脳卒中
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38 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 今井 昇, 金 剛, 吉井 仁
    2016 年 38 巻 3 号 p. 149-154
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/04
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】静岡イーツーネット脳卒中医療連携システムの予防連携の有効性を検討するため,診断群分類包括評価データを基に脳卒中の再発入院に影響する因子を多施設で検討した.【方法】対象は5.5 年間に当医療連携システムに参加している3 つの急性期総合病院に入院し生存退院した急性期脳卒中患者5254 例.性別,年齢,救急搬送の有無,病型,在院日数,転帰,退院先,連携登録の有無と再発入院の関係を検討した.【結果】単変量解析では再入院患者は非再入院患者に比べ有意に救急搬送率と連携登録率が低く,自宅退院率と虚血性脳卒中率が高かった.各項目を多重解析で補正したハザード比は,自宅退院率:1.41(1.02–1.94),虚血性脳卒中率:1.61(1.11–2.33),連携登録率0.65(0.45–0.93)であった.【結論】脳卒中予防連携登録は脳卒中再入院予防に寄与する独立した因子である可能性が示唆された.
  • 出口 一郎, 高尾 昌樹, 林 健, 福岡 卓也, 池澤 敏幸, 棚橋 紀夫
    2016 年 38 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/03
    ジャーナル フリー
    【目的】経口抗凝固薬が在院日数および医療費に与える影響について後方視的に検討した.【方法】心原性脳塞栓症患者(CE)で,経口抗凝固薬を処方され自宅退院した159 例を対象に非ビタミンK 拮抗経口抗凝固薬群(NOACs: NG)とワルファリン群(WG)に分け,在院日数と医療費(DPC による総報酬点数)を検討した.【結果】NG が68 例(43%),WG が91 例(57%)であった.在院日数(中央値)は,NG で有意に短く(NG 13 日vs. WG 18 日,P<0.001),総報酬点数(中央値)もNG で有意に低かった(NG 72,954 点 vs. 95,628 点,P<0.001).ロジステック回帰分析ではNOACs は在院日数短縮に関与した(OR 0.168; 95% CI 0.074–0.382; P<0.001).【結論】急性期病院におけるCE のNOACs による治療は在院日数短縮と医療費削減に関連した.
  • 守屋 正道, 角 光一郎, 宮崎 彰吾, 青木 主税
    2016 年 38 巻 3 号 p. 161-167
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/03
    ジャーナル フリー
    【目的】くも膜下出血患者の離床時期が歩行獲得に及ぼす影響について後向きに調査し,アウトカムに影響する要因についても合わせて検討した.【方法】対象は2011 年2 月から2013 年7 月までにSAH(subarachnoid hemorrhage)と診断され外科的治療を行い,理学療法を実施した63 例とした.発症後14 日以内に離床を開始したEarly 群(40 例)と,発症後15 日以降に離床したLate 群(23例)に分類し比較した.また,抽出項目の中からアウトカムに影響する要因を検討した.【結果】Early群の歩行獲得率は有意に高い結果であった(p<0.002).アウトカムに影響する要因は,重症度(p<0.001),年齢(p<0.04),発症から離床開始までの日数(p<0.05)があげられた.【結論】早期離床は,歩行獲得までの日数を短縮させ,早期にADL を再獲得させることを示唆した.アウトカムに影響する要因は,重症度,年齢,離床までの日数であった.
症例報告
  • 土屋 敦史, 富永 泰弘, 鈴木 孝昭, 芳賀 吉輝, 大島 淳, 秋山 久尚, 長谷川 泰弘
    2016 年 38 巻 3 号 p. 168-172
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/03
    ジャーナル フリー
    症例は56 歳の男性.2 年前に行われた頸椎前方固定術の際に留置されたプレート抜去のため,全身麻酔による手術を受けた.手術終了直後より血圧の低下あり,麻酔からの覚醒も不良であった.不穏症状出現したため当院に転院となった.症状は無動性無言,軽度の右麻痺であった.MRI では拡散強調像にて尾状核頭部から基底核にかけての梗塞認め,MRA では左ICA 起始部の壁不整,ACA のA1 部分の閉塞を認めた.続いて施行されたCTA にて左ICA 起始部からICA,ECAにかけての解離を指摘された.手術手技に伴うICA 解離と診断し,同血管病変に基づく塞栓性機序による脳梗塞と考え,抗血小板剤内服による治療を開始した.その後症状の増悪なく,独歩退院となった.頸椎前方に対する手術において血管性合併症を来す可能性は非常に低い.本症例のように比較的短時間の手術でも動脈解離性の合併症を発症することがあり,注意が必要である.
短報
  • 佐野 正和, 山下 愼也, 相場 豊隆
    2016 年 38 巻 3 号 p. 173-175
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/03
    ジャーナル フリー
    症例は69 歳の男性.心房細動と高血圧のためワルファリンおよびアンギオテンシン変換酵素阻害薬を内服中であった.突然の左片麻痺と左同名半盲を生じ当院に搬入され,頭部MRI で右後大脳動脈領域に新鮮梗塞,MRA で右後大脳動脈閉塞を認めた.心原性脳塞栓と診断しアルテプラーゼ静注を行った.アルテプラーゼ投与開始1 時間25 分後に左頬と舌腫脹が出現し,呼吸困難を来した.メチルプレドニゾロン静注し,気管切開を考慮したが回避できた.アンギオテンシン変換酵素阻害薬内服中の症例にアルテプラーゼを投与すると血管浮腫で口舌腫脹を起こすことがあり注意が必要である.
第40回日本脳卒中学会講演
シンポジウム
総説
  • 星野 晴彦
    2016 年 38 巻 3 号 p. 176-180
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/04
    ジャーナル フリー
    糖尿病合併脳卒中患者は一般的に転帰が不良で合併症も多く,再発率も高い.経静脈rt-PA血栓溶解療法は糖尿病合併脳梗塞既往例では慎重投与である.しかし,糖尿病例においてもrt-PA 血栓溶解による有効性は有意であり,適応をきちんと検討して投与すべきである.非心原性脳梗塞に対する急性期には,アスピリンとクロピドグレル併用の再発抑制の有用性が示されているが,血糖コントロール不良例ではその有用性が劣ることが報告された.非心原性脳梗塞の慢性期再発予防には抗血小板薬の併用療法は糖尿病例でも有用性が認められていない.アスピリンは糖尿病例では不応例が報告されており,原則として,クロピドグレルかシロスタゾールの単剤投与が勧められる.非弁膜症性心房細動糖尿病患者のメタアナリシスからはNOAC はワルファリンよりも有効性が高いが,出血リスクは同等と報告されている.
  • 佐伯 覚, 越智 光宏, 伊藤 英明, 松嶋 康之
    2016 年 38 巻 3 号 p. 181-185
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/03
    ジャーナル フリー
    経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は微弱電流により非侵襲的に大脳皮質神経細胞を刺激することで,脳卒中などの中枢神経障害による運動機能障害や神経心理学的障害に対して用いられる.片麻痺上肢をターゲットとする場合,陽極と陰極のパッド電極(5 cm×7 cm)を頭皮上の運動野直上と対側の眼窩上に置き,1~2 mA の微弱電流を10~20 分間通電する.刺激パラメーターは,電流の極性,強度および刺激時間によって規定される.経頭蓋磁気刺激と比較して刺激の空間分解能および時間分解能が低いが,安全性が高く,機器が比較的安価で運動中などでも使用できること,tDCS と他の運動療法とを組み合わせた様々な併用療法への応用が期待されている.本稿ではtDCS の併用方法として,上肢ロボット補助訓練および随意介助型電気刺激を紹介した.
  • 北園 孝成, 吾郷 哲朗, 鴨打 正浩
    2016 年 38 巻 3 号 p. 186-190
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/03
    ジャーナル フリー
    我々は脳卒中コホート研究(Fukuoka Stroke Registry; FSR)のサブスタディーとして脳梗塞のバイオマーカー探索研究(Research for Biomarkers in Ischemic Stroke; REBIOS)を行っている.これまでの解析の結果,脳梗塞の病態に関連するバイオマーカーとして有用な複数のタンパク質を発見している.さらに,動物実験や培養細胞を用いた基礎研究によって,REBIOS で発見されたバイオマーカーの機能を解析することで脳梗塞の病態解明につながる知見を得ている.脳梗塞のバイオマーカーの探索は基礎研究を組み合わせることで脳梗塞の病態解明と新規治療法の確立につながる可能性がある.
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