脳卒中
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35 巻, 5 号
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原著
  • 渡部 憲昭, 藤井 康伸
    2013 年 35 巻 5 号 p. 323-327
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    要旨:近年,わが国の独居高齢者数は急激に増加している.今回,非高齢者も含めた独居生活者の脳卒中急性期における臨床的特徴について検討した.過去1 年間に当院で経験した脳卒中急性期症例430 例中,独居脳卒中症例は46 例(10.7%)であった.男性が多く,脳卒中病型では脳出血の頻度が高い.自力で救急要請可能であった「自力来院」症例は23.9%のみであった.発症から来院まで48 時間以上経過した症例は26.1%であり,著明な脱水,圧迫性皮膚障害の合併が半数以上に認められた.入院期間は,非独居症例と有意差を認めなかったが,回復期リハビリ病院へ転院する割合は有意に高くなっている.高齢化率の上昇,独居高齢者の増加に対応した脳卒中診療体制の構築が急務と考えられる.
  • 安井 敬三, 中井 紀嘉, 荒木 周, 川畑 和也, 山田 晋一郎, 横井 聡, 大山 健, 眞野 智生, 満間 典雅, 長谷川 康博, 柳 ...
    2013 年 35 巻 5 号 p. 328-336
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】一過性脳虚血発作(TIA)例の拡散強調像(DWI)での虚血性病変の陽性率とその意義を解明する.【方法】TIA 連続166 例の入院時と1~3 日後のDWI を検討する.【結果】① DWI 陽性病変は55 例(33.1%),②うち16 例は発症後24 時間以内の初回DWI が陰性であった.③ DWI 陽性病変の発現は発症から初回DWI までの時間もTIA 症状の持続時間も関連がなかった.④陽性例のうち9 例(16%)は永続的脳梗塞ではなかった.⑤陽性病変の単発例はテント上の穿通枝領域に,多発例は中大脳動脈皮質枝領域に多かった.⑥ DWI 陽性群では心原性TIA が,DWI 陰性群ではラクナTIA が多かった.【結論】DWI 陽性例はTIA 患者の1/3 を占めた.発症24 時間以内では初回DWI が陰性でも再検時に陽性になる症例がある.TIA 症状の持続時間はDWI 陽性病変とは無関係であった.DWI 陽性は必ずしも脳梗塞ではない.
症例報告
  • 古田 芳彦, 金澤 有華, 松尾 龍, 荒川 修治, 鴨打 正浩, 北園 孝成
    2013 年 35 巻 5 号 p. 337-342
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は43 歳男性.高血圧,糖尿病の治療のため某内科に入院した.降圧治療により血圧は224/126 mmHg から109/80 mmHg に低下し,それとともに両側耳鳴・口唇の異常感覚・不明瞭言語・四肢失調が出現した.MR では両側中小脳脚と橋上部正中領域に新鮮梗塞を認め,また両側椎骨動脈は閉塞し脳底動脈は内頸動脈系から逆行性に灌流されていた.本例は両側椎骨動脈閉塞の存在下に過剰降圧が契機となって血行力学性に脳梗塞を発症したと判断した.中小脳脚は上小脳動脈と前下小脳動脈の,橋上部正中領域は上橋底枝と上橋被蓋枝の分水嶺に相当するといわれており,椎骨脳底動脈系において血行力学不全を生じやすい部位と考えられた.
  • 池田 智之, 椙本 晃, 丸茂 岳, 宮澤 豪, 下司 徹, 中久木 卓也, 中野 顕, 綿貫 正人, 日村 好宏, 金子 隆昭
    2013 年 35 巻 5 号 p. 343-349
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    要旨:脳梗塞に対するアルテプラーゼ静注療法施行中に急性心筋梗塞を発症した2 症例を経験した.1 症例目は右片麻痺と意識レベル低下にて搬送された50 歳男性.左中大脳動脈領域の脳梗塞に対してアルテプラーゼ開始後,32 分で心停止となった.蘇生成功後の冠動脈造影で左回旋枝に閉塞を認めた.血栓吸引にて血栓が左主幹部に移動したが,回旋枝の閉塞部には狭窄所見がなかったため,心房細動に伴う血栓塞栓による心筋梗塞と考えた.2 症例目は左上下肢の脱力と構語障害にて搬送された74 歳男性.右中大脳動脈領域の脳梗塞に対してアルテプラーゼ開始2 時間後に心電図モニターにてST 上昇を認めた.冠動脈造影で左前下行枝に閉塞を認めたため,血栓吸引にて血栓を除去したところ,動脈硬化性狭窄病変を認め,不安定プラークの破綻による閉塞と考えた.血栓溶解療法中に急性心筋梗塞を発症した症例の報告は稀であるが,重篤な転帰をとることが多いため報告する.
  • 茂木 正樹, 山下 史朗, 藤澤 睦夫, 大蔵 隆文, 檜垣 實男, 堀内 正嗣, 片木 良典
    2013 年 35 巻 5 号 p. 350-357
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    要旨:慢性期の高血圧症のコントロールは脳卒中治療の中心であるが,脳卒中発症患者の中には二次性高血圧症の合併患者が多く,二次性高血圧症のスクリーニングによる適切な血圧コントロールは,脳卒中患者の再発予防に大変重要であると考えられる.しかし,個々の二次性高血圧症を合併した脳卒中発症患者の報告例は多いが,脳卒中発症患者において何種類かの二次性高血圧症を合併した症例をまとめて検討した報告は意外に少ない.今回我々は,脳卒中患者において発症後の検査で二次性高血圧症と診断され,適切な治療により血圧コントロールが良好となった二次性高血圧症例合併脳梗塞の5 症例を報告し,二次性高血圧症を外来でのスクリーニングで疑うポイントについて考察する.
  • 中尾 隼三, 藤田 桂史, 阿久津 善光, 原 拓真, 亀崎 高夫, 平谷 太吾, 前田 裕史, 松村 明
    2013 年 35 巻 5 号 p. 358-363
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    要旨:脳梗塞加療中の入院患者に対して,経鼻胃管挿入を契機に発症したたこつぼ心筋症を経験したので,文献的考察を加えて報告する.たこつぼ心筋症では肉体的もしくは精神的ストレスが誘因と報告されているが,その他にも多くの誘因が報告されている.本症例では,誘因となる脳梗塞,低ナトリウム血症,肺炎,喘息を認めるが,タイミングとしては経鼻胃管再挿入後間もなく発症した.経鼻胃管挿入は頻繁に行われる処置の一つだが,たこつぼ心筋症の引き金となり得る侵襲的な手技であるという認識が必要である.
  • 芳賀 智顕, 野呂 秀策
    2013 年 35 巻 5 号 p. 364-368
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は37 歳女性.子宮筋腫と子宮腺筋症に対して酢酸リュープロレリンを4 週間ごと,6 回投与された.6 回目投与から12 週間後の朝食中に突然,右口角と右母指にじんじんした感覚異常が出現した.症状改善なく当院を受診,脳MR(I DWI)にて左視床に最大径8 mm の高信号を認めた.画像上直径15 mm 以下でかつ手口症候群を呈しておりラクナ梗塞と診断された.ただ,喫煙のほかに危険因子がなく,また責任血管の高度狭窄や心臓弁膜症,心房細動などの塞栓源も認めない若年性脳梗塞であった.このため,奇異性脳塞栓症の評価が必要とされ精査したところ,右-左シャントを伴う卵円孔開存と深部静脈血栓症を認めた.若年性深部静脈血栓症の原因として,凝固線溶系異常や自己免疫疾患などを認めず,酢酸リュープロレリンの関与が強く疑われた.同薬剤の副作用として血栓塞栓症は知られているが,本邦において奇異性脳塞栓症の報告はなく貴重な症例と思われた.
  • 高橋 由佳子, 中村 毅, 金田 大太, 鈴木 聡, 加藤 智信
    2013 年 35 巻 5 号 p. 369-374
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    要旨:プロポフォール(PF)がRCVS の激しい頭痛と脳血管攣縮に対して奏功した2 症例を経験した.症例1:64 歳男性.1 升の飲酒翌日に激しい頭痛が出現し寛解・増悪を繰り返した.意識はJCS-1 で右手第5 指外側・右下肢外側で感覚鈍麻を認めた.頭部MR では両側中・前・後大脳動脈の多巣性・分節性血管攣縮,局所性皮質くも膜下出血,硬膜下血腫を認めた.症例2:38 歳女性.帝王切開術1 週間後に頭痛・痙攣・意識障害を認めた.頭部MR では症例1 と同様の血管攣縮を認め,両側後頭葉・頭頂葉にPRES を伴っていた.症例1 はPF 2 日間,症例2 はPF 3 日間とエダラボンの投与により,頭痛,血管攣縮所見は単層性の経過で軽快した.経過から2 例とも急性期に使用したPF が有効であった可能性が高い. PF には鎮静作用に加えて血管拡張作用やフリーラジカル減少作用があり,今後の検討が必要である.
短報
  • 吉田 研二, 小林 正和, 斎藤 秀夫, 鈴木 太郎, 吉田 浩二, 小笠原 邦昭
    2013 年 35 巻 5 号 p. 375-377
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    要旨:エダラボン製剤の先発医薬品とジェネリック医薬品間で,薬効の根幹であるラジカル消去能を2,2-Diphenyl-1-picrylhydrazyl を用いた吸光光度法にて比較検討した.先発医薬品のラジカル消去能を1 としたときのジェネリック医薬品A,B,C,D の効力比はそれぞれ0.952 ± 0.068,0.744 ± 0.083,0.774 ± 0.027,0.748 ± 0.070 であり, ジェネリック医薬品B,C,D において有意に低かった(P<0.05).先発医薬品には抗酸化剤としてL- システインが添加されており,ジェネリック医薬品A にも同様に添加されていたが,B,C,D には添加されていなかった.L- システイン自体にラジカル消去活性があり,この添加の有無がエダラボン製剤全体のラジカル消去能に影響を及ぼしているものと考えられた.
  • 三木 義仁, 土居 温, 池永 透, 西村 進一, 吉川 幸弘, 植村 忍, 川尻 亜美, 草水 美喜
    2013 年 35 巻 5 号 p. 378-381
    発行日: 2013/09/25
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    要旨:Bernard-Soulier 症候群(BSS)は巨大血小板性血小板減少症と出血傾向を特徴とする非常に稀な常染色体劣性遺伝性疾患である.それゆえ脳卒中診療で遭遇する事は珍しく,本邦において脳卒中治療報告例はない.今回我々はBSS を基礎疾患に持つ脳内出血患者に対し保存加療を行い良好な転帰を得たが,新たな抗HLA 抗体の形成を避ける為に輸血回数を必要最小限に留めるように努めるべきである.また,抗脳浮腫治療において五苓散が有用であった可能性がある.
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