脳卒中
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9 巻, 5 号
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  • 長谷川 修, 宮本 一行
    1987 年 9 巻 5 号 p. 385-391
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    両肺に動静脈痩を持つ36歳の女性に突然脳底動脈閉塞症が起こった.肺内シャントを通しての右心系血栓の移動によるものと考えられる.当初意識障害に伴って左側に強い四肢麻痺, 縮瞳, paralytic pontine exotropiaの状態となり, 右外転・顔面神経も障害されていた.意識回復期に一過性に非定型的ocular bobbingが出現した.右側優位の橋下部病巣によると思われる症状は次第に回復し, 食事・排泄動作自立, 車椅子生活で発症1年後に退院した.6年前の分娩後より側頭葉梗塞のため既に純粋語聾状態であったが, 今回仮性球麻痺等が加わり, 音声言語による意思疎通は全くできなくなってしまった.脳血管造影上, 上小脳動脈分岐部の直下での閉塞であったが, 経過を追って椎骨・脳底動脈径が細くなるとともに, 内頚動脈支配領域が増大し, 閉塞に伴う代償作用と考えられた.
  • 福井 啓二, 貞本 和彦, 榊 三郎
    1987 年 9 巻 5 号 p. 392-396
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    高血圧性の脳内出血を繰り返した大動脈炎症候群の1例を経験した.症例は小脳出血の既往を有する63歳の女性.頭痛・言語障害・嘔吐を主訴として来院, X線CTにて右側頭葉皮質下出血と診断した.脳血管写上, 出血の原因となりそうな病変は見出せず, 高血圧症を合併していることより, 大脳基底核部に次ぐ高血圧性脳内出血の好発部位である小脳, 皮質下への出血を繰り返したものと考えた.
    大動脈炎症候群の頭蓋内合併症は, 文献上, 出血性病変に比べて, 虚血性病変の報告が多い.しかしながら, 大動脈炎症候群では高血圧症を合併する事が多く, 脳出血が死因になることは決して稀ではない.従って, 脳乏血症状に十分注意を払いながら, 血圧を適切にコントロールすることが重要と考えられる.
  • 末吉 建治, 岡崎 裕, 鎌谷 利紀, 金子 尚二, 栗山 良紘
    1987 年 9 巻 5 号 p. 397-402
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    CO2変化時の脳血管反応性を経頭蓋超音波ドプラ法による中大脳動脈血流速 (MCAV) 測定ならびにアルゴン法による脳血流量測定の両者で計測しその比較検討をおこなった.過呼吸, 3%, 5%, 7%CO2吸入による25.0mmHgから51.7mmHgまでのPaCO2変動に対しMCAVは34.5cm/sec.から96.8cm/sec., CBFは27.3ml/100g/min.から86.2ml/100g/min.まで変化した.MCAV測定による脳血管反応性は0.0391±0.0062 (Mean±S.D.) でありCBF測定から算出した脳血管反応性は0.0406±0.0060であり両者間には有意の正相関が成立した (r=0.890, p<<0.001).経頭蓋超音波ドプラ法による中大脳動脈血流速測定は操作が簡便, 非侵襲的であるのみならず急激な脳血流の変化に対し良好に追従し脳血管反応性の評価に適した検査法と結論した.
  • 国塩 勝三, 山本 良裕, 角南 典生, 山本 祐司, 浅利 正二
    1987 年 9 巻 5 号 p. 403-407
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    Wallenberg症候群で発症し脳血管写上, 両側椎骨動脈 (VA) はhypoplasiaで左側の後下小脳動脈 (PICA) 閉塞さらにpersistent primitive trigeminal artery (PTA) を確認した45歳男性例を報告する.PTAに脳底後大脳動脈系の閉塞性血管障害を合併した場合の発生機序に関し, 内頚-外頚動脈分岐部のatherosclerotic plaqueから生じたmicroemboliがPTAを介し内頚動脈 (IC) から脳底動脈 (BA) へ流れ脳幹部の虚血症状を起こすと考えられている.一方, 本例では脳血管写にてIC領域にatherosclerotic plaqueの所見はみられず, 左PICAは造影されていない.また, PTAとBAとの吻合部より近位側にあるVAから分岐するPICAへIC系からのmicroemboliが流れるとは考えにくい.以上より本例はPTAが存在するためにhypoplasiaとなったVAから分岐するPICAの血栓性閉塞により発症したWallenberg症候群と考えられた.
  • 硬膜下血腫
    丸山 路之, 栗山 良紘, 澤田 徹, 藤田 毅, 尾前 照雄
    1987 年 9 巻 5 号 p. 408-414
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    心臓外科手術に伴う中枢神経障害としては, 従来脳潅流圧低下や, micro-embolismによる脳梗塞が強調されている.
    硬膜下血腫については抗凝固療法との関連で強調されてはあるものの, 心臓外科手術との直接的な因果関係について言及した臨床報告は殆ど認められない.
    我々は心臓外科術後神経症状を呈した39症例について頻回のCT検査を行った結果, 8例の硬膜下血腫例を確認し得た.これら心臓外科手術直後発生した硬膜下血腫症例の臨床像とCT所見に検討を加え, 診断時の問題点, 急性から亜急性に進行する病像等を明らかにした.術後管理期間中に発症した硬膜下血腫は心臓外科手術の直接の合併症とみなすべきと考えられ, 今後心臓外科術後にみられる中枢神経障害の診療に際しては常に硬膜下血腫の存在を念頭におく必要があると思われる.
  • 片側総頚動脈閉塞と低血圧の影響
    中富 康夫, 佐渡島 省三, 石束 隆男, 玉城 欣也, 藤島 正敏
    1987 年 9 巻 5 号 p. 415-420
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    自然発症高血圧ラット (SHR) の平均血圧を脱血により50mmHg以下 (前値の30%以下) に急速に低下させて15~60分間維持すると, 大脳皮質血流量 (水素クリアランス法) は49ml/100g/minから4ml/100g/min前後まで減少するが, 7日後に行った脳組織の光顕的検索では虚血性病変など特別な異常は認められなかった.一方, 一側頚動脈を閉塞後, 平均血圧を脱血前の30%以下に低下させ60分間維持すると, 閉塞側の大脳皮質血流量は26ml/100g/minから2ml/100g/min前後に減少し, 同側大脳半球に明らかな浮腫を伴った虚血性病変 (梗塞巣) が惹起された.高血圧患者に降圧治療する際, 特に脳血管に閉塞性病変があると, 同側により強い血流低下ひいては虚血性病変が形成されることが示唆され, 目標とする血圧レベルの検討が必要と思われる.
  • 日野 英忠, 神田 直, 田崎 義昭, 菅 信一
    1987 年 9 巻 5 号 p. 421-426
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    解離性動脈瘤によると思われる一過性の著明な血管狭窄所見を呈し, 脳梗塞を起こした内頚動脈fibromuscular dysplasia (FMD) の稀な1例を経験した.症例は45歳女性.左眼のamaurosisfugaxで発症し, 進行性の右片麻痺, 失語症を呈して入院した.X線CT上, 左基底核に小梗塞を認めた.第2病日に施行した脳血管写では, 両側の内頚動脈にstring of beads像を認め, また左内頚動脈は著明に狭窄し, 解離性動脈瘤の合併が推定された.保存的療法で神経症状は徐々に改善し, 第13病日に行った脳血管写でも, 左内頚動脈の狭窄所見は著しく改善していた.その他脳血管写で, 左内頚動脈に偽性動脈瘤を認めたが, 椎骨脳底動脈系には異常はなかった.脳梗塞で発症した内頚動脈FMDは極めて稀であるが, 解離性動脈瘤の合併による内頚動脈狭窄がその原因となりうると推測した.また本症例の経験から, 保存的療法が有効であると考える.
  • 平田 好文, 野中 信仁, 三原 洋祐, 三股 力, 松角 康彦
    1987 年 9 巻 5 号 p. 427-432
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    経口避妊薬によると思われる上矢状静脈洞血栓症において, 血栓形成過程における血小板機能の関与が示唆された1例を報告する.症例は39歳, 女性.2度目の人工妊娠中絶後, 経口避妊薬を5ヵ月間継続した.突然の頭痛と意識消失を来たし, けいれん重積状態となり入院, CTにて右前頭葉に小出血巣, IV-DSAにて上矢状静脈洞前半部2/3での閉塞の所見をみとめた.グリセオールを用いて脳圧亢進症状をコントロールし, 2ヵ月後, 神経学的異常なく退院した.血小板凝集能検査にて, 発症9日目, 21日目の急性期には血小板凝集能の低下が認められ, 発作4ヵ月後には正常に復していた.凝固・線溶系や血清脂質に異常は認められず, 血栓形成過程において血小板機能が重要な役割をはたしていることが示唆され, 興味深い症例と考えられる.
  • 血漿β-Thromboglobulin値による病型別検討
    脇 理一郎, 岡田 靖, 田代 幹夫, 宮下 孟士, 山口 武典
    1987 年 9 巻 5 号 p. 433-439
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    血漿β-thromboglobulin (β-TG) 値は, 生体内の血小板機能をよく反映するとされている.脳梗塞発症3日以内の症例を対象に, 血管に人為的損傷の加わっていない状態で採血した血漿β-TG値を, 脳梗塞の病型別に検討し, 高値の順に, (1) 血栓性主幹・皮質枝病変群 (Th-c群) : 207ng/ml, (2) 動脈由来脳塞栓群 (E-a群) : 135ng/ml, (3) 穿通枝血栓群 (Th-p群) : 92ng/ml, (4) 心臓由来脳塞栓群 (E-c群) : 51ng/ml, (5) 灌流圧低下による脳梗塞群 (H群) : 27ng/mlの結果を得た.Th-c群のβ-TG値は, βa群を除く他の病型に比し有意に高値をとり, この病型の発症に血小板機能の亢進が最も大きく関与していることが示唆された.また, 主幹動脈閉塞を示す症例で, 血栓性か心臓由来塞栓性かを鑑別するのに発症初期のβ-TG値の検討が有用であると思われる.E-c群とH群で低値をとったことより, この二つの病型の発症初期には血小板機能は亢進しておらず, 発症機序への血小板の関与は少ないと考えられた.
  • MRI, 臨床像, 血行動態の比較
    山本 康正, 津田 治巳, 生天目 英比古, 秋口 一郎, 亀山 正邦
    1987 年 9 巻 5 号 p. 440-447
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    両側内頚動脈閉塞症4例について, 臨床症状, 血行動態, X線CT, MRIによる検討を行なった.本症は過去5年間に当院に入院した脳梗塞192例のうち2.08%に相当した.1例は急性発症で, 両側中大脳動脈領域に梗塞巣を認め, 約3ヵ月後心不全により死亡した.他の3例は, 進展性脳虚血型を示した.1例はWillis動脈輪を介する側副血行に乏しく, 皮質枝吻合を介する血液供給が考えられ, 他の2例ではWillis動脈輪を介する側副血行を認めた.MRIにより, 上記の血行動態に対応した深部小梗塞, 傍側脳室部および深部白質病変, 境界領域梗塞などの各種の虚血性病変を認め, 本症における複雑な臨床症候, 血行動態, 虚血性病変成立の相互関係を理解することが出来た.また全失語の例で, X線CTでは不明確な病巣を, MRIにより確認することが出来た.
  • 山本 東明, 松角 康彦, 丸林 徹, 益満 努, 三浦 正毅
    1987 年 9 巻 5 号 p. 448-455
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    出血源不明のクモ膜下出血症例19例の脳血管撮影上の特徴を, 脳動脈瘤群181例, 対象群110例と対比し検討した.その結果, A1 hypoplasia, fetal type PCA, azygos ACA, A2 fenestration等々のvariation, anomalyが認めやられる頻度は, 出血源不明のクモ膜下出血例で63.2%, 脳動脈瘤群で65.8%とほぼ同頻度であり, 対照群の52.7%に比べ高率を示した.これらの血管構築の異常では動脈壁の抵抗減弱を招き, さらに過度のhemodynamic stressをもたらし, クモ膜下出血を引き起こしやすい環境を形成しているものと思われる.
    高血圧症の合併は19例中9例 (47.4%), 脳動脈硬化像の強い例も19例中6例 (31.6%) と高率に認められた.
    症例を呈示して出血源についての考察を試みた.
  • 交感神経の関与
    塩川 宰, 佐渡島 省三, 吉田 富士雄, 藤井 健一郎, 藤島 正敏
    1987 年 9 巻 5 号 p. 456-462
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    大脳虚血により小脳の脳血流自動調節能 (以下, 自動能) も障害される.これに交感神経がどのように関与するかを検討した.脳虚血は, 高血圧自然発症ラットの両側総頸動脈結紮により作製した.脳血流は水素クリアランス法で測定し, 脱血による血圧下降時の自動能を観察した.脳虚血作製前では大脳小脳の自動能は保たれ, α及びβ遮断薬の影響をうけなかった.脳虚血時には, 大脳の自動能は高度に障害され, いずれの遮断薬群においても30%の血圧下降により大脳血流は前値の約20%まで低下した.一方, 小脳では, 15%及び30%降圧に対し, β遮断薬群では小脳血流が降圧前値の75%, 62%に低下し, 自動能が消失したのに比し, α遮断薬群では90%, 87%と脳血流の低下はほとんどみられず, 自動能がよく保たれた.
    これらの事より大脳虚血時の小脳における自動能障害には, α受容体の関与が示唆された.
  • 栗山 良紘, 澤田 徹, 金子 尚二, 新美 次男, 成冨 博章
    1987 年 9 巻 5 号 p. 463-468
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    血圧低下に伴ない出現する内頚動脈系TIAの臨床像を報告し, そのTIA発現機序に関与する血行力学的諸因子を検討した.血圧低下に伴い神経症状が出現し, 血圧の回復に伴い症状の消失したhemodynamic TIAは6例で平均年齢は73±7歳である.普段の平均血圧は113, 発作時86mmHgで, 約23%の血圧低下が認められた.血圧低下の原因はvasovagal reflex1例, 房室伝導障害2例, 起立性低血圧1例, 降圧剤の内服2例であった.脳血管造影にて5例に高度の脳主幹動脈閉塞性病変を認めた。発作時の血液Ht値は平均44%で普段の38より有意に上昇していた.hemodynamic TIA発現に際しては, 脳血管閉塞と血圧低下に加えてhemorheological factorsの関与が示唆された.
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