症例は58歳男性.画像診断にて右内頸-前脈絡叢動脈瘤を指摘され,術中運動誘発電位(MEP)モニタリング下に,開頭clipping術を予定した.しかし,術中clipをかけることによりMEPが消失したため,Bemsheet
®を使用したwrapping and coatingのみを施行し終刀した.術後の経過は良好で,新たな神経脱落症状も認めず1週間後自宅退院となった.手術約2カ月後,発熱に続く左半身不全麻痺を主訴に外来受診.頭部MRI/MRAにて右前脈絡叢動脈灌流領域に脳梗塞像,および右内頸動脈の狭窄を認めた.入院後梗塞巣周囲に浮腫が出現,見当識障害を呈した.手術材料による血管炎を疑いステロイドおよびグリセオールの投与を施行し炎症所見は改善したが,左半身不全麻痺,高次脳機能障害が後遺した.本症例は手術の際に使用したBemsheet
®により遅発性動脈狭窄が誘発されたと考えられ,今後はより安全なwrapping and coating材の検討が必要と考えられる.
抄録全体を表示