脳卒中
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9 巻, 1 号
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  • 小林 逸郎, 内山 真一郎, 佐藤 玲子, 長山 隆, 丸山 勝一
    1987 年 9 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    Lumi-aggregometerを用いて血小板より放出されるATP量を求め, 虚血性脳血管障害におけるATP放出能と凝集能との関係ならびに抗血小板剤の効果について検討した.抗血小板剤未投与の脳血栓症, TIAのATP放出量はそれぞれ3.88±2.24μM, 4.97±4.11μMであった.最大凝集率 (M%) はそれぞれ66.3±11.1%, 77.1±11.6%, 最大凝集までの時間 (Tm) はそれぞれ288.5±86.9sec, 301.8±78.8sec, 解離率 (D%) はそれぞれ, 6.2±11.5%, 3.4±5.1%であった.これらの値は, 健康成人ならびにASA (0.3~0.7g/日), ticlopidine100mg/日または200mg/日の治療群と比べ有意 (p<0.01~0.05) に高い値 (ATP放出量, M%) および低い値 (D%) を示した.脳血管障害におけるATP放出能の充進は血小板がATPを放出しやすい病態が考えられ, 凝集能充進との関連を考慮すると血栓傾向を示唆する所見と考えられた.
  • 黒木 副武, 北浜 正, 宮崎 徳蔵, 永積 惇, 赫 彰郎
    1987 年 9 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    脳卒中患者の脳循環動態を知ることは病態把握や機能予後判定に重要である.我々は動注DSAにて頭蓋平均循環時間 (t), 部分循環時間 (tp) を算出し, 日常生活動作との関連を検討した.対象は中大脳動脈梗塞患者84名で病側, 非病側のt, tpを測定した.測定時期は脳卒中発症より1Mo前後とし, 測定装置は東芝Digiformer Xである.CT scanによる低吸収域が大なるほどtは延長したがtpでは差を認めず, 病側が非病側よりt, tpとも延長していた.正常群のtは4.32±0.45秒であり, 梗塞群は全群6.0秒以上だった.ADLでは, 予後良好群ほどtは短い傾向を示したがtpでは差を認めなかった.不良群では全群, tは6.0秒<で, 6秒が臨床上又CTscanによる梗塞分類の境界値として有用と考えられた.動注DSAは画像と同時に血流動態等の循環パラメーター算出が可能である.
  • 脳血管閉塞レベルと脳循環動態
    金子 尚二, 澤田 徹, 栗山 良紘, 成冨 博章, 菊池 晴彦
    1987 年 9 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳血管非閉塞例 (N=24, N群), 頭蓋外脳血管閉塞例 (N=17, E群) および中大脳動脈閉塞例 (N=11, M群) において, 慢性期に降圧目標を決定する目的で脳血流-血圧関係曲線を測定し, 以下の結論を得た.1) 降圧許容range (降圧前血圧値-脳循環自動調節能血圧下限値, mmHg) は血管病変が頚部, 更には頭蓋内と上昇するに従ってそれぞれ21.2, 16.9および12.0mmHgと狭くなり, N群とM群との間には有意差が認められた.2) 降圧前平均動脈血圧値に対する血圧下限値の割合をみるとそれぞれ82.7, 85.3および88.7%に位置していた.3) M群では, 脳循環のdysautoregulation patternが高頻度 (45%) に認められた.
    以上より, 脳血管非閉塞例における急性降圧は, 平均動脈血圧の80%までが妥当であり, 中大脳動脈閉塞例においてはその90%が限度と考えられた.
  • 岡田 知久, 木田 義久
    1987 年 9 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    慢性硬膜下血腫除去術施行後比較的早期に脳内出血が認められた2症例を経験した.
    症例1 : 64歳男性, 局所麻酔下にて慢性硬膜下血腫を穿頭にて除去し洗浄していたところ突然脳表が盛り上がり, CTにて同側の皮質下出血が認められた.症例2 : 85歳女性, 穿頭にて硬膜下血腫除去後17時間後のCTにて手術と反対側の側頭-頭頂葉皮質下に小出血が認められ25時間後には大出血となり昏睡状態となった.
    同様な症例を文献的に検索し合わせて要約検討した.この合併症の発生機序は明らかではないが, 慢性的に圧排されていた脳が急に除圧される事や術中および術後の血圧の上昇が局所の脳血流を増加させ, 慢性的な圧排により脆弱化していた皮質下の血管が破錠し生じるものと思われた.
  • 高血圧持続に伴う脳血管反応性の変化
    金子 尚二
    1987 年 9 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    慢性期脳血管障害例で脳血管写上, 中大脳動脈閉塞 (M群) 14例と非閉塞 (N群) の31例の全45例において脳血管CO2反応性 (CO2反応性) と高血圧に伴う臓器障害程度の関係を検討した.安静時脳血流量 (CBF) はArgon法で測定し, かつ, 3分間の過換気, 3%, 5%および7%CO2吸入によるCBF変化率を脳動静脈酸素含量較差より求めた.CO2反応性はCBFPaCO2関係曲線, すなわちIn CBF=K×PaCO2+AにおけるK値をもって算出した.高血圧に伴う臓器障害程度は池田らの重症度分類に従った.
    1) N群では, K値と高血圧重症度との間に極めて有意な負の相関関係を認めたが (r=-0.86, p<0.001), M群では明らかではなかった.
    2) N群では, K値と脳血管抵抗との間に有意な負の相関関係が認められた (r=-0.46, P<0.01).
    以上より, N群におけるCO2反応性の低下は, 高血圧持続にもとずく細動脈硬化を反映していると考えられる.しかし, M群におけるCO2反応性には, 更に副血行の良否, 血管床あるいはvascular toneの変化等の病態生理学的諸因子により修飾されている可能性がある.
  • 続木 陽子, 後藤 文男, 厚東 篤生, 鈴木 則宏, 千田 龍吉
    1987 年 9 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    実験的クモ膜下出血 (SAH) において脳血管壁自律神経終末内のvesicleの経時的変化を検討した.猫15匹にpentobarbita1麻酔下で大槽内に新鮮自家血2ml注入, 6時間, 1週間, 2週間後, 各5匹ずつに5-hydroxydopamineを静注した後glutaraldehydeで潅流固定し, 中大脳動脈及び椎骨動脈より切片を採取, 電顕標本を作成した.電顕写真上神経終末内のdensecored vesicle及びclear vesicleの最大径を無作為に各猫につき100個ずつ画像解析装置で測定した.対照群として15匹にsham operationを施行し, 同様の各時点で測定を行った.SAH群のvesicle径は対照群に比しいずれの時点でも有意に小であり, 特に6時間, 2週間後で変化が大であった.このことよりSAHは脳血管壁自律神経終末に影響を及ぼし, 神経性因子が脳血管李縮を始めとするSAH後の病態に関与することが示唆された.
  • 阿美古 征生, 青木 秀夫, 井上 信一, 岡村 知実
    1987 年 9 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    播種性紅斑性狼瘡 (以下SLE) に破裂脳動脈瘤を合併し, 手術的に治癒せしめた1例を報告した.本例は47歳の主婦で35歳の頃より, SLEの診断で, 本院第3内科で治療中であったが, 2回のクモ膜下出血をきたし, 脳血管撮影において, 左前犬脳動脈末梢部にのう状動脈瘤を認めた.入院時, SLEという重篤な基礎疾患に意識障害を伴っていたので, 待期手術とし, 意識障害の改善を待って脳動脈瘤のクリッピングを行った.術後経過良好で, 合併症もなく術後3週間で退院した.いままでに, SLEに脳動脈瘤を合併した報告は非常に少なく, かつ脳動脈瘤の根治手術を行った症例は本例が最初のようである.従来の報告では, SLEに合併した脳動脈瘤は多発性で紡錘状を呈すと報告されているが, 我々の症例は単発性でのう状動脈瘤であった.脳動脈瘤の発生とSLEとの関係について文献的考察を加え報告した.
  • (1) 血液粘度, ヘマトクリット測定による赤血球変形能算定の試み
    田代 幹雄
    1987 年 9 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    全血粘度 (WBV) からHtと血漿粘度 (PV) の関与分を除けば赤血球変形能の間接的な算定が可能であると考えられる.健常者40例, 脳梗塞17例について, HtとPVをそれぞれ別個に変動させた場合のWBVを3回ずつ測定し, 次の結果を得た.1) Ht相対粘度 (WBV/PV) 指数曲線よりのずれの割合は, 赤血球変形能の1つの指標と考えられた [% (WBV/PV)].2) 血漿を生食で2段階に稀釈すると, WBVは直線的に低下した (Ht一定).Ht-WBV指数曲線よりのずれの割合を%WBVとすると, PVと%WBVとの間には有意の直線関係があり, この直線よりのずれも赤血球変形能の指標と考えられた (RD-index).3) WBVに対する寄与率を重回帰分析により両群で算出すると, Ht+PV+% (WBV/PV), Ht+PV+RD-indexはともにほぼ100%であった.4) 2つの赤血球変形能の指標は有意の直線関係にあった.5) MCHCが高いほどRD-indexは不良であった.以上の結果から, 2つの赤血球変形能の指標は妥当であり, 臨床に十分適用出来ると考えられた.
  • (2) 臨床応用
    田代 幹雄
    1987 年 9 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    血栓性脳梗塞243例 [穿通枝系 (Tp群) 91例, 皮質枝系 (Tc群) 152例], 脳塞栓 (E群) 82例について, Ht, 全血粘度, 血漿粘度, 間接的な赤血球変形能 (RD-index) を測定し, 健常群 (C群) 40例と比較した.さらにTcおよびE群のうち主幹動脈閉塞群だけについて, 側副血行の良否と血液レオロジー的因子との関係についても検討した.1) HtはTp, Tc群ともに60歳未満で発症第7病日以内の群だけがC群より高かった.RD-indexはTp群だけが不良であった.2) Tc群主幹動脈閉塞で側副血行不良の群では, 第7病日以内のHtが有意に高値であり, 特に中大脳動脈主幹部閉塞でこの傾向は大であった.それに比べ, 側副血行良好群およびE群の主幹動脈閉塞群 (全例側副血行不良) は, 血漿粘度以外はC群と差がなかった.以上の結果から, 病型ではTp, Tc, E群, 年齢では60歳未満, 60歳以上の順で血液レオロジー的因子の関与が大きく, また逆行性の皮質枝間吻合の側副血行の良否にもこれらの因子が関与することが示唆された.
  • 症例報告と文献的考察
    宮城 潤, 山本 文人, 重森 稔, 倉本 進賢, 白水 徹
    1987 年 9 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳動脈瘤がthromboembolic oniginとなり, 虚血性症候で発症することは比較的少ない.特に, 椎骨脳底動脈系の紡錘状動脈瘤が原因で, 当該領域の虚血性障害を生じることは極めて稀であり, 未だ5例の報告例をみるにすぎない.最近, 著者らは小脳梗塞で発症した後下小脳動脈の紡錘状動脈瘤の1手術例を経験した.本症例では神経放射線学的所見および手術所見から, 本動脈瘤が小脳梗塞のthromboembolic sourceと考えられた.そこで, 症例を呈示し, 特に外科的治療上の問題点を中心に文献的考察を加え報告した.
  • -4手術例と2保存例の検討より-
    北見 公一, 土田 博美, 相馬 勤, 浜島 泉, 竹田 保
    1987 年 9 巻 1 号 p. 68-77
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    後頭下開頭による血腫除去術を施行した橋出血の4症例と, 保存例で軽症および重症各1例ずつの諸検査結果を比較し, 橋出血に対する手術適応について検討した.急性期手術例 (3例) は全例術前の意識障害が強く, 呼吸状態も不安定だったが, 術後呼吸状態は全例改善し, 2例で意識の改善がみられた.亜急性期の1例では, 術後意識の著明な改善がみられた.保存例の重症例は脳幹死にいたり, 軽症例は意識清明となったが, 機能的回復は満足のいくものではなかった. (結論) 手術適応と考えられるのは, 聴性脳幹反応 (ABR) での悪化傾向や, CTで血腫増大がみられ, 脳室ドレナージのみでは2次性脳幹損傷を防ぎ切れないと判断される場合 (救命的適応), または少なくとも片側のABRが正常で, 意識の改善傾向がみられる場合 (機能的適応) 等が挙げられる.術式に関しては急性期には減圧も兼ねた後頭下開頭がより確実と考えられる.手術時期の決定や適応の選択にはABRと頭蓋内圧測定が非常に有用と考えられた.
  • 藤本 直規, 宮原 忠夫, 村井 淳志, 塩 栄夫, 亀山 正邦
    1987 年 9 巻 1 号 p. 78-84
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    慢性期脳梗塞患者において, 血漿, 赤血球, 血小板の脂肪酸を測定し, 動脈硬化および血小板凝集能との関係を検討した.対象は, 皮質枝型脳梗塞 (CI-C) 群30名 (平均年齢59.3±9.3歳) 穿通枝型脳梗塞 (CLP) 群19名 (平均年齢61.4±8.5歳), 健常者群20名 (平均年齢58.2±11.2歳である.血漿および赤血球膜の脂肪酸組成では, CI-C, CI-Pの両群で, パルミチン酸の割合が高く, リノール酸が低値を示した.脳梗塞の両群のうち, CLC群にのみ, 頚部動脈や脳内主幹動脈の動脈硬化が強い理由としては, これら脂肪酸組成の異常に加えて, HDLコレステロールが低値であることが考えられた.又, 血漿および赤血球膜中のエイコサペンタエン酸は, 3群間で差がなかった.一方CI-P群に多くみられる凝集性が充進した血小板では, アラキドン酸 (C20 : 4) が低値を示した.このC20 : 4の低下は, 血小板膜の流動性を低下させることによって, 血小板機能に影響を与えている可能性がある.
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