1980年1月に下水からシュミットプール血清で中和できないウイルス (N808株) を. FL細胞で分離した. このウイルスの理化学的性状は, エンテロウイルスの性状を示したので, 各エンテロウイルスの抗血清による分離株の中和試験を, また, 分離株の抗血清による, 細胞で分離可能なエンテロウイルスの中和試験を行ったが, 結果はすべて陰性であった. エンテロウイルスの中でも. コクサッキーウイルスA群は細胞での増殖が困難な株が多い. そこで, 市販の抗コクサッキーウイルスA群血清を用いて, ELISA法による同定を試みるとともに, 他のエンテロウイルスの抗血清についてもELISA法で確認試験を行ったところ, 抗コクサッキーウイルスA群17型血清についてのみ高いELISA値を示した. また, コクサッキーウイルスA群17型の標準株 (G-12株) との交差中和試験の結果, 抗原性の一部は異なるものの, 双方で中和可能であることから分離株はコクサッキーウイルスA群17型と同定した. 以上のことより. 中和試験で同定が困難な分離株でも, ELISA法を用いることにより同定が可能になった. なお, 分離株は, 乳のみマウスに対して病原性を示さなかった. また. 200名の名古屋市民の血中抗体価は陰性の範囲であることから, 分離株の過去における流行はないと推定された.
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