脳卒中
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34 巻 , 5 号
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原著
  • 井上 泰輝, 横田 千晶, 上原 敏志, 冨井 康宏, 矢坂 正弘, 平野 照之, 長谷川 泰弘, 鈴木 明文, 峰松 一夫
    2012 年 34 巻 5 号 p. 289-297
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    普遍的かつ正確な統合型脳卒中地域医療評価システムの構築を目的とし,科学的根拠に基づく「脳卒中急性期インディケーター案」が策定された.2010年7~9月の任意の2カ月間,発症3日以内に入院した脳卒中1686例を前向きに登録した.全協力施設を人口密度で2群,登録患者数,病床数,脳卒中従事医師数で3群に分け,施設毎の各インディケーター実施率を調査した.インディケーター実施率と人口密度,病床数,脳卒中従事医師数との関連は認めず,頭部CT/MRI,脳血管評価,抗血栓療法,脂質/血糖検査の施行率は90%以上の高い施行率であった.登録患者数の最多群において,理学療法評価の施行率が高値であり(p=0.026),最少群において,抗血栓療法施行率が高値であった(p=0.0046).今後,全国規模でインディケーター実施率を評価し,施設へフィードバックを行うシステムの構築が必要と考える.
  • 福原 康介, 坪井 義夫, 福原 藍加
    2012 年 34 巻 5 号 p. 298-303
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    【目的】脳梗塞患者に冠動脈疾患を合併する頻度は高く,脳梗塞加療後に心筋梗塞を発症し死に至るケースも多く認められる.ラクナ梗塞患者における冠動脈カテーテルインターベンション(PCI)が必要であった無症候性冠動脈疾患の有病率を明らかにする.【方法】2007年4月から2010年12月に当院にラクナ梗塞の診断で入院した30例を対象とした.文書による同意を得た後に,冠動脈CTを施行してスクリーニングを行った.また,患者背景および血管危険因子を比較した.【結果】無症候性冠動脈狭疾患は10例(33.3%)で,このうちPCIを施行した症例は7例(23.3%)であった.PCI施行群では未施行群と比して,HbA1c,LDL-C,TGおよびL/H比の値が有意に高かった.【結論】上述の危険因子を合併する症例では,ラクナ梗塞患者であってもPCIを必要とする無症候性冠動脈疾患を有する可能性が高いと推察された.
  • 成澤 あゆみ, 昆 博之, 川口 奉洋, 高沢 弘樹, 森田 隆弘, 園部 真也, 大谷 啓介, 佐々木 達也, 西嶌 美知春
    2012 年 34 巻 5 号 p. 304-309
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    【目的】末梢性中大脳動脈瘤は比較的稀であり,診断および治療に際してWillis動脈輪近傍の動脈瘤と異なる注意を要するため,その臨床的特徴を明らかにする.【対象および方法】2000年1月から2011年3月までの当科入院患者のうち末梢性中大脳動脈瘤を有する12例について,破裂・脳内血腫の有無,治療および予後について検討した.【結果】9例は多発脳動脈瘤であった.4例は末梢性中大脳動脈瘤破裂で発症し,そのうち2例で脳内血腫を伴い,8例は未破裂で診断された.根治術を行った11例全例でneck clippingを行った.治療成績は8例がGOSでGR,2例がMD,1例がSDであった.【結論】末梢性中大脳動脈瘤は,典型的な嚢状動脈瘤と異なる特徴をもち症例によっても様々であるため,個々の症例に合わせた治療方針の検討が必要である.
  • 井戸 啓介, 吉川 雄一郎, 中溝 玲, 田中 俊也, 天野 敏之, 吉本 幸司, 溝口 昌弘, 佐々木 富男
    2012 年 34 巻 5 号 p. 310-316
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    【背景および目的】凝固療法中に慢性硬膜下血腫を発症した機械弁置換術後患者の周術期管理における問題点を検討した.【方法】弁置換術後のワーファリンによる抗凝固療法中に慢性硬膜下血腫を発症した5例を対象とし,周術期における凝固時間測定回数,頭部CT撮影回数,抗凝固療法の中止時期および中和の有無,抗凝固療法の再開時期,弁血栓の有無などについて後ろ向きに検討した.【結果】全例で血腫の再発,弁血栓による弁機能不全や血栓塞栓性合併症を認めなかったが,1例は術後,多臓器不全により死亡した.【結論】機械弁置換術後の抗凝固療法中に生じた慢性硬膜下血腫患者に対しては,現時点では血腫の発症・再発予防および血栓塞栓性合併症の発症予防のための具体的なPT-INR値の指標は存在せず,心臓超音波検査による弁血栓の評価を行いながら,頻回の頭部画像検査および血液凝固時間測定に基づいた厳重な周術期管理を行うべきである.
  • 冨井 康宏, 鴨島 尚美, 岩田 佳奈枝, 上妻 京子, 橋本 悟, 長谷 斉, 八木 信明, 中川 正法
    2012 年 34 巻 5 号 p. 317-323
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    【目的】2011年8月に作成した当院の脳梗塞急性期クリニカルパス(以下CP)の転帰達成率を検討し,入院時診療情報のみで適応決定できるどのようなCPが有用かを明らかにする.【方法】急性期脳梗塞患者連続136例(CP作成前100例,作成後36例)を対象に,背景因子と転帰,自宅退院予測因子につき検討した.【結果】CP使用患者19例(53%)のうち「日常生活活動制限なし」達成患者は13例(68%)であった.この達成群は非達成群と比較して,自宅退院率が高く(p<0.001),在院日数が短かった(p<0.001).CP非使用理由に該当する36例を除外した100例(74%)において,自宅退院予測因子は入院時NIHSSスコア 2以下であった(感度73%,特異度75%).【結論】入院時NIHSSスコアに基づく転帰予測型CPが有用と考えられた.
  • 菊地 顕次, 鈴木 一夫, 小島 壽志, 二渡 克弥, 村石 健治, 須田 良孝, 佐々木 順孝, 伏見 進, 太田原 康成, 大塚 聡郎, ...
    2012 年 34 巻 5 号 p. 324-333
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    【目的】特定健康診査(メタボ健診)のデータから脳卒中の発症危険因子を検出し,脳卒中発症危険因子としてのメタボリックシンドローム(メタボ)を評価して有効な脳卒中予防対策を検討した.【対象と方法】秋田県で行われた2008年の非脳卒中メタボ健診受診者47969人と2007年から2010年までのメタボ健診受診者で受診から1年以内の脳卒中を発症した174人を対象とした.健診項目の性,年齢,血圧,肥満度(BMI),総コレステロール,糖尿病,メタボ,心房細動,および喫煙を独立変数とし,脳卒中発症を従属変数とした多変量logistic解析で脳卒中危険因子を病型別に検討した.【結果】脳梗塞では男性,年齢,血圧,糖尿病,心房細動,喫煙,脳出血では年齢,血圧,くも膜下出血では女性,喫煙がそれぞれ危険因子として検出された.メタボは脳卒中危険因子ではなかった.血圧と喫煙の人口寄与危険割合は大きく,集団の脳卒中予防には高血圧対策と禁煙対策が最も有効であることが示唆された.【結論】集団における脳卒中予防対策では血圧と喫煙の優先順位が高い.メタボは従来の脳卒中発症危険因子を凌駕する危険因子ではないので,脳卒中発症を予防するために,メタボ健診後の積極指導対象者を内臓肥満者に限定せず,喫煙者や高血圧者に拡大するなど,特定保健指導の運用の見直しが必要であると考えられた.
症例報告
  • 河野 祥一郎, 出口 健太郎, 森本 展年, 出口 章子, 倉田 智子, 池田 佳生, 松浦 徹, 伊藤 浩, 赤木 禎治, 阿部 康二
    2012 年 34 巻 5 号 p. 334-339
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.40歳頃より拍動性ならびに非拍動性の頭痛を認め,60,61,65歳に脳梗塞の既往がある.今回は突然のめまい,嘔気・嘔吐で受診,神経学的には軽度の左上下肢の失調と体幹失調を認め,頭部MRIで左小脳半球に梗塞巣を認め,経食道心エコーで卵円孔開存を認めた.奇異性脳塞栓症と診断し,エダラボン,ワルファリンなどの加療により,めまい,失調は改善したが頭痛は改善せず退院となる.その後AmplatzerTMによる卵円孔閉鎖術を施行したところ,それ以後頭痛が完全に消失し脳塞栓症の再発はない.海外では卵円孔閉鎖術が片頭痛の改善に有効とする報告があるが,日本ではAmplatzerTMが卵円孔開存には保険適応がなく,症例報告がない.本症例では閉鎖術が頭痛も改善させた可能性が考えられ,慢性的な頭痛を伴う脳梗塞患者では,卵円孔開存の有無を確認し,閉鎖術を考慮してもよいのではないかと考えられる.
  • 冨田 仁美, 奥田 真也, 松本 雄志, 鴨川 賢二, 岡本 憲省, 奥田 文悟
    2012 年 34 巻 5 号 p. 340-345
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.突然の左片麻痺と構音障害にて当科へ入院となった.左片麻痺のほかに左核上性顔面神経麻痺,左舌下神経麻痺,頸部以下の左半身で深部感覚障害がみられた.頭部MRIでは右延髄上部から中部の腹側から被蓋部に梗塞巣を認めた.3週間後も左舌下神経麻痺は続いたが,線維束攣縮や筋萎縮はみられないため,左核上性舌下神経麻痺と診断した.本例の顔面神経麻痺と舌下神経麻痺は病巣と反対側にみられたため,両神経核への核上性線維が延髄において交叉する前に障害されたと推測された.核上性の顔面神経および舌下神経線維の交叉部位には延髄上部から下部にかけてバリエーションが存在することが示唆された.
  • 平田 浩二, 藤田 桂史, 高橋 利英, 片山 亘, 亀崎 高夫, 中西 啓太, 前田 裕史, 小石沢 正, 松村 明
    2012 年 34 巻 5 号 p. 346-350
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    脳出血による片麻痺を呈する43歳,男性,入院日より間歇的空気圧迫法(IPC)とリハビリテーションを開始した.第4病日にIPCの不快感を訴え,IPCを中止した.第14病日に肺塞栓症(PE)を来した.海外では脳出血後の深部静脈血栓症(DVT)/PEに対し,IPCの予防効果や第2病日からのヘパリン投与の安全性と有効性が報告されているが,アジア人を対象とした報告はない.また,第3病日以降のヘパリン投与は予防効果を認めないことや,第33病日でのPE発症例が報告されており,超急性期から少なくとも約1カ月間の予防治療継続と評価の重要性を示唆している.本症例では,第4病日でのIPC終了は時期尚早であり,IPC終了に際して,下肢静脈エコーで無症候性DVTの有無を評価すべきであり,弾性ストッキングの代用や低用量ヘパリンの投与を検討すべきであった.また,脳出血後のDVT/PE予防に関する日本人のエビデンスの構築が待たれる.
  • 荒川 博之, 赤岩 靖久, 佐治 越爾, 下畑 享良, 西澤 正豊
    2012 年 34 巻 5 号 p. 351-355
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    左中大脳動脈領域の脳梗塞に対し,recombinant tissue plasminogen activator(rt-PA)静注療法施行中に対側の内頸動脈閉塞を来し,予後不良な経過をたどった症例を経験した.症例は心房細動を有する79歳女性.左中大脳動脈領域の脳梗塞に対し,rt-PA静注療法を施行.開始後37分で右内頸動脈閉塞を来し,発症2日後に永眠した.rt-PA静注後早期に,責任血管の再閉塞では説明がつかない虚血による神経症状の悪化を来すものはearly recurrent ischemic stroke(ERIS)と呼ばれる.その機序として,心腔内血栓によるものや頸動脈プラークの遊離によるものなどが考えられている.rt-PA静注療法を施行する際はERISの存在も念頭に置いて可能な限り,心腔内血栓や頸動脈のプラーク病変等の検索をする必要がある.
  • 萩原 のり子, 井林 雪郎
    2012 年 34 巻 5 号 p. 356-362
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    症例は胃食道逆流症(GERD)の既往がある75歳,男性.右中大脳動脈領域の脳梗塞発症後より吃逆が出現した.経鼻胃管による経腸栄養を開始したが,吃逆に伴い胃内容の逆流を来し嚥下性肺炎を繰り返した.吃逆は治療抵抗性で,逆流症状と並行して増悪した.薬物治療に加え,液体流動食を半固形化することで逆流のみならず吃逆も軽減し,肺炎の再発もなくなった.脳卒中後の嚥下障害に対し経鼻胃管による経腸栄養が推奨されているが,吃逆を呈する患者では胃管による機械的刺激も増悪因子となりうるため,漫然とした長期使用により医原性に難治化させないよう注意すべきである.吃逆はGERDの一症状であり,逆流症状の自覚に乏しい高齢患者においても,難治性吃逆を呈する患者ではGERDの関与を疑うことが重要であるとともに,逆流の防止が吃逆の軽減につながる可能性があり,経腸栄養使用時は半固形化栄養法を導入することが有効と考えられた.
  • 萩原 のり子, 古賀 秀剛, 片山 雄二, 井林 雪郎
    2012 年 34 巻 5 号 p. 363-368
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.突然の右片麻痺と失語症を来し,頭部MRIで多発する急性期脳梗塞を認めた.心原性脳塞栓症を疑い塞栓源の検索が進められたが,急性期の初回検査では明らかな異常は指摘されなかった.発作性心房細動の可能性を考慮し抗凝固療法が開始され,第38病日に当院へ転入院した.塞栓源の再評価を行った結果,第40病日の経胸壁心エコー検査で左房内に可動性の腫瘤を認めた.適切な抗凝固療法下で増大した腫瘤であり,粘液腫が疑われたため外科的治療の目的で緊急転院した.第55病日に腫瘤が切除され,病理学的に粘液腫と診断された.心臓粘液腫は稀な疾患であるが,腫瘍片や表面の血栓が剥離して塞栓症を引き起こすため,多発性脳塞栓症を診る場合は常に考慮すべき疾患の一つである.発症直後の単回評価では残存腫瘍が小さく検出されない場合があり,慢性期においても評価を継続することが適切な診断および治療につながると考えられる.
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