脳卒中
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43 巻, 3 号
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原著
  • 伊藤 清佳, 深尾 繁治, 野々山 裕, 藤田 智昭, 辻 篤司, 野崎 和彦, 木戸岡 実
    2021 年 43 巻 3 号 p. 201-205
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/10/19
    ジャーナル フリー

    要旨:【背景および目的】くも膜下出血(SAH)急性期の病態はカテコラミン血中濃度(CA)の推移と関連があり,CAと血糖値(Glu)を血清K値(K)で除した値である stress index(SI)は相関する.本研究はSIとSAH重症度や転帰との関連を解析することを目的とした.【方法】4年間に2施設で治療したSAHを対象とし,重症度と転帰別に各々2群に分け,搬入時の生化学因子(K,Glu)を診療録より収集し,各群間,およびGrade(G)Vでの生化学因子の解析を行った.【結果】対象症例122例について,重症群(66例),転帰不良群(62例)は,それぞれ軽症群(56例),転帰良好群(60例)に比べ,GluとSIが有意に高値だった(いずれもp<0.01).GVではSI 56.00以下で転帰良好例を抽出することが可能だった.【結論】SIがSAH急性期における簡便な予後予測因子となる可能性が示唆された.

  • 鈴木 祐, 秋山 久尚, 星野 俊, 鹿島 悟, 原 大祐, 土橋 瑶子, 伊佐早 健司, 櫻井 謙三, 眞木 二葉, 長谷川 泰弘, 山野 ...
    2021 年 43 巻 3 号 p. 206-213
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    要旨:【目的】院内発症脳梗塞の診断・治療開始の遅延因子を明らかにする.【対象と方法】院内発症脳梗塞89例(平均年齢 73.6±9.0歳)を,最終未発症から専門医の診療開始までが3時間未満の早期群とそれ以降の遅延群に分け,遅延群に関連する因子を多変量解析により検討した.【結果】早期群は37例で,その62.2%はiv-tPA禁忌に該当した.早期群は心房細動を有する者が多く(17例, 45.9%),第一発見者の78.4%が看護師であった.遅延群では画像撮影までの時間が長かったが,早期群においても平均53.6±31.2分を要した.多変量解析の結果,第一発見者が医師である場合は有意な遅延因子(OR=8.572)で,心房細動の存在は有意な遅延回避因子(OR=0.140)であった.【結論】遅延因子として,発見場所,第一発見者の職種,依頼科医師の対応の3点が重要と思われ,これらに注目した院内トリアージの構築,医療従事者への啓発・教育が重要と考えられた.

  • 望月 悠一, 杉浦 誠, 中谷 幸太郎, 丹羽 章浩, 金 吉秀, 中村 彰一, 川俣 貴一
    2021 年 43 巻 3 号 p. 214-220
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    要旨:【背景】熱海伊東医療圏では,mechanical thrombectomy(MT)症例の転送率が66.7%であったため,2018年9月から,FACE2ADが3点以上の症例はMT可能な施設へ直接搬送とする stroke bypass 型機械的血栓回収体制(AISB)が導入された.【対象および方法】(1)2015年6月~2020年4月の期間に救急搬送後血栓回収を行った,AISB導入前後の49例を比較した.(2)2018年9月~2020年4月の期間にAISB搬送された54例を解析した.【結果】(1)転送率は66.7%から27.3%(P=0.03)へ有意に低下していた.(2)FACE2AD が3点以上の症例におけるLVO陽性的中率は55%であり,MT 施設への搬送増加は平均1.28件/月であった.【結論】AISBはMT症例の転送率を有意に低下させ,搬送増加は許容範囲内と考えられた.

症例報告
  • 赤塚 和寛, 服部 直樹, 伊藤 瑞規, 冨田 稔, 森 悠
    2021 年 43 巻 3 号 p. 221-225
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/09/18
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は44歳男性.言葉がうまく出てこないことを主訴に救急外来を受診した.頭部MRIでは左中大脳動脈領域に塞栓性脳梗塞所見を認めた.経胸壁心臓超音波検査で左心室心尖部に血栓所見を認めた.左心室収縮能は概ね正常であった.抗凝固療法開始後,血栓は縮小を認め,最終的に消失した.血液凝固線溶系異常を精査したところ,プロテインC抗原量43%,プロテインC活性39%と低下していた.遺伝子検索はされなかったが,年齢や稀な部位に血栓形成を認めたことから,先天性プロテインC欠損症と考えられた.先天性プロテインC欠損症は非常に稀ではあるが,心腔内血栓,塞栓性脳梗塞の原因となりうることを考慮する必要がある.

  • 辻 優一郎, 三木 貴徳, 垣田 寛人, 佐藤 公俊, 吉田 享司, 清水 史記
    2021 年 43 巻 3 号 p. 226-230
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/09/18
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は55歳女性で,小脳出血による意識障害で救急搬送となり,入院時の経胸壁心臓超音波にて,左室駆出率の低下および左室心尖部の収縮低下と心基部の過収縮を認めた.同日,開頭血腫除去術を施行した.第14病日には壁運動低下は消失しており,臨床経過および特徴的な経胸壁心臓超音波所見から,たこつぼ型心筋障害と診断した.脳内出血にたこつぼ心筋障害を合併した症例の報告は過去12例であり,小脳出血での合併例は本例が6例目である.

  • 佐野 博康, 赤嶺 壮一
    2021 年 43 巻 3 号 p. 231-234
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/10/10
    ジャーナル フリー

    要旨:73歳男性.1年ほど前に人間ドックで不整脈を指摘され,心房細動の診断でアピキサバン 10 mg/日を開始し,以後規則正しく内服していた.受診2日前に物の名称がうまく出てこず,症状は改善傾向であったが当科を受診.神経学的に異常を認めず,頭部MRIで多発する新規梗塞を認めた.採血では凝固・線溶系の異常高値があり,胸部CTにて腫瘤性病変を認め当院入院となった.入院時よりアピキサバンを未分画ヘパリンに変更し,自宅退院に向け皮下注へと変更した.生検の結果,肺腺癌と診断された.その後,外来通院となっているが脳梗塞の再発なく,凝固・線溶系マーカーも低値にて経過している.今回,アピキサバン内服下での脳梗塞を発症したTrousseau症候群が,ヘパリンの皮下注で良好にコントロールできている1例を経験したため報告する.

  • 高橋 祐一, 越阪部 学, 東田 哲博, 内田 貴範, 金澤 隆三郎
    2021 年 43 巻 3 号 p. 235-239
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/10/19
    ジャーナル フリー

    要旨:脳卒中診療において脳虚血症状で発症した急性大動脈解離を鑑別することは,単に致死的疾患である大動脈解離を正しく診断することだけでなく,不適切なrt-PA静注療法を避けるといった点で非常に重要である.脳虚血症状を伴う急性大動脈解離は,頻度は低いが,意識障害や失語症といった神経症状を伴い,脳卒中疑いで搬送される可能性がある.大動脈解離は解離部位に応じて非特異的で多彩な症状を呈しうる.胸背部痛の訴えがなく脳虚血症状で発症した急性大動脈解離を見逃さないために,血圧低値や左右差,胸部X線の縦郭拡大,Dダイマー高値といった急性大動脈解離の臨床像を理解しておく必要がある.補助的画像検査の中で,頸部MRAは,脳梗塞の病態評価に有用である一方で,大動脈解離の補助的検査にもなり得る検査である.胸痛を伴わずに脳虚血症状で発症し,最終的に急性大動脈解離の診断に至った2例を文献的考察を交えて報告する.

  • 横山 貴裕, 濵砂 亮一
    2021 年 43 巻 3 号 p. 240-244
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/11/10
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は77歳女性.めまいを主訴に近医に搬送され,両側小脳半球の脳梗塞と診断された.翌日に意識障害が進行,小脳梗塞による閉塞性水頭症を認めたため,当院で緊急に脳室ドレナージおよび後頭蓋減圧術を行い,意識障害は改善した.MRAでは,頭蓋外の右椎骨動脈から分岐した後下小脳動脈が正中を頭側へ走行した後に両側の小脳半球へ分岐していた.本症例は未治療の心房細動を有していることから,両側支配の後下小脳動脈(bihemispheric PICA)を責任血管とする心原性脳塞栓症と診断した.両側支配の後下小脳動脈は稀な血管形態であり,何らかの閉塞機転が生じれば,両側小脳半球の広範な脳梗塞を発症し,緊急の外科治療を要するリスクがある.

  • 赤塚 和寛, 服部 直樹, 富田 稔, 池田 昇平, 森 悠
    2021 年 43 巻 3 号 p. 245-250
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/11/10
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は62歳女性.突然発症の下肢優位の右片麻痺と意識障害を主訴に当院へ救急搬送された.頭痛の訴えはなかった.頭部MRI画像では両側前大脳動脈領域に脳梗塞を認めた.MR angiography(MRA)にて,前大脳動脈に dilation and stenosis を認めたため,前大脳動脈解離を疑った.脳血管撮影検査や3次元CTアンギオグラフィー検査により,前大脳動脈の A2 segment から1本の共通幹となり,A2 segment に pearl and string sign を認めたことから,奇前大脳動脈解離と診断した.脳梗塞治療中にクモ膜下出血と出血性梗塞を併発した.両側前大脳動脈領域の脳梗塞では,非常に稀ではあるが奇前大脳動脈解離を考慮する必要がある.

  • 阿部 泰明, 小松原 弘一郎, 板倉 太郎, 土井 宏, 新田 勇介, 藤塚 光幸, 山田 晋也
    2021 年 43 巻 3 号 p. 251-255
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

    要旨:87歳男性.突然の意識障害,左片麻痺を主訴に搬送された.MRIで右視床および右後頭葉に多発する急性期脳梗塞像を認めた.心房細動を認めたが,胸部症状は認めなかった.Tissue plasminogen activator(t-PA)静脈内投与後に,脳血管撮影で右中大脳動脈閉塞の所見を認めた.ガイディングカテーテル誘導中に徐脈およびST上昇を認め,心筋下壁梗塞を疑った.循環器内科医の協力のもとで,右中大脳動脈閉塞に対し血栓回収術施行後に percutaneous coronary intervention(PCI)を施行した.周術期に心不全を合併し,第8病日に死亡退院となった.脳卒中患者の心疾患合併はしばしば認められる病態であり,脳卒中診療において循環器内科医チームとの連携と急性冠動脈閉塞の併発への注意が必要である.

  • 田中 陽平, 高野 弘基, 滑川 将気, 鈴木 倫明, 源甲斐 信行, 阿部 博史
    2021 年 43 巻 3 号 p. 256-261
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は47歳女性,廊下で倒れているところを発見され当院に救急搬送された.診察上左共同偏視,全失語,右重度片麻痺,右半側空間無視を認めた.頭部MRIは左中大脳動脈M1近位閉塞を認めた.経皮的血栓回収療法を行い完全再開通を得た.術後,3D-CTAで左内頸動脈起始部に突出する構造物を認め,carotid webと診断し,他に塞栓源を認めなかったため,この病変が塞栓源であると考えた.Carotid webに対し頸動脈ステント留置術(CAS)を行い,術後経過は良好である.Carotid webは頸部内頸動脈起始部後壁にできる棚状構造物で,脳梗塞の塞栓源の一つと考えられている.内科的治療単独では高率に脳梗塞を再発するといわれており,外科治療が考慮される.本例のように,carotid webに対するCASは安全に施行可能であり,有用な再発予防の選択肢の一つと考える.

  • 川本 有輝, 馬塲 庸平, 芝野 克彦, 福永 貴典, 梅垣 昌士, 佐々木 学, 土田 泰昭, 宮本 誠, 松本 勝美
    2021 年 43 巻 3 号 p. 262-266
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は89歳女性.突然の意識障害を発症し,救急搬送された.MRIで急性脳底動脈閉塞を認め,intravenous tissue plasminogen activator を施行するも,再開通が得られなかった.引き続きステントリトリーバーと吸引カテーテルを併用した機械的血栓回収術を施行し,発症から2時間52分後に再開通を得た.回収された塞栓子は白色で,病理診断では心臓粘液腫様の組織を認めた.当初,心エコー・心臓MRIを施行するも,心房内に腫瘍は同定できなかったが,1カ月後の心エコーで左室内に腫瘍が判明し,同日緊急開心術により腫瘍を摘出,心臓粘液腫と確定診断した.塞栓子の病理診断により,先に粘液腫が診断されたにもかかわらず同時期に心臓粘液腫を見つけることができないことがあり,心エコーを密にフォローすることが再発予防には重要である.

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