脳卒中
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35 巻, 2 号
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原著
  • 藤本 康倫, 豊田 真吾, 岩本 文徳, 梶川 隆一郎, 若山 暁, 川西 裕, 清水 惠司, 吉峰 俊樹
    2013 年 35 巻 2 号 p. 71-78
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:【目的】被殻出血に対する外科治療の意義は未だ確立されていない.我々は当院での被殻出血の外科治療の成績をまとめ,過去の文献のサブ解析から得られた保存的治療の成績と比較検討を行った.【方法】2007年からの2年間において急性期治療を行った被殻出血連続156例を対象とした.手術適応は血腫量31 ml以上,血腫による圧迫所見があり中等度以上の神経学的所見がある場合とした.また過去の2文献からそれぞれ血腫量31 ml以上で保存的治療を行った症例を抽出した.【結果】外科治療群(51例)と2文献のサブ解析での保存的治療(それぞれ994例と149例)を比較すると,外科治療群では死亡率は有意に低く,ADL自立の頻度に有意差はなかった.しかしADL自立と要介助を合わせた頻度は,外科治療において有意に高かった.【結論】被殻出血に対する外科治療は,死亡率を下げ,要介助の状態以上のADLをもたらす可能性が示唆された.
  • 山田 晋一郎, 伊藤 大輔, 服部 誠, 仁紫 了爾, 川畑 和也, 横井 聡, 中井 紀嘉, 満間 典雅, 稲田 眞治, 野口 善令, 安 ...
    2013 年 35 巻 2 号 p. 79-85
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:【目的】急性のめまいで発症する脳梗塞の初診時診断精度向上のため,非専門医向けの簡便な「めまいテンプレート」を作成・運用し,その有用性について検討した.【方法】急性発症のめまいを主訴に当院の救急外来を受診した患者487例を対象として,その転帰などについて前向きに調査した.【結果】487例のなかで,57例(11.7%)が脳梗塞で,即日入院を指示された.脳梗塞57例のうち,6例(10.5%)は入院時に頭部MRI拡散強調画像が陰性であったが,全例において初診時に脳梗塞を疑うことができた.救急外来で帰宅を指示された394例のうち262例(66.5%)は,後日,専門外来を受診し,脳梗塞でないことを再確認されていた.【結論】「めまいテンプレート」は,めまいで発症する脳梗塞の初診時診断精度を向上することができ,有用と考える.
症例報告
  • 荻原 浩太郎, 伊丹 尚多, 進藤 徳久, 大塚 真司, 日下 昇, 吉本 祐介, 西浦 司
    2013 年 35 巻 2 号 p. 86-91
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:症例は63歳女性.1週間前から頭痛と言語障害があり当科を受診した.初診時言語表出が低下しており,錯語が著明であった.頭部CTで左側頭頭頂葉皮質下出血を認め同日入院となった.頭部MRIでは出血の原因となる病変は確認できなかった.脳血管撮影で左後側頭動脈の末梢枝からnidusを介すことなく脳表の静脈への動静脈短絡を認めた.Pial arteriovenous fistula(pial AVF)を原因とする皮質下出血と診断した.開頭術を行いすべての動静脈シャントを離断し,血腫を除去した.術後新たな神経症状の出現はなく,言語障害は改善した.Pial AVFは出血発症例に対して保存的治療を行った場合予後が悪いとされているが,適切な治療を行えば再発を予防しうる疾患である.皮質下出血の患者においてはpial AVFも鑑別診断にいれ出血原因の検索を行うべきであると考えられた.
  • 萩原 のり子, 横山 信彦, 鍋島 義之, 井林 雪郎
    2013 年 35 巻 2 号 p. 92-96
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:症例は糖尿病を合併した67歳,男性.脳梗塞発症後より留置カテーテル管理を受け,第14病日にカテーテルを抜去した後,尿閉となり尿路感染症を併発した.間欠的導尿を経て自排尿が可能となるも,第34病日に無症候性肉眼的血尿が出現した.腹部CTで膀胱壁全周に気腫性変化を認め,気腫性膀胱炎の診断で泌尿器科へ緊急転院し,膀胱ドレナージと抗生剤投与により症状の改善を得た.気腫性膀胱炎は排尿障害を伴う尿路感染症を背景とし,糖尿病患者に好発する.脳卒中後は神経因性膀胱による排尿障害を生じやすく,いずれの病期でも症状に応じた適切な排尿ケアを徹底する必要があり,特に糖尿病を合併した脳卒中患者の排尿障害では,本症も含めた尿路感染のリスクを考慮することが重要である.また,脳卒中診療に従事する医師が患者の排尿症状に対してより一層の関心を持ち,泌尿器科医とも連携しながら,QOLを見据えた治療方針を検討することが望ましい.
  • 岡村 朗健, 川本 行彦, 吉岡 宏幸, 村上 太郎, 米澤 公器, 金子 真弓
    2013 年 35 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:脳アミロイド血管症関連炎症は治療可能な脳アミロイド血管症の一亜型であり,診断を確定することが重要である.しかし画像所見は非特異的で,確定診断のためには侵襲的な脳生検が必要である.近年,非侵襲的検査としてMRSの有用性が報告されている.このたび,静脈性梗塞や神経膠腫と鑑別を要したが,MRSにより脳アミロイド血管症関連炎症を強く疑い,脳生検により確定診断した症例を経験したので報告する.症例は62歳男性.左同名半盲を主訴に受診し,頭部CTで右後頭葉皮質下に低吸収を認めた.同病変は頭部MRI T1WI低信号,T2WI高信号を呈し,造影効果を認めなかった.脳血管撮影で異常所見を認めなかった.MRSで同部位のNAA/Crは >1と正常範囲内で,Cho/Cr比も増加を認めなかった.脳アミロイド血管症関連炎症を強く疑い,脳生検術を施行し,確定診断した.MRSの所見は脳生検を行う強い根拠となった.
第37 回日本脳卒中学会講演
<シンポジウム>
総説
  • 卜部 貴夫
    2013 年 35 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:耐糖能異常(IGT)は,糖尿病へ移行する可能性のあるハイリスク群であり,糖尿病のみならずIGTを含む糖代謝異常は,脳梗塞発症の危険因子である.脳梗塞患者において糖尿病が未診断とされているにも関わらず,糖負荷試験を行うことにより新規糖代謝異常とインスリン抵抗性が高率に診断される.糖尿病患者の血糖コントロールによる脳卒中発症および再発予防については十分な科学的根拠がないことが現状である.糖代謝異常を合併した脳梗塞患者において,動脈硬化進展抑制を目的としたインスリン抵抗性や食後高血糖の改善を図る薬剤の介入は,脳梗塞再発予防の治療法における選択肢の一つである.また,新規糖尿病治療薬でglucagon-like peptide-1受容体作動薬のexendin-4は,酸化ストレスや炎症反応を抑制し,細胞保護作用を有する分子の合成を増加させることにより,脳保護作用を発揮する.
  • 棚橋 紀夫, 山口 武典
    2013 年 35 巻 2 号 p. 108-113
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:エダラボンはフリーラジカル消去作用を有する脳梗塞急性期治療薬として2001年からわが国で広く使用されている.Post-marketing Registry On Treatment with Edaravone in acute Cerebral infarction by the Time window of 4.5 hours(PROTECT4.5)は発症後4.5時間以内の超急性期の患者10,000例を対象とした前向き観察研究で,エダラボン,またはrt-PAとの併用療法の有効性と安全性を検討することを目的とした調査である.中間集計の結果ではあるが,2011年12月末までに889施設から7,170例の患者が登録されており,発症後3週間以内の調査票の収集症例数は4,270例であった.このうち約半数がrt-PA併用群であった.また,rt-PA併用群の症候性頭蓋内出血の発現頻度は1.6%であった.
  • 七田 崇, 大星 博明, 北園 孝成, 吉村 昭彦
    2013 年 35 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:脳虚血後炎症には様々な自然免疫応答が関与する.近年,自然免疫による新規の炎症メカニズムが明らかとなり,これを標的とした神経保護療法の可能性が示唆されている.虚血に陥った脳組織ではダメージ関連分子パターン(DAMPs)が放出され,浸潤した炎症細胞の活性化に寄与する.脳内に浸潤したマクロファージはperoxiredoxin(Prx)によってToll様受容体(TLR2,TLR4)依存的に活性化され,IL-23などの炎症性サイトカインを産生する.IL-23はさらに遅れて浸潤するγδT細胞からIL-17産生を誘導し,亜急性期の炎症促進に重要な役割をもつ.抗IL-23抗体やFTY720(fingolimod)の投与は,T細胞による炎症を抑制して亜急性期における神経保護効果を示す可能性がある.以上のような一連の自然免疫の機能を制御することにより,脳梗塞に対する神経保護療法が開発できる可能性がある.
  • 矢坂 正弘, 岡田 靖
    2013 年 35 巻 2 号 p. 121-127
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:ワルファリンに替わって,2011から抗トロンビン薬や抗Xa薬などの新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulants; NOAC)が相次いで登場している.新規経口抗凝固薬はワルファリンと比較して,吸収が早く,半減期が短く,食物の影響を受けず,薬物の相互作用が少ない.頻回なモニタリングが不要で,脳卒中と全身塞栓症の予防効果はワルファリンと同等かそれ以上,大出血発現率はワルファリンと同等かそれ以下,頭蓋内出血発症率はワルファリンより大幅に少ない.このような観点から新規経口抗凝固薬はワルファリンと比較して一歩前進した抗凝固薬である.しかし,(1)出血性合併症の予防との緊急対処法,(2)脳梗塞急性期のrt-PA血栓溶解療法の可否,(3)適正使用の徹底,および(4)周術期の管理などの問題点が指摘されている.問題点に対して切な対処方法を開発していく必要がある.
  • 冨本 秀和
    2013 年 35 巻 2 号 p. 128-132
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:脳小血管病は小血管の病理変化,またはその結果生じる微小病変を意味し,それらに起因する比較的均質な病理・臨床像を包摂する病態である.その大部分は,1型の高血圧性小血管病と2型のアミロイド血管症に分類される.前者はラクナ梗塞,白質病変,脳出血が主体で,認知症を来す場合は皮質下血管性認知症と呼称される.後者は皮質下出血や白質病変の原因となり,ほとんどのアルツハイマー病患者で合併がみられる.本稿ではそれぞれの病態や臨床症候について概説し,さらに両型の相互の関連についても述べる.
  • 山口 修平, 小林 祥泰
    2013 年 35 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:脳卒中急性期患者データベースの構築を目的として開発された脳卒中データバンクは,10年以上を経過し現在10万例以上の患者登録が行われている.このデータベースは全国レベルの解析に加え,各施設での利用にも対応したシステムである点に特徴がある.これまで3回の全国データ解析が行われ,結果は定期的に「脳卒中データバンク」として書籍出版されている.脳卒中データバンクは近年,脳卒中診療と関連した他のデータベースとの連結が始まっている.電子カルテデータの転送による入力作業の省力化,DPCデータとの連結による脳卒中診療の医療経済学的解析,リハビリテーション・データベースあるいは地域連携パスとの連結による脳卒中患者のシームレスな医療連携の確立,さらに病院前脳卒中救護スケールとの連結による急性期脳卒中医療の推進など,脳卒中医療全般にわたる貢献が期待される.
  • 岡﨑 哲也
    2013 年 35 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:高次脳機能障害に特有のリハビリテーション(以下,リハ)医療や専門的社会支援を必要とする患者のほぼ半数を脳血管障害が占めるとの報告があり(蜂須賀ら2011),脳卒中診療においても高次脳機能障害のリハと職場復帰は大きな課題である.リハにおいて記憶障害への対策は重要で,軽度の記憶障害においては視覚イメージの利用や手帳の活用などの記憶トレーニングが,重度の記憶障害においては外的代償手段の使用や誤りなし学習法が奨められている(Ciceroneら2011).高次脳機能障害は能動的に行動しない入院生活では問題となりにくい.本人にも周囲にも「目に見えない障害」を抱えて職場復帰した結果,能力や勤労意欲を欠くとみなされやすく注意を要する.また,その障害特性より就労後に新たな問題を生じてきやすい.個々の症例に応じて産業医や利用可能な社会資源とも連携し,就労継続支援を丁寧に行うことが重要である.
原著
事例報告
  • 下瀬川 恵久, 畑澤 順
    2013 年 35 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     要旨:Carotid Occlusion Surgery Study(COSS)の結果により,閉塞性脳血管障害に対する近年の内科的保存療法の進歩が注目されている.PET(positron emission tomography)を中心とした核医学的手法は,医薬品の効果判定や薬理学的解析に多くの実績を挙げている.特に脳神経領域では,既存の医薬品に対する薬効評価試験のほかに,全身の薬物動態解析(pharmacokinetics: PK)や薬力学的解析(pharmacodynamics: PD)も注目されている.本稿では,慢性期の虚血性脳血管障害における核医学的手法を用いた薬効評価試験の現状について述べるほか,脳神経領域の市販医薬品のPET製剤化による全身PK的解析の重要性,さらに創薬開発過程に寄与するマイクロドーズ臨床試験専用のPK/PD PETマイクロドーズパッケージについて記述する.
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