トラウマインフォームドケア(TIC)の実証研究において,心理測定的に評価する頑健な尺度の不足と対象が医療従事者に偏っている点が指摘されている.本研究は,対象を日本の福祉系対人援助職者とし,Attitudes Related to Trauma-Informed Care Scale(ARTIC)-35および短縮版であるARTIC-10の信頼性・妥当性を検証し,使用上の課題を明らかにすることを目的とした.構造的妥当性の検討の結果,5因子モデルのARTIC-35 は,CFI の値を除き適合度の基準を満たしていた(χ²=1823.63, df=550, p<.001, CFI=.80, RMSEA=.06, SRMR=.07).本研究では,探索的因子分析により4因子モデルのARTIC-19が抽出された.モデル適合度は,本研究の対象者については5 因子モデルよりも4 因子モデルの方が適していることを示した(χ²=391.75, df=146, p<.000, CFI=.92, RMSEA=.05, SRMR=.05).1因子構造のARTIC-10の適合度は基準値を満たさなかった(χ²=285.51, df=35, p<.000, CFI=.77, RMSEA=.10, SRMR=.07).信頼性係数はARTIC-35,ARTIC-19,およびARTIC-10いずれも許容範囲であった.関連が予想されるKAP-TIP,共感満足,共感疲労,バーンアウト,セルフケア手段の有無,離職意向との相関分析を行ったところ,全般的な傾向として収束的妥当性が支持される可能性を示唆する結果が得られた.先行研究において指摘されていた因子構造の不安定さと項目表現の問題は本研究においても確認された.今後の課題として,専門領域や実践分野の異なる対象者における信頼性と妥当性の検討,複数の専門家を交えた項目表現の質的分析,改良点の検討などがある.
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