脳卒中
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32 巻 , 4 号
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原著
  • 田邑 愛子, 山本 康正, 尾原 知行, 大原 亮, 濱中 正嗣, 中川 正法
    2010 年 32 巻 4 号 p. 325-333
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    【背景および目的】線条体内包梗塞(striatocapsular infarction:SCI)は,多くは塞栓機序によるが,中大脳動脈アテローム血栓性梗塞(MCA-ATBI)としてのSCIの系統的な報告はみられない.今回,MCA-ATBIとSCIについて,その臨床的特徴,梗塞メカニズムに対する考察を行った.【対象と方法】連続症例よりMCAアテローム血栓性病変が閉塞または50%以上の狭窄を示す56症例を選出し,梗塞病型によりSCI単独例のpure SCI:10例,SCIに他の梗塞を伴うSCI plus:5例,SCI以外の梗塞non-SCI:41例に分類した.【結果】SCI群では,12例がMCA閉塞,3症例がMCA狭窄を示した.SCI群ではすべてMCA水平部病変であったが,non-SCI群ではMCA水平部病変は62.5%であった.SCI群ではnon-SCI群に比して,急性期進行が多い傾向にあった(p = 0.092,χ二乗検定).退院時mRSを基準に解析すると,SCI群はnon-SCI群に比較して重症の傾向にあった(p = 0.0504,Mann-WhitneyのU検定).【結論】MCAアテローム血栓性病変に伴うSCIの機序として,MCA水平部の閉塞・高度狭窄,さらに,MCA水平部アテロームプラークによる複数のレンズ核線条体動脈の閉塞が考えられた.急性期MCA-ATBIにおいてSCIを示す症例では機能予後不良のものが多く,早期より積極的な治療介入が必要である.
  • 原 行弘, 本橋 優子, 小林 士郎
    2010 年 32 巻 4 号 p. 334-339
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    【目的】脳血管障害を合併し血圧調節が不十分な高血圧症例でARB製剤の認知機能への影響を検討する.【対象】収縮期血圧140 mmHg以上かつ/または拡張期血圧90 mmHg以上の75歳以下の慢性期脳血管障害患者.【方法】バルサルタン(VAL)80 mgを投与し収縮期血圧140 mmHg未満かつ拡張期血圧90 mmHg未満を目標とする.投与開始時,投与後4,8カ月後に,MMSE,WMS-R論理的記憶項目,TMT,Rey複雑図形にて認知機能を評価した.【結果】19例(平均年齢70.3歳)においてVAL投与8カ月後に有意な降圧効果を認めた.また,8カ月後にはWMS-Rの言語性記憶の項目で統計的に有意な改善を認めたが,他の認知機能検査では統計的に有意な変化は認めなかった.【結論】VALによる脳神経系への言語性記銘力を中心とした選択的認知機能改善効果が示唆された.これは,降圧作用だけではなく,VALの持つAT2およびAT4受容体による海馬の賦活作用の関与が推察された.
  • 登立 奈美, 園田 茂, 奥山 夕子, 川原 由紀奈, 渡邉 誠, 寺西 利生, 坂本 利恵
    2010 年 32 巻 4 号 p. 340-345
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    【目的】診療報酬改定による訓練量の増加と運動麻痺改善との関係を検証した.【方法】当院回復期リハビリ病棟に入退院した脳卒中患者で,1日の訓練単位数上限が6単位(2時間)であった時期に5~6単位の訓練を行った122名(6単位群)と,訓練単位数上限が9単位であった時期に7~9単位の訓練を行った41名(9単位群)を対象に入退院時のStroke Impairment Assessment Set(SIAS)の麻痺側運動機能5項目を比較した.入院時運動麻痺の重症度別に3群に層別化した分析も行った.【結果】入退院時のSIAS得点は9単位群で有意に高かったが,SIAS利得には有意差を認めなかった.入院時下肢中等度麻痺群と上肢軽度麻痺群において退院時SIASとSIAS利得が9単位群で有意に高かった.【結論】麻痺程度を層別化して検討することで1日6単位から9単位への訓練量増加により運動麻痺改善が認められた.
  • 村田 高穂, 寺川 雄三, 岡田 由実子, 山本 直樹, 下竹 克美, 富永 孝紀, 鶴野 卓史
    2010 年 32 巻 4 号 p. 346-350
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    当研究の目的は,急性脳梗塞の転帰を検討し,同一施設内で急性期から回復期リハビリテーション(以下リハ)を行う病院完結型施設での脳卒中治療の成果と問題点を検証することである.対象は,最近3年間の連続した急性脳梗塞入院患者456例で,ラクナ梗塞170例,アテローム血栓性梗塞151例,心原性脳塞栓症116例,その他梗塞19例に病型分類した.転帰は退院時modified Rankin Scale (mRS)と在宅復帰率により評価した.急性脳梗塞の病型別転帰は,ラクナ梗塞,アテローム血栓性梗塞,心原性脳塞栓症の3病型間で,mRS0–2率(転帰良好群),mortalityおよび在宅復帰率の全てにおいて有意差を認め,入院時病型診断は転帰予測上重要であった.入院時重症度評価としてのNIH Stroke Scale (NIHSS)は,mRS0–2率および在宅復帰率における有意差を認め,退院時転帰予測に有用であった.急性期治療終了時Functional Independence Measure (FIM) score 90以上例の98.6%が在宅復帰し,FIM score 89以下例の在宅復帰例では回復期リハFIM獲得(FIM gain)値が有意に高かったことから,FIMとFIM gain値は,回復期リハ適応判定および在宅復帰を含めた転帰の指標となった.回復期リハ実施群132例の在宅復帰率は76.5%で,非実施群と比較してmRS3および4例の在宅復帰率が有意に高く,回復期リハは在宅復帰率の向上に役立っていた.急性脳梗塞に対する病院完結型施設での脳卒中治療は,急性期転帰予測,急性期終了時治療評価と回復期リハ適応判定基準および在宅復帰を含めた転帰につき一定の基準で検討することで,急性期から回復期に至る継ぎ目のないリハを含めた計画的な治療が可能となり,在宅復帰率の向上を含め良好な転帰を期待できる.
  • 亀田 知明, 土井 宏, 川本 裕子, 城村 裕司, 高橋 竜哉, 児矢野 繁, 鈴木 ゆめ, 黒岩 義之
    2010 年 32 巻 4 号 p. 351-356
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    脊髄梗塞の臨床像および予後について検討した.対象は1997年4月から2008年9月までに横浜市立大学附属2病院神経内科に入院した急性期脊髄梗塞患者14例である.発症年齢は中央値63歳,範囲は22から74歳,男7例,女7例であった.心血管疾患危険因子は高血圧6例,糖尿病5例,喫煙4例,心房細動0例,心血管疾患の既往2例で,6例ではいずれの危険因子も認めなかった.病変部位は,頸髄3例,頸胸髄3例,胸髄5例,胸腰髄が3例で,4椎体以上にわたる病変を7例で認めた.臨床像を分類すると前脊髄動脈症候群が11例,Brown-S quard症候群が1例,横断性梗塞が2例だった.初発症状は痛みが8例,脱力が4例,痺れが2例で,10例では24時間以内に症状がピークに達した.治療についてはステロイドが6例,抗血小板薬が5例,抗凝固薬が10例,7例ではこれらの治療を併用した.退院時に歩行が可能であったのは6例で,感覚障害は全例で残存した.排尿障害によって導尿あるいは膀胱バルーンカテーテルが留置されていた例は9例であった.女性,長軸方向に長い病変,横断性梗塞,脱力で発症した例では予後が悪い傾向がみられた.
  • 前島 伸一郎, 大沢 愛子, 石原 正一郎, 佐藤 章, 棚橋 紀夫
    2010 年 32 巻 4 号 p. 357-364
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    急性期病院における脳卒中リハビリテーション(リハ)に携わる立場から,地域連携パスを用いて回復期リハ病院へ転院した脳卒中患者240名を対象に,その回収状況や記載不備を調査するとともに,転院時の身体機能・認知機能,回復期リハ病院での改善状況と転帰などについて調査した.その結果,204名(85.0%)の地域連携パスが回収されたが,急性期病院で46件(22.5%),回復期病院で34件(16.2%)の地域連携パスに記載不備を認めた.回復期リハ病院へ転院までの期間は29.5 ± 14.2日,回復期リハ病院での平均在院日数は101.1 ± 57.0日で,退院後の転帰は,自宅145名(74.5%),療養型病棟13名(6.8%),介護施設29名(15.1%),その他7名(3.6%)であった.回復期病棟での平均在院日数ならびにADLの改善は,転出した回復期リハ病院間で明らかな違いがみられた.以上より,地域連携パスを用いた全ての医療機関で,データの蓄積や解析などに関する共通の認識が必要であり,急性期病院のリハに携わるものが,連携パスを通じて,積極的にリハの質的向上に関与していく必要がある.
  • 岡田 靖, 峰松 一夫, 小川 彰, 今中 雄一, 関本 美穂, 端 和夫, 山口 武典
    2010 年 32 巻 4 号 p. 365-372
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    【目的】急性期脳卒中診療の実態および地域格差を明らかにする目的で,都道府県別,二次医療圏別のアルテプラーゼ静注血栓溶解療法(rt-PA療法)実施状況を検討した.【対象と方法】rt-PA療法承認後4年間に,同治療を実施したと回答した医療機関全てを対象として,rt-PA療法実施率とその経年的変化を二次医療圏別に比較検討した.【結果】rt-PA療法承認後4年間のrt-PA療法実施症例数の推計は22,491例で,65歳以上人口10万人当たりのrt-PA使用症例数は経年的に増加し,rt-PA療法が全く実施されなかった二次医療圏数は2年目の61/348医療圏(18%)から4年目には44/348医療圏(13%)へと減少した.rt-PA療法実施率は都道府県,二次医療圏間で著しい地域格差がみられた.【結論】行政の積極的関与による脳卒中啓発活動の実施,救急搬送体制の整備などが望まれる.
症例報告
  • 太田 浄文, 松本 卓, 田中 宏明, 黒木 秀仁, 田渕 典之
    2010 年 32 巻 4 号 p. 373-378
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    大動脈弁置換術後の一過性心房細動の治療に難渋した76歳女性.手術15日目に突然の右片麻痺と失語が出現しNIHSSスコア16点であった.頭部単純CTではearly CT signはなく,頭部造影CT angiographyでは左中大脳動脈水平部での閉塞を認めた.発症から140分後に経静脈的rt-PA投与を行い奏効した.心臓弁膜症術後であったがrt-PA投与による創部からの出血は起きなかった.周術期,特に心臓外科手術後は脳梗塞発症のリスクが高い時期であるが,ほとんどは手術から14日以内で経静脈的rt-PA投与は適応外となっている.術後脳梗塞に対して経動脈的血栓溶解療法の報告は散見されるが経静脈的rt-PA投与の報告はほとんどなく本例はrt-PA静注療法の効果と安全性を探る上で貴重な症例であると思われる.
  • 武澤 秀理, 今井 啓輔, 濱中 正嗣, 牧野 雅弘, 丸山 大輔, 東 裕美子, 巨島 文子, 小田 健一郎
    2010 年 32 巻 4 号 p. 379-383
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    症例は95歳女性.突然,意識レベル低下と左半身の脱力が出現.発症30分で搬入.意識障害,病態失認,構音障害,左不全片麻痺をみとめた.頭部CTは陳旧性脳梗塞以外に異常なかった.超高齢であったが,CT所見を含めて適応基準を満たしたため,発症70分でrt-PA静注を開始した.神経徴候は改善し,終了直後のMRI拡散強調画像では右頭頂葉深部白質に限局した梗塞巣をみとめた.しかし,静注開始15時間後より頭痛と嘔吐が出現し,頭部CTで小脳半球の両側に出血をみとめた.非交通性水頭症に対する穿頭ドレナージ術を実施したが,第52病日に心不全で死亡した.rt-PA静注療法中に梗塞巣とは別の離れた脳実質に出血をきたす病態は異所性脳出血として知られている.頻度の少ない合併症ではあるが,重篤な経過をとることから,特に超高齢者の治療にあたっては念頭に置く必要がある.
  • 北村 彰浩, 猪原 匡史, 内田 司, 鷲田 和夫, 長谷 佳樹, 小森 美華, 山田 真人, 眞木 崇州, 高橋 良輔
    2010 年 32 巻 4 号 p. 384-389
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    【症例】52歳女性.高血圧,高脂血症,肥満あり.約1週間の経過で徐々に発動性低下が進行した.麻痺等の局所神経症状はなくNIHSS 0点であったため,当初はうつ病も疑われたが,頭部MRIで左内包膝部に脳梗塞像を認め左中大脳動脈穿通枝のbranch atheromatous disease (BAD)と診断した.神経心理学的検査や脳波検査から,軽度のうつ状態,認知機能障害,左前頭葉の機能低下を認めた.抗血栓療法等で徐々に症状は改善し約2カ月で職場復帰した.【考察】内包膝部は視床と大脳皮質を結ぶ種々の神経経路が通過する要所である.本例では前頭葉と視床との機能連絡の遮断により前頭葉機能が低下し発動性低下を来たしたと考えられた.また,BADは進行性の運動麻痺を呈しやすいことで知られるが,本例のように明らかな局所神経症状が無く発動性低下が亜急性に進行する症例でも内包膝部のBADが重要な鑑別になると考えられた.
  • 濱中 正嗣, 今井 啓輔, 武澤 秀理, 巨島 文子, 牧野 雅弘, 梅澤 邦彦
    2010 年 32 巻 4 号 p. 390-395
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    症例は25歳女性.突然の頭痛と左半身脱力にて発症.搬入時は頭痛のみが残存していた.頭部MRI拡散強調画像にて右外障の微小高信号域,頭部MRAにて右内頸動脈床上部の狭窄をみとめた.頭蓋内内頸動脈解離による脳梗塞を疑い内科的治療を開始した.しかし,入院後も脳梗塞の再発を繰り返しながら,画像上は解離部に瘤形成をきたしたため,治療方針決定の判断に苦慮した.解離部の経時的な画像評価に基づいて抗血栓療法を変更したところ,脳梗塞の再発はなく,瘤も消失し,第47病日に後遺症なく退院した.本例の経過は,脳動脈解離の虚血発症例の治療に関して示唆に富み,文献的考察を加え報告する.
  • 安藤 直人, 松澤 裕次, 難波 宏樹
    2010 年 32 巻 4 号 p. 396-400
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    虚血症状で発症した非外傷性の両側前大脳動脈解離の1症例を報告した.症例は49歳の男性で,頭痛,左不全片麻痺で発症し,その後両下肢運動麻痺と無動無言などの高次脳機能障害を呈した.画像検査では,初め右A2狭窄とA3拡張所見を認め,その後右A2-A3にpearl and strings sign,左A2-A3に異常拡張が見られた.保存的治療で良好な回復が得られ,画像所見も改善したが,慢性期にも左A1の一部に紡錘状拡張が残存していた.両側同時発生の機序,治療方針などにつき,文献的考察を行った.
  • 川原 一郎, 中本 守人, 松尾 義孝, 徳永 能治
    2010 年 32 巻 4 号 p. 401-405
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    症例は79歳女性で糖尿病のため内服治療中であり,自宅にて突然右片麻痺を発症し当院へ救急搬送となった.拡散強調画像では,左内包後脚に高信号域が認められ急性期脳梗塞が強く疑われたが,血糖値35 mg/dlと低値であったため,まず50%ブドウ糖を静注したところ右片麻痺は血糖値の正常化とともに速やかに改善した.24時間後に施行した拡散強調画像では,左内包後脚の高信号は完全に消失しており,経過より一過性の低血糖性片麻痺であると考えられた.近年,脳梗塞急性期における血栓溶解療法としてtPAが幅広く投与されるようになったが,巣症状を呈する救急患者の場合,一般的には脳卒中が強く疑われ,それに従い診断,治療が進められる.低血糖症により片麻痺を呈する場合は比較的稀ではあるが,急性期脳梗塞との鑑別は重要であり,血栓溶解療法を急ぐあまり,その診断において見落としがあってはならない.対策としては,来院後速やかに採血を行い血糖低下の有無を確認することは低血糖性片麻痺の診断上有用である.
  • 山岡 由美子, 伊豆津 宏二, 伊藤 歩, 井手口 稔, 木村 俊運, 袖本 衣代, 市川 靖充, 森田 明夫
    2010 年 32 巻 4 号 p. 406-412
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2010/09/14
    ジャーナル フリー
    症例は66歳女性.右難聴で発症し,一過性左上肢麻痺出現後に抗凝固療法を開始.その後脳幹症状や脊髄症状が出現・消退し,経過途中から発熱・皮疹・LDH上昇と単球増多を,進行期に脳症と多発性脳梗塞・貧血・血小板減少・脾腫・低酸素血症が出現した.皮膚生検・骨髄穿刺・ランダム皮膚生検で異型細胞が発見されず,脳生検で血管内大細胞型B細胞リンパ腫と確定診断した.脳梗塞を含む多彩な神経症状を呈し,皮疹とLDH上昇を伴う患者をみた時は本症を念頭におき,生検による確定診断への努力を続けることが重要である.
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