脳卒中
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43 巻, 5 号
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原著
  • 金沢 優, 下田 健太郎, 倉田 原哉, 加納 利和, 古市 眞, 吉野 篤緒
    2021 年 43 巻 5 号 p. 403-408
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    [早期公開] 公開日: 2021/04/28
    ジャーナル フリー

    要旨:【目的】埼玉県は脳血管内治療専門医が全国平均より少なく,脳梗塞患者を迅速に搬送するために2018年から埼玉県急性期脳梗塞治療ネットワーク(Saitama Stroke Network: SSN)を開始した.川口市立医療センターはSSNに参加し,患者数増加に備えて診療体制を整備した.診療体制整備の成果と問題点を明らかにするため,急性期血行再建術の成績を調査した.【方法】2016年1月~2017年12月の35例を前期群,2018年1月~2019年12月の27例を後期群として,SSN前後での発症から再開通までの時間と転帰を比較した.【結果】後期群で穿刺から再開通までの時間が有意に短縮し,再開通率も良好であった.来院から穿刺までの時間は有意差がなかった.【結語】更なる時間短縮のために,症例毎に問題点を評価する仕組みと脳卒中診療に対するコメディカルスタッフの習熟が必要であった.

  • 芝崎 謙作, 涌谷 陽介, 髙尾 芳樹
    2021 年 43 巻 5 号 p. 409-415
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    [早期公開] 公開日: 2021/05/14
    ジャーナル フリー

    要旨:【背景と目的】急性期脳梗塞患者における骨格筋量の経時的変化を調べ,サルコペニアの実態を明らかにする.【方法】2019年1月~2020年9月に入院した発症48時間以内の脳梗塞患者101例を登録した.骨格筋量は入院時と約2週間後(follow-up)に測定した.Follow-up時に握力と歩行速度を評価し,サルコペニアの頻度と関連因子を後方視的に検討した.【結果】サルコペニアは58例(57%)で,入院中に低骨格筋量へ進展したのは3例のみであった.年齢(OR 1.2,95% CI 1.060–1.267),body mass index(OR 0.7,95% CI 0.526–0.881),Food Intake LEVEL Scale(OR 0.3,95% CI 0.117–0.841)がサルコペニアの独立した関連因子だった.【結論】入院中に低骨格筋量へ進展した患者は少なかった.

  • 岩間 淳哉, 中井 完治, 村岡 頼憲, 林 盛人, 岩渕 聡
    2021 年 43 巻 5 号 p. 416-420
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    [早期公開] 公開日: 2021/05/28
    ジャーナル フリー

    要旨:【目的】静脈血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針第三版より,急性期脳梗塞治療の適応が拡大された.そこで,当院におけるwake-up stroke(WUS)について検討した.【対象・方法】2015年3月1日から2019年3月31日までに入院した脳卒中患者905例を対象とし,診療録を用いて後方視的に検討した.対象症例をWUS群とnon WUS群の2群に分け,患者背景について比較した.さらに,WUSのうちの脳梗塞症例(脳梗塞WUS)をDWI-FLAIR mismatch(DFm)の有無で2群に分け,患者背景について比較した.【結果】WUS群とnon WUS群との比較では,WUS群の方で心原性脳塞栓症が多かった.脳梗塞WUSにおける比較では,DFmありの群で初回頭部画像撮影時刻がより早朝であった.【結論】脳梗塞WUSはより早朝である方がDFm陽性となり得るため,救急医療体制を整えておく必要があると考えられた.

  • 大塚 寛朗, 日宇 健, 阿江 竜介, 吉村 正太, 岩永 洋, 中道 親昭, 八坂 貴宏, 堤 圭介
    2021 年 43 巻 5 号 p. 421-428
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    [早期公開] 公開日: 2021/05/28
    ジャーナル フリー

    要旨:【目的】脳卒中専門医不在の離島における急性期脳梗塞診療体制において,本土基幹施設との連携による脳卒中ホットラインシステム(I-SHOT)が,drip and ship(DS)症例へ及ぼす効果を検討する.【方法】I-SHOT の導入前(前期:2012~2016年)・導入後(後期:2017~2019年)でDS症例数・患者背景・door to needle time(DTN)・臨床転帰等を検討した.【結果】前期は年間0~1例で計3例であったが,後期は,2017年:3例,2018 年:7例,2019年:6例と急増し,計16例であった.DTNは,前期平均:118分に対し,後期は80分と短縮された.3カ月後のmodified Rankin Scale 0–2の割合は,前期67%に対し,後期56%であった.【結論】脳卒中非専門医のみが常勤する離島医療機関において,I-SHOT導入は,DS症例数増加に寄与した.

症例報告
  • 松本 泰子, 山口 和由
    2021 年 43 巻 5 号 p. 429-433
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    [早期公開] 公開日: 2021/04/16
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は,開眼困難,発語不明瞭にて搬送された76歳,女性である.入院時,意識清明,両側開眼困難,垂直性注視麻痺,発語不明瞭であった.MRIにて両側視床内側梗塞と診断し,急性期加療を施行し,第2病日には開眼可能,神経症状は垂直性注視麻痺のみとなった.日常生活動作自立状態となった第5病日,病室で意識障害を発見され,それ以来,歩行中などでも急激な意識障害を繰り返すようになった.原因検索で原疾患以外の疾患を見出せず,原疾患に伴う発作性睡眠と診断.対症的にアマンタジンを投与し,著効した.傍正中視床病変では意識障害遷延を主体としてさまざまな症候が報告されているが,本疾患では,亜急性期にナルコレプシー類似の発作性睡眠を繰り返すという特徴的な症候で,本症候が傍正中視床梗塞の一つの症候として認識されるべきであること,また,アマンタジンが同疾患の意識障害の治療として期待できることを報告する.

  • 前田 拓真, 堀川 弘吏, 星野 純一, 長谷川 詠子, 有澤 慶, 吉田 馨次朗, 神田 朋樹, 原 貴行
    2021 年 43 巻 5 号 p. 434-439
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    [早期公開] 公開日: 2021/04/16
    ジャーナル フリー

    要旨:好酸球性肉芽腫性血管炎(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis: EGPA)に高安動脈炎を合併するのは稀である.今回,EGPAに合併した高安動脈炎の患者で,総頸動脈閉塞を生じ外科的に血行再建術を施行した1 例を経験した.症例は49歳女性,12年前よりEGPAに対しステロイド内服加療中.突然の左片麻痺を主訴に救急搬送となり,右多発脳梗塞,右総頸動脈閉塞の診断で入院となった.PET-CTでは右総頸動脈分岐部から大動脈弓部にかけて18F-fluorodeoxyglucose(FDG)の集積を認め,高安動脈炎の診断となった.脳血流検査において右大脳半球の血流低下を認め,原疾患の治療後に右鎖骨下動脈─右内頸動脈バイパス術を施行した.術後経過は良好で自宅退院となった.EGPAに高安動脈炎が合併した総頸動脈閉塞例においても,血管炎の活動性が低下した時期では血行再建術を安全に施行可能と考えられた.

  • 吉田 真一郎, 花山 寛明, 山浦 生也, 南 浩昭, 吉田 泰久
    2021 年 43 巻 5 号 p. 440-446
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    [早期公開] 公開日: 2021/04/28
    ジャーナル フリー

    要旨:出血発症の解離性脳底動脈瘤において,LVISを複数枚併用したコイル塞栓術によって良好な経過をたどった症例を経験したので報告する.症例は69歳女性.くも膜下出血で当院に搬送された.同日の脳血管造影検査では脳底動脈本幹部に軽度の拡張を認めるのみで出血源の同定はできず保存的加療となった.入院から1週間後に脳底動脈の拡張部は明らかに増大し,その近位部に数珠状狭窄を認め,出血源は解離性脳底動脈瘤であると診断された.再破裂の危険性が高いと判断し,瘤様拡大部分のコイル塞栓術と脳底動脈解離全体を覆うために複数枚のステント留置を施行した.術後早期および術後2年経過した現在も再発を認めていない.出血性解離性動脈瘤は短期間で増大および形態変化するため,短い間隔での経時的な経過観察が重要であり,治療手段としてLVISを複数枚併用したコイル塞栓術が有用であると考えられた.

  • 村瀬 翔, 牧 貴紀, 福村 匡央, 黒田 雄三, 権 泰史, 中澤 和智
    2021 年 43 巻 5 号 p. 447-451
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    [早期公開] 公開日: 2021/05/14
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は83歳男性.意識障害にて救急搬送となった.来院時NIHSSは17点で,頭部MRAで左MCA閉塞(M1遠位部)を認めた.頭部CT,MRIで早期虚血変化を認めず,血管内再開通療法の適応があると判断した.血液検査で Hb 3.8 g/dl,MCV 144 flと高度大球性貧血を認め,活動性消化管出血が否定できないことから,rt-PA静注療法は施行しなかった.輸血療法および機械的血栓回収療法を迅速に施行し,左中大脳動脈の完全再開通を得た.上部消化管内視鏡検査にて慢性萎縮性胃炎を認め,血清 vitamin B12 値の低下を認めたことから,悪性貧血による高度大球性貧血と診断した.入院後,抗凝固療法および vitamin B12 補充療法を導入の上,第13病日に後遺症なく退院した.脳梗塞急性期において,血管内再開通療法の適応を判断する際にも,貧血を含めた基礎疾患の確認と全身管理を並行して行うことが重要である.

  • 白石 渉
    2021 年 43 巻 5 号 p. 452-456
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    [早期公開] 公開日: 2021/05/14
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は48歳女性.母親と母方祖母に難聴と糖尿病がある.5年前に糖尿病を指摘された.来院6カ月前からメトホルミンの導入を開始され,その後増量された.この頃から難聴を自覚していた.X日,突然発症の運動性失語で前医に緊急入院し,ヘルペス脳炎の診断で加療され X+15日に退院となった.その翌日に運動性失語と右同名半盲,右半側空間無視が出現し,当院に入院した.頭部MRIで,左の側頭葉,後頭葉,頭頂葉病変を認め,同部位は MR spectroscopy で乳酸ピークを認めた.血清と髄液の乳酸,ピルビン酸値とL/P比の上昇も認め,ミトコンドリア病と診断した.本症例は,メトホルミン導入後に難聴,脳卒中様発作を生じたが,メトホルミンは乳酸上昇を介してミトコンドリア病を悪化させる.難聴,抗体陰性の1型糖尿病,低身長などが母系遺伝する糖尿病患者では,ミトコンドリア病の可能性を考え,乳酸値の測定等を検討することが望ましい.

  • 小川 由夏, 川原 一郎, 上野 未貴, 副島 航介, 塩崎 絵理, 本田 和也, 伊藤 健大, 諸藤 陽一, 原口 渉, 小野 智憲, 堤 ...
    2021 年 43 巻 5 号 p. 457-461
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    [早期公開] 公開日: 2021/06/05
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は81歳女性.左前頭葉の塞栓性脳梗塞再発を繰り返し各種精査施行されるも,塞栓源不明の脳塞栓症と診断された.頸部MRAでは,内頸動脈起始部は軽微な壁不整のみであったが,後方視的に3D-CTAを見直すと,舌骨が左総頸動脈遠位部を捕捉しており,舌骨による頸動脈への機械的刺激が原因と考えられ,後日内膜剝離術を行った.MRIや頸動脈エコーのみでは舌骨による頸動脈への接触は見逃されてしまう場合があり,塞栓源不明の脳塞栓症例における原因検索として頸動脈周囲の骨構造物も注意深く観察すべきであると考える.

  • 古田 智之, 堀江 将太朗, 西垣 明哲, 橘 径, 鈴木 賢治
    2021 年 43 巻 5 号 p. 462-466
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    [早期公開] 公開日: 2021/06/05
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は56歳の男性.脳静脈血栓症を4回繰り返した.発症時およびその後の再発時において,末梢血像と骨髄像では骨髄増殖性腫瘍の診断に至らなかった.その後,血小板上昇と貧血が緩徐進行し,発症より4年を経て骨髄所見でも異常を認め,JAK2 V617F 遺伝子変異を伴う骨髄増殖性腫瘍と診断した.本例は,JAK2 V617F 遺伝子変異を伴う骨髄増殖性腫瘍により,脳静脈血栓症を繰り返したものと推測される.JAK2 V617F 遺伝子変異を持つ患者において,脳静脈血栓症の発症時には血液検査異常を認めず,数年を経て骨髄増殖性腫瘍と診断される症例が少数ながら報告されている.原因の特定できない脳静脈血栓症に関しては,JAK2 遺伝子変異を伴う潜在性骨髄増殖性腫瘍を念頭に置いて精査を進める必要がある.

  • 田口 智朗, 廣瀬 正和, 末長 敏彦
    2021 年 43 巻 5 号 p. 467-471
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    [早期公開] 公開日: 2021/06/11
    ジャーナル フリー

    要旨:さまざまな病因により,Papez回路の一部を構成する脳弓が障害される報告がみられるが,純粋な脳弓障害の報告は稀である.今回,急性健忘症を呈した脳弓梗塞の1例を経験したため報告する.症例は75歳右利きの女性.突然の記憶障害を主訴に当院を受診した.時間の見当識障害および近時記憶障害を認める他には特記所見は認めなかった.頭部MRI拡散強調画像で,両側性で左優位の脳弓柱梗塞がみられた.症状は,14日の経過で3単語の遅延再生が可能なまでに改善した.Papez回路が障害され,近時記憶障害が生じたと考えられた.脳弓前部である脳弓柱の栄養血管としては脳梁下動脈が知られており,本症例は同血管からの分枝が閉塞したことによる梗塞であると考えられた.急性健忘症を呈した場合,脳弓を含む辺縁系構造物の梗塞症状である可能性もあり,迅速な精査が望ましいと考えられる.

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