脳卒中
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6 巻, 4 号
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  • 小張 昌宏, 後藤 文男, 冨田 稔
    1984 年 6 巻 4 号 p. 371-387
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2010/05/07
    ジャーナル フリー
    The effects of calcium antagonists in relation to cerebral vessels and circulation were widely reviewed throughout the literature. Their effectiveness in stroke and migraine patients were also discussed.
    Calcium antagonists usually inhibit cerebral vasoconstriction induced by various agents in vivo. They seem to dilate pial and basilar arteries in vitro, and increase cerebral blood flow in normal animals. Cerebral vasospasms, produced experimentally or in patients, are readily reversed by calcium antagonists. Clinical trials of these drugs on patients with subarachnoid hemorrhage are now under way, with some favorable preliminary outcomes. There are a number of investigations on the effects of calcium antagonists on cerebral circulation following experimental cerebral ischemia, but the results are not uniform, probably due to the various experimental conditions used. The therapeutic effects of calcium antagonists on ischemic stroke patients are mostly demonstrated in their chronic stage, and studies on patients with acute strokes are scarce. Calcium antagonists are also shown to be beneficial in the prophylaxis of migraine attacks.
    Although there are yet many problems to be investigated, the usefulness of calcium antagonists on medical practice may be promising.
  • 古場 群己, 原岡 襄, 福田 忠治, 東 幸郎, 坂田 隆一, 三輪 哲郎
    1984 年 6 巻 4 号 p. 388-397
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    過去10年間に脳動脈瘤300例を経験したがその中で15例 (5%) が巨大脳動脈瘤であった.局在は, 内頚動脈11例, 前交通動脈1例, 中大脳動脈1例, 脳底動脈2例である.症状は各種眼症状9例, 鼻出血・水頭症・下位脳神経麻痺各1例, 偶然発見されたもの2例で, くも膜下出血で発症したものは1例のみである.手術は, 可能なかぎり直接手術 (クリッピング) を行うべきだと考えているが, 今までに3例のみである.次善の策として内頚動脈領域にはST-MC吻合+内頚動脈結紮3例, 総頚動脈結紮4例が施行されている.手術未施行例には破裂死亡が3例に認められた.診断面でCTscanのはたす役割は高い.又, 巨大脳動脈瘤の増大機序について, 病理所見より推測すると, 瘤内の血栓形成・器質化さらにその中への出血のくり返しにより徐々に増大すると考える.
  • 口脇 博治, 景山 直樹, 古瀬 和寛, 中矢 武彦, 当山 清紀
    1984 年 6 巻 4 号 p. 398-404
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    雑種成犬にて内包外側型血腫を作成し頭蓋内圧 (ICP) と体性知覚誘発電位 (SEP) との変化を血腫形成後6時間観察した.血腫と内包との位置関係は摘出脳連続切片を検討し, 血腫の内包圧迫が軽度でその間に脳組織が存在するもの (I群), 圧迫が大で血腫の一部が内包へ侵入するもの (II群), 圧迫は軽度だが内包に点状出血を伴うもの (III群) に分類された.I群では血腫形成後5時間目のみ陽性波成分 (P1) が有意の潜時延長を示し, ICP亢進は軽度であった.II群ではP1が高頻度に消退するが, ICP亢進にもかかわらず一時的に回復した.III群では4~5時間以後P1は消退しICPは中等度亢進した圧波はII群で高頻度に認められた.ICP亢進にもかかわらずSEPの回復は6時間以内に生じ, 局所循環障害にもとづく内包の虚血による要因がP1の消退と密接な関連があるものと考えられた.圧波は血腫による内包侵襲の大きなものほど頻回に認められると推定された.
  • 関本 博, 中西 正人, 松谷 芳英, 島田 修史, 中野 利美
    1984 年 6 巻 4 号 p. 405-410
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    S-adenosyl-L-methionine (SAM) の脳組織内エネルギー代謝に及ぼす効果を明らかにすることを目的に, マウスを用い脳虚血モデルについて経時的に解糖系を中心に検討を加えた.断頭後の脳内phosphocreatine, ATP, glucose, glycogenおよびlactateの変化を検討したところ, 対照群では脳組織内在性エネルギー源のすみやかな減少とlactateの増加が認められた.SAM投与群では断頭時すでに脳内glucoseの有意な増加が認められ, 断頭後, 脳組織内在性エネルギー源濃度は対照群に比して高い値を示した.断頭後のhigh energy phosphate utilizationを検討したところ, 断頭10秒後まではSAM投与群では対照群の77.1%に抑制されており, 断頭による脳組織内在性エネルギー源の枯渇までの時間がSAM投与により延長された.以上の結果からSAMがマウスの脳虚血に対して保護作用を有することが明らかとなり, 臨床的に脳血管障害時の脳虚血に対して有効である可能性が示唆された.
  • その問題点と方法論について
    豊原 敬三, 豊島 良一, 城市 貴史, 下条 貞友, 宮原 正
    1984 年 6 巻 4 号 p. 411-418
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    Xenon CT法により局所脳血流量 (LCBF) を測定し, その問題点と方法論を検討した.対象は健康成人7例, 脳梗塞9例である.使用Xenon gas濃度はXenonエンハンス率やS/N比, 麻酔作用等の問題を考慮すると, 50%が至適である.非侵襲的なLCBF測定を行うために, 比較的短時間Xenon吸入法を考案した.すなわちscanning intervalを初期には1分毎に, 以降3分前後とし, 全吸入時間を6分から15分に設定して比較検討した.さらにscan dataをautoradiography法を改変した指数関数curve fitting法により処理した.その結果基底核, 視床においては, Xenon 6分吸入曲線から臨床応用が可能なLCBFを得ることができた.この方法により健常例の基底核におけるCBFの平均値は, 85.7±19.3ml/100g/minであり, 飽和曲線から得た平均94.8±17.4mlとほぼ一致した.LCBFの計算処理方法に関し, scannerの性能, radiation dose等から, Xenonの飽和曲線を用いたautoradiography法が至適であると思われる.
  • 阿美古 征生, 青木 秀夫, 原田 清
    1984 年 6 巻 4 号 p. 419-424
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    高血圧性脳出血発作を同側の同一領域に繰り返した稀な2症例を報告した.これら2症例の臨床症状は, 頭痛や嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状はほとんど示さず, また意識障害はあっても軽度であり, 片麻痺の程度は不全麻痺であった.CT上の所見は, 初回発作, 2回目の発作とも小出血で基底核に限局した病変であり, 脳血管撮影ではレンズ核線状体動脈の軽い変化を示すのみで, 動静脈奇形などの異常血管は認めなかった.治療に関しては小出血限局型であるので, 必然的に保存的治療を行なったが, 再発性出血にもかかわらず生命予後は良好であった.また機能予後に関しては, 多少片麻痺や言語障害の増悪を示したが, 症例1のように社会復帰可能例も存在した.最後に本症例の再出血発作に関する病態について簡単に考察した.
  • 中性脂質代謝と脳内macrophageの機能について
    長山 正史, 工藤 玄恵, 青山 彰
    1984 年 6 巻 4 号 p. 425-433
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    ラットに実験的脳梗塞巣を作成し, 経時的に各病巣の中性脂質代謝を検討した.とくに中性脂質の代謝の'場'および各病期 (病巣の新旧) での中性脂質の, 質的特徴'を中心に検討し, 以下の諸点を明らかにした.
    1) 各病期に亘り中性脂質の増加が認められたが, これらはコレステロールエステル (ChE), トリグリセライド (TG), 遊離脂肪酸 (FFA) などから構成され, なかでもChEの増加が最も優位に認められた.2) 脳内macrophageを単離することにより, 中性脂質の代謝が主として同細胞内で行なわれており, 中性脂質の増加はmacrophage反応と相関し, 主として崩壊したmyelinなどに由来すると考えられた.3) 病巣の長期化につれ, FFAの相対的増加が認められた.ChE, FFAは病巣が極めて古くなり, macrophage反応がほとんどみられない病巣にてもなお残存することが証明された.4) 中性脂質の'質', とくにコレステロールエステルの構成脂肪酸は病巣の新旧と相関することが示唆された.すなわち病巣が古くなればなる程, 鎖長のより長い構成脂肪酸の割合が増すものと考えられた.5) 中性脂質の増加が脳梗塞巣の進展及び修復過程に重要な係わりを有することが示唆された.
  • 呼気中および動脈血中133Xe濃度曲線の解離
    高木 繁治, 篠原 幸人, 小畠 敬太郎
    1984 年 6 巻 4 号 p. 434-441
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    非侵襲的脳血流測定法である133Xe吸入法と静注法を同一日に12例に施行し,その測定値を比較した.静注法の脳血流値は吸入法にくらべて,F1,ISI共に有意に高値を示し,W1は有意に低値を示した.12例の両側脳半球平均のF1は静注法71.5±10.8ml/100g brain/min(mean±S.D.),吸入法64.3±7.3であった.両法での差異の原因の一つは,動脈血中133Xe濃度を呼気から推定する点にあると考え,動脈血ガス分圧が正常である4例について吸入,静注後の呼気および血中濃度曲線を比較したところ,吸入法では全例に,静注法では3例に両曲線での差異が認められた.以上より,動脈血ガス分圧が正常で,臨床的に肺機能障害の認められない症例においても,動脈血中濃度曲線と呼気中濃度曲線の間には明らかな差が存在し,それが両方法の測定値の差に関与する可能性があると考えた.
  • 末吉 建治, 山田 義夫, 小島 義平, 志水 洋二, 河田 肇
    1984 年 6 巻 4 号 p. 442-452
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    健常例, 高血圧症, 高脂血症, 糖尿病, 一過性脳虚血発作, 脳梗塞からなる183例を対象としてリニヤ走査電子スキャナー, 5MHz探触子を用いて頚動脈超音波断層法を施行した.本法による血管狭窄度と血管写によるそれとの間には有意正相関が成立し, 本法の血管写を対照とした診断正答率は閉塞67%, 健常82%, 狭窄100%であった.本法による頚動脈病変検出率は健常例7%, 高血圧症45%, 高脂血症45%, 糖尿病50%, 一過性脳虚血発作73%, 脳梗塞67%であった.atheromatous plaqueの形態を8型に分類し各疾患での出現頻度を検討すると健常例, 高血圧症では微小型, 糖尿病では広基底性表面平滑型, 高脂血症では半円形表面平滑型が多くこれら非脳血管障害例では微小型, 表面平滑型が主体を占めるのに対し脳血管障害例の病因側頚動脈では閉塞型が最も多く表面不整型および結節型の増加がみられた.非病因側頚動脈では表面平滑型が主体を占めた.
  • 脳塞栓症と脳血栓症の比較
    岩本 俊彦, 勝沼 英宇, 荒木 五郎, 柚木 和太
    1984 年 6 巻 4 号 p. 453-460
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    内頚動脈 (ICA) 閉塞における閉塞機転の相違が梗塞巣に如何なる影響を及ぼすかを知る目的で, 塞栓によるICA閉塞18例, 血栓によるICA閉塞30例についてCT・脳血管撮影所見を比較検討した.CT上梗塞巣は両者共90%にみられたが, 塞栓症の61%は大梗塞で, 大脳半球や中大脳動脈 (MCA) 領域全体に及ぶ梗塞が多かった.一方血栓症の67%は梗塞巣が小さく, 27%はwatershed infarctionで, MCA領域の梗塞も部分梗塞で多彩な広がりを示した.mass sign, enhancement効果の出現頻度は, 塞栓症で各々78%, 92%と血栓症より高かった.CTと脳血管撮影所見との対比から, 塞栓症の梗塞巣の大きさはWillis動脈輪を介する側副血行に依存し, この不良なものの梗塞巣は大きかったが, さらに閉塞上閉塞, 二次性血栓の増生が梗塞巣増大因子の一つと考えられた.血栓症では各側副血行路の組み合わせも豊富で, Willis動脈輪を介する側副血行が悪くても梗塞巣は小さかった.
  • 森田 陽子
    1984 年 6 巻 4 号 p. 461-469
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    発症後72時間以内に入院し, CTにより確定診断された脳出血43例, 脳梗塞78例をもとに, 数量化理論第2類の手法に基づき, 脳出血と脳梗塞の計量的鑑別診断表の作成を試みた.
    診断表には, 病歴, 臨床所見より, 項目間の相互関係を加味した解析の結果, 年齢, TIAまたはRINDの既往, 脳出血または脳梗塞の既往, 心疾患の既往, 発症時の状況, 嘔吐, 膀胱障害, 拡張期血圧, 痙攣, 項部硬直またはKernig徴候, 外眼筋麻痺, 対光反射, の12項目の組合わせを採用した.
    正診率は, internal checkでは脳出血90.7% (39/43), 脳梗塞87.2% (68/78) であり, 別に脳出血36例, 脳梗塞63例を用いたexternal checkでは脳出血80.6% (29/36), 脳梗塞79.4% (50/63) であった.
    従来提唱されている鑑別表での正診率と比較し, 本法の有用性が確かめられた.
  • 特にアミロイド・アンギオパチーとの関連について
    羽生 春夫, 朝長 正徳, 吉村 正博, 山之内 博, 勝沼 英宇
    1984 年 6 巻 4 号 p. 470-480
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    老年者の脳葉型出血について, 特にアミロイド・アンギオパチー (A.A) との関連を中心に臨床病理学的に検討した.
    脳出血230例の中で脳葉型は39例 (17.0%) にみられ, 原因としては高血圧14例 (35.8%), A.A8例 (20.5%), 腫瘍6例 (15.4%) が多くを占めていた.A.Aによる出血の特徴は, 皮質を含む, 時に多発性の脳葉型出血で, 2次的クモ膜下出血を合併し, またA.Aに関連した皮質小梗塞 (しばしば多発性) が認められる事も稀ではなかった.臨床的には高血圧などのrisk factorが認められる事は少なく, 痴呆は認められないか, または認められても血管性痴呆と考えられる場合も少なくなかった.
    従ってrisk factorのない老年者の脳葉型出血ではA.Aによると考えられる場合が少なくなく, この際痴呆の有無は必ずしも診断の決め手にはならないと考えられた.
  • 1.脳代謝と脳血流
    井林 雪郎, 藤島 正敏, 佐渡島 省三, 緒方 絢, 尾前 照雄
    1984 年 6 巻 4 号 p. 481-486
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    自然発症高血圧ラット (spontaneously hypertensive rats : SHR) を用い, 3時間不完全脳虚血を作製し, 高血糖, 低血糖, 正常血糖が虚血時の脳代謝に及ぼす影響を検討した.結果, 3時間不完全脳虚血では, 脳虚血時のエネルギー代謝はATPでみる限り低血糖状態で著明に低下し, その程度が強く認められた.これは脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖の供給低下が虚血により助長されたものと推測される.一方, 高血糖状態では著しい乳酸の上昇を認めるもののATPの低下は正常血糖群と変らず, 必ずしも重篤な障害を受けないことを明らかにした.3時間非虚血では, 3血糖群間に脳代謝産物の差は認めなかった.
    人の脳梗塞は局所脳虚血であり, 一種の不完全脳虚血である.したがって, 本実験結果が示すごとく, 脳梗塞患者を管理する際, 高血糖よりはむしろ低血糖の方が避けるべき状態であると推測される.
  • 2.脳病変
    井林 雪郎, 緒方 絢, 藤島 正敏, 佐渡島 省三, 尾前 照雄
    1984 年 6 巻 4 号 p. 487-494
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    従来より高血糖はlactic acidosisのために脳虚血に伴う脳代謝ならびに脳病変を増悪させると考えられてきた.これに対し, 我々は脳虚血時のエネルギー代謝はATPでみる限り, 低血糖状態でその障害が強く, 高血糖状態では乳酸の上昇は認めるものの正常血糖に比べ必ずしも重篤な障害を受けないことを報告した.今回は, 同じ高血圧自然発症ラット (spontaneously hypertensive rats : SHR) の3時間不完全脳虚血モデルを用い, 血糖値と脳虚血に伴う脳の組織学的変化を光顕ならびに電顕的に検討した.結果, 1) 高血糖, 正常血糖, 低血糖の3血糖群とも非虚血ラットでは光顕および電顕的に異常は認めなかった.2) 脳虚血ラットでは3血糖群ともに光顕にて神経細胞の縮小, 神経周囲組織の空胞化, neuropilの粗鬆化を認めた.3) さらに電顕にて粗面小胞体の腫大, 神経細胞周囲の呈状グリア細胞の膨化および淡明化が観察され, これらの所見はいずれも低血糖群に最も高度であった.
    以上の形態学的所見は生化学的所見に一致し, 脳虚血において高血糖よりはむしろ低血糖の方が脳病変を増悪せしめることが判明した.
  • 富田 政明, 峰松 一夫, 長木 淳一郎, 山口 武典
    1984 年 6 巻 4 号 p. 495-499
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    心房細動を伴う心臓弁膜症と右大脳半球の陳旧性梗塞を有し, 今回左内頚動脈の塞栓性閉塞をきたした77歳女性例を呈示した.本例の急性期における頭部単純CTにおいて, 左中大脳動脈主幹部と走行が一致し, 正常な脳実質に比べ高いCT値を示す索状構造物が検出された.慢性期のCTでは, この異常な索状構造物の所見は得られなかった.本例の急性期に観察された索状構造物は, 脳主幹動脈を閉塞した栓子ないし閉塞部位より末梢の凝血塊であると推定された.本所見の診断学上の意義について, 若干の文献的考察を交えて論じた.
  • 石原 直毅
    1984 年 6 巻 4 号 p. 500-509
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は一側半球脳虚血早期の健側半球脳血流, 代謝障害の機序を解明することにある. [方法] mongolian gerbil 107匹の一側総頚動脈結紮4時間までの両側半球, 小脳の脳血流, 組織水分量, 組織電解質 (Na/K), 14C-deoxyglucose法によるグルコース代謝を測定した. [結果] 対側半球脳血流は虚血30分の早期より低下しはじめ, 同時に脳組織水分量も増加したが, 組織Na/Kは変化しなかった.虚血2時間後の対側半球グルコース代謝は虚血の程度により異なり, 虚血の高度な場合は代謝の亢進している部位がみられた. [結論] 虚血早期の対側半球血流低下やグルコース代謝異常の機序には神経性因子のみならず, 脳浮腫や頭蓋内圧上昇なども重要な役割を果していると考えられた.また, diaschisisによって急性期対側半球代謝は一様に抑制されるとする従来の概念とは異なり, グルコース代謝がむしろ亢進する場合もあることを示した.
  • 微小管蛋白tubulinによる免疫組織化学的研究
    吉峰 俊樹, 早川 徹, 山田 和雄, 生塩 之敬, 柳原 武彦
    1984 年 6 巻 4 号 p. 510-519
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    虚血急性期, 血流非再開時のhippocampal neuronにおけるselective vulnerabilityの有無および性格を検討するため, 同部に一様な虚血をもたらすMongolian gerbilの一側後交通動脈閉塞モデルを用い, 5分から3時間の虚血後, 脳を摘出し, 抗tubulin血清を用いた酵素抗体法にて観察した.その結果, tubulinの免疫組織化学的反応性の変化でみるとhippocampusには虚血急性期からすでにさまざまな形のselective vulnerabilityが存在し, 同じpyramidal cellではあってもCA 1領域のものはよりvulnerableであること, 同じ領域内ではあってもstratum oriensやradiatumのdendriteはよりvulnerableであること, pyramidal layerのneuronはよりvulnerableであること, そしてhippocampusを横断するかたちの分節状のvulnerability differenceが存在することがあきらかにされた.またそれぞれの要因として各部位の組織自身あるいはneuronのtypeによる相違, 微小領域における血流量の差の存在が示唆された.
  • 柳田 範隆, 古和田 正悦, 坂本 哲也, 峯浦 一喜
    1984 年 6 巻 4 号 p. 520-524
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    DICに合併した頭蓋内出血の手術例は文献上12例にすぎず, その予後は不良とされている.最近, 子宮内容除去術後のDICに合併したcryptic AVMの1治験例を経験したので報告する.症例は36歳の主婦で, 子宮内容除去術後3日目に大量の性器出血と発熱, 点状皮膚出血があり, DICと診断された.DICの治療後4時間目に突然頭痛を訴え, 傾眠状態となった.CTで左頭頂後頭部の血腫, 椎骨動脈撮影で左頭頂後頭動脈からのearly venous fillingが認められた.DICスコアが12点であり, ヘパリン, 新鮮血などでDICのコントロールに努めた.発症4日目にDICスコアが5点に改善され, 左頭頂後頭開頭で特に異常出血もなく脳内血腫を除去し, AVMを摘出した.組織学的に内弾性板を保持する動脈要素とそれを欠く静脈要素が混在し, それらの血管内に多数の徴小血栓が認められた.
  • 症例報告と文献的考察
    佐藤 能啓, 林 隆士, 宇都宮 英綱, 前原 史明
    1984 年 6 巻 4 号 p. 525-530
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    抗生物質による保存的治療下に細菌性脳動脈瘤の消失を経時的脳血管撮影で確認した症例を報告した.症例は49歳, 男性で, 不明熱の経過中に左片麻痺, 意識障害で発症した.入院時心基部に拡張期雑音を聴取し, 動脈血培養でstreptococcus faecalisが検出された.CTでは右前頭頭頂部にクモ膜下出血を伴う脳内血腫を認め, 44病日の右総頚動脈撮影で中大脳動脈のprecentral arteryに嚢状動脈瘤がみられた.抗生物質治療下で経過を観察したところ, 約11週間後の脳血管撮影で動脈瘤の消失が確認された.本症例を含めた文献的考察から, 保存的治療下における細菌性脳動脈瘤の縮小, 消失は必ずしも稀な現象ではないことを明らかにし, その機序および抗生物質投与の意義について考察した.
  • その発生機序に関する検討
    寺井 敏, 脇 理一郎, 長谷川 泰弘, 山口 武典, 里見 真美子
    1984 年 6 巻 4 号 p. 531-537
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳底動脈閉塞により臨床上locked-in syndromeを呈した症例の経過中に, 1周期30秒以内の短周期の規則正しいCheyne-Stokes呼吸, および正常呼吸が数分持続したのち, 大きな呼吸が1回のみ出現し, ついで10数秒間無呼吸が持続するのを1周期とする特異的な呼吸パターン, すなわち衣川らによる “sigh and rest” 呼吸1) の出現を認めた.短周期Cheyne-Stokes呼吸は橋延髄境界部を含む両側橋底部および被蓋部の広範な障害が臨床的に疑われる時期に, そして, “sigh and rest” 呼吸は両側橋底部の障害に加え, 被蓋部の部分的な障害が疑われる時期に出現した.本論文では, これらの呼吸パターンの責任病巣および発現機序などについて考察した.
  • 宇高 不可思, 奥田 文悟, 秋口 一郎, 亀山 正邦
    1984 年 6 巻 4 号 p. 538-543
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    59歳男.上部脳底動脈の閉塞により両側後頭葉, 左側頭葉後部, 左視床および視床下部, 左内包後脚, 中脳左半側などに梗塞を生じ, Caplanのいう “Top of the basilar syndrome” を呈した.本症例では左視床全域の梗塞がみられており, その成因に関して血管支配の面から考察を加えた.
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