ウイルス
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69 巻, 2 号
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総説
特集:インフルエンザウイルスと防御
  • 山吉 誠也, 安原 敦洋
    2019 年 69 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 2019年
    公開日: 2023/10/27
    ジャーナル フリー
    インフルエンザウイルスに感染しないためには,ウイルスとの接触を避けることが最優先である.しかし,ウイルスは目に見えないため,ウイルスとの接触を完全に回避することは困難である.そこで,ウイルスの増殖を抑制する抗体を十分に持っていれば,たとえウイルスに曝露したとしてもインフルエンザを発症しないだろう.これまで,ウイルスの赤血球凝集活性を抑制する抗体がヒトの体内でのウイルス増殖抑制に中心的な役割を果たすとされてきたため,そのような抗体を誘導することが予防の基本とされてきた.近年のヒトモノクローナル抗体の研究から,抗体によるウイルス増殖の抑制メカニズムの多様性が明らかとなってきた.本稿では,注目を集めているウイルスのNA蛋白質に対する抗体による感染防御について,NA蛋白質の基礎的な役割,NA蛋白質に対する抗体による増殖抑制メカニズム,現行のワクチンにおける改善点などについて解説したい.
  • 鈴木 忠樹, 長谷川 秀樹
    2019 年 69 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 2019年
    公開日: 2023/10/27
    ジャーナル フリー
     生体内において最も産生量の多い抗体であるIgA抗体はインフルエンザのように粘膜組織を標的とした感染症に対する生体防御の最前線防御因子として機能している.経鼻ワクチンにより粘膜免疫の中核をなすIgA抗体を自在に制御することができれば,有効性の高いインフルエンザワクチンの開発に繋がることが期待できる.最近の我々の研究により,呼吸器粘膜に存在する二量体よりも大きな四量体などの多量体分泌型IgA(SIgA)抗体がインフルエンザウイルス感染防御に重要であることが明らかになってきた.さらに,四量体SIgA組換え抗体作製技術を用いて作製された同一抗原認識部位を持つ様々な四次構造の抗体の抗ウイルス活性比較検討により,IgA抗体の四量体化は抗体の最大活性を変化させずに抗ウイルス活性の標的域を拡張させることに寄与していることが明らかになった.これらの研究結果は,二量体以上の多量体SIgA抗体のインフルエンザウイルス感染防御における重要性を強調するとともに,従来のインフルエンザワクチンにはない経鼻インフルエンザワクチンに特有のワクチン有効性発現機序の一端を明らかにするものである.
  • 安達 悠, 登内 奎介, 高橋 宜聖
    2019 年 69 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 2019年
    公開日: 2023/10/27
    ジャーナル フリー
     防御抗体はインフルエンザウイルスに対して最も有効な対抗手段であり,その誘導のためインフルエンザワクチンは接種される.近年,“交差防御抗体”と呼ばれる抗原変異ウイルスに対しても広域な感染防御効果を発揮するタイプの抗体が見出され,その抗体の抗原認識や防御メカニズムに関する詳細な解析が進められてきた.その結果,交差防御抗体のエピトープは,ウイルス抗原の“隠れた”部位に存在しており,これが現行ワクチン剤形で交差防御抗体を賦活化できない一因であることが明らかとなってきた.一方で,隠れたエピトープを認識する交差防御抗体は,種々の防御メカニズムを介して感染防御能を発揮することも判明している.本稿では,どのようにウイルスが有効なエピトープを隠しているのか,いかにして隠れたエピトープを認識する抗体が感染防御に寄与するのかについて概説したい.また最後に,隠れたエピトープをターゲットとしたユニバーサルワクチン剤形に関する最新の報告を紹介する.
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