長期にわたる喫煙の脳血流に及ぼす影響について, 地域健診対象男性67名を対象として検討した.対象を若年喫煙群15名, 同非喫煙群14名, 高年喫煙群16名, 同非喫煙群22名の4群に分けた.各群において,
133Xe吸入法で測定した脳血流量と呼吸機能, PeCO
2, ヘマトクリット (Ht), 血清脂質, 血圧などを比較検討した.各群の脳血流量は, 若年者では, 喫煙群67.7±16.3m
l/100g/min, 非喫煙群70.6±9.6m
l/100g/minと両群間に差がなかったが, 高年者では, 喫煙群53.1±9.6m
l/100g/min, 非喫煙群61.3±12.4m
l/100g/minと, 喫煙群が有意に低値であった (p<0.02).各群の呼吸機能の比較では, V
50, PeCO
2が喫煙群が非喫煙群に比し, 若年群高年群とも有意に低下していた.しかし, Ht, アンチトロンビンIII (ATIII), 総コレステロール (T-CHO), HDLコレステロール (HDL-C) および血圧においては, 喫煙群と非喫煙群との間に差がみられなかった.また, 脳血流量とPeCO
2は有意の正相関 (p<0.001) を示した.
長期の喫煙は脳血流を減少させるということは, 諸家の報告と一致するが, 今回の我々の検討では, その原因として, 脳動脈硬化促進というよりは, 喫煙による潜在性のsmall airwayの障害から, PCO
2低下が出現し, 脳血管収縮, 脳血流低下が生ずる可能性が考えられた.
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