脳卒中
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8 巻, 3 号
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  • 脳血管障害の危険因子としての意義
    村井 淳志, 宮原 忠夫, 佐古 伊康, 松田 実, 亀山 正邦
    1986 年 8 巻 3 号 p. 177-181
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳梗塞の成因解明のために, ヘマトクリット (Ht) 値が45%以上の高血圧患者の臨床的特徴を調べた.1,768名の外来患者のうち, この診断基準に合致する者は26名で, すべて中年以上の男性で, 赤ら顔の軽度肥満者が多かった.Htは平均48.9%, 白血球数と血小板数は正常範囲内にあった.1例に中等度の, 4例に軽度の脾腫大を認めた. 中等度の脾腫大の1例を除くと, 真性赤血球増加症の可能性はないと考えられた.血清総コレステロール値, トリグリセライド値, 尿酸値は高く, HDLコレステロール値は低かった.血漿レニン活性は正常であった.26例のうち16例もの多数に脳血管障害が認められた.従ってHt値が45%以上と比較的軽症の赤血球増加症を含めても, 高血圧を合併すると脳血管障害を発症しやすいと考えられる.それとともに高脂血症, 低HDL血症, 高尿酸血症など脳血管障害の危険因子を合併することが多い点にも注意する必要がある.
  • 片山 泰朗, 南澤 宏明, 目々澤 肇, 永積 惇, 赫 彰郎
    1986 年 8 巻 3 号 p. 182-189
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    セカンドメッセンジャーであり血小板凝集反応に重要な役割を果していると考えられている血小板cyclic nucleotides (cyclic AMP, cyclic GMP) を脳血栓症, 脳出血の急性期および慢性期において検討した.また, 脳血管障害の基礎疾患である糖尿病についても検討した.
    cyclic AMPは, 脳血栓症では急性期においてコントロール群と比較し特に差異を認めなかったが, 慢性期では低値を示した.脳出血では急性期で高値をとる傾向を示し, 慢性期では低値を示した.糖尿病では有意の低値を示した.他方, cyclic GMPは脳血栓症では, 急性期および慢性期において高値をみた.脳出血においても急性期, 慢性期ともに高値であった.糖尿病ではコントロール群と比し差異を認めなかった.経時的変化の観察にて脳血栓症ではcyclicAMPは急性期にて一定した傾向を認めなかったが, cyclic GMPは高値をとり以後漸減した.脳出血では急性期にてcyclic AMP, cyclic GMPともに高値をとり, 以後漸次低下した.
  • 下手 公一, 小林 祥泰, 岡田 和悟, 山口 修平, 恒松 徳五郎
    1986 年 8 巻 3 号 p. 190-194
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    視床性失語あるいは交叉性失語についての報告は多いが, 右視床病変による交叉性失語例は極めて稀である.我々は, 右視床出血で失語症と身体喪失感を呈した症例を経験したので報告する.
    症例は77歳女性.右利きで, 左利きの素因なし.左片麻痺, 意識障害が突発して入院.傾眠状態で左同名半盲, 上方注視麻痺, 左半身全知覚鈍麻を認め, 左上下肢の身体喪失感も認めた.CTで右視床出血があり, 側脳室穿破を認めた.発症後20日目の標準失語症検査 (SLTA) では混合性失語を認め, 保続, 易疲労性, 発話量と声量の低下を認めた.70日目のSLTAでは, 全般的に中等度改善を認めた.右利きで右視床出血に伴う交叉性失語症は, 本例が始めての症例であり, 貴重な症例と思われる.
  • 長谷川 修, 八鍬 秀之, 宮本 一行
    1986 年 8 巻 3 号 p. 195-199
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    側脳室体中央部側方-放射冠に小梗塞の見られた17例について検討した.CT上多くは直径2cm弱で被殻上部にまで達している.性質を纒めると, (1) 発症から症状完成までに時間を要する例が多い. (2) 危険因子として高血圧, 耐糖能異常を持つ例が多い. (3) 血圧が良好にコントロールされている状態での発症が少なくない. (4) ヘマトクリットは必ずしも上昇していない. (5) 臨床症状は上肢, 特に遠位部に強いpure motor hemiplegiaの形をとる. (6) 内頸動脈siphonから前・中大脳動脈主幹部にかけての硬化所見の目立つ例が多い, となる. (5) は, 大脳皮質の上肢運動野から内包に至る線維がこの部を通っていることに起因するのであろう.その他は, 境界域あるいは終末枝梗塞の性質に該当する.これは中大脳動脈皮質枝と穿通枝の境界域または同穿通枝の終末枝領域の梗塞に相当するため, と考えられる.逆に緩徐進行性の上肢遠位部に強いpure motorhemiplegiaを呈する例ではこの部位の梗塞を考える必要があり, 臨床診断上有用な知見と考える.
  • 術後の脳血行動態の変化
    石井 錬二, 市川 昭道, 竹内 茂和, 田中 隆一
    1986 年 8 巻 3 号 p. 200-207
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    モヤモヤ病に対する血行再建術の効果について, 術後の脳血行動態の変化から検討を加えた.対象は小児例22例, 成人例9例の計31例である.これらに55回の血行再建術 (主としてencephalo-myo-synangiosis) と計105回の133Xe吸入法によるrCBF測定を行った.
    術前の平均脳血流量 (mCBF) は大部分の小児例で低値を示し, rCBF分布も前頭上部を中心に低値を示す例が大部分であった.術後小児例では大多数は術後にmCBFの増加傾向を示し, 前頭部低値の傾向も半数以上の症例で改善した.一方, 成人例ではmCBFおよびrCBF分布異常の変化はほとんど認められなかった.CO2反応性は過換気により全域で著明なrCBF減少がみられたが, CO2吸入では増加はわずかで, steal現象による局所的な血流低下を示す例もみられた.術後これらのCO2反応性の異常が改善する症例も認められた.以上, モヤモヤ病に対する血行再建術は脳血行動態の観点からも脳血流増加を図る手段として意義があることを明らかにした.特に, 小児例において有効であった.
  • 斉藤 晃, 中洲 庸子, 北野 浩之, 原 靖, 半田 譲二
    1986 年 8 巻 3 号 p. 208-212
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    くも膜下出血以外の疾患で開頭術を行なった12例, 開頭術を行なわなかった9例を対照として, 脳動脈瘤急性期手術例, 脳梗塞急性期例の血漿中, 髄液中β-エンドルフィンの変動を検討した.
    開頭術自身は術後急性期の血漿中, 髄液中βエンドルフィン値に有意の変化を来さない.脳動脈瘤急性期手術例でも, 攣縮による虚血症状の有無に拘らずβ-エンドルフィン値の有意の変化はみられず, 急性期脳梗塞例も同様であった.
  • 松村 憲一, 松田 昌之, 木戸岡 実, 高山 昌奎, 半田 譲二
    1986 年 8 巻 3 号 p. 213-218
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    クモ膜下出血で発病した68歳の女性で脳血管撮影上2コ, 手術所見では3コの前大脳動脈瘤とazygos anterior cerebral arteryをみとめ, 手術で出血が実際は動脈瘤破裂によるものではなく前頭葉内側面の脳内海綿状血管腫の破裂によるものであることを確認した.このような合併例は未だ報告されていないので簡潔に報告し, その意義について考察を加えた.
  • 第2報 Multimodality evoked potentials (MEPs) による観察
    重森 稔, 弓削 龍雄, 川崎 建作, 中島 裕典, 倉本 進賢
    1986 年 8 巻 3 号 p. 219-223
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    高血圧性基底核部出血36症例を入院時のCT所見から4群に大別し, multimodality evoked potentials (MEPs) を指標として血腫の進展度と脳機能障害の関係, さらにその可逆性につき検討した.CT上血腫が内包前脚までに止る症例の71.4%では, MEPsの異常は軽度で機能的予後も良好であった.しかし, 他の28.6%ではSEPの異常度が強く機能的予後も不良であった.血腫が内包後脚に及ぶ場合, 50%の症例がSEPに高度の異常を伴いVEPやABRにも異常がみられ機能的予後は不良であった.さらに血腫が大きく内包の前後脚, 間脳へ進展する場合には, MEPsいずれにもより高度の異常がみられ, 上位脳幹, 半球性にも高度の障害が出現すると考えられた.なお, 血腫の脳室内穿破の有無とMEPsの異常度との間には明らかな関連はみられなかった.本症ではCTとともにMEPs所見を分析することにより, 脳機能の障害度やその可逆性の判定がある程度可能であり, 治療方針の決定上有益である.
  • 川上 明男, 渥美 哲至, 宮武 正, 宮谷 信行
    1986 年 8 巻 3 号 p. 224-230
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    共に60歳以上の慢性期脳梗塞患者45例と対照15例について, Ht, 血液・血漿粘度, 血圧を午前10時, 16時, 22時, 翌午前4時に測定し日内変動を比較検討した.Htと血液粘度は両群とも22時に最小, 午前10時に最大となる日内変動が認められた.そこで22時を基準とした午前10時のHt変動率, 血液粘度変動率を算出すると, 脳梗塞群は対照群に比して, 両変動率が有意に大きかった.また脳梗塞群のうち穿通枝梗塞群 (19例) は皮質枝梗塞群 (18例) に比して, 上記Ht変動率が有意に大きかった.さらに脳梗塞群のなかで, 上記Ht・血液粘度変動率の明らかに大きい群では複数回の脳卒中発作歴, CT上多発性低吸収域所見を認める者が多かった.血圧については明らかな日内変動を認めなかった.Ht, 血液粘度の絶対値が大きいことのみならず, 日周リズムに起因する夜半から午前中にかけての相対的Ht, 血液粘度増加も脳梗塞発症に関係があるように思われる.
  • 矢野 隆, 〓川 哲二, 上家 和子, 小笠原 英敬
    1986 年 8 巻 3 号 p. 231-236
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    242例の破裂脳動脈瘤患者を70歳以上 (A), 65~69歳 (B), 60~64歳 (C), 59歳以下 (D) の4群に分け, 特に70歳以上の高齢者破裂脳動脈瘤患者を中心に検討した.A群の特徴を知る目的で, 入院時clinical grade, computed tomography (CT) 所見, 破裂部位, 合併症, 手術時期, 非手術例のその理由と予後, を各群間で対比した.その結果, (1) A群では入院時重症例 (Hunt & Kosnikのgrade IV, V : 57%) が多く, 合併症も高率であった.CT上のクモ膜下出血 (subarachnoid hemorrhage, SAH) gradeは年齢による差は認めなかったが, A群で水頭症の合併が26%と高かった. (2) 破裂部位では, A群に内頚動脈領域が35%と多かった. (3) day2までの早期手術群ではA群に予後不良例が多かったが, day3以降の手術群では年齢による差は認めなかった. (4) 非手術の理由として, A群の高齢19%, D群の再破裂24%が他群に比し多かった.以上より, 高齢者の手術適応を考慮する場合などにも, より慎重な考慮が必要であると思われた.
  • 小林 祥泰, 山口 修平, 木谷 光博, 岡田 和悟, 有元 佐多雄
    1986 年 8 巻 3 号 p. 237-242
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    我々は脳の老化における個人差の一つの要因として, 社会的環境因子が重要であることを報告してきた.今回は前回脳血流を測定した健常老人のうち, 脳の老化が地域在住老人に比し進行していた老人ホーム在住老人20名について脳血流と知的機能の2年6ヵ月の経年変化を検討した.その結果, 全脳平均脳血流は有意な変化を示さず, 脳血流における加齢性変化は少なくともこの間には認められなかった.動作性知能に関しても明らかな低下は認められなかったが脳血流の低下した群では低下傾向がみられた.一方, 言語性知能は平均7.5%と軽度ではあるが有意な低下を示したが, 脳血流の変化率や年齢との間に相関はなかった.脳血流に関連したparameterには変化は認められず, 一般身体所見にも変化はみられなかった.老人ホームにおいても, 健常で日常生活の活動性を維持している限り, 2年6ヵ月程度の短期間では脳血流の加齢性減少は少ないことが示唆された.
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