脳卒中
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33 巻, 3 号
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原著
  • 田尻 宏之, 森 貴久, 岩田 智則, 宮崎 雄一, 中崎 公仁
    2011 年 33 巻 3 号 p. 305-312
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    【背景および目的】経口摂取が困難な急性期脳卒中患者は経鼻経管経腸栄養(GITF: gastro-intestinal tube feeding)を受けることが多いが,栄養状態が悪化し感染症を起こし全身状態が悪化することがある.臨床転帰を改善する上で経腸栄養剤の役割は重要であるが,どういう経腸栄養剤が適しているか検討した報告は少ない.2種類の新しい経腸栄養剤,免疫賦活効果を期待するIMPACT®(I)と,蛋白エネルギー高摂取を期待するPEMVest®(P)とを用いて短期臨床転帰を前向きに評価した.【対象と方法】2007年1月から2007年8月までの期間,脳卒中発症48時間以内にGITFを受ける患者を無作為にI群とP群に振り分け,患者背景,入院時および第10病日のNIHSSとアルブミン値,入院中の下痢・嘔吐・肺炎の頻度,栄養剤の費用,転院までの入院日数を2群で評価した.【結果】調査期間に266例の急性期脳卒中患者が入院し39例がGITFを受けた.I群24例で,P群は15例.2群間で患者背景,入院時・第10日NIHSS,アルブミン値,在院日数,副作用と肺炎の頻度に統計学的有意差はなかった.I群の1例で下痢のため一時的に経腸栄養を中断した.両群とも入院時に比べ10日目アルブミン値は低下した(p<0.001).経腸栄養剤の費用はP群が有意に安価だった(p<0.001).【結論】両経腸栄養剤とも下痢や嘔吐が少なく計画通りに増量でき,重度の栄養状態悪化を軽減し,計画通りに転院できた.両剤とも従来の栄養剤と比較すると高価だが,PEMVest®が比較的安価だった.
  • 中川 実, 藤原 賢次郎, 坂本 千穂子, 城戸 由紀子, 徳永 浩司, 杉生 憲志
    2011 年 33 巻 3 号 p. 313-318
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    当院は急性期病床に加え,回復期リハビリテーション(以下,リハ)病床・療養病床を備えるケアミックス型病院である.市内には回復期リハ病床がなく,医療体制が充足されているとはいえない状況である.今回我々はくも膜下出血(以下SAH)の診療を通して地域医療におけるケアミックス型病院の重要性を再考する.対象は2007年4月より2010年3月までに経験した40例のSAH症例である.根治治療を行った症例は28例であった.急性期病棟から直接自宅退院した症例は6例,回復期リハ病棟から自宅退院した症例は14例,回復期リハ病棟・療養棟・介護施設を経由して自宅退院した症例が1例,地元のリハ病院転院後自宅退院した症例が1例,死亡退院が18例であった.また自宅退院した患者のうち,回復期リハ病棟を経由した患者は16名(72.7%)おり,多くが回復期リハを必要とし,SAH治療にリハが重要であることが再認識された.リハ施設が不足している状況下で急性期治療に特化して治療を行うことは十分な治療とはいえず,医療機関の機能分化が進む現在,医療スタッフが不足している地方ではケアミックス型病院という形態によって機能を集約化し治療を行うことは有用で見直されるべきと考えられる.
  • 清水 高弘, 下出 淳子, 佐々木 央我, 徳山 承明, 伊佐早 健司, 今井 健, 萩原 悠太, 鶴岡 淳, 熱海 千尋, 水上 平祐, ...
    2011 年 33 巻 3 号 p. 319-325
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    【背景および目的】急性期脳血管障害患者において,仰臥位で施行した際の下肢静脈径の臨床的意義についての報告は少ない.われわれは,急性期脳血管障害患者の深部静脈血栓症(DVT)発症予測因子としての下肢静脈径の意義を検討した.【方法】急性期脳血管障害患者(クモ膜下出血は除く)122名のうち,入院7日以内に下肢静脈エコーを施行し得た86例を対象とし,DVTの有無と静脈径(膝窩静脈およびヒラメ静脈)を計測した.【結果】DVTは16例(18.6%)に認め,DVT群は非DVT群に比較し,有意に膝窩静脈径が拡張していた (9.1±3.4 mm,7.1±1.9 mm,p=0.001).一方,ヒラメ静脈径には有意差は認めなかった.膝窩静脈最大径の第1分位に対する第4分位(8.4–19.3 mm)のodds比は5.54倍と有意に高値であった(p=0.049,95%信頼区間1.01–30.50).【結論】脳血管障害急性期において,仰臥位で下肢静脈エコーを施行する際,膝窩静脈径の計測が有用である.今後DVT発症予測の意義を含めて検討する価値がある.
  • 栗城 綾子, 市川 博雄, 加藤 大貴, 神谷 雄己, 高桜 龍也, 矢野 怜, 大中 洋平, 中島 雅士, 河村 満
    2011 年 33 巻 3 号 p. 326-332
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    【背景および目的】経食道心エコー(TEE)は脳塞栓症の原因となり得る塞栓源心疾患,大動脈疾患の検索において有用性が認められている.本検討では,急性期~亜急性期のTEE所見を総括するとともに,TEE前後の病型分類を比較することから脳卒中診療におけるTEEの有用性を検証した.【方法】病型不明あるいは塞栓性機序が疑われる急性期~亜急性期の虚血性脳卒中患者に神経内科医がTEEを施行した120例を対象とし,塞栓源心疾患および塞栓源大動脈疾患の所見,およびTEE施行前後における脳卒中病型診断の変化を検討した.【結果】卵円孔開存を含む右左シャントは68例,心房中隔瘤は4例,心内血栓を14例に認めた.高度の大動脈粥状硬化性病変は9例に認めた.TEE施行前後で脳卒中病型を比較すると,原因不明例が施行前36.7%から施行後19.2%へ減少した.【結論】急性期~亜急性期のTEEは,虚血性脳卒中における塞栓源検索および脳卒中病型の診断や病態の把握に有用である.
  • 中村 歩希, 水庭 宜隆, 神野 崇生, 中山 博文, 古屋 優, 田口 芳雄
    2011 年 33 巻 3 号 p. 333-340
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    【目的】頭痛のみ発症した非出血性解離性椎骨動脈瘤に注目し,自験例より検討した.【方法】平成19年11月から平成21年10月までに当院で頭痛のみで診断された非出血性解離性椎骨動脈瘤うち,経過観察が可能であった13例について検討した.【結果】初回の画像検査では,pearl and string signは2例,dilatationは8例,string signは3例であった.画像上改善を認めたのは11例で,残り2例では解離性椎骨動脈瘤の増大がみられたために手術を施行した.9例で初回の画像検査時に解離腔や壁内血腫を認め診断が可能であったが,残りの4例では経時的な血管形態変化で解離性と判断した.頭痛は全例で後頭部痛であった.中には激しくない頭痛も存在していた.【結論】激しくない後頭部痛でも解離性椎骨動脈瘤を考慮する必要がある.そして,経時的な画像検査は診断や外科的治療の検討に重要と考えられた.
  • 森田 秋子, 酒向 正春, 大村 優慈, 金井 香
    2011 年 33 巻 3 号 p. 341-350
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    脳卒中症例の認知機能を行動から評価することを目的に,認知・行動チェックリストを試験的に作成した.チェックリストは,意識,感情,注意,記憶,判断,病識の6領域24項目について,0から3点で評価した.対象は回復期の脳卒中症例のうち,右片麻痺を認めた失語症症例59名とした.本チェックリストは,入院時退院時ともレーブン色彩マトリックス検査と有意な相関を認めた.因子分析の結果,入院時第1因子は判断病識,第2因子は感情,第3因子は意識であった.退院時第1因子は注意,第2因子は判断記憶であった.因子による重症度は,入院時退院時とも,判断記憶,感情,意識の順で高い結果を示した.失語症症例において,本チェックリストは一定の妥当性が認められた.失語症の発症早期からの認知機能の回復は,意識,感情,判断病識の順に回復する可能性が推察された.
  • 小野 恭裕, 豊嶋 敦彦, 豊田 康則, 蔵本 智士, 勝間田 篤, 河内 正光, 松本 祐蔵
    2011 年 33 巻 3 号 p. 351-356
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    【目的】急性期脳梗塞に対するrt-PA静注療法の中で,われわれは,特に高齢者へのrt-PA投与において症候性頭蓋内出血と転帰に関して検討した.【方法】2007年1月から2010年12月までに当院に入院した脳梗塞患者1263例のうちrt-PA静注療法を行った患者130例を対象とした.そのうち80歳未満の72例(以下80歳未満群と略)と80歳以上の58例(以下80歳以上群と略)を比較検討した.rt-PA投与後,CTおよびMRIで頭蓋内出血の有無を検索した.【結果】症候性頭蓋内出血は80歳未満群で5例(7.1%),80歳以上群で4例(6.9%)認め,両群間に有意差は認めなかった(オッズ比1.21; 95%CI 0.04–2.39; P=0.6174).3カ月後のmodified Rankin Scale (mRS) 0–1は80歳未満群が30.0%に対し,80歳以上群は8.8%で,80歳未満群の方が有意に高く(オッズ比7.20; 95%CI 6.05–8.34; P=0.0009),mRS 6(死亡)は80歳未満群が9.0%に対し,80歳以上群は19.3%で,80歳以上群の方が有意に高かった(オッズ比6.52; 95%CI 5.39–7.65; P=0.0015).【結語】症候性頭蓋内出血に年齢因子の関与は有意なものとはいえなかった.転帰には年齢因子が関与することが示唆された.
症例報告
  • 本田 優, 案田 岳夫
    2011 年 33 巻 3 号 p. 357-362
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    破裂脳動脈瘤が,初回脳血管撮影で同定できない率は7~10%,2回目の血管撮影で 2~22%に出血源が同定されるといわれている.今回,脳底動脈先端部破裂動脈瘤で,同様の経験をしたので報告する.症例は65歳女性.突然の頭痛・嘔吐をきたし,当院へ救急搬送された.来院時JCSII-10,GCS E3V5M6.瞳孔不同なく,迅速な対光反射を認めた.その他局所神経症状を認めなかった(WFNS Grade II, H&K G3).頭部CTでびまん性のSAH(Fisher group 3)を認め,脳血管撮影を行ったが動脈瘤を同定できなかった.2回目の脳血管撮影で,脳底動脈先端部に2 mmの嚢状動脈瘤を認め,動脈瘤頸部クリッピングを行った.破裂脳動脈瘤を脳血管撮影で同定できない原因には,瘤の血栓化,動脈瘤のサイズ,スパズムの影響などが考えられている.分解能の向上した3D-CTA・MRIの併用や,3D脳血管撮影の導入でこのような症例は減少していくことが予想されるが,現時点では,スパズム期を過ぎた時点での脳血管撮影の再検査が必要と考えられた.
  • 青島 千洋, 小倉 浩一郎, 立花 栄二, 告野 正典, 中根 幸実, 住友 正樹
    2011 年 33 巻 3 号 p. 363-369
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    Motor cortex stimulation(MCS)が脳卒中後慢性期の上肢麻痺を改善する可能性があり,われわれはこれまで25例のMCS治療を行ってきたが,今回MCSが即時改善効果を呈した2例を報告する.症例は56歳女性(脳梗塞後6カ月,左片麻痺)と49歳男性(視床出血後3年,右片麻痺)で,ともに中等度以上の上肢麻痺が見られた.Functional MRIで同定した運動野の硬膜外に刺激電極を設置し,その手術の翌日に電気刺激をONにすると麻痺側の肩挙上が改善し,OFFにすると元のレベルへ戻るという所見を両症例で観察した.7–10日後にはON-OFFの差がなくなり,改善は持続し,3カ月後のFugl-Meyer運動機能評価では,10点以上改善していた.MCSによる上肢麻痺改善の機序は不明であるが,今回の所見は,MCSがシナプス伝達への直接的な効果を有することを示唆するものと考えられた.
短報
  • 長山 成美, 権藤 雄一郎, 垣内 無一, 中西 恵美, 松井 真
    2011 年 33 巻 3 号 p. 370-373
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    脳血管障害にともなう味覚低下の報告は比較的稀である.今回われわれは舌右側の味覚低下で発症した左視床梗塞の症例を経験した.症例は58歳,男性.昼食中に口腔内右半分の味覚低下が出現.続いて右口唇部・右母指と示指のしびれ感が出現,改善しないため入院した.頭部MRI拡散強調画像で左視床に急性期梗塞像を認めた.電気味覚検査で,急性期の第11病日には右鼓索神経領域の刺激閾値の著明な上昇を認めたが,第53病日には改善を認めた.味覚の中枢伝達路は同側延髄孤束核から橋味覚野へ伝達された後,交叉して対側視床へ投射,頭頂葉弁蓋部に存在する味覚野に至る.この経路に脳血管障害が起こると味覚障害をきたすが,舌咽神経や鼓索神経などの障害と比較して障害が軽く,詳細な解析の報告はない.今後の症例蓄積が必要である.
  • 西村 寿貴, 松平 敬史, 荒木 邦彦, 高橋 正年, 片多 史明, 佐藤 進, 柴山 秀博, 福武 敏夫
    2011 年 33 巻 3 号 p. 374-377
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/27
    ジャーナル フリー
    当院での血栓溶解療法(以下rt-PA)導入後の院内発症脳梗塞について検討する.院内発症の連続脳梗塞発症例において年齢,性別,入院の原因となった疾患,治療法,予後を検討した.59人(平均年齢77歳,男性36人)の院内発症脳梗塞があり,その元の入院様式は緊急入院(48人)が多かった.臨床病型としては塞栓性(43人)が最も多く,入院の原因疾患として悪性新生物(15人)が最も多く,以下感染症(14人),心不全関連(13人)と続いた.治療は保存的治療(33人)が最も多く,rt-PA施行は4人だった.退院時のmRSはmRS 6が25人と最多で,自力退院できるmRS 0–2は11人と少数であった.
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