脳卒中
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41 巻, 6 号
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症例報告
  • 井上 雅人, 原 徹男
    2019 年 41 巻 6 号 p. 473-477
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/25
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:【目的】血栓回収術は大腿動脈アプローチが一般的であるが,時間がかかる症例や治療不可能な症例も存在する.術前に上腕アプローチが適していると判断し,迅速に再開通できた症例を経験したため報告する.【症例】90 歳女性.右麻痺,失語,構音障害があり,CT/CTA で左中大脳動脈閉塞による脳梗塞の診断となった.CTA で大動脈解離,Bovine Type,Type3 の大動脈弓であったため,右上腕動脈アプローチで血栓回収術を施行しTICI2b の再開通を得た.【結論】血栓回収術のアプローチ困難例では上腕動脈アプローチは有効な選択肢といえる.適切なアプローチルートを選択するために大動脈弓部の術前評価が有効である.

  • 中村 敬, 長尾 茂人, 和泉 賢明, 山本 徹, 尾崎 彰彦
    2019 年 41 巻 6 号 p. 478-482
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/25
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は91 歳の女性.右側への眼球共同偏倚・左側への側方注視麻痺・左中枢性顔面麻痺を含む交代性片麻痺を認めた.頭部MRI では左橋下部被蓋部傍正中および延髄上部内側に梗塞巣を認めた.橋病変による傍正中橋網様体(paramedian pontine reticular formation: PPRF)ないし外転神経核の障害に起因する健側への眼球共同偏倚・患側への側方注視麻痺に,延髄上部内側病変による皮質脊髄路および延髄まで下行した顔面神経皮質橋核路の障害に起因する患側中枢性顔面麻痺を含む交代性片麻痺を合併した貴重な症例と考える.

  • 倉内 麗徳, 大橋 一慶, 池田 和奈, 山内 理香
    2019 年 41 巻 6 号 p. 483-487
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/25
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は57 歳男性.左頸部痛,発熱,顔面浮腫を主訴に当科を受診した.意識障害,項部硬直,左不全片麻痺,左上肢の失調を認めた.脳脊髄液検査で細菌性髄膜炎の所見を呈し,脳MRI では左小脳梗塞,左横静脈洞から左内頸静脈までの閉塞がみられた.胸部CT で両肺にseptic emboli が多発していた.血液培養でStaphylococcus capitis subs ureolyticus が検出され,Lemierre 症候群と診断した.セフトリアキソンやバンコマイシン,メロペネムによる抗菌薬加療を行い,感染徴候は軽快した.Lemierre 症候群は頻度が低い疾患ではあるが,多彩な症状を示し,診断の遅れが致命的となる.また本例のように脳梗塞を発症することもあり,感染徴候を伴った脳梗塞ではLemierre 症候群の可能性を考慮する必要がある.

  • 原 秀, 深澤 誠司, 野中 裕康, 熊谷 昌紀, 米澤 慎悟, 石黒 光紀, 清水 言行
    2019 年 41 巻 6 号 p. 488-492
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/25
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は33 歳の初産婦,妊娠高血圧症にて他院に入院し,緊急帝王切開術を受けた翌日にHELLP 症候群を合併した.帝王切開術の2 日後に急性硬膜下血腫と脳出血を起こし当院へ紹介され,緊急にて急性硬膜下血腫除去術および減圧開頭術を行った.術後も頭蓋内圧が非常に亢進しており,バルビツレート療法を行い,これらの治療により徐々に全身状態および神経症状が回復した.頭蓋形成術を施行し,ADL 自立へ向けてのリハビリテーションを行うまでに回復した.

  • 橋本 彩, 竹内 靖治, 宮原 孝寛, 土井 亮, 折戸 公彦, 野口 慶, 馬場 裕子, 梶原 壮翔, 廣畑 優, 森岡 基浩
    2019 年 41 巻 6 号 p. 493-498
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/25
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:遺残原始舌下神経動脈(PPHA)は,胎生期に一時的に出現する内頸動脈─椎骨脳底動脈間吻合路の遺残血管の一つである.PPHA に関連した急性期脳梗塞では,その血管異常の存在を考慮した上での治療戦略が必要となる.今回,PPHA の存在による内頸動脈(ICA),脳底動脈(BA),後大脳動脈(PCA)の同時塞栓性閉塞に対し急性期血行再建術を施行し良好な転帰を得た稀な症例を経験したので報告する.症例は35 歳,男性.突然の意識障害および四肢麻痺で当院に搬入され入院時心房粗動が認められた.造影CT にて右ICA/BA/左PCA 閉塞と診断し,発症から3 時間後,rt-PA 静注療法を施行した.造影CT を詳細に観察すると,右PPHA が存在し閉塞動脈が全て関連することが明らかになった.rt-PA 投与後に症状の改善はなく,急性期血行再建術を施行しTICI grade 3 の再開通を得た.術後に神経症状は改善し転院となった.

  • 鈴木 良介, 太田 貴裕, 古田 泰之, 酒井 優, 藤谷 茂太, 井林 賢志, 阿部 新, 上田 雅之
    2019 年 41 巻 6 号 p. 499-504
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/25
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:急性内頸動脈閉塞症のうち,内頸動脈終末部以遠が側副血行で灌流される急性内頸動脈非終末部閉塞症(non-T ICA occlusion)に関して,慢性期に自然再開通を確認した自験例5 例について報告する.発症時は5 例とも軽症であり,閉塞側に血栓溶解療法や急性期血行再建術は行わず,内科治療のみを選択した.再開通は閉塞後39~859 日(中央値69 日)に確認した.2 例で再開通後に動脈解離を疑う所見を認めた.4 例は閉塞から自然再開通まで再発なく経過したが,1 例で閉塞側の側脳室後角周囲に無症候性脳梗塞を生じた.再開通後に内頸動脈起始部に高度狭窄が残存した2 例に対しCEA を施行した.急性内頸動脈閉塞症は慢性期に自然再開通することがあり,軽症の急性non-T ICA occlusion であった場合でも,再開通に関連して虚血性脳卒中の再発を来したり高度狭窄が残存する例が存在し得るため,慎重な経過観察が望ましいと考えられた.

  • 山下 和哉, 明浦 公彦, 寺川 晴彦, 上田 周一
    2019 年 41 巻 6 号 p. 505-509
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/25
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は68 歳女性.意識障害・右不全麻痺で発症し,頭部MRI で左MCA 領域に多発性の急性期脳梗塞,MRA で左M1 途絶を認めた.心房細動や頸動脈プラークはなく,塞栓源検索で行った経食道心エコー検査で卵円孔開存(patent foramen ovale: PFO),さらに下肢静脈エコーで深部静脈血栓を認めたため,奇異性脳塞栓症と診断した.再発予防としてリバーロキサバンを開始したが,2 カ月後に消化管出血を発症した.その際に施行した胸腹部CT で肺動静脈奇形(pulmonary arteriovenous malformation: PAVM)が判明し,経カテーテル的塞栓術を行った.奇異性脳塞栓症が疑われた症例では,PFO が存在していても,PAVM の合併を考慮し,胸部CT を含めた精査を検討する必要がある.

  • 阪本 有, 水谷 徹, 杉山 達也, 清水 克悦, 中條 敬人
    2019 年 41 巻 6 号 p. 510-514
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/25
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は35 歳男性で,頭部を壁に強打して,意識障害が進行したため当院へ搬送された.頭部単純CT でびまん性くも膜下出血と判断したが,造影CT では出血源が特定できず,脳血管撮影を施行した.左椎骨動脈撮影で左後下小脳動脈に造影剤が貯留する瘤状の病変が確認できたため,仮性動脈瘤の診断のもと,開頭クリッピング術を施行した.術中,明らかな瘤状成分は確認できなかったが,後下小脳動脈に,周囲に血餅を伴う裂孔が確認できた.本症例のように,後下小脳動脈遠位部に外傷による仮性動脈瘤が生じることは稀であるが,再破裂の可能性が非常に高く,鑑別として注意を要し,また,早期再破裂の予防が重要と考えられる.

  • 安藤 宏明, 丹羽 淳一, 泉 雅之, 中尾 直樹, 道勇 学
    2019 年 41 巻 6 号 p. 515-519
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/25
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:72 歳女性.左眼痛・複視を主訴に受診し,CT で左篩骨洞後部に軟部影を認め,副鼻腔炎の診断で篩骨洞開放術と抗菌薬・ステロイド投与で治療され改善した.その後,症状が再燃し,抗菌薬・ステロイドの投与で改善する経過を繰り返しながら徐々に増悪し,眼窩先端症候群を呈した.ステロイドへの反応性から,多発血管炎性肉芽腫性症を念頭にシクロフォスファミドを導入したが改善せず,さらに脳梗塞を発症した.この時点で血清β-D グルカンと血清・髄液のアスペルギルス抗原の上昇を認め,侵襲性アスペルギルス症と診断したが,次々に脳梗塞が続発し死亡した.経過中に眼窩先端部病変に対し2 回経副鼻腔的生検を行ったがアスペルギルスは検出されなかった.副鼻腔炎から眼窩先端症候群を呈し侵襲性アスペルギルス症が除外できないときは,ステロイドの投与で一時的な改善を認めたとしても,抗真菌薬投与を開始しながら繰り返し生検を行うなど慎重な対応が肝要である.

短報
  • 野田 昌作
    2019 年 41 巻 6 号 p. 520-522
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/25
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は74 歳男性.1 カ月前から発作性に構音障害が出現した.発作は毎日起こり,1 回の発作持続時間は約10~15 秒であり,発作回数は最初1 日に数回であったが次第に増加して最多は十数回になった.神経学的には当初著変を認めず,脳波検査,心電図検査,頭部MRI,頭部・頸部MRA,後頭蓋窩1.0 mm スライスMR 脳槽撮影に異常所見を認めなかった.しかし経過中に舌右外側縁に線維束性収縮が確認され,再度の後頭蓋窩0.8 mm スライスMR 脳槽撮影で,右舌下神経に交叉する右後下小脳動脈が認められた.治療はカルバマゼピン1 日400 mg 投与が著効を示した.本症例の発作性構音障害は,右後下小脳動脈による右舌下神経の神経血管圧迫症候群で生じたと考えた.

シンポジウム 総説
  • 伊藤 英明, 佐伯 覚
    2019 年 41 巻 6 号 p. 523-528
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/25
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:経頭蓋直流電気刺激(以下,tDCS)は経頭蓋磁気刺激と同じ非侵襲的大脳刺激法の1 つで,陽極刺激と陰極刺激がある.陽極刺激では脱分極を生じさせて刺激部位の神経細胞の活動を促進し,陰極刺激は静止膜電位を低下させて神経細胞を過分極させ神経細胞の活動を抑制する.経頭蓋磁気刺激と比較して刺激の空間分解能および時間的分解能が低いが,安全性が高く,機器が比較的安価で運動中も使用できるため,他の運動療法を組み合わせた様々な併用療法への応用が期待されている.臨床研究では,健常者および脳卒中患者の運動機能の改善,運動学習の促進に効果が認められている.tDCS はニューロリハビリテーションにおける重要な手法として位置づけられており,近年エビデンスの蓄積が急速に進んでいる.脳由来神経栄養因子(BDNF)や遺伝子多型との関連など,生化学的な研究とも併せて今後もさらなる発展が期待される.

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