ウイルス
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64 巻 , 1 号
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総説
  • 石橋 和大, 石川 雅之
    2014 年 64 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     プラス鎖RNAウイルスの複製タンパク質は,複製の鋳型を特異的に認識して細胞内の特定の膜上にリクルートし,複製複合体を形成する.筆者らは最近,試験管内ウイルスRNA翻訳・複製系を用いて,翻訳中のタバコモザイクウイルス(TMV)複製タンパク質新生ポリペプチドが,ゲノムRNAの5' 非翻訳領域 (UTR) に結合し,TMV RNAを複製に導くことを見いだした.複製タンパク質は,一旦完成すると,ゲノムRNAにトランスに結合することはできなかった.TMVの複製タンパク質は,自身の翻訳鋳型となったRNA分子を優先的に複製鋳型として選択する(シスに働く)ことが以前から知られていたが,この結果は,複製鋳型がどのようにしてシスに選択されるのかを合理的に説明するものである.また,5' UTRに複製タンパク質が結合するとTMV RNAの被翻訳効率が低下した.TMV複製タンパク質は5' UTRに結合することにより複製鋳型を選択すると同時に新たな翻訳を抑制し,TMV RNA上を5' 末端から移動するリボソームと,3' 末端から移動するRNAポリメラーゼの衝突を事前に防止していると考えられる.
  • 鈴木 信弘
    2014 年 64 巻 1 号 p. 11-24
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     菌類は未同定,未報告の種も含めると百万種を超えると言われる.そこにはそれらを宿主とする多種多様なマイコウイルス(菌類ウイルス)の世界も広がっている.ここ20年に渡る一握りのマイコウイルスの研究から,精製したウイルスの粒子に感染性があることが証明されて人工接種法の開発に至り,ウイルス研究に必要な他の技術革新ももたらされた.植物病原糸状菌の一種であるクリ胴枯病菌は,マイコウイルス研究のモデル宿主菌としての地位を確立しつつある.本菌では,いまだ完全ではないがアノテーション付きのドラフトゲノム配列情報も公開され,関連する研究ツール・遺伝子改変技術もよく整備されている.また,最近になり,分類学上の目が異なる宿主菌(白紋羽病菌)に自然感染していた多くのウイルスが本菌で複製できることが判明し,マイコウイルス研究を進めるための実験宿主菌としての一面も併せ持つことも明らかになった.本稿では,マイコウイルスの一般的な性状,クリ胴枯病菌の実験ウイルス宿主としての優位性を概説し,さらにクリ胴枯病菌を舞台に得られた最近の興味深い解析例,「目立たないウイルスの複製を制御するDI-RNAとRNA サイレンシング」ならびに「RNAサイレンシングとウイルスRNAゲノムの組換え」,を紹介する.
  • 澤 洋文, 小林 進太郎, 鈴木 忠樹, 大場 靖子
    2014 年 64 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     ポリオーマウイルスはポリオーマウイルス科に属する哺乳類動物由来のOrthopolyomavirusとWukipolyomavirus,及び鳥類由来のAvipolyomavirusに分類されている.我々は疫学研究を通じて新規のポリオーマウイルスであるMastomys Polyoamvirus (MasPyV)及びVervet monkey Polyoamvirus-1 (VmPyV-1)を単離し,そのゲノムがコードするウイルスタンパク質の機能解析を実施した.更に,ヒトポリオーマウイルスであるJC polyomavirs (JCPyV)についての基礎研究を推進し,最近,早期タンパク質であるLarge T抗原の感染細胞における機能解析,後期タンパク質であるVP1のシステイン残基の粒子形成への影響,及び後期タンパク質であるAgnoのウイルス粒子の細胞外放出機構に対する影響について知見を得たのでその内容を紹介する.
特集:第61回日本ウイルス学会学術集会シンポジウム1「発癌ウイルス」
  • 川名 敬
    2014 年 64 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     ヒトパピローマウイルス(HPV)のうち発癌性HPVでは,持続感染によって子宮頸癌をはじめとする癌を発症することがある.HPVを標的とした子宮頸癌治療には,E6, E7が標的分子として期待される.HPVを標的した分子標的治療として我々は2つ考えた.・ウイルス癌遺伝子の発現をsiRNAで抑える核酸医学と,・ウイルス癌蛋白質を癌抗原とした癌免疫療法,である.・ウイルス癌遺伝子の発現を抑える核酸医学は多く検討されてきたが,そのdrug-delivery system(DDS)が問題であった.我々は高分子ナノミセルを用いたDDSをE6/E7 siRNAに組み合わせた創薬基礎研究を行った.・HPV分子に対する細胞性免疫を誘導することによって免疫学的排除を目指した癌免疫療法(HPV治療ワクチンとも言う)は子宮頸癌やその前癌病変に対する臨床試験も多く実施されてきた.しかし,いずれも実用化されていない.我々はHPV16型E7に対する粘膜免疫を誘導する癌免疫療法としてE7発現乳酸菌を製剤化し,経口投与することを考えた.子宮頸癌前癌病変(CIN3)患者を対象とした臨床試験では,腸管粘膜で誘導された抗E7-IFN-gamma産生細胞が子宮頸部粘膜にホーミングし,CIN3を退縮させることを見いだした.HPV発癌を逆手に取ったHPV分子標的治療について,新しい戦略を用いた創薬とその臨床応用の可能性が示唆された.
  • 幸谷 愛
    2014 年 64 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     近年,大量の小分子RNAを内包する10-200nm程度の小胞,エクソソームが脚光を浴びている.内包物の小分子RNA,特にmicroRNA (miRNA)のプロファイルは,診断マーカーとして期待され,米国においては,NIHが,日本においえは,NEDOが,大型予算を配備,精力的な研究が行われている.更に最近,機能についても研究がすすみ,細胞間コミュニケーターとして重要な生体機能を担うことが明らかになってきた.エクソソーム単独で炎症を惹起でき,固形がんの転移に必須な現象である転移部位ニッチ形成に必須である等,興味深い知見が得られてきた.
     このような背景のもと,炎症性癌であるEBV関連リンパ腫における腫瘍由来分泌性小分子RNAの役割について検討した.
     その結果,腫瘍由来分泌性小分子RNAは単球/マクロファージ(Mo/M)によって,選択的に取り込まれ,その機能を腫瘍随伴マクロファージ(Tumor associated macrophage, TAM)様へ変化させ,腫瘍形成に極めて重要な働きを示すことを明らかとなった.
  • 岩切 大
    2014 年 64 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     EBウイルス(EBV)は広くヒトに感染している2本鎖DNAウイルスで,バーキットリンパ腫やホジキンリンパ腫,上咽頭癌,胃癌など種々の悪性腫瘍との関連が知られている.EBV関連癌と呼ばれるこれらの癌においてEBVは潜伏感染を維持し,発現しているウイルス遺伝子の機能は発癌に寄与すると考えられている.本稿では,発癌に関わるとされるEBV潜伏感染遺伝子のうち,特に膜蛋白質LMP2A (latent membrane protein 2A),及びnon-coding RNAであるEBER(EBV-encoded small RNA)の関与を中心に,EBVによる発癌機構について概説する.LMP2Aは自身でB細胞抗原レセプターシグナルを模倣するなど宿主免疫シグナル分子との相互作用によりリンパ腫の発生に寄与する一方,上皮においてもLMP2Aによる細胞内シグナル伝達の惹起が発癌に寄与することが明らかになっている.一方EBERは部分的2本鎖RNA(dsRNA)構造を持つと考えられ,宿主のdsRNA認識分子であるRIG-IおよびTLR3からのシグナル伝達を惹起するが,これらの自然免疫シグナルの活性化は,癌も含めたEBVによる疾患の病態形成に寄与することが明らかにされている.
  • 中原 知美, 清野 透
    2014 年 64 巻 1 号 p. 57-66
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     高リスク型ヒトパピローマウイルス群(high-risk human papillomaviruses: HR-HPVs)感染を要因とするがんは,子宮頸がんをはじめ世界の全がんの約5%,女性では約11%を占める.HPVは子宮粘膜等の重層扁平上皮組織に感染し,基底細胞において持続感染を成立させる.この持続感染は,時に数十年持続することが知られており子宮頸がん発症の背景となっている.HPVの生活環は,重層扁平上皮組織の細胞分化と密接に連動しており,ウイルスゲノムの複製やウイルス遺伝子の発現は,感染細胞の分化に応じて厳密に制御されている.HPVゲノムは,感染直後に一過的に増加した後,基底細胞では一定コピー数に維持される.一方で,感染細胞が分化を始めると爆発的に増加する.HPVゲノム複製がその生活環において3段階に制御される分子機構については長らく不明であった.近年,HPVゲノム複製の制御に,宿主のDNA損傷修復系との相互作用が深く関わることが明らかとなりつつある.本稿では,HPVゲノム複製とDNA損傷修復系との相互作用について解説する.
  • 大賀 正一
    2014 年 64 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     Epstein-Barrウイルス(EBV)がBurkittリンパ腫株から発見されて半世紀が経過した.この間分子生物学,血液・免疫学および移植医療のめざましい進歩から,EBVの感染様式と病態への関与が明らかになった.EBVと宿主の関係は,疫学から,ゲノムの構造と機能,microRNAなどの調節遺伝子,そしてepigenetic解析へと展開してきた.動物実験が困難であったEBV感染モデルも,ヒト化マウスを用いた研究が進んでいる.EBVがCD21を受容体としてB細胞に感染し,潜伏・再活性化する機構,獲得免疫の動態,自然免疫の関与など,病態生理の理解は深まった.一方,EBVが感染したT細胞およびNK細胞によるリンパ増殖症/リンパ腫の発症機構には未解明な部分が多い.本特集には,発がんウイルスとしてEBVの基礎と臨床それぞれの項があるので,ここではEBV関連疾患の研究史を感染細胞と宿主の免疫から概観する.
トピックス
  • 山本 卓, 坂本 尚昭, 佐久間 哲史
    2014 年 64 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     ゲノム編集は,TALENやCRISPR/Cas9などの部位特異的ヌクレアーゼを用いて,細胞内で標的遺伝子を改変する技術である.ゲノム編集を用いることによって,これまで遺伝子改変が難しかった生物種においても遺伝子ノックアウトや遺伝子ノックインが可能となったことから,現在,疾患モデルの培養細胞や動物の作製が競って進められている.本稿では,部位特異的ヌクレアーゼを基盤とするゲノム編集技術の基本原理と研究の現状を紹介する.
  • 阿部 隆之
    2014 年 64 巻 1 号 p. 83-94
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     STING (stimulator of interferon (IFN) genes)は,様々なRNA及びDNAウイルス感染に対する生体防御機構に重要な役割を果たす,小胞体局在膜蛋白質として同定された分子である.一方,STINGはウイルス及び細菌由来のDNA成分に対する宿主自然免疫応答の誘導に重要な役割を示すことが報告されているが,その分子機序は明らかにされていなかった.我々の近年の報告から,STINGがウイルス由来のゲノムDNAのみならず,ISD (IFN-stimulatory DNA)と呼ばれる合成二重鎖DNA,さらにアポトーシス細胞由来の自己DNA成分と複合体を形成し得る事を明らかにした.STINGによる様々なDNA成分の認識は,STINGの核膜周辺領域へのダイナミックな局在変化を誘発し,IRF3のリン酸化キナーゼであるTBK1の活性化を介してIFNを誘導する.さらに,STINGは微生物由来である非自己のDNA成分のみならず,自己のDNA成分の認識を介した慢性的な炎症性応答の制御にも関与している可能性が示唆されている.本トピックスにおいては,STINGのDNA成分に対する認識機構に加え,筆者らのグループが近年報告したSTING依存的な自然免疫シグナルの制御機構についても言及する.
平成25年杉浦賞論文
  • 村田 貴之
    2014 年 64 巻 1 号 p. 95-104
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     Epstein-Barr (EB)ウイルスはガンマヘルペスウイルスに分類されるヒト腫瘍ウイルスである.進化学的観点からみても長期にわたって宿主と共存してきた,高度な生存戦略を備えたウイルスであり,複雑,巧妙な感染様式をとることで自身の維持,拡大を図っている.その感染様式は,潜伏感染と溶解感染のふたつに分けられ,潜伏感染から溶解感染への移行を再活性化と呼ぶ.さらに潜伏感染は主に0-IIIの4つに分類される.このような感染様式の相違や変遷は,ウイルスの維持拡大のみならずがん化のプロセスや臨床病態とも深く関わっており,その理解は重要である.本稿では,EBウイルスによる増殖性疾患の発生,維持,進展の機序について,我々の感染様式に関する研究成果を交えながら紹介したい.
  • 米田 美佐子
    2014 年 64 巻 1 号 p. 105-112
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     ニパウイルスは,1990年代終わりにエマージングウイルスとして出現し,ヒトに高い致死率の感染症を引き起こす.我々はニパウイルスのリバースへネティックス系を開発し,本系を用いてウイルスの細胞感受性とリセプター発現との関係,アクセサリー蛋白の病原性への関与を解析した.また,ワクチン開発にも着手し,ニパウイルス膜蛋白発現組換え麻疹ウイルスが高い防御能を示し,有望なワクチン候補となることを示した.
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