ウイルス
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最新号
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総説
  • 片山 和彦
    2020 年 70 巻 2 号 p. 117-128
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー
     ノロウイルスは,一般に感染性胃腸炎,大規模な食中毒を引き起こすウイルスとして知られており,感染メカニズムの解明やワクチンや治療薬の開発が急務となっている.ノロウイルスには,ヒトの疾患に関係するヒトノロウイルスの他にも,動物の疾患に関係するノロウイルスも存在する.中でも,ネズミの疾患に関係するネズミノロウイルスは,株化培養細胞での増殖培養が可能であるため,長年培養細胞で増殖させることのできなかったヒトノロウイルスの代替えウイルスとして使用され,基礎ウイルス学的研究に寄与してきた.構造生物学的研究の進展により,ノロウイルスは,細胞への感染の際,ダイナミックな形状変化によって感染性を向上させるなど,柔軟性に富む粒子構造を有することが明らかにされた.ヒト腸管オルガノイドの技術発展により,ヒトノロウイルスの腸管での病原性発現機構,感染増殖機構の研究,レセプター分子の探索が進められている.ヒト腸管オルガノイドの利用により,ワクチンや抗ウイルス薬の開発も加速し,実用化を目指した治験が進められている.本稿では,ノロウイルス発見の歴史から最新の研究成果,ワクチン開発についてまとめた.
  • 渡士 幸一
    2020 年 70 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー
     2020年のノーベル医学生理学賞はC型肝炎とその原因ウイルス発見,病態解明に貢献のあった3研究者に送られた.これら受賞対象研究を経て,C型肝炎ウイルス(HCV)のウイルス学的技術や実験手法は大きく改善され,その後効果的な抗ウイルス治療も確立され,まさにHCV研究は円熟期を迎えている.本総説では,これまでのHCV研究の流れをおさらいし,今後のHCV研究の課題に触れながら,私たちがおこなっているHCV培養系を利用した生理活性天然物探索研究を紹介する.
  • 赤堀 祐一, 土方 誠
    2020 年 70 巻 2 号 p. 135-146
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー
     B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus; HBV)は急性肝炎や慢性肝炎,肝硬変,そして肝がんといった慢性肝疾患の原因ウイルスである.1979年にそのウイルス遺伝子がクローニングされていたが,HBVの感染増殖を分子ウイルス学的解析するために必須である細胞培養系の開発が進んでいなかった.そのためHBV生活環の全容解明とそれを基にした創薬研究の進展が遅れていた.しかしながら,2012年にHBV感染受容体としてナトリウム-タウロコール酸共役輸送体(Na+-taurocholate co-transporting polypeptide; NTCP)が同定された.この分子を安定発現させた肝がん由来細胞株を用いることで,これまで得られなかったHBV生活環の特に感染・侵入のステップを再現することが可能になったため,このステップの分子機構に関する新しい知見や,そのステップを標的とした抗HBV薬候補が次々と得られている.一方,がん細胞を用いたこれらのHBV培養系ではなく,本来のヒト肝細胞に類似した細胞を用いたHBV培養系を開発して,生理的なHBVと肝細胞との相互作用を研究する試みも進められている.本稿では,これら研究の進展を概説し,また我々が,NTCPを発現させた不死化肝細胞株を用いて開発した新たなHBV感染細胞培養系について紹介する.
特集:SARS-CoV-2
  • 黒田 誠
    2020 年 70 巻 2 号 p. 147-154
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー
  • 白戸 憲也
    2020 年 70 巻 2 号 p. 155-166
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー
  • 飯田 俊, 鈴木 忠樹
    2020 年 70 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー
     2019年12月に中国・武漢からCOVID-19の第一報が報告されて以来,SARS-CoV-2の流行は世界中に拡大し,公衆衛生上の重大な問題となっている.現在COVID-19に対する治療法の開発が進められているが,いずれも効果は限定的なものにとどまり,より有効な治療薬やワクチンの開発が望まれている.感染症に対する効果的な治療薬やワクチンの開発には,病態への十分な理解が欠かせない.特に,感染症と病原体との因果関係や,病態形成機構を解明する過程では,病理学的な解析が重要な役割を担う.これまでの病理学的な解析により,COVID-19の病変の主座は呼吸器にあること,呼吸器以外にも多彩な病変が形成されることが明らかになってきた.また,COVID-19では,宿主の免疫応答が病態の悪化に寄与することを示す報告が次第に集積してきており,MIS-C/MIS-Aという新たな概念が確立されつつある.本稿では,COVID-19の病態に関して病理学的見地から概観するとともに,COVID-19における免疫について,感染防御と病態形成という二つの側面に焦点を当てて概説する.
トピックス
  • 吉松 組子
    2020 年 70 巻 2 号 p. 175-184
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー
     スリランカでは1990年代から特定の地域に原因不明の慢性腎臓病が急増している。この病気は慢性疾患ではあるが死に至る病である。これまで重金属や農薬などが原因として疑われてきたが、長く原因は不明であった。近年、私たちは慢性腎臓病患者における高い抗ハンタウイルス抗体陽性率を見いだし、ハンタウイルス感染がこの病気の発症リスクであることを報告した。ハンタウイルスはげっ歯類を宿主とするウイルスである。ここでは、血清疫学から宿主動物の探索まで、いまだ研究途上ではあるが研究の経緯を紹介したい。
  • 加藤 哲久, 川口 寧
    2020 年 70 巻 2 号 p. 185-190
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー
     ウイルスは宿主細胞に感染後, そのゲノムより遺伝子産物を新規合成し, 宿主細胞の環境を変化させる. すなわち, ウイルス感染現象や病態の理解, 抗ウイルス剤およびワクチンの開発には, ウイルス遺伝子産物の包括的な同定が重要である. しかしながら, ウイルスは限られたゲノムサイズに, 多様な遺伝情報を搭載するため, しばしば非標準的な翻訳エレメントを獲得している. これらのエレメントは一般的な塩基配列上の特徴を欠き, 従来のアノテーション法によりウイルス遺伝子産物の全体像を同定することは困難である. 最近, 我々は,非標準的なウイルス遺伝子産物を包括的に解読する新たな方法を確立した. 確立された新たな非標準的ウイルス遺伝子解読法は, 様々なウイルスにおける遺伝情報の解読に広く応用される可能性があると期待される.
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