脳卒中
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34 巻, 1 号
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原著
  • 白石 眞, 渡辺 裕文, 櫻井 謙三, 加藤 文太, 長谷川 泰弘
    2012 年 34 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/27
    ジャーナル フリー
    症候性または無症候性ラクナ梗塞を有する高血圧の心血管系イベント発症リスク層別化における24時間自由行動下血圧測定(ABPM)の意義を調べた.対象は症候性または無症候性ラクナ梗塞を有する高血圧175例.ABPMから得られるパラメータと症候性脳卒中または急性冠動脈症候群による複合エンドポイントとの関連を調べた.平均4.8年の追跡期間中,複合エンドポイントは38例で,うち34例はラクナ梗塞であった.複合エンドポイントに対する睡眠時間帯収縮期血圧最低値の3分位では,年齢,性別,喫煙,糖尿病,高脂血症,慢性腎臓病,症候性ラクナ梗塞を調整した収縮期血圧133 mmHg以上のハザード比は3.93 (95%RI 1.57-9.86,P<0.004)で,132 mmHg以下と比べて有意であった.症候性あるいは無症候性ラクナ梗塞巣を有する高血圧の睡眠時間帯収縮期血圧最低値はラクナ梗塞発症のリスク層別に有用であった.
  • 宮腰 淑子, 五十嵐 修一, 永尾 侑平, 井上 重宏, 佐藤 朋江, 関谷 可奈子, 新保 淳輔, 佐治 越爾, 森田 健一, 佐々木 修 ...
    2012 年 34 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/27
    ジャーナル フリー
    【背景および目的】可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome; RCVS)は,雷鳴頭痛を主徴とし,脳血管に可逆性の分節状攣縮を認める疾患である.本疾患の臨床経過と画像所見の経過の検討を目的とした.【方法】2004年6月から2010年12月までに当科にRCVSの診断で加療を行った6例について検討した.【結果】発症年齢は39-53歳(平均44歳)で,女性が4例,男性が2例であった.全例に雷鳴様頭痛を認めた.3例が脳卒中を発症し,全例が女性であった.脳出血が1例,くも膜下出血と脳出血との合併例が2例であった.ベラパミルが5例に投与され,症状改善がみられたが,1例に片麻痺の後遺症を残した.【結論】突然の激しい頭痛を訴える患者を診察する際には,RCVSを鑑別に含める必要がある.
症例報告
  • 水上 平祐, 清水 高弘, 高田 達郎, 平山 俊和, 長谷川 泰弘
    2012 年 34 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/27
    ジャーナル フリー
    横静脈洞硬膜動静脈瘻(TS-dAVF)は静脈圧亢進を伴いやすく,他のdAVFより脳出血を起こしやすいが早期診断は容易でない.早期診断におけるMRI,MRA所見の重要性が示唆された症例を経験した.75歳男性,階段から転落し腰椎圧迫骨折を受傷.受傷後10日目に腰痛を主訴に搬送された.来院時,傾眠傾向であったが頭部MRI,MRAで粗大病変は認めなかった.しかし受傷後14日目に意識レベル低下,痙攣,左共同偏視,左片麻痺が出現し,頭部CTで右被殻領域に出血を認めた.受傷後32日目の頭部CTで左側頭葉皮質下に再出血を認め,MRIで深部白質の浮腫像を認めた.脳血管撮影で左後頭動脈から流入するTS-dAVFを認めたため,経静脈的にCoil塞栓術を施行しdAVFの根治,深部白質の浮腫像の改善を得た.外傷歴に加え,脳出血前のMRIで認めた脳深部の浮腫像とMRA上の横静脈洞の描出は本症を疑うべき所見と考えられた.
  • 浪岡 愛, 門山 茂, 加藤 宏一, 小西 孝則, 中川 将徳, 氏家 弘, 野村 和弘
    2012 年 34 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/27
    ジャーナル フリー
    中大脳動脈塞栓の血行再建術を行うにあたり,動脈瘤等のpit fallはよく知られている.今回我々は,血行再建後にM1の窓形成を認めた1例を経験したので報告する.症例は76歳女性,既往に心房細動があり,最終無発症確認3.5時間,NIHSS 35で救急搬入された.左中大脳動脈M1の閉塞に対してMerci retriever V 2.5 mm softを用いて血行再建術を行った.One pass後末梢の描出が良好となり手技を終了,2週間後の血管撮影で残存狭窄部に窓形成を認めた.約3週間後NIHSS 15,mRS 4で転院した.中大脳動脈の窓形成の頻度は0.02-1.0%で,M1近位部に多い.M1近位部に塞栓があり,末梢の状態が観察不可能な状態では,このようなvariationの存在を認識しておくことがMerci retrieverによる血管損傷を防ぐ為に必要である.
  • 狩野 忠滋, 堀越 知, 秋山 武和, 赤路 和則, 谷崎 義生, 正和 信英, 美原 盤
    2012 年 34 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/27
    ジャーナル フリー
    症例は86歳,男性.既往として尿管癌を指摘されていたが,積極的な治療は受けていなかった.突然の左片麻痺を契機として当院に救急搬送された.来院時の頭部CTにて,右前頭葉に皮質下出血を認めた.頭部MRAでは明らかな異常血管は認めなかった.保存的に加療を行い,回復期リハビリテーション病棟へ転床となった.発症31病日に,突然の頭痛を訴えた.頭部CTにて左円蓋部にくも膜下出血を認め,頭部MRAと脳血管撮影にて左中大脳動脈末梢に紡錐状動脈瘤の新生を認めた.開頭動脈瘤トラッピング術ならびに切除術を施行した.病理検査にて動脈瘤壁に異型細胞の浸潤増殖を認め腫瘍性動脈瘤と診断された.術後は,トラッピングに伴う脳梗塞を発症せず経過し,リハビリテーションを継続した.担癌状態の患者に生じた動脈瘤に於いては,腫瘍性動脈瘤の可能性を考慮して治療にのぞむ必要があると考えられた.
  • 吉原 章王, 柴野 健, 星 明彦, 望月 仁志, 杉浦 嘉泰, 宇川 義一
    2012 年 34 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/27
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,男性である.浮動性めまいと左後頸部痛が出現し(第1病日),第9病日全身の皮疹,発熱と拍動性頭痛が出現した.初診時(第11病日)全身に水疱,痂皮が混在する丘疹を認め,水痘と診断しバラシクロビルを経口投与した.神経学的に局所病変を示唆する神経所見や髄膜刺激徴候は認めなかったが,第17病日に施行した頭頸部MRI,MRAで左椎骨動脈に最大径17 mmの紡錘状拡張を認め,同血管のMRI信号変化から亜急性期の椎骨動脈解離による解離性脳動脈瘤と考えられた.動脈の拡張所見を認めたことから抗血栓治療は導入せず,降圧治療を行った.水痘・帯状疱疹ウイルス感染との関連が示唆される若年性脳動脈解離はまれであり,貴重な症例と考えられた.
  • 中川 実, 坂本 千穂子, 藤原 賢次郎
    2012 年 34 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/27
    ジャーナル フリー
    近年,肺腫瘍の術前CTガイド下マーキングを行う機会が増加している.今回,我々はCTガイド下マーキング終了直後に脳空気塞栓症を来した1例を経験したので報告する.症例は66歳,男性で,右下葉S8の腫瘤に対してビデオ補助胸腔鏡手術直前にCTガイド下マーキングを施行した.マーキング終了直後,突然意識障害,けいれん,左片麻痺を発症し,直後の頭部CTにて主に右大脳の脳溝に沿って空気像を認め,脳空気塞栓症と診断した.直ちに高圧酸素療法を施行し,治療直後の頭部CTではごく一部空気像を認めるのみとなった.その後意識も清明となり,運動麻痺も改善し,歩行可能となった.近年,肺腫瘍の術前CTガイド下マーキングを行う機会が増加しているが,それによる合併症としての空気塞栓症に関しても2001年以降報告が散見されており,穿刺針が極めて細いとはいえ,起こりうる合併症であり,文献的考察を加え,自験例を報告する.
「脳梗塞t-PA 研究会」第5 回研究集会
短報
  • 福田 真弓, 古賀 政利, 森 真由美, 大崎 正登, 長束 一行, 峰松 一夫, 豊田 一則
    2012 年 34 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/27
    ジャーナル フリー
    【目的・方法】脳梗塞発症早期の神経症候増悪(END)は予後不良と関連する.当院でrt-PAを施行した連続200例[女性65例(33%),74±11歳]についてrt-PA投与24時間以内のENDの頻度,原因,関連因子および転帰を調べた.【結果】ENDを30例(15.0%)に認め,内訳は脳梗塞早期再発が3例(1.5%),脳梗塞の進行が21例(10.5%),頭蓋内出血が6例(3.0)であった.脳梗塞早期再発は高齢で入院時D-dimerが高値であった.頭蓋内出血でワルファリン,脳梗塞の進行で抗血小板薬の内服が多かった.ENDはENDなしに比べ,退院時NIHSSと3カ月後mRSが高値であった.【結語】rt-PA投与後のENDは1割以上に出現し,転帰不良と関連していた.ENDの原因ごとに関連因子が異なっていた.
  • 青木 淳哉, 木村 和美, 井口 保之, 井上 剛, 芝崎 謙作, 渡邉 雅男
    2012 年 34 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/27
    ジャーナル フリー
    約25%の急性期脳梗塞例は発症時間が不明であるためt-PA静注療法の対象から除外される.頭部MRI DWIで高信号を呈していてFLAIRで信号変化がない場合(DWI/FLAIRミスマッチ),発症3時間以内と推定できる.我々は発症時間不明の脳梗塞例に対しDWI/FLAIRミスマッチに基づいたt-PA静注療法を行った.2009年6月から2011年10月までに13例[83 (67-90)歳,NIHSSスコア16 (11-20)点]が登録された.最終無事確認時間からt-PA静注療法まで5.6 (5.0-11.6)時間であった.24時間以内の再開通は10例(完全再開通:5例),症候性頭蓋内出血は0例であった.発症7日後の著明改善例は7例で,3カ月後の転帰良好例(mRS 0-2)は5例であった.発症時間が不明であってもDWI/FLAIRミスマッチがあればt-PA静注療法の対象になる可能性がある.
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