検術を施行した.手術所見としては,脳回がやや腫大し,脳軟膜下表面に茶褐色の斑点が見られた.病理診断はcerebral amyloid angiopathy(CAA)with thrombosisで,免疫染色はamyloid βが血管壁に陽性を示した.本症例の病態としてCAAに血管炎を伴っていたため,FMT-PETで集積を認めたと推察された.
  • 亀田 知明, 土井 宏, 冨田 敦子, 杉山 美紀子, 釘本 千春, 児矢野 繁, 鈴木 ゆめ, 黒岩 義之
    2009 年 31 巻 5 号 p. 328-331
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性.重度の意識障害(JCSIII-200)と右片麻痺を発症して入院した.頭部CT検査で左側の被殻から前頭葉にかけて著明な正中構造偏倚を伴う血腫を認め,左被殻出血と診断した.入院時の神経学的所見で右側への眼球共同偏倚と右眼の瞳孔散大が合併し,責任病巣の推定が困難であった. 脳MRI検査を行ったところ,正中構造偏倚に伴う中脳の右側への歪曲と右傍正中領域の梗塞巣を認めた.被殼出血における病初期の対側瞳孔散大はまれな症候で,病態も不明な点が多いが,血腫の圧排による対側中脳梗塞が原因となる場合があることを報告した.
  • 西嶌 春生, 金森 政之, 西村 真実, 堀 恵美子, 川口 泰洋, 米澤 慎悟, 西嶌 美知春
    2009 年 31 巻 5 号 p. 332-336
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage : SAH)の原因の一つに稀ながら脊髄動静脈瘻がある.本疾患に対する治療法として血管内治療,外科的治療があるが,保存的治療では再出血の危険が高く予後不良で自然に軽快することは稀である.今回我々はSAHで発症した頚髄動静脈瘻で,自然消退が認められた1例を経験した.症例は67歳女性で突然の頭痛で発症したSAHで入院した.発症25日目に血管撮影で右C1 radiculo-medullary arteryを流入動脈,右C1 radicular veinを流出静脈とし上位頚髄右側に静脈瘤を伴う血管奇形が認められ,脊髄動静脈瘻と診断された.外科的治療,血管内治療を希望せず保存的加療を受けた.厳重な経過観察で発症9カ月目に静脈瘤の消失,発症44カ月目に流入動脈の消失が認められた.頚髄動静脈瘻の自然消失は稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 布施 孝久, 市橋 鋭一, 松尾 直樹, 安部 友康, 小山 英樹
    2009 年 31 巻 5 号 p. 337-341
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    一側内頸動脈形成不全に伴う後交通動脈動脈瘤は非常に稀である.今回,右内頸動脈形成不全を有し,右後交通動脈に発生した脳動脈瘤が破綻し,脳内出血像を示した症例を経験した.本例は右中大脳動脈が右後交通動脈を介して椎骨脳底動脈系から血流を受けていた.MRI所見から出血は動脈瘤壁外側に存在しており,部分血栓化動脈瘤ではないと判断された.治療法は直達術ではリスクが高いと考え,瘤内塞栓術をダブルカテーテル法で施行した.術後2年を経て,経過良好であるが,今後も慎重な観察が必要と考えている.
短報
  • 土井 宏, 石村 洋平, 遠藤 雅直, 鈴木 ゆめ, 黒岩 義之
    2009 年 31 巻 5 号 p. 342-345
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    成人肺炎球菌性髄膜炎に伴う脳梗塞において,MR angiography(MRA)で可逆性脳動脈狭窄を確認しえた症例を経験したので報告する.症例は74歳,男性.発熱,意識障害を認め当科に入院し肺炎球菌性髄膜炎と診断された.入院14日目のMRI検査では脳幹・両側大脳半球に多発梗塞像を認めMRAで両側中・後大脳動脈,脳底動脈の壁不整,狭窄像を認めた.入院39日目にはMRAで脳動脈狭窄の改善を認め,狭窄が可逆的であったことを確認した.本症例は細菌性髄膜炎に伴う脳動脈狭窄,脳梗塞の機序に血管攣縮が関与していることを示唆する貴重な症例と考えられた.細菌性髄膜炎に伴う脳動脈血管炎,脳梗塞の合併は予後を悪化させる因子であるにもかかわらず,現在までにその予防法,治療法は確立されていない.今後,細菌性髄膜炎に伴う脳動脈血管炎,脳梗塞の有効な予防法・治療法を検討する上で,MRAの観察は重要であると考えられた.
  • 住田 陽子, 岡村 智教, 東山 綾, 渡邉 至, 小久保 喜弘, 横山 広行, 岡山 明
    2009 年 31 巻 5 号 p. 346-348
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    rt-PAによる血栓溶解療法は,発症3時間以内の症例のみに適応される治療法であり,発症から入院までの時間が非常に重要である.しかし脳梗塞患者を対象に発症入院時間について検討した研究は本邦ではほとんどない.我々は国立循環器病センターと全国の国立病院機構の病院に入院した1,044例(男性577例,女性467例)を対象に,発症から入院までの時間を重症度の4分位別に性・年齢で階層化し検討した.男女とも軽症例で発症から入院までの時間が長くなる傾向があった.75歳未満では最も軽症群で発症入院時間が有意に男性より女性で約2倍長かった.このような性差は脳出血やくも膜下出血では認めなかった.75歳未満軽症例で発症入院時間に性差がある理由は,今後医学的側面からだけではなく社会的側面からの検証が必要である.
「脳梗塞t-PA研究会」第3回研究集会 総説
「脳梗塞t-PA研究会」第3回研究集会 原著
  • 祢津 智久, 古賀 政利, 永沼 雅基, 木村 和美, 塩川 芳昭, 中川原 譲二, 古井 英介, 山上 宏, 岡田 靖, 長谷川 泰弘, ...
    2009 年 31 巻 5 号 p. 366-373
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法前のMRI拡散強調画像(DWI)での早期虚血変化と転帰の関連を検討した.対象は連続420例(男性280例,71±11歳).ASPECTS-DWIで領域別虚血変化を評価し,3カ月後のmRS 0–2を転帰良好とした.単変量解析では若年,心房細動なし,治療直前NIHSSスコア低値,ASPECTS-DWI(11点法)高値,内頸動脈閉塞なしが転帰良好と関連した(全てP<0.001).ROC曲線で求めた転帰良好を予測するASPECTS-DWIの閾値は7点(感度92%,特異度31%,AUC 0.622)であり,ASPECTS-DWI 7点以上は年齢,性,治療直前NIHSS,高血圧,心房細動,内頸動脈閉塞で補正後も有意に転帰良好に関連した(オッズ比2.78,95%信頼区間 1.45–5.49).DWIによる早期虚血変化はrt-PA静注療法患者の転帰を検討するうえで有用であった.
  • 原田 啓, 石原 秀行, 加藤 祥一, 岡 史朗, 米田 浩, 占部 善清, 鈴木 倫保
    2009 年 31 巻 5 号 p. 374-379
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    t-PA静注療法は脳梗塞急性期の治療手段を拡大させたが,脳主幹動脈閉塞の再開通率は十分ではない.当科ではt-PA静注療法の無効例に対して血管内治療を追加したので,その治療成績と現状の問題点を報告する.
    2008年4月から2009年3月にt-PA静注療法を行った20例中,血管内治療を追加した6例を対象とした.初診時の平均NIH Stroke Scaleは17±2.1点,全例が中大脳動脈M1部閉塞であった.2例でpercutaneous transluminal angioplasty(PTA),1例でt-PA動注,3例でPTAとt-PA動注の両者を行った.再開通は83%(5/6例)で得られた.症候性頭蓋内出血例はなく,1例で無症候性頭蓋内出血がみられた.3カ月後の転帰良好例modified Rankin Scale 0–1は50% であった.
    t-PA静注療法と血管内治療の併用は海外で高い再開通率が報告され,t-PA静注療法後の非再開通例には効果が期待できる.一方,頭蓋内出血の合併が危惧されるため,慎重な症例選択が必要である.
「脳梗塞t-PA研究会」第3回研究集会 短報
  • 木村 和美, 井口 保之, 芝崎 謙作, 青木 淳哉, 松本 典子
    2009 年 31 巻 5 号 p. 380-382
    発行日: 2009/09/25
    公開日: 2009/10/15
    ジャーナル フリー
    Background and Purpose: The efficacy of pharmacological thrombolysis using tissue plasminogen activator (t-PA) depends upon the relative fibrin content of the thrombus. We investigated whether stroke patients with a right-to-left shunt (RLS), whose embolic source was associated with fibrin-rich thrombus formed in the venous system, were more likely to improve dramatically after thrombolytic therapy than those without RLS. Methods: Acute stroke patients treated with t-PA were assessed prospectively to determine the clinical factors associated with “dramatic improvement– after t-PA administration. “dramatic improvement– was defined as a ≥10 point reduction in the total NIHSS score or a total NIHSS score of 0 or 1 at 7 days. The presence of an RLS was determined using contrast transcranial Doppler (c-TCD) within 6 hours of stroke onset. Results: 48 patients (26 males; mean age; 73.0±10.7 years; baseline NIHSS score, 13.4±6.6) were enrolled. Twenty-one patients had dramatic improvement (D group). c-TCD demonstrated an RLS in 17 (35.4%) patients. On multivariate logistic regression analysis using hyperlipidemia, atrial fibrillation, RLS, DWI-ASPECTS (>8), baseline NIHSS score (<10), and glucose (<120mg/dl) as variables with a P<0.1 on univariate analysis, RLS (OR: 5.9; CI: 1.3–27.3, P=0.022) was the only independent factor associated with dramatic improvement. Conclusion: The presence of an RLS on c-TCD was an independent factor associated with dramatic improvement after t-PA administration.
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