脳卒中
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33 巻, 4 号
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原著
  • 松永 成生, 周藤 高, 末永 潤, 猪森 茂雄, 藤野 英世
    2011 年 33 巻 4 号 p. 393-400
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    【目的】後頭蓋窩脳動静脈奇形に対してガンマナイフ(GKS)を行った自験例の治療成績を解析し,治療後長期経過例におけるGKSの有効性,安全性について検討した.【方法】GKS施行後5年以上の追跡が可能であった75症例をretrospectiveに検討した.【結果】累積閉塞率は3年57.3%,5年80.2%であった.若年,ナイダス体積が小さい,ナイダスの最大径と最小径の比が小さい症例で有意に閉塞率が高い結果であった.閉塞確認前に2例に出血を認めた.治療後神経症状が悪化したのは10例で,ナイダス体積が大きいこととeloquent areaに存在することが有意に予後不良因子であった.1例で放射線誘発性壊死をナイダス閉塞確認4年後に認めた.【結論】後頭蓋窩脳動静脈奇形に対するGKSは治療から長期経過後も安全で有用な治療法であることが示唆された.しかし治療後に神経症状悪化例も認められるため,ナイダス閉塞のみならず長期の神経機能温存を考慮した治療計画の作製が必要であると考えられる.
  • 鈴木 淳一郎, 小倉 礼, 今井 和憲, 西田 卓, 加藤 隆士, 安田 武司, 伊藤 泰広
    2011 年 33 巻 4 号 p. 401-407
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    【背景と目的】急性期虚血性脳血管障害治療後の再入院は,患者,家族の身体的,精神的,経済的負担となる.再入院例の原因,特徴,問題点を明らかにする.【方法】2005年1月から2009年9月に当院で虚血性脳血管障害急性期の入院加療を行った連続1193例のうち,初回入院時死亡57例を除く1136例で,退院後90日以内に当院に再入院した症例を後ろ向きに検討した.【結果】再入院は125例(11.0%)だった.再入院のうち,血管/出血イベントは47例(4.1%)で,虚血性脳血管障害再発は31例(2.7%),頭蓋内出血は5例(0.44%)だった.その他の予期せぬ再入院は感染症や骨折,悪性腫瘍等60例(5.3%)だった.予定再入院は18例(1.6%)だった.【結論】虚血性脳血管障害後の再入院は,脳卒中再発が最も多い.退院時から積極的な二次予防を地域全体で共通して行う必要がある.
症例報告
  • 白井 慎一, 水戸 泰紀, 小松 博史, 矢部 一郎, 佐々木 秀直
    2011 年 33 巻 4 号 p. 408-412
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    症例は17歳女性,既往に特記すべきことなし.2009年8月中旬,突然の右片麻痺が出現し,救急搬送された.初診時,中等度構音障害と右片麻痺あり,NIHSSスコアは11であった.MRI拡散強調画像で左レンズ核部に高信号域を,MRAにて左MCAのM1近位部の途絶を認めた.最終未発症確認時間後2時間52分にrt-PA療法を施行.使用直前のNIHSSスコアは12であったが,90分後には0に改善し,静注120分後のMRAで左M1再開通を確認した.第7病日に経食道心エコーで二次口欠損型の心房中隔欠損症を認め,発症1カ月後に開胸下で閉鎖術を施行した.その後,軽度の右上肢筋力低下を認めるのみで,日常生活動作は自立し,学業に復帰した.未成年発症例におけるrt-PA療法は報告症例数が少ないが,本例のように血栓溶解療法が奏功する場合もあるので,未成年発症例においてもrt-PA療法を治療の選択肢として考慮すべきである.
  • 金星 匡人, 李 東旭, 金子 知香子, 久保 仁, 下地 眞哉, 山本 悌司, 片山 宗一
    2011 年 33 巻 4 号 p. 413-418
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    症例は39歳女性.既往に思春期より前兆のない片頭痛発作があった.突然,嘔吐を伴う左側の激しい頭痛と視野障害を自覚した.頭部1.5T-MRIで左後大脳動脈(PCA)領域に急性期脳梗塞を認め,頭部MRAでは左PCA(P2)に不整な血管拡張像とintimal flap様所見があり,動脈解離を疑った.脳血管造影でも不整な血管拡張像を認めた.3T-MRAで左PCA(P2)の血管拡張部に明瞭なintimal flapを認め,動脈解離を確認した.発症6カ月後には神経症状,動脈解離の画像所見ともに改善していた.本症例は片頭痛発作に伴うPCA領域の脳梗塞であり,3T-MRIで動脈解離を確認した.PCAのような頭蓋内小径動脈解離において,非侵襲的に高分解能画像が得られる3T-MRIが診断や追跡に有用であった.脳動脈解離は経時的に形態が変化するため,片頭痛発作に伴う脳梗塞では発症初期にのみ動脈解離所見を認める可能性があり,脳血管造影,頭部MRIなどによる初期診断が重要と考える.
  • 甲斐 太, 荒田 仁, 林 茂昭, 長堂 竜維, 新里 友美, 西澤 輝彦, 丸山 芳一
    2011 年 33 巻 4 号 p. 419-423
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    症例は16歳男性.相撲でぶつかり稽古の最中左後頭部の拍動性頭痛が出現していたが我慢して連日稽古を続けた.3日後に稽古中ぶつかった直後より,回転性めまい,右側の難聴,耳鳴りを発症し救急搬入された.突発性難聴疑いにて耳鼻科入院となった.翌朝より右末梢性顔面神経麻痺,右顔面の温痛覚低下,右上肢・体幹小脳性運動失調を認めた.MRIでは拡散強調画像で右前下小脳動脈(AICA)領域と右後下小脳動脈(PICA)領域に高信号域を認め,MRAで左椎骨動脈閉塞,脳底動脈狭窄と右側AICA閉塞を認め,同日当科転科し,抗凝固剤,脳保護剤を投与した.20日後に脳血管造影で右側AICAの再開通を認めた.症状は緩徐に軽快するも右難聴と体幹失調は残存し転院となった.本例の発症機序として,ぶつかり稽古による左椎骨動脈解離を生じ,解離腔の閉塞と同時に血栓性塞栓子を生じ,右AICAを閉塞したものと考えられた.
  • 山本 憲一, 松本 隆, 渡辺 隆之, 日向 崇教, 大島 望, 庄田 幹
    2011 年 33 巻 4 号 p. 424-429
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    外側後脈絡叢動脈(LPChA)の動脈瘤は非常に稀でこれまでの報告例のほとんどがもやもや病に伴うものである.今回我々は,脳室内出血で発症した特発性と考えられるLPChA動脈瘤の1例を経験した.症例は60歳男性で,意識障害(JCS III-100)で発症し救急搬送された.頭部CTでは右側優位の側脳室から第四脳室に及ぶ鋳型状の脳室内出血を認め,緊急で内視鏡下脳室内血腫除去術を施行した.第17病日に施行した脳血管撮影で5 mm大の右LPChA動脈瘤を認めたため,第26病日にナビゲーションガイド下に動脈瘤切除術を施行した.本来高血圧性脳内出血の原因の一つとされるmicroaneurysmがLPChAに生じ,脳室内という周囲に接する構造物がない環境のため増大し出血をきたしたのではないかと推察した.
  • 下畑 光輝, 成瀬 聡, 渡部 裕美子, 田中 一
    2011 年 33 巻 4 号 p. 430-437
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    脳静脈血栓症および硬膜下血腫を合併した脳脊髄液減少症の1例を経験した.症例は31歳男性.立位で生じる頭痛で発症し,以後一過性に複視,右眼瞼下垂,吐気,意識障害,右片麻痺を呈した.神経学的所見および画像所見から脳静脈血栓症を合併した特発性脳脊髄液減少症と診断した.抗凝固療法,補液,安静にて頭痛および脳静脈血栓症は消失したが,両側性の硬膜下血腫を併発した.頭蓋内圧亢進を認めたため硬膜外自己血パッチを行わず抗凝固療法継続下に再度保存的治療を行ったところ,硬膜下血腫は自然消退し,脳脊髄液減少症,脳静脈血栓症の再発もなく経過している.特発性脳脊髄液減少症に合併する脳静脈血栓症や硬膜下血腫の発症には,髄液減少に対する静脈系をはじめとした種々の代償反応が深く関与しており,治療法の選択にはこれらの潜在的な病態を考慮する必要がある.
  • 三嶋 崇靖, 坪井 義夫, 八坂 達尚, 樋口 正晃, 津川 潤, 山田 達夫, 竹本 光一郎, 井上 亨, 高野 浩一
    2011 年 33 巻 4 号 p. 438-443
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    左前大脳動脈解離発症5年後に対側の右前大脳動脈解離を来した1例を経験した.症例は43歳男性,38歳時に頭痛と右不全片麻痺にて発症し,頭部MRIで左前大脳動脈領域に脳梗塞がみられた.MR angiography(MRA)にて左前大脳動脈のA2閉塞および壁内血腫を認めたことから,左前大脳動脈解離と考えられた.神経学的後遺症を残さず退院したが,左前大脳動脈解離発症5年後に,突然発症の頭痛が出現した.頭部CTにて右前頭葉に出血性梗塞を認め,MRAでは左前大脳動脈の狭小化および右前大脳動脈のA2から脳梁辺縁動脈近位部の閉塞を認めた.MRI T1強調画像およびT1強調black blood imageにおいて同部位に壁内血腫が確認され,右前大脳動脈解離と診断した.5年もの長期経過を経て両側前大脳動脈解離を来した症例は,検索した限りでは報告がない.脳動脈解離において慢性期の再発は稀とされるが,既往歴のある症例において頭痛や神経症状の再発があった場合,脳動脈解離の再発も考慮されるべきである.
  • 野村  勝彦, 渡辺  健一, 藤井  辰義, 谷    到, 江本  克也, 鮄川  哲二, 沖   修一, 荒木   攻
    2011 年 33 巻 4 号 p. 444-450
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    我々の施設では2008年1月から2010年12月の3年間に入院時MRI拡散強調画像において内包後脚に可逆性の異常高信号を呈する低血糖脳症を2例経験した.この2例はいずれも両側の内包後脚に異常高信号を有し,受診までの経過あるいは受診時に四肢脱力の左右差があり脳血管障害を疑われた.1例は血糖補正後に速やかな神経学的所見の改善と画像の正常化を認めたが,低血糖症状が遷延した1例においては2回目のMRI拡散強調画像にて内包後脚の病変に加えて放線冠にも異常高信号が観察された.受診時の低血糖や意識障害の程度に関わらず,低血糖に対する初期対応の違いがその後の2症例の臨床経過の違いに影響を与えたと推測された.神経学的所見や画像所見にて急性期脳梗塞が疑われた症例であっても常に低血糖脳症の存在を考慮に入れた十分な初期対応と経過観察を行うことが重要であると考えられた.
  • 鄭 倫成, 浦西 龍之介, 小林 潤也, 西 憲幸, 福田 孝憲, 四宮 一剛, 浅田 喜代一
    2011 年 33 巻 4 号 p. 451-457
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    超急性期脳梗塞に対するrt-PA(アルテプラーゼ)静注療法が無効であり,頸部内頸動脈偽閉塞症と診断された症例を経験した.直ちに経皮的血管形成術を施行したが,アテローマプラークが固かったため不成功に終わった.このため,緊急CEA(頸動脈内膜剝離術)を施行し,脳梗塞の発症を最小限にとどめることができた.周術期に重篤な出血性合併症は生じず,明らかな過灌流症候群も認めなかった.本症例は,rt-PA静注療法直後(3時間10分後)に外科手術を施行した症例であるが,周術期に大きな合併症はなく経過した.
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