New Zealand (NZ) マウスはヒトSLEに酷似する自己免疫病を自然発生するが, 自己免疫病の発生にはこれらマウスに潜在感染する内因性C型白血病ウイルス (MuLV) が病因に密接に関連している. MuLV構造たん白の内, ウイルス粒子膜糖たん白gp70がループス様腎炎病変糸球体や壊死性血管炎病変血管壁に免疫複合体を形成して大量に沈着し, 組織傷害性を発揮している. 今回われわれは, NZマウスの血中に選択的に大量発現され, 免疫複合体の抗原となっているgp70抗原活性物質を生化学的に分離し, マウス白血病E♂G
2細胞膜から分離したgp70との比較検討を行なった. 分離されたNZBマウス血中のgp70抗原活性物質は分子量約53,000, 45,000, 32,000の fragment からなり, 分子量70,000のgp70は回収されない. いっぽうマウス白血病E♂G
2細胞膜から分離したgp70はMuLV粒子膜糖たん白gp70本来の分子量約70,000として同定された. Sephadex ゲルろ過法によるNZマウス血清分画中のgp70抗原活性は分子量約120,000~140,000の分画に認めらわる. 以上の成績から血中のgp70抗原活性物質が細胞膜のgp70とは異なり, 分子量53,000, 45,000, 32,000の fragment からなる特異的粒子膜関連糖たん白である可能性が考えられる.
いっぽう, Sephadex ゲルろ過分画中のgp70活性はループス様腎炎の顕症となる時期には void volume に活性のピークが認められ, in vitro で作製したgp70抗原抗体免疫複合体のピークも同じく void volume に認められることから, この時期には血中のgp70抗原活性物質の大部分が免疫複合体として存在していることが示唆された.
加齢とともにマウスに出現するMuLVに対する内因性抗体 (Gross natural antibody) の対応抗原の生化学的解析から, これがMuLV内部構造たん白p30, p15, p10の抗原性を併せ持つ precursor polyprotein, p (85) であることが明らかとなった.
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