脳卒中
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8 巻, 1 号
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  • 第1報ラットを用いた血流再開可能な脳梗塞モデル
    小泉 仁一, 吉田 洋二, 中沢 貞二, 大根田 玄寿
    1986 年 8 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    血流再開可能なラット脳梗塞モデルを開発し, 虚血巣内の神経組織や血管壁の光顕的変化ならびに血流再開による組織像の修飾, 血流の再開前後における脳含水量の変化を検討した.STD Wistar雄ラットの右総頸動脈より糸つき塞栓を挿入し, 右中大脳動脈入口部を閉塞この塞栓を一定時間留置後, 抜去し血流を再開した.閉塞後, 脳腫脹は経時的に増悪し, 対照群の含水量77.62%に対し, 12時間閉塞後のそれは79.48%となった.閉塞後32時間で全例が死亡した.死亡時における梗塞巣は側頭・頭頂葉, 基底核および視床下核の一部に再現性よく認められた.また, 血流の再開により含水量は永久閉塞群に比し有意に増加し, その程度は閉塞時間の長さに平行した.組織学的には, 血流の再開により梗塞巣の海綿状状態は増強し, 毛細血管からの出血, 梗塞巣への白血球浸潤も加わっていた.
  • 金 浩澤
    1986 年 8 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    急性期脳血管障害における脳循環調節に対する内因性プロスタグランディンの役割を検討した.発症7日以内の脳血管障害36例 (梗塞17例, 出血19例) を対象とし, 脳循環自動調節と化学調節については脳動静脈血酸素較差法を用い, 頭部挙上法および7%CO2+air吸入法によりdysautoregulation index (D.I.) =|ΔCBF/ΔCPP|, chemical index (C.I.) =|ΔCBF/ΔPaCO2| (%/mmHg) を指標とした.動脈血および内頚静脈血中プロスタグランディン (PG) とカテコールアミンはRIA法, HPLC法で測定した.
    1) 動脈血および内頚静脈血中PGEレベルとD.I.は各々有意な正の相関を示した (P<0.01, p<0.05).
    2) 内頚静脈血中PGEレベルとC.I.は有意な負の相関を示した (P<0.05).
    3) 内頚静脈血中6-keto-PG FレベルとD.I.とは有意な正の相関を示した (p<0.05).
    4) 動脈血中6-keto-PG FレベルとC.I.とは有意な負の相関を示した (p<0.01).
    以上より, 急性期脳血管障害における脳循環自動調節と化学調節の障害に内因性プロスタグランディンの関与が示唆された.
  • 第1報塞栓源について
    正和 信英, 吉田 洋二, 山田 喬, 城下 尚, 大根田 玄寿
    1986 年 8 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    近年の脳塞栓症剖検例30例の心と動脈系を中心に肉眼的, 組織学的に検索し, 塞栓源を明らかにしたところ, 心源性塞栓症16例, 動脈源性塞栓症6例, いずれの可能性もあり決めかねるもの5例, 不明3例であった.心源性塞栓症の内訳は, 心内膜炎や心筋梗塞など器質性病変に基づく9例と器質性病変はないが心房細動を伴い, 左房, 左心耳内に血栓を証明した7例とであり, 60歳末満の大部分 (10例中7例) は心源性塞栓症であった.動脈源性塞栓症は, 粥状硬化を基盤とする血栓に由来し, 生前の高血圧既往の頻度が高かった.動脈源性塞栓源になりうる潰瘍ないし血栓を有する粥状硬化巣の分布と出現頻度をみると, 従来強調されてきた内頚動脈起始部のみならず, 大動脈や腕頭, 総頚, 鎖骨下, 椎骨の各動脈の起始部にも高頻度に認められた.また生前の血液ヘマトクリット値を調べると, 調査しえた17例中14例 (82%) は40%以上, 6例 (35%) は50%以上の高い値を示していた.
  • 渡辺 礼次郎, 中林 治夫, 柳沢 徹, 竹内 正
    1986 年 8 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    高血圧の既往を有する50歳, 男性, 意識障害を伴わず, 著しい構音障害, 左手指の巧緻運動障害を主徴として, 突然に発症し, 約20日後に症状が完全に改善した.臨床的にFisherのいうdysarthria-clumsy hand syndromeと一致し, CTスキャンにより, 橋上部の右側橋底背側に小出血巣を確認しえた症例を経験した.本症候群は, 橋のlacunar syndromeとして知られているが, 出血によるものは文献上極めて稀である.
  • とくにmetoprololの有用性について
    東保 肇, 平川 公義
    1986 年 8 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    破裂脳動脈瘤6例と高血圧性脳内出血2例について降圧の目的で, propranolol, phentolamineおよびβ1-selective blockerであるmetoprololを投与し, 各種薬剤のhemodynamic state, 血中カテコールアミン (CA), 血漿レニン活性 (renin), 頭蓋内圧, 脳灌流圧, および腎血流に及ぼす影響をみた.phentolamineはpotentな降圧剤であるが, 頭蓋内圧を上昇させ, 脳灌流圧は減少した.non-selective β blockerであるpropranololは収縮期血圧を軽度低下させるものの, 拡張期血圧は不変であった.また, 腎血流は有意に減少した.一方, metoprololはpropranololに比し, よりpotentな降圧剤であり, CAおよびreninとも有意に減少させ, 頭蓋内圧および脳灌流圧に影響を及ぼさず, 腎血流も不変であった.以上より, 出血性脳血管障害急性期の高血圧に対する治療にnon-selective β blockerであるpropranololよりも, β1-selective blockerであるmetoprololが有用であると思われた.
  • 野中 信仁, 松角 康彦, 山口 俊朗, 池田 順一, 三浦 義一
    1986 年 8 巻 1 号 p. 34-42
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    くも膜下出血後発生する脳血管攣縮の中で, 特に急速な経過にて症状増悪を示し死に至るいわゆる “劇症型致死的脳血管攣縮” があり, これらの臨床的背景について検討した.59年12月までの過去3年間のくも膜下出血252症例の中で, 25例 (9.9%) がこれに相当した.男性6/104 (5.8%), 女性19/148 (12.8%).50歳未満2/64 (3.1%), 50歳代13/101 (12.9%), 60歳代8/65 (12.3%), 70歳以上2/22 (9.1%) と, 50歳代, 60歳代の女性に高頻度に出現した.いずれも早期CTにおいて脳底部髄液槽に著明なhigh densityを示した.入院時一般検査では, 白血球増多, 血糖値上昇, 心電図異常を示すものが多く, 動脈硬化指数は高い傾向にあった.脳血管攣縮発症時のCTで, 激しい脳浮腫を伴う一側中大脳動脈領域の脳梗塞あるいは多血管領域にわたる多発性の脳梗塞を示した.破裂脳動脈瘤に対する早期手術, Ca++拮抗剤の予防的投与により, 減少軽減する印象があった.
  • 連続186例における検討
    峰松 一夫, 山口 武典, 長木 淳一郎, 澤田 徹, 尾前 照雄
    1986 年 8 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    一定の臨床的診断基準により診断された脳塞栓連続186例について, 前2週間, 急性期 (1~14病日), 亜急性期 (15~28病日), 慢性期 (29~60病日) の各時期における脳塞栓および他臓器塞栓症の発生頻度を算出した.入院のきっかけとなった脳塞栓の発症前2週間の期間に, 24例 (13%) 27回の塞栓発作があった.急性期再発率は脳0.51%/pt-day, 他臓器0.81%/pt-dayであり, 亜急性期, 慢性期に比べ著しく高率であった.再発脳塞栓の91%, 他臓器塞栓症の41%が転帰に何らかの悪影響を及ぼしていた.基礎疾患別の急性期再発率は, 脳については弁膜症, 心房細動ともほぼ同率であり, 他臓器については弁膜症がより高率であった.若年のもの程急性期再発率が高い傾向に, また急性期線溶療法施行例でも急性期再発率が高い傾向があった.発症早期の病型診断の重要性と再発防止対策確立の必要性が示唆された.
  • 岡田 靖, 田代 幹雄, 宮下 孟士, 山口 武典, 緒方 絢
    1986 年 8 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    卵胞・黄体混合ホルモン剤 (E-P剤) 服用中に著明な高脂血症を呈し, 脳梗塞を発症した一例を報告した.症例は, 52歳, 女性.子宮筋腫に伴う過多月経によりE-P剤を1週間服用したところ, 突然, 意識障害, 全失語, 右片麻痺を呈し, 脳梗塞と診断された.同時に血清トリグリセライド (2,264mg/dl) およびpre β-lipoproteinの著増をみた.本症は臨床所見および神経放射線学的所見から脳塞栓と考えられたが, 塞栓源となる基礎疾患または病変部位は認められなかった.しかし, トロンボエラストグラムにより凝固能亢進が, ヘパリンテストにより, lipoprotein lipase活性の低下が, それぞれ認められた.従ってE-P剤服用により, 血液凝固, 脂質代謝に著明な変化をきたし, これが本症の脳梗塞発症に強く関与したことが示唆された.E-P剤服用中の脳塞栓の報告はまれで, さらに著明な高脂血症を合併した報告例はない.-EP剤は経口避妊薬と同成分で, 本ホルモン製剤と脳梗塞発症との関連を考察する上で興味深い1例と考えられた.
    また, 本ホルモン製剤の使用に際しては, 年齢, その他のrisk factorを考慮して投与し, 経過中の血液凝固, 脂質代謝の異常に十分留意する必要があることを強調した.
  • 岩田 誠
    1986 年 8 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    左半球病変による流暢な失語症を有する6例の患者において3桁数字列よりなるdichotic listening testを行い, 復唱および指示テストにおける左右耳の正答率およびlateralityindex (LI) と, token testによる失語症状の改善度との関係につき検討した.
    その結果token testの成績とLIとの間には必ずしも明らかな相関は認められなかったが, 右耳正答率との間には有意の相関を認め, 失語症状の回復には左半球の語音聴取能力の改善が大きく関与していることが考えられた.
  • 山口 修平, 小林 祥泰, 木谷 光博, 恒松 徳五郎
    1986 年 8 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    micro-pressure system (MPS) を用いて, ネコの総頸動脈 (CCA) 閉塞後のWillis動脈輪を介する血行動態について検討した.100~200μmの脳軟膜動脈圧 (PAP) をMPSで測定しつつ, 一側CCA閉塞, 次いで両側CCA閉塞を行い, 各時点で水素クリアランス法により脳血流を測定した.PAPは72mmHgで全身動脈圧の62.5%であった.そして一側CCA閉塞で前値の86%に, 両側CCA閉塞で63%に低下した.脳血流は両側CCA閉塞により始めて有意に低下した.上記結果より算出された100μm以下の細い動脈の血管抵抗は, 一側CCA閉塞で有意に低下したが, 両側CCA閉塞ではそれ以上の変動は認められなかった.一方, 太い動脈の血管抵抗の変化量は, 一側CCA閉塞後がWillis動脈輪前半部の血管抵抗, 両側CCA閉塞後は椎骨脳底動脈~Willis動脈輪後半部の血管抵抗と考えられ, 後者は前者の約4.5倍であった.本実験モデルはWillis動脈輪および軟膜動脈の薬剤等にする血管反応性の検討に有用であると思われる.
  • 脳虚血における脳波と脳血流の相関について
    大野 正弘
    1986 年 8 巻 1 号 p. 69-79
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    犬を用いて経眼窩的に一側前大脳動脈Al部とその穿通枝, 内頸動脈, 中大脳動脈Ml部の血流を遮断し, 中大脳動脈領域の虚血モデルを作製した。このモデルを用いて血流遮断後の脳波, 脳血流頭蓋内圧の変化を観察した.micro carbon染色では10例の動物中6例で脳表にmicro-circulationの障害を認めた。水素クリアランス法により測定した脳血流は, Sylvian fissure近位部では血流遮断直後から平均9.1±6.53ml/100g/minに, その周囲の脳表では平均36.1±19.8ml/100g/minに減少し, その後2時間まで低下したままであった。脳波は側頭部硬膜上から誘導したが, 25% (4/16) では血流遮断直後より平坦化し, 50% (8/16) では一過性の徐波成分の増加が認められた.頭蓋内圧持続測定では, comtrol値9.3±2.5mrnHgから血流遮断より1-2時間後より上昇し始め6時間後には27, 5±2.5mmHgに達した.
  • 神経性因子を中心として
    栃内 秀士
    1986 年 8 巻 1 号 p. 80-88
    発行日: 1986/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    雑種成犬を用い, 6-OHDAの髄液腔内投与を行ない大脳皮質, 視床, 中脳の局所脳血流 (rCBF) を水素クリアランス法にて測定した.血圧上昇および血圧下降実験から血圧-血流曲線を描いてautoregulationの変化を検索した. (1) 6-OHDA投与により定常状態のrCBFは各部で増加する傾向が見られた. (2) 脳深部循環のautoregulationは6-OHDAにより早期に障害されるが, 大脳皮質部循環では比較的遅れて障害され, 6-OHDA投与後7日目には全てのautoregulationが消失した. (3) ΔCSF-P/ΔMABPは6-OHDA投与後経時的に増加し, 脳血管の血管神経麻痺状態が進行していると推定された.以上の結果から, 6-OHDAによる神経性因子の遮断は脳深部循環のautoregulationを容易に障害するが, 大脳皮質部循環のautoregulationが障害されるためには自律神経系に中枢性の変化が起り, 筋原性因子にまで影響することが必要であると考察された.
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