脳卒中
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42 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 佐藤 文哉, 高橋 賢吉, 久我 純弘, 大西 宏之, 前岡 良輔, 大西 英之
    2020 年 42 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/24
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:【背景および目的】脳梗塞急性期の脳血栓回収療法の有効性が示され,血栓回収機器の進歩に伴い再開通率が改善した現在,発症から再開通までの時間が治療予後を大きく左右する.当院での患者来院から手術開始までの時間短縮の取り組み強化とその課題について報告する.【方法】2015 年1 月~2017 年12 月に治療した86 症例のうち,2015 年1 月から12 月までの30 症例を前期群,2016 年1 月の取り組み強化以降の56 症例を後期群とし,各所要時間および治療予後を後方視的に比較検討した.【結果】発症からの各所要時間については来院から脳血栓回収療法開始までの時間が有意に短縮された.TICI2B/3 の再開通率および再開通症例の退院時mRS 0–2 の割合は2 群間で有意差を認めなかった.【結論】院内体制強化で患者来院から手術開始までの時間が有意に短縮された.治療成績改善のために更なる時間短縮と体制強化が必要である.

  • 山岡 由美子, 鈴木 由美, 西山 貴世美, 中西 弘子, 三田村 靖子, 金子 織江, 三木 優利子, 五十嵐 美和, 山川 憲文
    2020 年 42 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/24
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:【背景・目的】日本人REACH 登録研究で,狭窄率70%以上の無症候性内頸動脈狭窄(ACAS(≥70%))と足関節上腕動脈血圧比(ABI)<0.9 が,1 年後の脳卒中の発症要因だった.病院受診者のACAS(≥70%)の検出率向上を目的とした.【方法】2014~2017 年にABI 測定と頸動脈超音波検査(US)を施行した1096 人を対象とし,ACAS(≥70%)はUS とMRA で確定した.統計解析でACAS(≥70%)の予測因子を特定し,これとABI 値を組み合わせて検出モデルを作成した.【結果】1096 人中ACAS(≥70%)は39 人で,虚血性血管病既往のみが独立した予測因子であった.ABI 1.0 未満の患者がACAS 群で有意に多いことから,これら2 項目で絞り込むと,ACAS(≥70%)の検出率が3.6%から9.2%に上昇した.【結語】二段階スクリーニングで,ACAS(≥70%)の検出率が向上する.

症例報告
  • 村上 あゆみ, 田尻 征治, 植田 裕, 長谷川 秀, 三浦 正毅, 武笠 晃丈
    2020 年 42 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/24
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は44 歳女性.突然の頭痛と軽度の意識障害で発症し,頭部CT で両側の薄い急性硬膜下血腫を認めた.明らかな外傷はなく,治療抵抗性の高血圧があり,血管精査の結果,両側頸部内頸動脈の狭窄性変化および両側腎動脈狭窄を認め,線維筋性異形成と診断した.両側内頸動脈─眼動脈分岐部動脈瘤,冠動脈瘤,冠動脈狭窄も伴っていた.硬膜下血腫を発症したFMD の報告は稀であり,文献的考察を加え報告する.

  • 石川 耕平, 荻野 達也, 進藤 孝一郎, 遠藤 英樹, 丸賀 庸平, 立田 泰之, 村木 岳史, 上山 憲司, 大里 俊明, 中村 博彦
    2020 年 42 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/24
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は60 歳女性,突然の意識障害で発症し,他院CT でくも膜下出血(SAH)が認められ当院へ搬送となった.脳血管造影検査により,破裂左椎骨動脈解離性動脈瘤(VADA)および右椎骨動脈解離性閉塞と診断した.左椎骨動脈のバルーン閉塞試験(BTO)を行い,右内頸動脈造影にて後交通動脈(Pcom)を介して右後下小脳動脈(PICA)まで造影されることを確認できたため,左PICA を温存した母血管閉塞を行った.術後小脳脳幹の血流低下は見られず,経過は良好でmRS 0 にて自宅退院となった.対側VA 閉塞を認める破裂VADA においても母血管閉塞による治療が考慮される場合があり,閉塞試験が側副血行路の評価に有用であった.

  • 水田 亮佑, 吉田 賢作
    2020 年 42 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/24
    [早期公開] 公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    要旨:上行大動脈血栓は,稀であるがembolic strokes of undetermined source(ESUS)の原因となり,迅速な診断,治療が必要である.今回,我々は,右小脳梗塞で発症し,CT アンギオグラフィー(CTA)により早期診断し得た上行大動脈血栓の1 例を経験したので報告する.直腸癌の術後化学療法中の61 歳の男性が,突然の後頭部痛,めまいで来院した.頭部MRI 検査で右小脳梗塞を認め,CTA で上行大動脈に20 mm の壁在病変を認めた.上行大動脈原性の脳塞栓症と診断し,上行大動脈置換術を施行した.病理検査では,新鮮混合血栓で血栓付着部に動脈硬化性変化を認めた.上行大動脈血栓はESUS の原因となり,CTA が早期診断に有用である.ESUS の症例では,早期にCTA での大動脈弓部の精査を検討する必要がある.

シンポジウム 総説
  • 松元 秀次
    2020 年 42 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/24
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    要旨:電気刺激は,治療的電気刺激と機能的電気刺激に大きく分類され,機能的電気刺激は生体の失われた機能を再建する治療法である.ウォークエイドは,下腿傾斜センサーを内蔵した機能的電気刺激装置のひとつで,遊脚期に同期して電気刺激を行い,円滑な下肢の振り出しを促進することで,下垂足を有する脳卒中患者に適応となる.ウォークエイド導入は歩行速度や歩行耐久性などを改善し,患者満足度が高いことがわかっているが,効果の程度は短下肢装具と同等で,過去の報告の多くは生活期が対象である.ウォークエイドの特徴は,Tilt モード以外に,TES モードやHand モード,Exercise モードがある点であることから,急性期・回復期で歩行がまだ自立できていない段階での早期導入には有利といえる.多施設共同研究が進行中であり,エビデンスが構築され,ウォークエイドが臨床で広く用いられることが期待される.

  • 豊田 章宏
    2020 年 42 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/24
    [早期公開] 公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    要旨:わが国における脳卒中罹患労働者の復職率は30~50%であり,予測される機能回復に見合った数字には至っていない.就労支援を成功させる因子として,適切なアセスメントと患者自身の病状理解,復職を念頭に置いたリハビリテーションの実施,医療者の仕事に対する理解,職場との情報共有などが重要と考えられている.労働者健康安全機構では,平成26 年度から,患者に寄り添いながら適切な時期に必要な評価や情報提供を行う両立支援コーディネーターの養成を開始した.介入に同意した脳卒中罹患労働者に対して発症早期からの介入を行った結果,70%近い復職率が得られている.両立支援には職場側の理解や適切な配慮が必要であるが,罹患後の早期離職を防ぐためには,脳卒中診療に関与する医療者が急性期から関わることも重要である.

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