卵胞・黄体混合ホルモン剤 (E-P剤) 服用中に著明な高脂血症を呈し, 脳梗塞を発症した一例を報告した.症例は, 52歳, 女性.子宮筋腫に伴う過多月経によりE-P剤を1週間服用したところ, 突然, 意識障害, 全失語, 右片麻痺を呈し, 脳梗塞と診断された.同時に血清トリグリセライド (2,264mg/d
l) およびpre β-lipoproteinの著増をみた.本症は臨床所見および神経放射線学的所見から脳塞栓と考えられたが, 塞栓源となる基礎疾患または病変部位は認められなかった.しかし, トロンボエラストグラムにより凝固能亢進が, ヘパリンテストにより, lipoprotein lipase活性の低下が, それぞれ認められた.従ってE-P剤服用により, 血液凝固, 脂質代謝に著明な変化をきたし, これが本症の脳梗塞発症に強く関与したことが示唆された.E-P剤服用中の脳塞栓の報告はまれで, さらに著明な高脂血症を合併した報告例はない.-EP剤は経口避妊薬と同成分で, 本ホルモン製剤と脳梗塞発症との関連を考察する上で興味深い1例と考えられた.
また, 本ホルモン製剤の使用に際しては, 年齢, その他のrisk factorを考慮して投与し, 経過中の血液凝固, 脂質代謝の異常に十分留意する必要があることを強調した.
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