コクサッキーウイルスB群3型 (CB3) をddY/S系3週齢雌マウスの腹腔に接種したのち, 720日間にわたってすい臓をウイルス学的および病理学的に検索した結果を総括すると次のとおりである.
1. すい臓と他臓器からのウイルス分離: ウイルス量10
4TCID
50と10
7TCID
50接種群ともに接種後7日ではすい臓からはウイルスを分離できなかったが, 心臓と褐色脂肪組織から分離できた. 14日以降はすい臓からもほかの臓器からも分離できなかった.
2. 接種ウイルス量とすい臓病変の発生: ウイルス量10
4TCID
50と10
7TCID
50接種群との間にすい臓病変の発生頻度も強さの程度もほとんど差が認められなかった.
3. すい臓の病理組織学的変化: ウイルス接種後7, 14, 30日に外分泌部の腺房細胞にきわめて著明な変性と壊死および炎症性細胞浸潤, 石灰化等を伴う急性炎症と, 内分泌部のランゲルハンス島 (ラ氏島) に軽度から中等度に近い結合組織性嚢の変性と消失, 細胞過形成, 変性壊死等が認められた. 接種60日以降は, 腺房細胞の変性と壊死, 細胞浸潤, 石灰化等の病変の発生頻度が低下する傾向がみられるいっぽう, 変性壊死化ののち消失した組織は脂肪細胞によって置換された. 腺房細胞の軽度あるいは中等度の変性壊死, 細胞浸潤, 石灰化等とラ島の変化は720日まで認められる例があった. また10
4TCID
50接種群で120, 160, 300日に著明な単核細胞浸潤と腺房細胞の変性壊死等がそれぞれ少数例に認められた.
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