脳卒中
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9 巻, 4 号
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  • 酒井 英光, 田辺 貴丸, 遠藤 昌孝, 森井 誠二, 宮坂 佳男
    1987 年 9 巻 4 号 p. 283-290
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    赤血球破壊産物溶液誘発による脳底動脈攣縮モデルを作成し, アルブミン大量投与がvasospasm時の攣縮血管およびrCBFに与える影響につき実験的検討を行なった.
    vasospasmモデルを作成し, 生理的食塩水を投与した群では, 脳底動脈は全般性に収縮し, 視床のrCBFは低下した.これに対して, vasospasmモデルを作成し, アルブミンを投与した群では, 脳底動脈径は生理的食塩水投与群と同程度に収縮したが, 視床のrCBFは明らかに増1加し, この間の全身循環動態は著明なhyperdynamic stateとなった。また, vasospasmを作成せず, アルブミンを投与した群では, vasospasmを作成し, アルブミンを投与した群と比し, 全身循環動態の変化は同程度であったが, 視床のrCBFの増加程度は有意に著明であった.
    以上の結果より次のことが明らかとなった.アルブミン大量投与は攣縮血管の拡張作用はないが.vasosDasmによる血管径減少時にもrCBFを増加させることが可能である.
  • 片山 泰朗, 杉本 繁, 鈴木 悟, 清水 純, 赫 彰郎
    1987 年 9 巻 4 号 p. 291-297
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    高血圧自然発症ラット (SHR) を使用して両側総頚動脈結紮法 (BLCL) により脳虚血を作成し, SHRに存在する高血圧の降圧治療を行い, その影響につき, 脳循環代謝・脳浮腫を検討した.降圧治療はレセルピンの腹腔内投与により行った.後頭部深部での脳循環は降圧後の降下血圧と正の相関を示した.脳代謝では前頭部においてはATP, lactate, c-AMPとも降圧治療群および非治療群との間に差異を認めなかった.後頭部においては, 降圧群ではATPは低値を, lactateは高値を示した.c-AMPは差異を示さなかった.ATP, lactate値は降圧後の血圧値とそれぞれ正および負の相関を示した.脳含水量は前頭部, 後頭部ともに降圧群で有意の高値を示し, 降圧後の血圧値と負の相関を示した.降圧治療は虚血の強い前頭部では脳浮腫を増強させ, 虚血程度の比較的軽度な後頭部では, 降圧後の血圧値に一致して脳循環代謝障害および脳浮腫を増悪させた.
  • 発生成因について
    三上 貴司, 吉本 尚規, 太田 桂二, 武智 昭彦, 魚住 徹
    1987 年 9 巻 4 号 p. 298-303
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    後頭蓋窩硬膜動静脈奇形の成因については先天性説と後天性説があり意見の一致をみていない.我々は多発性脳動脈瘤を合併した後頭蓋窩硬膜動静脈奇形の1例を経験した.症例は76歳女子で激しい頭痛, 嘔吐で発症し, CT scanで脳室内穿破を伴うクモ膜下出血と診断された.脳血管写では前交通動脈瘤と左中大脳動脈瘤が, また左後頭動脈硬膜枝を流入動脈とし左横静脈洞, S字状静脈洞を流出静脈とする後頭蓋窩硬膜動静脈奇形が発見された.本例の後頭蓋窩硬膜動静脈奇形は, 多発性脳動脈瘤の合併という点からは先天性の発生が示唆されるが, 脳動脈瘤の破裂により偶然に高齢で発見されるまで無徴候で, また流出静脈である左横静脈洞, S字状静脈洞に静脈洞血栓症による壁の不整と狭窄がみられた点からは後天性の発生が示唆された.本症例を基に後頭蓋窩硬膜動静脈奇形の成因について文献的考察を加え, 我々の仮説を報告した.
  • 小笠原 英敬, 〓川 哲二, 山本 光生, 上家 和子, 矢野 隆
    1987 年 9 巻 4 号 p. 304-310
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    島根県立中央病院脳神経外科において経験した破裂末梢性前大脳動脈瘤18例を, 発生部位によって, (A) 前交通動脈分岐部から脳梁膝部の間, (B) 脳梁膝部周囲, (C) 脳梁体部の3群に分類し, 発生頻度, 臨床像, 神経放射線学的所見, 予後などについて比較検討した.本動脈瘤の発生部位は, (B) 群に72%と集中していた.入院時gradeIV, Vは, (A) 群0%, (B) 群31%, (C) 群100%であった.臨床症状は, 意識障害が (A) 群0%, (B) 群62%, (C)群100%で, 運動麻痺は (A) 群0%, (B) 群46%, (C) 群67%であった.CT上クモ膜下出血の程度は3群間で差はなかったが, 脳内血腫合併例は (A) 群0%, (B) 群46%, (C) 群100%であった.予後は非手術群では3群間に差はなく, いずれも不良であったが, 手術群では (A), (B) 群に比べ (C) 群は良好とはいえなかった.すなわち本動脈瘤は, 発生部位が末梢になるほど脳内血腫の合併率が高くなり, これによって臨床像, 予後ともに不良となる傾向がみられた.
  • 紀田 康雄, 澤田 徹, 成冨 博章, 栗山 良紘, 山口 武典
    1987 年 9 巻 4 号 p. 311-316
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    血栓性内頚動脈閉塞症で急性期に入院した67例を, 副血行路がウイルス輪を介する順行性副血行路群 : A群31例と, 外頚動脈枝や皮質枝吻合を介する逆行性副血行路群 : R群36例に分け, 入院時のヘマトクリット (Ht) が梗塞サイズや予後に及ぼす影響について検討した.A群ではHtと梗塞サイズ, 予後の間にはr=0.19で相関はなかった.一方R群ではHtと梗塞サイズの間にはr=0.41で有意な正の相関を認めた (p<0.05).また退院時のADLと入院時Htの関係を見るとA群では両者の間に関係はなかったが, R群ではHtが高い者では予後不良例の頻度が高かった.以上の結果は, 内頚動脈閉塞症の中でも副血行路が細動脈吻合を介する逆行性副血行路の場合は, ウイルス輪を介する順行性副血行路に比べその転機が急性期の血液粘度に, より影響を受け易い事を示している.副血行路の違いにより, この様な差が生じた背景には逆行性副血行路では血流が抵抗血管を一度余分に通過するため順行性副血行路に比べ末梢での流速低下が大きい事, また血流の走行距離も逆行性副血行路では迂遠である事などが挙げられる.この結果逆行性副血行路では, 末梢血管内のshear rateの低下が大きくなり血液粘度の影響をより強く受けたものと考えられた.
  • 数井 誠司, 澤田 徹, 栗山 良紘, 金子 尚二, 山口 武典
    1987 年 9 巻 4 号 p. 317-324
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    前大脳動脈 (ACA) 領域にのみ限局する脳梗塞例を臨床的に比較検討した. (1) ACA領域の限局性梗塞例の発生頻度は全脳梗塞例の約0.55%で, 極めて少ない. (2) 成因は血栓症が多く, 血管造影上, 頚部頚動脈病変よりも脳内血管の動脈硬化の関与が大きい. (3) 臨床的特徴としては, 下肢に強い片麻痺, 精神症状および発症時の無言の出現頻度が高い.機能予後は良好である. (4) 膨大部を除く広範な脳梁損傷を有する左側病変の症例に離断症候群が認められ, 脳梁の広範な病変が重要な役割を果たしていることが示唆される. (5) 急性期の神経症状発現には, ACAの閉塞に起因し脳内血流の再分配に伴う機能異常などが関与している可能性が示唆される.
  • 局所脳血流量, 聴性脳幹反応と脳波の経時的変化
    宇野 淳二, 桑原 敏, 松本 茂男, 安東 誠一, 石川 進
    1987 年 9 巻 4 号 p. 325-333
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    犬で両側の後大脳動脈の穿通枝を閉塞すると, 上部脳幹に限局した一定範囲の梗塞巣が極めて高率に生じる.このモデルを用い, 脳幹の虚血巣及び周辺部の局所脳血流量 (rCBF), 聴性脳幹反応 (BAEP) と脳波 (EEG) を閉塞後6時間まで記録した.閉塞後rCBFは有意に減少し, 6時間後には虚血の中心部で52.5±13.3m1/100g/minより8.4±2.5m1に, 周辺部では約58m1/1009/minより約20m1に低下した.脳幹において梗塞に陥る血流閾値は13m1/100g/min前後と考えられた.BAEPは高度の意識障害にかかわらず変化に乏しかった.このモデルにおけるような中脳腹側から労正中部にかかる虚血病巣はBAEPで捉えることは困難である.EEGは9頭中7頭で低電位速波を示した.臨床におけるいわゆるβ-comaの所見と一致しており, 中脳被蓋において脳幹網様体を含む限局した病巣が関与していると思われる.
  • 金子 尚二, 澤田 徹, 栗山 良紘, 鳴尾 好人, 菊地 晴彦
    1987 年 9 巻 4 号 p. 334-339
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    10例の高血圧性脳出血例において, 亜急性期にみられるCT上の脳浮腫と造影効果発現機序との関連性を知る目的で, 同部の循環動態を非放射性Xenonを用いた局所脳血流量およびnon-diffusible tracerであるヨード剤を使用したdynamic CT scan, enhanced CT scanを併用し多変量で検討し, 以下の結論を得た.すなわち, 1) 脳出血亜急性期に見られる造影効果はearly enhancementと 1ate enhancementの二峰性を示す.2) early enhancementには造影剤の血管外漏出が関係し, 脳浮腫増悪時期に一致している.3) late enhancementには血管床容積の増加が関係している.
    更に, 本法における方法論の妥当性ならびに問題点も含め考察を加えた.
  • 柴田 尚武, 福嶋 政昭, 陣内 敬文, 森 和夫
    1987 年 9 巻 4 号 p. 340-347
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    虚血巣周辺部で壊死に落ち入らず機能を保持している毛細血管内皮細胞においては, 細胞膜が動的に変形しながら高分子物質を細胞の外から内へ, あるいは内から外へ輸送する膜動輸送すなわちvesicular transportの充進が起こるが, tight junctionの開放は起こり得ないと考えられた.ついで漏出した浮腫液は病巣部皮質から白質神経線維に沿って広がり, 側脳室上衣下層に流れ込む.移行経路に存在する神経細胞やグリア細胞内への浮腫液の取り込みも明らかに見られる.次いで浮腫液は上衣下層-上衣接着帯-脳室内と, 上衣下層有窓毛細血管一脈絡叢静脈-内大脳静脈の2つのルートを通って吸収されると考えられた.
  • 岩本 俊彦, 兵頭 明夫, 富樫 修, 石原 直毅
    1987 年 9 巻 4 号 p. 348-353
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    脳塞栓症で右中大脳動脈 (MCA) 穿通枝領域に著明なcapillary blushを認めた1例を報告する.症例は心房細動を有する57歳男性で, 左不全片麻痺を主訴として入院した.CTにて右基底核部を中心に比較的大きな低吸収域を認め, 臨床的に心由来の脳塞栓症が考えられた.発症12時間後に施行した脳血管撮影では, MCA分枝閉塞とその後方部分への皮質枝吻合を介する側副血行を認め, また動脈相で基底核部に著明なcapillary blushと視床線条体静脈・Rosenthal静脈の早期出現を認めた.後者の所見は第8病日でもみられたが, 臨床症状はこの時までに徐々に改善した.第33病日の血管撮影, CT所見ではほとんど異常を認めなかった.以上からMCA水平部の再開通が早期に起こったため, 穿通枝領域の虚血が軽かったことを示し, capillary blushの出現は, この領域で壊死や強い浮腫を生ずることなく, 血管系が一時的な機能障害に陥ったと考えられる所見であった.
  • LDL組成とLDLサイズの意義
    福沢 恒利
    1987 年 9 巻 4 号 p. 354-370
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳血管障害を頭部CTスキャン像により皮質枝梗塞 (IC), 穿通枝梗塞 (IP), 脳出血 (H) の三群に分け, 各々の血清脂質, リポ蛋白, アポ蛋白の異常を検討するとともに, LDLサイズを測定し, 三群間でのサイズの特徴について比較検討した.脳血管障害群は共通して, コントロール群に比べてHDL系の指標が有意に低く, VLDL系の指標が高値を示した。また脳血管障害を, IC, IP, Hの三群に分けて群間で比較すると, IC群では, 他の二群およびコントロール群に比べてLDL系の指標が高く, 逆にH群ではもっとも低値であった.また, LDLサイズは, H, コントロール, IP, ICの順に大きくなり, IC群ではコレステロールとアポB含量の多い大きなLDLが, H群では両者の少ない小さなLDLが, IP群とコントロール群では, その中間サイズのLDLがみとめられ, 三群の識別においてLDLサイズは重要な指標であることがみとめられた.
  • 山本 昌昭, 神保 実, 井出 光信, 河西 徹, 田中 典子
    1987 年 9 巻 4 号 p. 371-373
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    臨床所見より再出血であることが確認された脳動脈瘤15例を検討した.このうち手術が行われたのは12例で (3例は状態が悪く手術されることなく死亡), これを再出血後24時間以内の超早期に手術された7例 (術前grade III 1例, IV 4例, V 2例) と, それ以後に手術された5例 (同様にIII 3例, IV 2例) とに分けて転帰を比較した.その結果, 後者ではgoodは1例に過ぎず, fair 2例, moderateとdead各1例であった.これに対し前者では, 脳内血腫を伴っていた2例がpoor, deadであった以外, 他の5例はいずれもgoodであった.このことから, 脳動脈瘤再出血例において, gradeIV以上であれば超早期手術により良好な結果が期待できると考えた.
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