脳卒中
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43 巻, 6 号
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原著
  • 岩佐 憲一, 小野田 慶一, 高吉 宏幸, 長井 篤, 山口 修平
    原稿種別: 原著
    2021 年 43 巻 6 号 p. 505-510
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    [早期公開] 公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    【背景および目的】脳小血管病に関連する脳卒中発症の予測因子として,臨床的な因子に加え頭部MRIにおける無症候性脳病変が知られており,これらを組み合わせた脳卒中発症リスクスコアの開発を試みた.【方法】ヘルスサイエンスセンター島根の脳ドック受診者1,790名を対象とし,受検後の脳卒中発症の有無を調査した.背景因子およびMRI所見の比較から脳卒中発症に寄与する因子を抽出し,脳卒中発症リスクのスコア化を試みた.【結果】高齢(65歳以上),高血圧,無症候性脳梗塞,深部白質病変,微小脳出血の5項目がそれぞれ有意なリスク因子となった.各項目1点とし,0点の群を基準とした脳卒中発生ハザード比では,3点で16.8(P<0.01),4点で44.0(P<0.005),5点で121.2(P<0.001)であった.【結論】血管障害リスクにMRI画像所見を組み合わせ,より精緻な脳卒中発症予測スコアを作成できた.

  • 小野 健一郎, 中川 政弥, 田之上 俊介, 大川 英徳, 美山 真崇, 吉浦 徹, 城谷 寿樹
    原稿種別: 原著
    2021 年 43 巻 6 号 p. 511-516
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    [早期公開] 公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    【目的】脳梗塞後の浮腫進行程度,外減圧実施時期における予後への影響を検討する.【対象と方法】脳腫脹を伴ったICA,MCA閉塞28例を対象に,経過中撮影されたCT画像で検討した.【結果】発症からの経過時間と正中偏位はASPECTS≥6群,<6群ともに正相関し,平均48時間後に6 mm,12 mm 程度と約2倍差を認めた.瞳孔不同は正中偏位が8 mm超過時から生じた.ASPECTS≥6群と<6群の退院時mRSは,それぞれ減圧開頭と保存加療で4,5,および5,5.5と有意差を示さず.正中偏位8 mm以下(平均 3.7 mm)時点と8 mm超過時(平均 12 mm)に施行した減圧開頭8例,11例の退院時mRSは4.5および5であり,有意差を認めなかった.【結論】発症からの経過時間と脳腫脹進行程度は相関し,特に発症時ASPECTS低値例は進行が早く見積もられた.

  • 田中 翔太, 山内 康太, 熊谷 謙一, 後藤 圭, 原山 永世, 小柳 靖裕, 荒川 修治
    原稿種別: 原著
    2021 年 43 巻 6 号 p. 517-523
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    [早期公開] 公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    【目的】回復期病院へ転院した脳卒中患者の自宅退院に関連する発症1週目の因子を調査した.【方法】対象は,急性期脳卒中で入院し,連携パスを使用して回復期病院へ転院した126例とし,自宅退院群 90例と非自宅退院群 36例に分けた.評価項目は,基本情報,入院前身体機能,発症1週目の神経学的重症度,神経学的所見,日常生活動作能力,経管栄養の有無とし,最終転帰を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.【結果】回復期病院退院後の転帰が自宅となる因子は,年齢,NIHSSスコア,Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)で,判別的中率は83.4%であった.また,各項目のカットオフ値は,年齢78歳,発症1週目のNIHSSスコア 5点,SIAS 55点であった.【結論】回復期病院退院後の転帰先が自宅となる因子として,年齢,発症1週目におけるNIHSSスコア,SIASの関連が示唆された.

症例報告
  • 鎌村 美歩, 田中 孟, 鈴木 洋輝, 鈴木 良夫, 塩尻 俊明
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 43 巻 6 号 p. 524-528
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    [早期公開] 公開日: 2021/06/11
    ジャーナル フリー

    要旨:症例は68歳の女性.5カ月前からの歩行障害,3カ月前の頭部MRIで新旧混在する多発脳梗塞を認めた.2カ月前からは右手のしびれ感,1カ月前から構音障害,右手の不全麻痺も出現し,7日前からは嚥下障害,6日前の頭部MRIで新たな梗塞巣が出現し,緊急入院となった.頭部MRIでは両側半球に散在する梗塞像がみられたが,血液検査,経胸壁心臓超音波検査,頸動脈超音波検査,胸部造影CT,ホルター心電図に異常所見はなく,血液培養は陰性であった.経食道心臓超音波検査では,大動脈弁無冠尖にイソギンチャク様の疣腫を認め,心臓原発腫瘍の可能性が高いと判断し,腫瘍切除術を施行した.病理所見は乳頭状線維弾性腫であり,術後脳梗塞の再発も認めていない.乳頭状線維弾性腫は脳塞栓症を含む全身性塞栓症を来すことで臨床的に重要であるが,本邦での報告は稀であり,文献的考察を加えて報告する.

  • 川端 哲平, 山本 俊, 廣瀬 俊明, 平松 拓, 今井 資, 野田 智之, 槇 英樹
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 43 巻 6 号 p. 529-533
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    [早期公開] 公開日: 2021/06/11
    ジャーナル フリー

    要旨:74歳の女性.右半身麻痺,失語で救急搬送された.来院時発熱,項部硬直を認めた.Glasgow Coma Scale E3V2M5,右上下肢不全麻痺,全失語を認めた.検査所見では,血小板減少,血液凝固異常を認め,急性期DIC scoreは6点であった.頭部CTで,左側頭葉脳内出血,くも膜下出血,左側急性硬膜下血腫を認めた.入院後,急性水頭症を来し,脳室ドレナージ術を行った.血液および髄液の細菌学的検査結果から Neisseria meningitidis が検出され,細菌性髄膜炎と診断し,抗生剤治療を行った.意識障害は改善せず,modified Rankin Scale(mRS) 5 で転院した.髄膜炎菌に伴う髄膜炎は稀であるが,初期治療が転帰に大きな影響を与えるため,発熱を伴う出血性脳卒中は,細菌性髄膜炎を考慮し,迅速かつ適確な治療の開始について周知し得る必要がある.

  • 橋本 黎, 大塚 喜久, 米田 行宏, 甲田 一馬, 西居 正汰, 赤荻 茉莉子, 由井 希, 影山 恭史
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 43 巻 6 号 p. 534-539
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    [早期公開] 公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    54歳男性.呼吸苦,発熱が出現し,3日後に体動困難となった.両側肺炎を呈しており,SARS-CoV-2のPCR検査が陽性で,右前頭葉,視床,中脳,小脳に脳梗塞を認めた.心エコーで右房内血栓を認め,Valsalva負荷時に卵円孔開存(PFO)を介した右左シャントがあり,奇異性脳塞栓症と診断した.各国からCOVID-19に関連した脳梗塞の報告は相次いでいるが,発症機序が不明の潜因性脳梗塞が多い.本例は,右房内血栓とPFOを介した右左シャントを確認し,奇異性塞栓症がCOVID-19に伴う脳梗塞の発症機序の一つとなることを示した1例である.COVID-19は静脈血栓症を合併することが多く,PFOは成人の25%程度にみられるため,COVID-19に関連した脳梗塞にはPFOによる奇異性脳塞栓症が一定数含まれる可能性がある.

  • 蛯子 裕輔, 吉野 義一, 伊古田 雅史, 渡部 剛也, 内山 拓, 杣 夏美, 草鹿 元
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 43 巻 6 号 p. 540-545
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    [早期公開] 公開日: 2021/06/18
    ジャーナル フリー

    Persistent primitive hypoglossal artery(PPHA)を伴う頸部内頸動脈狭窄症に対し,頸動脈直接穿刺と double distal filter protection による頸動脈ステント留置術(CAS)を施行した1例を経験したので報告する.症例は65歳,女性.弓部大動脈瘤の精査の際に頸部内頸動脈狭窄および同側のPPHAを認めた.心臓血管外科による胸部大動脈ステントグラフト(TEVAR)留置後,頸動脈直接穿刺でCASを行った.内頸動脈遠位,PPHAともに embolic protection の必要があり,直接穿刺で2本のシースを留置し,double distal filter protection で行った.PPHAが関与するCASでは,症例ごとに embolic protection の検討が必要である.また,TEVAR後のCASでは直接穿刺が有用であった.

  • 清水 大輝, 雄山 博文, 若林 健一, 伊藤 真史, 杉田 竜太郎
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 43 巻 6 号 p. 546-550
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    [早期公開] 公開日: 2021/06/18
    ジャーナル フリー

    脳空気塞栓症は,医療行為や外傷,あるいは潜水などによって生じるが,内因性疾患が原因で生じることは稀である.今回,胸部疾患および腹部疾患にそれぞれ続発した脳空気塞栓症を経験したので報告する.症例1は78歳男性.非結核性抗酸菌症と肺気腫を基礎に有し,反復性気胸を呈していた.突然の左半身麻痺・意識障害にて発症し,画像検査にて,両前頭葉に微小な空気像と両側大脳半球に多発性脳梗塞,および右肺に気管支肺炎と気胸を認めた.臨床経過と検査所見から,慢性肺疾患を基礎に気胸に起因する脳空気塞栓症と診断した.症例2は92歳男性.嘔吐後意識障害にて発症し,画像検査では,左大脳半球に空気像と両側半球に多発性脳梗塞,および小腸イレウス・腸管気腫症・門脈ガスを認め,非閉塞性腸管虚血症に起因する脳空気塞栓症と診断した.脳空気塞栓症の中には,稀ではあるが内因性疾患が原因の場合があることに留意し,全身の複雑な病態把握に努める必要がある.

  • 縄手 祥平, 壺井 祥史, 成清 道久, 大橋 聡, 長崎 弘和, 神林 智作, 村山 雄一
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 43 巻 6 号 p. 551-555
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    [早期公開] 公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

    【目的】脳空気塞栓症は潜水病としてダイバーに多く報告される病態である.今回我々は,筋力トレーニング後に脳空気塞栓症を発症した症例を経験したため報告する.【症例】75歳男性.ジムでの筋力トレーニング後,自宅で突然の意識障害を認め,当院へ救急搬送となった.意識レベルは JCS 300,GCS E1V1M1,強直性の痙攣重積状態であった.頭部CTで右前頭葉に散在する低吸収域を認め,空気塞栓症と診断した.痙攣重積状態であったため,高圧酸素療法は施行せず,抗痙攣薬とエダラボンの投与を行った.意識レベルは徐々に改善し,発語が認められ,指示動作に応じられるようになったが,重度の左片麻痺が残存した.発症53日目に modified Rankin Scale 3で回復期リハビリテーション病院へ転院した.【結論】既往歴に間質性肺炎を指摘されていたため,筋力トレーニング中の胸腔内圧上昇により肺胞が破裂したことが空気塞栓症の原因と考えられた.筋力トレーニングに伴う空気塞栓症は脳卒中の一因として認識しておくべきであると思われた.

  • 金井 雅裕, 長谷川 義仁, 岡野 篤志, 水井 大介, 中井 良幸, 丸賀 庸平, 伊藤 圭佑, 安田 宗義, 山口 啓二
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 43 巻 6 号 p. 556-560
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    [早期公開] 公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

    症例は23歳女性.呼吸困難で受診し好酸球性肺炎と診断され入院し,ステロイド治療を開始されていた.入院3日目に左上下肢麻痺を認め,頭部 magnetic resonance venography(MRV)で上矢状静脈洞の描出不良を認め,脳静脈血栓症と診断した.ヘパリンナトリウムによる抗凝固療法を開始し,ステロイド治療も継続した.入院10日目に急性硬膜下血腫を発症し,緊急開頭手術を行った.その後,後遺症なく状態は改善した.ステロイドを漸減していく中で好酸球数の再上昇を認めたことから,好酸球増多症による脳静脈血栓症と最終診断した.重度の好酸球増多症では血栓症を引き起こすリスクがあり,脳静脈血栓症の原因として認識する必要がある.

  • 栗山 衣美, 川口 匠, 松田 芳和, 八子 理恵, 中尾 直之
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 43 巻 6 号 p. 561-567
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/25
    [早期公開] 公開日: 2021/07/12
    ジャーナル フリー

    Pial arteriovenous fistula(PAVF)は,脳動脈と脳静脈がナイダスを介さず直接短絡する稀な疾患である.今回我々は,出血発症の成人PAVFに対し塞栓術と直達手術にて治療した1例を経験したので報告する.症例は26歳男性,突然の頭痛と嘔吐で発症した.頭部CTにて左側頭葉に血腫を認め,脳血管造影にてPAVFと診断した.N-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)にて塞栓術後,一期的に直達手術を施行した.NBCAが術中の解剖学的把握に役立ち,安全かつ確実に複数のシャントを離断できた.また,1979~2020年の成人PAVFの文献レビューを行い,臨床的特徴と治療法を検討した.塞栓術と直達手術の併用は106例中8例で,完全閉塞率は75%,転帰良好は88%であった.PAVFの治療法として,塞栓術と直達手術の併用は有効な可能性がある.

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