脳卒中
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36 巻, 4 号
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総説
  • 大江 康子, 林 健, 内野 晃, 棚橋 紀夫
    2014 年 36 巻 4 号 p. 247-254
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:けいれん発作,とくにけいれん重積発作にともない,皮質や皮質下領域にMRI で信号異常を認めることがある.海馬を含む大脳皮質や,皮質下病変として視床,脳梁,また小脳など多岐にわたる部位での信号異常が報告されている.これらのけいれん発作にともなうMRI 異常信号は,異常興奮による脳局所の血流増加や代謝亢進を反映していると考えられる.最近では,臨床の場で脳血管障害や脳腫瘍などの他疾患との鑑別が問題になるケースにも出合うようになった.本稿では,けいれん発作にともなうMRI 異常信号について,臨床的,画像的,生物学的,病理学的観点から概説する.
原著
  • 仁木 均, 松崎 丞, 奥田 佳延, 吉田 智子, 邉見 名見子, 杉山 慎太郎, 大岡 洋子, 岩佐 直毅, 白石 翔一, 木村 紀久, ...
    2014 年 36 巻 4 号 p. 255-259
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】大都市における急性虚血性脳卒中に対する経静脈血栓溶解療法(tPA 療法)の現状を評価する.【方法】tPA 療法が認可された2005 年10 月11 日から2010 年10 月10 日の5 年間に大阪市湾岸地域の基幹病院である当院でtPA 療法を施行した全症例につき,背景因子・病型・転帰を検討した.大都市の特徴を考察するため,当院地域居住症例と地域外症例に分け比較検討した.【結果】対象は105 例(年齢69.2±14.4 歳)で全虚血性脳血管障害の7.0%であり,地域住民数と比較したtPA 施行率は0.0088%であった.地域外症例に若年者が多く(P=0.0011),解離を疑う症例(7 例/46 例)が多かった.一方,地域居住症例には塞栓症が多かった.【結論】地域住民数と比較したtPA 療法施行率は比較的高く,大都市の特徴と考えられた.地域居住者と地域外症例の差は,大都市への日中の流入人口などの要因があると思われた.
  • 田中 弘二, 古賀 政利, 大山 賢, 徳永 敬介, 佐藤 和明, 鈴木 理恵子, 峰松 一夫, 豊田 一則
    2014 年 36 巻 4 号 p. 260-265
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】急性期脳梗塞,一過性脳虚血発作における左心耳の3 次元評価項目と心房細動(AF)の関連を明らかにする.【方法】リアルタイム3 次元経食道心臓超音波検査を行った127 例(年齢74±11歳,男性88 例)を持続性AF 33 例,発作性AF 22 例,AF なし72 例の3 群に分け検討した.【結果】持続性AF,発作性AF,AF なし各群で入口部面積(5.73±1.95 cm2,4.45±2.42 cm2,3.23±1.47 cm2,p<0.001),深さ(3.42±0.71 cm,2.95±0.89 cm,2.61±0.70 cm,p<0.001),体積(11.37±6.33 cm3,7.59±5.03 cm3,4.90±2.92 cm3,p<0.001)いずれも有意差を認めた.多変量解析でも入口部面積,体積はAF と有意に関連していた.【結論】急性期虚血性脳血管障害で左心耳の拡大は持続性ないし発作性AF の存在と関連していた.
症例報告
  • 北惠 詩穂里, 辻野 精一, 土岐 明子, 山中 緑, 野口 和子, 渡邉 学
    2014 年 36 巻 4 号 p. 266-270
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は51 歳男性.左橋背部の出血により,左末梢性顔面神経麻痺,眼球運動障害,右片麻痺および顔面を含む右半身の重度の感覚障害を呈していた.第8 病日より中枢性疼痛を伴う余剰幻肢の自覚症状が出現し,ガバペンチンの投与を行ったが,発症後1 年を経過した時点でも症状の残存がみられた.脳血管障害における余剰幻肢は,右半球障害での報告が多く,機序として深部感覚障害や病態失認および半側空間無視の関与が考えられている.余剰幻肢を呈する橋出血では,画像上橋背部の障害が報告されており,深部感覚障害との強い関連が考えられた.余剰幻肢に中枢性疼痛を伴った点からも,感覚野への求心路であるspino-thalamo-cortical tracts の関与が考えられた.一方,病態失認や半側空間無視を伴っていることは少なく,また幻肢の随意性や人格を有することも少ない点が,大脳半球障害に基づく余剰幻肢との相違点であると考えられた.
  • 祖母井 龍, 須山 武裕, 山下 晋, 下里 倫, 村上 昌宏, 乾 敏彦, 山里 景祥, 北野 昌彦, 長谷川 洋, 富永 紳介
    2014 年 36 巻 4 号 p. 271-274
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】中大脳動脈塞栓症にて発症し血栓回収療法を行った高安大動脈炎の1 例を報告する.【症例】24 歳,女性.失語症,右片麻痺を発症し,MRI 拡散強調画像で左島皮質に軽度高信号域を認め,頸部MRA で左総頸動脈の閉塞,頭部MRA で左中大脳動脈閉塞を認めた.rt-PA 静注療法は適応外で,脳血管内手術による血行再建を計画し,大動脈撮影にて高安大動脈炎と診断した.閉塞部位が左M1 遠位からM2 に及んでおり血栓溶解療法, Penumbra® system を用いた.再開通を認め,良好な転帰が得られた.【結論】中大脳動脈塞栓症を, Penumbra® system による血行再建を行った稀な高安大動脈炎の1 例を経験した.
  • 岸田 夏枝, 福田 仁, 沈 正樹, 半田 明, 山形 専
    2014 年 36 巻 4 号 p. 275-277
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は75 歳男性で,左肺癌で左上肺野切除術後に左内頸動脈閉塞による脳梗塞を発症した.非弁膜症性心房細動に対してダビガトランが投与されていた.心房内血栓による塞栓症と当初考えていたが,左肺静脈切除断端部に血栓が発見されたため,そこからの塞栓の可能性も疑われた.肺切除後の肺静脈断端部の血栓と塞栓症との関連性は現時点で不明であるが,血栓が検出されれば適切な抗凝固療法が勧められる.断端部血栓の危険因子である左上肺野切除後には造影CT による肺静脈内血栓の検索が有用である.
  • 黒岩 正文, 木内 貴史, 瀬口 達也, 池田 公, 本郷 一博
    2014 年 36 巻 4 号 p. 278-282
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は,59 歳男性.後頸部痛を主訴に受診した.頭部MRI にて後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery; PICA)起始部を含んだ右椎骨動脈解離性動脈瘤(PICA-involved type),最長径15 mm を認めた.直達手術で動脈瘤近位部の椎骨動脈およびPICA 起始部のみを遮断し,動脈瘤を盲端化した上でPICA を椎骨動脈にside-to-end anastomosis (PICA transposition)にて治療し,神経脱落症状なく退院した.PICA-involved type の椎骨動脈解離性動脈瘤に対するPICA 血行再建術の治療戦略として,他の治療方法と比較してPICA transposition の優れた点について報告する.
  • 青山 雄一, 大田 信介, 榊 三郎, 藤田 豊久
    2014 年 36 巻 4 号 p. 283-286
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:44 歳の女性,運動中に突然の激しい頭痛が出現し翌日に前医を受診,頭部CT(HCT)にて左後頭葉に限局するクモ膜下出血(SAH)を認め,発症5 日目に当科を紹介受診.頸部痛を伴う頭痛と項部硬直を認めたが,他の神経脱落所見はなかった.HCT と頭部MRI では左後頭葉に限局するSAH を認め,頭部MR angiography(MRA)ではSAH の局在と離れた左右の中大脳動脈(MCA)の末梢部に分節状攣縮を認めた.その他に出血源となる異常はなく,他の臨床検査所見でも原因となる異常は認めなかった.保存的加療にて頭痛は発症1 週間ほどで消失し,新たな神経症状も出現しなかった.発症8日目の血管造影では,頭部MRA 同様に左MCA 部に分節状の攣縮を認め,可逆性脳血管攣縮症候群と診断した.攣縮は発症約1 カ月後のMRA では消失していた.以後の再発を認めていない.
  • 石川 ひろみ, 北山 次郎, 吉川 容司, 中村 麻子, 中根 博, 吾郷 哲朗, 北園 孝成
    2014 年 36 巻 4 号 p. 287-291
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は48 歳男性.左半身の脱力,構音障害を主訴に当院救急搬送.初診時,左顔面および右上下肢の温痛覚低下,軽度構音障害,左核下性顔面神経麻痺,左上下肢不全麻痺,左肢節運動失調を認めた.頭部MRI 拡散強調画像で延髄左背外側に限局した梗塞巣を認め,MRA では頭蓋内左椎骨動脈は描出不良,3D-computed tomography angiography(3D-CTA)ではV4 レベルで左椎骨動脈は閉塞していた.椎骨動脈閉塞による延髄外側梗塞で,同側の上下肢不全麻痺を呈したOpalski 症候群に同側の核下性顔面神経麻痺を伴ったものと考えられた.通常,延髄外側梗塞では錐体路徴候や核下性顔面神経麻痺はきたさないが,椎骨動脈の狭窄や閉塞を認める場合には病変周囲の血流低下を伴う可能性があり,同側錐体路障害や顔面神経障害を呈しうることを念頭に置く必要がある.
短報
  • 崎間 洋邦, 伊佐 勝憲, 國場 和仁, 波平 幸裕, 金城 よしの, 渡嘉敷 崇, 大屋 祐輔
    2014 年 36 巻 4 号 p. 292-294
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は高血圧,糖尿病を有する75 歳女性.2013 年1 月某日より発語量が減少した.部屋にこもり,食事,飲水量が減少した.3 日後には会話が噛み合わないため,家族に連れられ救急外来を受診した.神経学的所見では全失語と右不全片麻痺を呈していた.頭部MRI で左中大脳動脈領域に皮質を含む急性期脳梗塞所見を認め,入院となった.受診時より38˚C 台の発熱と項部硬直があり,血液検査で炎症反応の上昇を認めた.抗血栓療法開始前に髄液検査を行い,初圧,細胞数ともに正常で,髄膜炎や脳炎の合併を否定した.頸部CT で軸椎歯突起後方に石灰化像を認め,頸椎偽痛風であるcrowned dens syndrome と診断した.非ステロイド性抗炎症薬内服で頸部痛,炎症所見は軽快した.脳卒中急性期において発熱の原因として感染症のみでなく,偽痛風を鑑別にあげることは必要である.
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