ウイルス
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63 巻 , 2 号
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総説
  • 瀬谷 司, 押海 裕之, 松本 美佐子
    2013 年 63 巻 2 号 p. 135-142
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
     一般にウイルス感染は宿主免疫を回避して成立するが、回避機構はウイルスごとに差異がある。RNAウイルスはゲノムも複製産物もパターン分子(PAMP) として宿主のエフェクター(1型インターフェロン(IFN)、サイトカイン、NK細胞活性化、Th1 シフト、細胞障害性Tリンパ球(CTL)の増殖など)を誘導する例が多い。このことはRNA認識の自然免疫が細胞性免疫の起動原になることを示唆する。実際、この過程を阻害する因子が多くのウイルスで発見されている。また、この過程は明らかに樹状細胞の成熟化を介しており、ウイルスRNAは例外を除いて免疫細胞の機能を損なわずに感染免疫を成立させる。樹状細胞はウイルスに障碍されずにRNAセンサーによる非自己RNAの検知とエフェクター誘導を行う必要がある。即ち感染細胞内で起きるRNA認識(内因性識別系)と非感染樹状細胞で起きるRNA認識(外因性識別系)は異なる目的に収束する。本総説ではHCVを例にとり、この2つの系に関わる最近の知見を解説し、新規分子の機能に言及する。
  • 近藤 秀樹
    2013 年 63 巻 2 号 p. 143-154
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
     ラブドウイルスは非分節型マイナス(-)鎖RNAをゲノムに持つモノネガウイルス目に所属し,ヒト,家畜,魚類,昆虫類,植物など多様な生物種に感染することが知られている.ランえそ斑紋ウイルス(OFV)はオンシツヒメハダニにより媒介され,世界のラン科植物の栽培地域に広く分布するが,発見当初から生物学的特性,粒子形態,細胞内所見の類似性などを根拠にラブドウイルスの一種と考えられていた.その後OFVが2分節型の(-)鎖RNAをゲノムに持つことが判明し,その遺伝子の構造や構成は植物ラブドウイルス,特にヌクレオラブドウイルス属に類似していることが示された.本総説では,モノネガウイルスに類似するユニークな2分節型ウイルスのゲノム構造や遺伝子発現様式,さらに核内封入体(viroplasm)の誘導機構に関わる最近の知見やOFVの分類動向を紹介する.
  • 近藤 小貴, 前川 文, 斎藤 泉, 鐘ヶ江 裕美
    2013 年 63 巻 2 号 p. 155-164
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
     非増殖型アデノウイルスベクター(FG-AdV)は,各種細胞への高い遺伝子導入効率を示し有用性が高いベクターである.これまで問題であったベクターに対する免疫反応による肝臓の炎症については,原因ウイルスタンパク質の同定に成功し,この問題を解決した「低炎症型ベクター」を報告した.しかし,究極のFG-AdVを考えた時,残存しているアデノウイルスゲノム領域からPol IIIにより発現している2種類のウイルス随伴RNA (VA RNA)の欠失が必要である.VA RNAはウイルス増殖に必須では無いものの,ウイルス増殖に適した環境を整備する役割を担っており,特に感染後期に大量に発現しているため,VA RNAをトランスに供給する293細胞ではVA欠失AdV作製は困難であった.我々は,新規VA欠失AdV作製法を開発し,高力価のVA欠失AdVの回収に成功した.そこで,C型肝炎ウイルス(HCV)に対するshRNAを発現するVA欠失AdVを作製し,従来のFG-AdVとHCV複製抑制効果を比較したところ,VA欠失AdVが高い抑制効果を示したことから,VA RNAがshRNAの成熟過程で競合拮抗していたことを明らかにした.本ベクターは今後FG-AdVのスタンダードになると考えている.
特集:Retrovirusのウイルス学
  • 安永 純一朗, 松岡 雅雄
    2013 年 63 巻 2 号 p. 165-174
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
     ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1: HTLV-1)はサルT細胞白血病ウイルス1型(simian T-cell leukemia virus)や牛白血病ウイルス(bovine leukemia virus)と共にデルタレトロウイルスに属し,感染者にCD4陽性CD25陽性T細胞の悪性腫瘍である成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia: ATL)や慢性の炎症性疾患であるHTLV-1 関連脊髄症(HTLV-1 associated myelopathy/tropical spastic paraparesis: HAM/TSP),HTLV-1 ぶどう膜炎(HTLV-1 uveitis: HU)を惹起する.我が国で実施された最新の疫学調査では20年前に比較し予想したほどHTLV-1感染者が減少していないことが明らかとなり,HTLV-1感染対策と関連疾患の治療法開発が急がれている.一方で,HTLV-1の感染動態や病原性発現の分子機構は,ウイルス蛋白や関連する宿主因子の詳細な機能解析,網羅的解析技術の進歩,新しい動物モデルの開発等により,次第に明らかになりつつある.本項ではHTLV-1研究の最新の知見を紹介する.
  • 櫻木 淳一
    2013 年 63 巻 2 号 p. 175-186
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
     後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原体としてヒト免疫不全ウイルス(HIV)が発見されてから30年が過ぎた.その間,地球規模の脅威であるこの疾患に関して精力的な研究が全世界で遂行され,たくさんの成果が疾患との戦いの重要な糧となってきた.感染者に対する治療法は日々進化し続けており,もはやAIDSは死の病ではなく,慢性疾患であると言われるまでに状況は改善されてきている.しかしウイルスそのものに目を向けると一見明白となったかのように映る複製のストーリーにはいくつもの穴が開いており,根本的な理解には遠く及ばないのが現状である.本稿では特にHIVの主役をゲノム核酸と捉え,最新の知見を交えながらウイルス複製の何がわかり何がわかっていないのかをその様々なステップについて紹介する.
  • 北村 紳悟, 岩谷 靖雅
    2013 年 63 巻 2 号 p. 187-198
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
     ヒト免疫不全ウイルス (HIV: Human Immunodeficiency Virus) は,ウイルス粒子の構造タンパク質(GagとEnv),複製のための酵素 (Pol),遺伝子発現調節因子(TatとRev)のほかに,アクセサリーと呼ばれるタンパク質(Vif,Vpu,Vpr,Vpx,Nef)の遺伝子をコードする.これらアクセサリータンパク質は,細胞種によってウイルスの増殖に非必須であったり,HIV-1 と HIV-2 間において保存されていないものが存在することから,その機能や必然性は断片的にしか明らかとなっていなかった.しかし,宿主防御因子である APOBEC3G タンパク質と,その解除因子としての Vif の機能の発見から状況は一変した.本来ヒトの細胞には外来ウイルスの増殖を阻止する細胞内システム(自然免疫など)が存在し,一方,ウイルスは抗ウイルスシステムを解除するためにアクセサリータンパク質を獲得したのではないかという知見が次々と出されてきた.現在までに,Vif-APOBEC3 に加え,Vpu- BST-2/TetherinあるいはVpx-SAMHD1の関係が明らかにされてきた.本稿では,宿主防御機構の対抗因子としての視点から,HIVアクセサリータンパク質の特徴と機能について紹介する.
  • 鯉渕 智彦
    2013 年 63 巻 2 号 p. 199-208
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
     抗HIV治療薬は,逆転写酵素阻害薬,プロテアーゼ阻害薬(PI: protease inhibitor),インテグラーゼ阻害薬(INSTI: integrase strand transfer inhibitor),侵入阻害薬(CCR5阻害薬)に大別され,さらに逆転写酵素阻害薬はヌクレオシド系(NRTI: nucleoside/nucleotide reverse transcriptase inhibitor)と非ヌクレオシド系(NNRTI: non-nucleoside reverse transcriptase inhibitor) に分けられる.異なる作用機序の薬剤を適切に組み合わせれば長期的にHIVの増殖を抑制できる.近年の抗HIV薬は強力かつ副作用も少ないため,CD4数に関わらず無症候期の早い時期から治療を開始することが世界的に推奨されている.しかし,現在の治療薬では潜伏感染状態にあるHIVを排除することはできず,生涯に渡る治療継続が必要である.HIV reservoirと呼ばれるこれらの潜伏感染細胞を標的とした治療法など,新たな治療戦略が求められている.
  • 村越 勇人, 滝口 雅文
    2013 年 63 巻 2 号 p. 209-218
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
     HIV感染症では,HIV特異的細胞傷害性T細胞(CTL)が誘導され,体内でのHIV増殖を抑制する.HIV特異的CTLは,多様性に富むHLA クラスI分子を介した抗原提示によって誘導されるが,いくつかのHLA クラスI分子はHIV増殖抑制効果に密接に関係していることが知られている.HIV増殖抑制能を有するCTLが誘導されると,HIVは変異することでCTLからの攻撃を逃れる.さらに,変異したウイルスは,感染を繰り返すことで集団内に蓄積していく.これは,HIVがHLAクラスIに適合するように進化していくことを意味している.本稿では,HIV感染症におけるCTLの役割,HLAとHIV感染制御の関係,ならびにCTLによって選択された逃避変異ウイルスの蓄積について紹介する.
  • 山本 浩之
    2013 年 63 巻 2 号 p. 219-232
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
     予防エイズワクチンは,免疫応答障害・持続感染成立の観点で最適化されたウイルスに対して逆に最適な適応免疫応答を惹起することが求められる.ゆえにその誘導パターンは,免疫系の元来のデザインに忠実なバランスの取れたものと大幅に異なった変則的な応答(群)の方が却って良い可能性もある.本稿では,多くの特徴をもつ感染病態依存性のT細胞(細胞傷害性T細胞/CD4陽性T細胞)・B細胞(中和抗体)応答を,ワクチン誘導にどのように反映させることで in vivoのHIV制御が達されうるかを論じてゆく.
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