脳卒中
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32 巻, 5 号
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原著
  • 内藤 丈裕, 宮地 茂, 泉 孝嗣, 松原 功明, 原口 健一, 中村 茂和, 住友 正樹, 若林 俊彦
    2010 年 32 巻 5 号 p. 427-433
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/10/16
    ジャーナル フリー
    CAS後亜急性期に生じたsubacute thrombosis(SAT)に伴う頸動脈閉塞により,重篤な症候を呈した2例に対し,緊急再開通治療を行った.2症例ともに近位,遠位の厳重なプロテクション下に血栓吸引,再PTAを行った後,レスキュー的にステントを留置した.両症例ともに還流不全なく良好な再開通を得て,神経学的にも著明に回復した.3カ月での経過観察も再狭窄なく開存は良好である.2例ともに術後の抗血小板療法の不足がSATの原因の一つと考えられ,CAS術後の抗血小板療法の重要性が再認識された.頸動脈閉塞例,特に急性血栓性閉塞は遠位血栓の恐れがあり禁忌とされてきたが適切なプロテクションおよびレスキューステントにより安全に再開通を得られると考えられる.
  • 藤井 修一, 芝崎 謙作, 井口 保之, 山下 眞史, 西林 尚祐, 鶴見 尚和, 長谷川 賢也, 木下 公久, 木村 和美
    2010 年 32 巻 5 号 p. 434-440
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/10/16
    ジャーナル フリー
    携帯電話を用いた脳卒中診療における遠隔医療Stroke Mobile Telemedicine(以下SMT)の有効性と問題点について検討した.脳卒中が疑われた患者が受診した場合,川崎医科大学の脳卒中専門医へテレビ機能付き携帯電話で連絡を取り,リアルタイムに神経診察,画像を送信し,脳卒中専門医と診断および治療方針の決定を行った.2008年9月から2009年1月までに6例(男性4例,平均年齢76.5歳)が登録された.SMTの利点として,送信側はいつでも専門医に相談できる安心感が得られた.受信側はリアルタイムに動画で詳細な神経診察を観察しながら,画像診断も評価することができ,治療方針や今後の検査について指示することができた.SMTは遠隔医療の方法として非常に有用であると考えられた.
  • 増田 敦, 三木 貴徳, 松本 洋明, 宮地 由樹, 南 浩昭, 富永 正吾, 山浦 生也, 松本 茂男, 福森 豊和, 吉田 泰久, 吉田 ...
    2010 年 32 巻 5 号 p. 441-446
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/10/16
    ジャーナル フリー
    【目的】t-PA投与適応外の急性期脳梗塞患者に対してdiffusion-perfusion mismatch(以下D/P mismatch)を確認し,カテーテルによる血行再建術を行った.その有効性について検討した.【方法】2005年10月~2008年9月までの3年間でD/P mismatchを確認し,血行再建術を行った24症例について検討した.NIHSS:4以下の症例も治療の対象とした.【結果】来院時NIHSS:5以上の16症例のうち8症例はmRS:0~2で退院しており結果は良好だった.来院時NIHSS:4以下の8症例のうち入院当日に治療した4症例は予後良好だったが,進行増悪時に治療した3症例は全て予後不良だった.【結語】D/P mismatchの確認はNIHSS:5以上の緊急血行再建術適応決定に有用であった.D/P mismatchのあるNIHSS:4以下の脳梗塞患者は,注意深い経過観察が必要である.
  • 今井 啓輔, 濱中 正嗣, 武澤 秀理, 徳田 直輝, 竹上 徹郎, 中村 優貴, 横関 恵美, 大島 洋一, 巨島 文子, 牧野 雅弘
    2010 年 32 巻 5 号 p. 447-454
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/10/16
    ジャーナル フリー
    【背景および目的】頭蓋内内頸動脈塞栓性閉塞に対する二連吸引手技(RAT)を用いた緊急機械的血栓除去術(EME)の有用性を明らかにする.【方法】当院入院の急性期虚血性脳血管障害連続1105例中のEME実施例を対象とし,背景因子,併用手技,成績を検討するとともに,RAT導入前後での成績を比較する.【結果】EMEは8例で実施され全例rtPA静注禁忌であった.RAT導入後の5例中3例では併用手技なしに完全再開通を得たが,残りの5例では血栓把持術と血管拡張術を併用した.大量血栓回収,backflow出現,完全再開通は,RAT導入前の3例では1,0,0例,RAT導入後の5例では5,5,4例にみられた.重篤な合併症や症候性頭蓋内出血はなく,RAT導入後の完全再開通4例は予後良好(modified Rankin scale≦2)であった.【結論】頭蓋内内頸動脈塞栓性閉塞に対するRATを用いたEMEは有用である.
  • 河村 陽一郎, 鳥橋 孝一, 定政 信猛, 吉田 和道, 鳴海 治, 沈 正樹, 山形 専
    2010 年 32 巻 5 号 p. 455-462
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/10/16
    ジャーナル フリー
    2005年10月,本邦でもrecombinant tissue plasminogen activater(rt-PA)の使用が認可され,急性期脳梗塞治療に効果を上げてきた.rt-PA投与後に脳出血を合併し重篤な予後を引き起こすことがあり,脳出血予測因子の特定が望まれている.今回,当施設において2006年3月から2009年11月までにrt-PAを投与した脳梗塞58症例を用い,脳出血合併の予測因子について検討した.NIHSS 4以上の増悪を伴った症候性脳出血は3例(5.2%)のみであった.無症候性を含め,投与後24時間以内にCTおよびMRI T2*で梗塞範囲に一致した出血性変化を伴った21症例(36.2%)を出血群として,残りの非出血群と後向きに比較した.出血群は非出血群に比べて投与前NIHSSが高く,DWI ASPECTSが低い傾向を認めた.また,MRAでの主幹動脈閉塞,部分的再開通を含めた再開通を認めた症例に脳出血合併を多く認めた.結果,rt-PA投与に際して新規梗塞の範囲が大きい程,出血の危険性が上がり,NIHSSやDWI ASPECTSは出血性変化の予測因子としても有用であることが示された.
症例報告
  • 菊井 祥二, 澤 信宏, 西脇 知永
    2010 年 32 巻 5 号 p. 463-468
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,女性.3年前から微熱,光線過敏,体重減少あり.3日前から進行する右片麻痺で入院.入院時,頬部紅斑,微熱,血小板減少があり,頭部MRI拡散強調画像で左前頭,頭頂葉に多発性脳梗塞がみられた.左総頸動脈起始部閉塞があり,アスピリン,エダラボン,ヘパリンで治療した.翌日には譫妄をきたし,ミダゾラムで鎮静した.MRIで左前頭~頭頂葉に広範囲に梗塞がみられた.膠原病による血管炎や抗リン脂質抗体症候群(APS)を疑い,メチルプレドニゾロンによるパルス療法を追加した.ミダゾラム終了後,譫妄はなく,超皮質性運動失語と中等度~高度の右不全片麻痺がみられた.その後,抗核抗体,ds-DNA抗体,ループスアンチコアグラントが12週以降も含め陽性で脳梗塞と深部静脈血栓もあり,SLEに伴う続発性APSと診断し,プレドニゾロン,アスピリン,ワーファリンで治療した.SLEやAPSの抗体の迅速測定はできず,急速に症状が進行する若年女性の脳梗塞は頬部紅斑,光線過敏の既往,血小板減少症などから,積極的にSLEやAPSを疑い治療を開始する必要があると考えられた.
  • 竹田 信彦, 伊藤 清佳, 木村 匡男, 深尾 繁治, 李 英彦, 五十棲 孝裕, 木戸岡 実, 中澤 拓也, 野崎 和彦
    2010 年 32 巻 5 号 p. 469-474
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/10/16
    ジャーナル フリー
    頸動脈エコーでプラークの可動性を確認し得た2症例を経験した.症例1は55歳女性で,胃癌の終末期で加療中に左中大脳動脈領域の脳梗塞を発症した.MRAで頸部頸動脈狭窄は認めなかったが頸動脈エコーで左内頸動脈に可動性プラークを認めた.抗血小板剤投与のみで2週間後にはプラークは消退し可動性も消失した.症例2は69歳女性で,狭心症既往があり,抗血小板剤2剤服用していた.右大脳半球に散在性の新鮮脳梗塞を生じ,MRAでは頸部頸動脈狭窄を認めなかったが頸動脈エコーで可動性プラークを認めた.抗血小板剤を追加したが症状が進行性でありCASを施行した.以後,症状の進行は認めなかった.可動性プラークはMRAでは評価できず頸動脈エコーが有用であった.可動性プラークに対する治療としては,まず薬物による保存的加療を行い,症状が進行性の場合は,外科的治療を考慮すべきと考えた.
  • 永島 宗紀, 須山 武裕, 長尾 紀昭, 祖母井 龍, 我妻 敬一, 長谷川 洋, 富永 紳介
    2010 年 32 巻 5 号 p. 475-481
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/10/16
    ジャーナル フリー
    急性期脳底動脈閉塞症は重篤となりやすく,再開通療法の重要性が高い.われわれはrt-PA静注療法の適応にならない連続する4症例の急性脳底動脈閉塞症に対してdirect PTAを行い,全例で再開通が得られた.初めの1例はPTAバルーンを用いたが,再開通できなかったためシリコンバルーンに変更し,再開通が得られた.以後の3例に対しては最初からシリコンバルーンを用いた.シリコンバルーンはPTAバルーンに比べて柔らかく,動脈硬化病変に対する拡張能力はほとんどないが,慎重な操作であれば屈曲病変でも使用できる.今回は4症例とも心原性塞栓であり,動脈硬化性変化の少ない病変であったため,再開通できたと考えられ,症例を限定することによって有用な治療法になることが示唆された.
短報
  • 菊井 祥二, 澤 信宏, 西脇 知永
    2010 年 32 巻 5 号 p. 482-485
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性で一過性の運動性失語で発症し入院した.入院時,症状は消失し,頭部CTおよびMRI拡散強調画像で急性期病変はみられなかったので一過性脳虚血性発作と診断した.ABCD2スコアが5点で,頭頸部MRAで左内頸動脈起始部に重度の狭窄が認められたので,アルガトロバン60 mg/日の持続点滴静注とエダラボンの点滴(30 mg × 2回/日)を開始した.発症2時間後から運動性失語が再発し,徐々に症状は進行し,約50時間後にJapan coma scale III-100になり,眼球は左に偏位し,右完全麻痺に至った.左中大脳動脈領域全体が虚血に陥っていると考えられたが,頭部CTは入院時と比較して変化はみられなかった.Clinical-diffusion mismatchが大きいと判断し,第3病日からもアルガトロバン60 mg/日の持続点滴静注をさらに5日間継続し,臨床症状の著明な改善がみられた.症例を選んでアルガトロバン持続点滴静注を施行することは脳梗塞治療の選択肢の幅を拡げる可能性があると考えられた.
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