脳卒中
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34 巻, 6 号
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原著
  • 渡邉 誠, 奥山 夕子, 登立 奈美, 川原 由紀奈, 木下 恵子, 佐々木 祥, 辻 有佳子, 園田 茂
    2012 年 34 巻 6 号 p. 383-390
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    【目的】診療報酬改定により可能となった訓練量増加がADL改善に及ぼす影響を年齢別に検証した.【方法】当院回復期リハビリ病棟に入退棟した脳卒中患者で,一日の訓練単位上限が6単位(2時間)の時期に5~6単位の訓練を行った106名(6単位群)と訓練単位上限が9単位の時期に7~9単位の訓練を行った130名(9単位群)を対象とし,入退棟時のFIM運動項目(FIM-M),FIM-M利得,FIM-M効率を比較した.年齢別に3群,入院時FIM-M得点層別に2群に層別化し分析も行った.【結果】FIM-M利得,FIM-M効率は9単位群で有意に高かった.FIM-M低得点層で70歳以上と60~69歳のFIM-M利得,FIM-M効率,高得点層で70歳以上のFIM-M利得が9単位群で有意に高かった.【結論】訓練量の増加はADLをより改善させ,その程度は60歳代のFIM-M低得点層と70歳以上の高齢者で顕著であった.
  • 長尾 恭史, 小林 靖, 竹内 雅美, 田積 匡平, 小田 知矢, 眞河 一裕, 宮島 さゆり, 馬渕 直紀, 小林 洋介, 高橋 美江, ...
    2012 年 34 巻 6 号 p. 391-398
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    【目的】脳卒中急性期における肺炎合併がどのような機序で機能回復に影響を与え予後悪化を招くか後方視的に検討した.【方法】急性期脳卒中患者のうち肺炎発症高リスク47名を対象とし,肺炎合併群17名と非合併群30名で各種データを比較.【結果】急性期入院時の背景因子・重症度は2群で差はなく,転院時では血清アルブミン値,SIAS麻痺側上下肢(上肢遠位除く),非麻痺側,体幹各下位項目,FIM,回復期退院時ではSIAS下肢近位(股),非麻痺側,体幹各下位項目,FIM,FIM効率と嚥下障害改善率で肺炎合併群が有意に劣っていた.【結論】肺炎合併による機能的予後の悪化とは,リハ遅滞や臥床による廃用性萎縮や学習された不使用が生じることにより,急性期での麻痺側運動機能,非麻痺側機能,体幹機能,嚥下機能の低い改善・低下や低栄養が主因となり,結果として回復期での機能回復にまで悪影響を及ぼすことであると考えられた.
  • 豊田 章宏
    2012 年 34 巻 6 号 p. 399-407
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    【背景および目的】わが国の脳卒中死亡率は減少したが発症数は減少しておらず,病型構成も生活様式の変化により変わったとの報告が多い.しかし,継続した大規模データの解析例は少なく,CT普及以前は病型診断自体に曖昧な点も多いため,CT普及後の約15万件のデータを用いて検討した.【方法】1984~2009年度に全国32の全国労災病院群で入院治療された全脳卒中患者150,899例について脳卒中病型の変化を性別や年齢別に分析した.【結果】脳梗塞は2003年頃まで年々増加した後はほぼ横ばい.脳出血は微増傾向が持続.くも膜下出血はほぼ横ばい.病型割合では,脳梗塞が54.6%から66.2%へ増加し,脳出血は28.7%から26.2%,くも膜下出血は16.7%から7.6%へと相対的に減少した.患者年齢層別の検討では,くも膜下出血は高齢女性で増加.脳内出血は男女ともに高齢患者が増加.脳梗塞に関しては,脳血栓は男性では30歳代から増加し,脳塞栓は男女差は少ないが高齢者で多かった.
  • 長畑 守雄, 近藤 礼, 伊藤 美以子, 佐藤 篤, 山木 哲, 根津 仁子, 板垣 寛, 佐藤 慎治, 齋藤 伸二郎, 嘉山 孝正
    2012 年 34 巻 6 号 p. 408-413
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    【目的】Merci治療導入後における脳梗塞急性期再灌流療法の転帰を検討した.【方法】対象は2010年11月からの1年間で発症から6時間以内の急性期に来院した85歳以下の脳梗塞患者122例で,再灌流療法3群(rt-PA,Merci,rt-PA and Merci)および保存的治療群の入院時NIHSSと退院時転帰(mRS)を検討した.【結果】再灌流療法はrt-PA群21例(17.2%),rt-PA+Merci群7例(5.7%),Merci群11例(9.0%)で,急性期脳梗塞患者の32.0%に何らかの再灌流療法を施行し得た.再灌流療法全体の転帰はmRS 0-2が14/39(35.8%),mRS 5-6が8/39(20.5%)であった.再灌流療法各群で転帰率に大きな差はみられなかった.【結語】急性期脳梗塞の治療において,Merci治療はrt-PAを補完する有効な再灌流療法である.
  • 櫻井 謙三, 今井 健, 加藤 文太, 齊藤 智子, 伊佐早 健司, 堀内 正浩, 長谷川 泰弘
    2012 年 34 巻 6 号 p. 414-420
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    【背景】tPA静注療法の施行率には地域格差があり,これを是正する技術としてtelestokeが提案されている.われわれはtPA静注療法実施を想定しone hub one spokeのnetworkを組み,telestrokeの技術的問題を検討した.【方法】健常者でNIHSSスコアを遠隔診療と対面診療で同時に行い,測定に要する時間を評価した.次に,患者を同様に診療しNIHSSスコアの一致率を評価した.また急性期でのカメラの位置,至適通信確立時期を検討した.【結果】診察時間は遠隔診療群で平均2分41秒長く,スコア誤差は平均0.73点であった.カメラは頭部直上150-170 cmに,CT撮像後に遠隔医療支援を開始する方法が適切と考えられた.【結論】双方向性ハイビジョンビデオ会議システムを用いた遠隔医療支援によるtPA静注は可能と思われ,実際のtPA静注療法施行例での検討を開始すべきと考えられた.
  • 荒木 周, 中井 紀嘉, 安井 敬三, 長谷川 康博, 祖父江 元
    2012 年 34 巻 6 号 p. 421-428
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    【目的】急性期の一過性脳虚血発作(TIA)の患者におけるMRI FLAIR像でのhyperintense vessel sign(HVS)の頻度とその患者群の臨床的特徴について明らかにする.【方法】神経学的局在所見が発症後24時間以内に消失した165例を対象にHVSの有無を後方視的に調査した.HVSの有無で2群に分けて臨床像・検査の諸項目を比較検討した.【結果】HVSは対象の9.7%に認めた.HVS群は50%以上の主幹動脈狭窄を合併し,TOAST分類でlarge vessel typeと推定できるものが多かった.ABCD2スコアや拡散強調像での脳梗塞の有無とは無関係であった.HVS群の94%でHVSを呈した動脈と神経症候が合致した.HVS群の80%で平均60日後にHVSの消失を確認した.【結論】急性期TIAでのHVSは虚血の存在を客観的に示す画像所見として診断の上で有用と考える.
症例報告
  • 新保 大輔, 青樹 毅, 今村 博幸, 鐙谷 武雄, 加藤 正仁, 緒方 昭彦, 会田 敏光
    2012 年 34 巻 6 号 p. 429-434
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性.突然に発症した後頸部痛と嘔気を主訴に当院へ救急搬送された.椎骨動脈解離による延髄外側症候群と診断し,アルガトロバンによる抗凝固療法を開始した.発症から10時間後,強い頭痛を訴えた後に意識障害が出現し(JCS III-200),頭部CTにてくも膜下出血を認めた.緊急で脳血管撮影を行い,解離性椎骨動脈瘤破裂と判断して病変を含む母動脈のコイル塞栓術を行ったが,くも膜下出血発症後の4日後に死亡された.虚血発症の解離性動脈瘤に対する抗凝固,抗血小板療法の使用に対する明確な治療指針はないのが現状であるが,続発するくも膜下出血の可能性があり,その使用には厳重な注意が必要であると考えられた.
短報
  • 永沢 光, 山口 佳剛, 小野 洋也, 田中 英智, 山川 達志
    2012 年 34 巻 6 号 p. 435-439
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    ダビガトランを新規に投与開始した44例(男性27例,年齢の中央値77歳)について投与前後の血液凝固マーカーの推移や出血性合併症の有無などを調査した.出血性合併症3例とAPTT 70秒以上の過剰延長を呈した6例を合わせた群では有意にBUN,血清クレアチニンが高値であり,CCRが低値であった.ダビガトラン投与前のAPTTは平均29.5±3.7秒であったが投与後初回のAPTTは46.9±8.4秒と有意に延長した(p<0.001).しかし初回と比べて2回目のAPTTは49.4±8.8秒と差がなかった(p=0.101).ダビガトランは投与開始初期にAPTTが有意に延長し,腎機能障害を有する例では過剰延長を来す危険性が高くなり注意が必要である.ダビガトラン投与開始後早期にAPTTを含む凝固能検査を行うことが推奨される.
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