脳卒中
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32 巻, 3 号
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原著
  • 犬飼 千景, 犬飼 崇, 松尾 直樹, 高木 輝秀, 名倉 崇弘, 小関 弘智, 清水 郁男, 山田 隆寿, 高安 正和
    2010 年 32 巻 3 号 p. 229-235
    発行日: 2010/05/25
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル フリー
    頸部頸動脈狭窄症ステント留置術前評価法として行ったMRI BB法と造影CTによるプラーク診断の相関につき検討した.【方法】CASを施行した35症例を対象とした.【結果】MRI BB法における不安定プラーク群(Unstable群)は19例,安定プラーク群(Stable群)は16例であり,プラーク内CT値の平均値はU群35.4 HU,S群80.2 HUとなり有意差を認めた(p < 0.01).またHU値とMRI T1 Plaque/Muscle比間には負の相関が見られた(r = -0.589,p < 0.01).【結論】MRI施行不能例において造影CTはプラーク診断における補助的診断法になり得る.
  • 赤荻 悠一, 松田 信二, 町田 利生, 藤川 厚, 田島 洋祐, 永野 修, 本間 甲一, 沖山 幸一, 桑原 聡, 小野 純一
    2010 年 32 巻 3 号 p. 236-241
    発行日: 2010/05/25
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル フリー
    【背景及び目的】軽症発症の脳梗塞の一部は進行性の経過をとるが,治療初期には進行を予測することが難しく,一旦進行すると治療困難である.進行例の臨床的特徴を検討した.【対象及び方法】発症48時間以内に当センターに入院した脳梗塞患者934例のうち,初診時National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS) scoreが5点以下で,かつ入院中に脳梗塞の再発を認めたものを除外した軽症急性脳梗塞患者451例を解析に用いた.進行型脳梗塞を発症1週間以内のNIHSS score 2点以上の症候増悪と定義し,危険因子,病型分類,使用薬剤,病変部位との相関を統計学的に検討した.【結果】124例(27.5%)が進行型脳梗塞を呈した.ロジスティック回帰分析の結果,高齢,ラクナ梗塞でないこと,放線冠または橋底部病変の存在が進行型脳梗塞の独立した危険因子であった.【結論】放線冠または橋底部を含む梗塞巣は,進行型脳梗塞の独立した危険因子であり,予後改善のため積極的な治療介入が必要である.
  • 大櫛 陽一, 春木 康男, 柴田 健雄, 小林 祥泰, 脳卒中急性期患者データベース構築研究 (JSSRS)グループ
    2010 年 32 巻 3 号 p. 242-253
    発行日: 2010/05/25
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル フリー
    日本人における高脂血症が脳卒中に与える影響について,さまざまな報告がある.今回,我々は脳卒中急性期患者データベース構築研究(JSSRS)に登録された症例47,782例から,薬物治療の影響を排除するために,高脂血症,高血圧,糖尿病での薬物治療をしていない脳梗塞,脳内出血,くも膜下出血の16,850症例を抽出して,高脂血症が臨床指標に与える影響について解析した.年齢は67.4±14.3歳,男性が61%であった.臨床指標としては,mRS,JSS,NIHSSおよび退院時死亡率を用いた.脳梗塞,脳内出血,くも膜下出血のいずれの群でも,高脂血症とされる人の方が臨床指標は良かった.日本の脂質異常症診断基準が低すぎることや,日本人では特に高齢者における低栄養が脳卒中の発症や予後に影響しているものと思われる.
  • 神谷 雄己, 市川 博雄, 栗城 綾子, 清水 裕樹, 齋藤 悠, 笠井 英世, 鈴木 衛, 佐藤 温, 河村 満
    2010 年 32 巻 3 号 p. 254-260
    発行日: 2010/05/25
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル フリー
    【目的】脳梗塞急性期患者に簡易嚥下誘発試験(SSPT)と水飲み試験(WST)を施行し,嚥下性肺炎発症との関連について検討した.【対象・方法】急性期脳梗塞患者127例に対し,食事開始前の入院翌日までにSSPT,WSTを連続して施行した.【結果】18例(14.2%)が肺炎を発症した.WSTは14例(11.0%)に施行不能であったが,SSPTは全例に施行可能であった.SSPT,WSTいずれかの検査において異常反応,もしくは施行不能であった場合を“嚥下スクリーニング検査異常”とした場合,その他の因子から独立して肺炎発症と有意な関連を認め(p=0.012,オッズ比 9.79,95%信頼区間 1.64–58.43),感度88.9%,陰性反応的中率97.5%であった.【結論】SSPT,WST両検査を併用したスクリーニング法は脳梗塞急性期の嚥下性肺炎発症リスクの評価に有用である.
  • 天神 博志, 萬代 綾子, 梅林 大督, 小坂 恭彦, 中原 功策, 久保 哲, 山本 康正
    2010 年 32 巻 3 号 p. 261-267
    発行日: 2010/05/25
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル フリー
    14例の頭蓋内主幹動脈狭窄に対してballoon拡張型stentを用いてstent留置術をおこなった.病変部位は内頸動脈petrous portion及びcavernous portion(以後C45)10例,頭蓋内椎骨動脈及び脳底動脈(以後VABA)3例,中大脳動脈M1部(以後M1)1例であった.1例でMRI plaque imageを参考としstent留置術をおこなった.その結果,狭窄改善率は65±20%であった.13例で経過観察中に虚血症状を認めなかった.12例では追跡血管撮影で50%以上の狭窄にはならなかった.脳底動脈に3×15 mmのstentを留置した1例は再狭窄を認めたため追加PTAをおこなった.中大脳動脈に2.25×8 mmのstentを留置した1例は経過観察中に閉塞をきたした.周辺血管の径はC45:3.9±0.7 mm,VABA:3.0±0.3 mm,MC:2.2±0.2 mmであった.
     Balloon拡張型stentを用いた頭蓋内主幹動脈狭窄病変の治療は症例を選べば血管拡張率が高く虚血症状の予防効果も高く有用な治療であった.特に内頸動脈petrous portion及びcavernous portionでは有用であった.7 mm以内のshort segmentで元血管が3 mm径程度以上の病変では経過観察中にも再狭窄をおこす率は比較的低かった.MRI plaque imageにより血管壁情報を吟味したstent留置術は有用な手法になりうると考えられた.
  • 津田 恭治, 野口 昭三, 石川 栄一, 中居 康展, 阿久津 博義, 松村 明
    2010 年 32 巻 3 号 p. 268-274
    発行日: 2010/05/25
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル フリー
    高齢人口割合の高い地域にある脳神経外科救急対応病院における,高齢者脳卒中診療の現状をまとめ,高齢者脳卒中患者の予後とその予測因子を検討する.脳神経外科に脳卒中の診断で入院した超高齢(80歳以上)脳卒中患者97名を対象とした.対象患者データのうち,年齢,性別,退院時modified Rankin Scale(mRS),退院時経鼻管または経胃ろう栄養,入院中肺炎などの評価項目と生命予後との関連をCox hazard modelあるいはlogrank testを用いて解析した.超高齢脳卒中患者97名の1年生存率は約75%であり,85歳未満および,mRS0–3群において有意に生存率が高いことが示された.また,生存退院例についての解析では,退院時のmRS3–5,入院中肺炎,胃ろう造設/退院時経管栄養が退院後の死亡に関する予測因子であり,入院中肺炎罹患が,統計学的に有意差をもった退院後の死亡に関する独立した予後予測因子であった.超高齢者脳卒中患者において,年齢や退院時mRSの他に,入院中の肺炎発症の有無が予測因子になる可能性が示唆された.我々は,超高齢者脳卒中患者の治療やケアを計画する際にこれらの因子を熟慮する必要がある.
  • 中根 博, 北山 次郎, 熊井 康敬, 東 佐保, 北園 孝成
    2010 年 32 巻 3 号 p. 275-281
    発行日: 2010/05/25
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル フリー
    【背景および目的】これまで本邦では,脳卒中二次予防の降圧治療にCa拮抗薬が頻用されてきた.しかし近年RA系阻害薬の有用性を示す大規模臨床試験が発表されており,その処方動向が変化していることが予想されるため,今回その調査を行った.【方法】福岡脳卒中データベース研究に登録された2,153例のうち高血圧を合併した1,576例を対象とし,合併症,入院前と退院時の降圧薬,入院30日後の血圧値を調査した.【結果】退院時に降圧薬を投与されていた患者数は860例(54.6%)で,RA系阻害薬540例(34.3%),Ca拮抗薬432名(27.4%)の順であった.脳卒中初発例1,176名についてみると,入院前はCa拮抗薬が最も頻用されていたが(64.9%),退院時にはRA系阻害薬が最も多く処方されていた(66.7%).【結論】現在,脳卒中二次予防に用いられる降圧薬は,Ca拮抗薬からRA系阻害薬に変化していた.
症例報告
  • 須山 武裕, 永島 宗紀, 長谷川 洋, 富永 紳介
    2010 年 32 巻 3 号 p. 282-289
    発行日: 2010/05/25
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は43歳女性.左片麻痺にて救急搬送され頭部MRIにて右大脳半球に脳梗塞を認めた.脳血管撮影にて両側の内頸動脈第一頸椎椎体付近に管状狭窄を認め,内頸動脈線維筋性形成異常症(FMD)に起因する脳梗塞と診断した.保存的治療を行うも徐々に神経症状が悪化し,MRIにて同側の脳梗塞の拡大および対側の脳梗塞を新たに認め,両側内頸動脈狭窄に対して経皮的血管拡張術を行った.術後,神経症状の悪化は認めず,左上肢巧緻運動障害は残存したが独歩退院した.本例のような進行性増悪を来す内頸動脈FMDに対しては両側同時に治療が可能である血管内治療が有用と考えられた.FMDに対してはバルーンのみの血管拡張術(POBA:Plain old balloon angioplasty)が第一選択とされているが,POBAに際しては内膜の断裂や解離が生じやすく,その場合にはステント留置が有用である.
  • 大江 康子, 糸川 かおり, 溝井 令一, 神山 信也, 山元 敏正, 田村 直俊, 石原 正一郎, 荒木 信夫
    2010 年 32 巻 3 号 p. 290-295
    発行日: 2010/05/25
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル フリー
    高齢発症の舞踏運動を呈したもやもや病の一例を報告した.症例は63歳,女性で高次脳機能障害と両側上肢の舞踏運動を認めた.頭部MRIにて,両側内頸動脈と後大脳動脈の閉塞がみられ,もやもや血管が描出されたので,もやもや病と診断した.脳血流SPECTでは,両側基底核を含む広範囲な血流低下を認めた.舞踏運動は入院後自然軽快したが,高次脳機能障害は残存した.
  • 田中 弘二, 松本 省二, 貴田 浩志, 小早川 優子, 田中 公裕, 川尻 真和, 山田 猛
    2010 年 32 巻 3 号 p. 296-300
    発行日: 2010/05/25
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル フリー
    Angiotensin converting enzyme(ACE)阻害薬内服中,rt-PA静注療法直後に舌の血管性浮腫をきたした心原性脳塞栓症の1例を報告した.症例は75歳女性.高血圧症,慢性心房細動,慢性心不全に対しACE阻害薬(イミダプリル10 mg/日)内服中であった.来院時,意識障害,roving eye movement,右上下肢の不全片麻痺,重度の失語を認め,NIHSSは35点と評価した.頭部MRIにて左中大脳動脈領域に新鮮梗塞を認め,MRAにて左中大脳動脈M2以降の描出が不良であった.心原性脳塞栓症の診断で,発症から1時間43分でrt-PA投与した.rt-PA投与終了後,麻痺の改善を認め一時NIHSS 16点となったが,右優位の舌の著明な浮腫が出現し,メチルプレドニゾロン500 mg点滴投与を行った.rt-PA投与17時間後に意識障害の増悪,左不全片麻痺,右共同偏視が出現.MRIにて右中大脳動脈領域への脳梗塞再発を認めた.舌の浮腫は呼吸障害を起こすことなく36時間後には消失した.rt-PA投与後の血管性浮腫が舌に限局する場合は発見が遅れる可能性があり注意が必要である.
  • 羽柴 哲夫, 山田 正信, 本郷 卓, 宮原 永治, 藤本 康裕
    2010 年 32 巻 3 号 p. 301-306
    発行日: 2010/05/25
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性.突然の意識障害と右上下肢麻痺で発症した.臨床症状より脳底動脈塞栓症を疑ったが,発症1時間後の頭部CTでは異常を認めず.撮影中に意識障害・右上下肢麻痺は改善を示したため,同時に3D-CT angiographyを施行した.結果,主幹動脈の閉塞を認めず,塞栓後直ちに再開通が得られたと判断した.発症当日には患者は完全に回復したと発言し,自覚的訴えも無かったが,発症翌日に盲を訴えた.MRIにて両側後頭葉梗塞を認めたため,皮質盲と診断した.本患者は発症急性期には,盲であることに無関心であったと考えられ,病態失認の一種であるAnton症候群を呈していたと考えた.T-PA時代においては脳梗塞急性期に正確な神経症状の評価が必要であり,病態失認の存在は急性期診断のpit fallになりえると考えた.閉塞血管の再開通により神経症状の回復が見られ,t-PA療法の適応がないと判断されてもNIHSSの評価は必須であると考えた.
  • 大川 聡, 華園 晃, 菅原 正伯, 高橋 聡, 柳澤 俊晴, 溝井 和夫, 大西 洋英, 豊島 至
    2010 年 32 巻 3 号 p. 307-313
    発行日: 2010/05/25
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の男性.頭痛出現の6日後に内外眼筋麻痺を中心とした多発脳神経障害が急速に進行した.脳MRIでは両側海綿静脈洞が造影不良で血栓化を示唆し,左側では内頸動脈瘤が見られた.髄液では多核球優位に細胞が増多し,糖が減少した.抗凝固薬と抗菌薬を投与し,右海綿静脈洞血栓(CST)は溶解され髄膜炎は改善したが,内頸動脈瘤は増大し大脳皮質に感染性動脈瘤が出現した.抗菌薬継続で動脈瘤は縮小したが,左CSTは溶解されず左内外眼筋麻痺は残存した.CT上,蝶形骨洞上壁に骨の菲薄化と欠損が認められ,同部位を介し蝶形骨洞炎から細菌が海綿静脈洞に波及し血栓化した機序が推定された.細菌は髄膜と内頸動脈にも波及し,生じた内頸動脈瘤は大脳皮質感染性動脈瘤の塞栓源になったと考えられた.抗菌薬が発達した現在CSTは稀とされるが,蝶形骨洞の骨壁異常を持つ者では発症に留意する必要があると考えられた.
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